ツクヨミ様の人間見習い

大和撫子

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第六話

(仮初)新米夫婦のお仕事な毎日……のスタート 【一】

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 ご飯をよそう、普通よりやや多めに。自分の分は軽く一膳、そして……

「俺の分は大盛りな!」

 背後から聞こえる日比谷の声。

「分かってますよ。成人男性用のお茶椀に山盛りが良いんでしょう?」
「そう、それ。アニメで見た昔話みたいに」
「はいはい。じゃあ、ご飯とお箸とそこにある御味噌汁、トレイに乗せて運んでくださいます?」
「へいへい、と。今日の味噌汁は玉ねぎか」

 何だかんだと手伝ってくれる日比谷なのだ。白米の盛り方に拘りがあるようだが、同じ量なら……と、どんぶりによそって出したら抗議された。それも初日に。

 今朝のメインは鮭の西京漬けを焼いたものだ。粋蓮と日比谷が二匹ずつ、あたしは一匹。それとキャベツと人参を蒸して酢醤油で頂く。それらをトレイに入れてリビングに運んで行く。後は三人分の緑茶を淹れて、間もなくやってくるであろう粋蓮の登場を待つ。

 これが、紫柳しりゅう家の鑑定日、つまり仕事がある日の朝の光景である。食事は、ごく簡単なもので良いから、と言うのであたしが三食用意。洗い物は粋蓮か日比谷がやってくれる。夫婦として一緒に住むのだから、と。水道光熱費や食事その他の必要経費全て粋蓮が持つというので、家事の一切はあたしが引き受けた。はっきり言って三人分など作った事はないし、料理も掃除も苦手だが。たんまりとお給料を頂いている上に家賃も食費も水道光熱費もかからないのはさすがに申し訳ないからだ。

 健康な者なら、働かざる者食うべからずだ。家事なんて、本当はやりたくない、かなりやりたくない、物凄ーくやりたくない、これが本音だ。

 因みに、誤解のないように言っておこう。一緒に住んではいるが、寝室は見事に別々である。彼は一階、あたしは二階、日比谷は自分の事務所兼自宅だ。また、ゴミ出しも粋蓮、たまに日比谷がやってくれる。これは勿論、あたしたちが夫婦になったから、良き夫として……などではない。まぁ、世間的に見て夫婦である事のパフォーマンスもあるが、一番の理由は、

「……いつか、彼女に再会して共に生活をした際、良き夫でいたいから今から訓練をしておきたい」

 だそうだ。逆にあまり慣れていたら、彼女が嫌がらないだろうかとも思ったが、まぁ彼の彼女……妻になるくらいの女性だ、きっと感覚が似ているのだろう。いずれにしても、あたしが立ち入る事ではない。

「お早うございます」

 粋蓮がやって来た。今日も浮世離れしたした美しさだ。さて、初めて一緒に住むと言われてから今日で二週間が経つ。朝ご飯を食べながら、経緯を降り返ってみよう。
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