23 / 51
第六話
(仮初)新米夫婦のお仕事な毎日……のスタート 【一】
しおりを挟む
ご飯をよそう、普通よりやや多めに。自分の分は軽く一膳、そして……
「俺の分は大盛りな!」
背後から聞こえる日比谷の声。
「分かってますよ。成人男性用のお茶椀に山盛りが良いんでしょう?」
「そう、それ。アニメで見た昔話みたいに」
「はいはい。じゃあ、ご飯とお箸とそこにある御味噌汁、トレイに乗せて運んでくださいます?」
「へいへい、と。今日の味噌汁は玉ねぎか」
何だかんだと手伝ってくれる日比谷なのだ。白米の盛り方に拘りがあるようだが、同じ量なら……と、どんぶりによそって出したら抗議された。それも初日に。
今朝のメインは鮭の西京漬けを焼いたものだ。粋蓮と日比谷が二匹ずつ、あたしは一匹。それとキャベツと人参を蒸して酢醤油で頂く。それらをトレイに入れてリビングに運んで行く。後は三人分の緑茶を淹れて、間もなくやってくるであろう粋蓮の登場を待つ。
これが、紫柳家の鑑定日、つまり仕事がある日の朝の光景である。食事は、ごく簡単なもので良いから、と言うのであたしが三食用意。洗い物は粋蓮か日比谷がやってくれる。夫婦として一緒に住むのだから、と。水道光熱費や食事その他の必要経費全て粋蓮が持つというので、家事の一切はあたしが引き受けた。はっきり言って三人分など作った事はないし、料理も掃除も苦手だが。たんまりとお給料を頂いている上に家賃も食費も水道光熱費もかからないのはさすがに申し訳ないからだ。
健康な者なら、働かざる者食うべからずだ。家事なんて、本当はやりたくない、かなりやりたくない、物凄ーくやりたくない、これが本音だ。
因みに、誤解のないように言っておこう。一緒に住んではいるが、寝室は見事に別々である。彼は一階、あたしは二階、日比谷は自分の事務所兼自宅だ。また、ゴミ出しも粋蓮、たまに日比谷がやってくれる。これは勿論、あたしたちが夫婦になったから、良き夫として……などではない。まぁ、世間的に見て夫婦である事のパフォーマンスもあるが、一番の理由は、
「……いつか、彼女に再会して共に生活をした際、良き夫でいたいから今から訓練をしておきたい」
だそうだ。逆にあまり慣れていたら、彼女が嫌がらないだろうかとも思ったが、まぁ彼の彼女……妻になるくらいの女性だ、きっと感覚が似ているのだろう。いずれにしても、あたしが立ち入る事ではない。
「お早うございます」
粋蓮がやって来た。今日も浮世離れしたした美しさだ。さて、初めて一緒に住むと言われてから今日で二週間が経つ。朝ご飯を食べながら、経緯を降り返ってみよう。
「俺の分は大盛りな!」
背後から聞こえる日比谷の声。
「分かってますよ。成人男性用のお茶椀に山盛りが良いんでしょう?」
「そう、それ。アニメで見た昔話みたいに」
「はいはい。じゃあ、ご飯とお箸とそこにある御味噌汁、トレイに乗せて運んでくださいます?」
「へいへい、と。今日の味噌汁は玉ねぎか」
何だかんだと手伝ってくれる日比谷なのだ。白米の盛り方に拘りがあるようだが、同じ量なら……と、どんぶりによそって出したら抗議された。それも初日に。
今朝のメインは鮭の西京漬けを焼いたものだ。粋蓮と日比谷が二匹ずつ、あたしは一匹。それとキャベツと人参を蒸して酢醤油で頂く。それらをトレイに入れてリビングに運んで行く。後は三人分の緑茶を淹れて、間もなくやってくるであろう粋蓮の登場を待つ。
これが、紫柳家の鑑定日、つまり仕事がある日の朝の光景である。食事は、ごく簡単なもので良いから、と言うのであたしが三食用意。洗い物は粋蓮か日比谷がやってくれる。夫婦として一緒に住むのだから、と。水道光熱費や食事その他の必要経費全て粋蓮が持つというので、家事の一切はあたしが引き受けた。はっきり言って三人分など作った事はないし、料理も掃除も苦手だが。たんまりとお給料を頂いている上に家賃も食費も水道光熱費もかからないのはさすがに申し訳ないからだ。
健康な者なら、働かざる者食うべからずだ。家事なんて、本当はやりたくない、かなりやりたくない、物凄ーくやりたくない、これが本音だ。
因みに、誤解のないように言っておこう。一緒に住んではいるが、寝室は見事に別々である。彼は一階、あたしは二階、日比谷は自分の事務所兼自宅だ。また、ゴミ出しも粋蓮、たまに日比谷がやってくれる。これは勿論、あたしたちが夫婦になったから、良き夫として……などではない。まぁ、世間的に見て夫婦である事のパフォーマンスもあるが、一番の理由は、
「……いつか、彼女に再会して共に生活をした際、良き夫でいたいから今から訓練をしておきたい」
だそうだ。逆にあまり慣れていたら、彼女が嫌がらないだろうかとも思ったが、まぁ彼の彼女……妻になるくらいの女性だ、きっと感覚が似ているのだろう。いずれにしても、あたしが立ち入る事ではない。
「お早うございます」
粋蓮がやって来た。今日も浮世離れしたした美しさだ。さて、初めて一緒に住むと言われてから今日で二週間が経つ。朝ご飯を食べながら、経緯を降り返ってみよう。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
言祝ぎの子 ー国立神役修詞高等学校ー
三坂しほ
キャラ文芸
両親を亡くし、たった一人の兄と二人暮らしをしている椎名巫寿(15)は、高校受験の日、兄・祝寿が何者かに襲われて意識不明の重体になったことを知らされる。
病院へ駆け付けた帰り道、巫寿も背後から迫り来る何かに気がつく。
二人を狙ったのは、妖と呼ばれる異形であった。
「私の娘に、近付くな。」
妖に襲われた巫寿を助けたのは、後見人を名乗る男。
「もし巫寿が本当に、自分の身に何が起きたのか知りたいと思うのなら、神役修詞高等学校へ行くべきだ。巫寿の兄さんや父さん母さんが学んだ場所だ」
神役修詞高等学校、そこは神役────神社に仕える巫女神主を育てる学校だった。
「ここはね、ちょっと不思議な力がある子供たちを、神主と巫女に育てるちょっと不思議な学校だよ。あはは、面白いよね〜」
そこで出会う新しい仲間たち。
そして巫寿は自分の運命について知ることとなる────。
学園ファンタジーいざ開幕。
▼参考文献
菅田正昭『面白いほどよくわかる 神道のすべて』日本文芸社
大宮司郎『古神道行法秘伝』ビイングネットプレス
櫻井治男『神社入門』幻冬舎
仙岳坊那沙『呪い完全マニュアル』国書刊行会
豊嶋泰國『憑物呪法全書』原書房
豊嶋泰國『日本呪術全書』原書房
西牟田崇生『平成新編 祝詞事典 (増補改訂版)』戎光祥出版
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART4 ~双角のシンデレラ~
朝倉矢太郎(BELL☆PLANET)
キャラ文芸
復活した魔王の恐るべき強さの前に、敗走を余儀なくされた鶴と誠。
このままでは、日本列島が粉々に砕かれてしまう。
果たして魔王ディアヌスを倒し、魔の軍勢を打ち倒す事ができるのか!?
この物語、必死で日本を守ります!

こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
妹しか見ない家族と全てを諦めた私 ~全てを捨てようとした私が神族の半身だった~
夜野ヒカリ
恋愛
高校2年生と1年生の姉妹、姫野咲空と姫野美緒の相貌や雰囲気は姉妹とは思えない程にかけ離れている。
その原因は姉の咲空の顔にある大きな火傷の痕と、それを隠すために垂らした長い前髪。そして、咲空が常に表情なく重い空気を纏っていることであろう。
妹の美緒は白百合のように美しい少女であるのに……。
咲空の顔の火傷は美緒の“半身”たる神族、神狐族の朋夜が付けたものである。
しかし、それを咎める者はいない。朋夜が神族で、美緒がその半身だから。
神族──それは、伊邪那岐命と伊邪那美命が日本列島を去る際に、島々の守護を任された一族で神術という不思議な術を有する。
咲空はその炎に焼かれたのだ。
常に妹を優先しなければならない生活、、そんな生活に疲れきり、唯一の宝物である祖母の遺品を壊されたことで希望を失った咲空は、全てを捨てようと凍てつく河へと身を投げた。
そんな咲空を救ったのは、咲空のことを自らの半身であるという、最高位の神族。
咲空はその神族の元で幸せを手にすることができるのか?
そして、家族が咲空を冷遇していた裏に隠された悲しい真実とは──?
小説家になろう様でも投稿しております。
3/20 : Hotランキング4位
3/21 : Hotランキング1位
たくさんの応援をありがとうございます(*^^*)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる