ツクヨミ様の人間見習い

大和撫子

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第四話

狛……兎???【六】

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「……ま、占いの腕は確かなんだし、後は接客だな」

 日比谷はそう言って二ッと笑った、白い歯が眩しい。イケメンとはこう言った笑い方をしてもサマになるのだと感じた。

 まぁ、彼の立ち位置は差し詰めツクヨミ様の狛犬ならぬ狛兎…といったところか。まぁ、狛犬とか狛狐とかなら二匹いると思うのだけど。何故か狛兎……と思い浮かんだ。

「それは、有難うございます。でもその会話や社交術の方が商売としたら重要というか」

 本当、問題はこれだと思う。

「その辺りは、場数を踏んで慣れるしかないと思うぞ。必ずしも生まれつき会話術に長けているという奴ばかりが接客に向いているとも限らない、というしな。会話術というか、『聞き上手の話し下手』というタイプが営業に成功したり、なんて話もよくあるしな」

「あぁ……確かによく聞きますけど随分とお詳しいのですね、人間の事というか、今の日本の事」
 
 神様って古代のイメージなのよね。でもって偉そうというか。

「まぁ、しばらく人間として暮らして行くには色々知っておかないといけないしな。人間受け……特に女子おなご受けしそうな容姿とか」
「では、西洋人系にしたのは計算して?」
「おう! そこは粋蓮様が和風だから被らないように、てとこだな」

 そうだ、この機会に疑問点を聞いてしまおう!

「なるほど。ところで、住民票とか戸籍上の問題とかはどうなさっているのです? やっぱり、神様的な事情で魔法みたいに解決してたりします?」
「まぁ、そうだな。そこは死神総本山の鬼籍担当のところと相談して、この世とあの世と、うまーく調整して貰ってある」

 ん? 奇跡? 軌跡? でも死神総本山……なら鬼籍か。

「それって、神様が上手く調整した、て意味ですか?」
「まぁ、平たく言うとそうだな。この辺り、その内鑑定で関わるかも知れんな」

 意味有り気にニヤリと笑う。ゾクリと背筋が寒くなった。あたし……

「お前さん、怖いの苦手だもんなぁ。だから、観音堂家に生まれたけれども霊能力なんぞなくて良かった、と思っている。だけど、粋蓮様のパートナーとして仕事をするなら、クライアントは人間だけではないからなぁ」

 ふふん、と彼は鼻で笑うと面白そうにあたしを見つめた。

「……えっ?……」

 聞いて……ない……。思考停止、絶句した。
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