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第二十話
恵茉、新しい仕事を覚える・その一
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二日間のオフは、自由気ままに過ごせた。更には、書き始めたブログ「見習い魔女スモールリリス』で早速何件か悪魔に質問をしてくれるコメントが入ったのだ。有り難い。
そんな訳で、ベリアルが迎えに来る10時が待ち遠しかった。時刻は午前9時過ぎ。取りあえず、テレビでもつける事にした。
『今、女子中高生に流行っている御呪いがあるんです!それは…』
渋谷の某広場で、女性リポーターが道行く女子中高生にマイクを向ける。マイクを向けられたのは女子中学生3人組のようだ。
『せーの、お願い!ホワイトエンジェル。叶えてブラックエンジェル』
と声を揃えて答える。
『それは何ですか?』
とリポーターが問う。何でも、ホワイトエンジェルは優しい天使様で、午前4時44分44秒に自室を中心に見て南西の場所で真っ白なシーツで全身を覆い、例えば、
『ホワイトエンジェル様、〇〇君と付き合いたいです。お願いします!フルネーム、生年月日、住所』
と唱えると白い天使が願いを叶えてくれるらしい。因みに、ブラックエンジェルは怒らせると怖い天使様だが、ホワイトエンジェルより強力な魔力を持つ。不倫や略奪、呪い、ライバルの失脚を願う等の反モラルな願い事であればあるほど効果を発揮するらしい。
午後4時44分44秒に自室を中心に見て北東の場所で真っ黒なシーツで全身を覆い
『ブラックエンジェル様、〇〇君を〇〇から奪い取りたいです。叶えて下さい!フルネーム、生年月日、住所』
と唱えると黒い天使が願いを叶えてくれるらしい。ホワイトエンジェルは無償でお願いを叶えてくれるが、ブラックエンジェルは叶えて貰う代わりに何か差し出さないと願いが叶って66日後はその願いはまた元に戻ってしまうらしい。
『その、代わりに何かを差し出す、の何かとは?』
リポーターが突っ込む。
『自分が大事にしているものなら何でも良くって、その代わりに差し出すものが気に入れば願いを叶えてくれるらしいです。少し気に入れば一部だけ叶えてくれたり』
……へぇ、コレってまさに、悪魔との契約じゃない? まぁ殆どヤラセなんだろうけどさ……
と恵茉が思った瞬間、
「どうした? 時間だが」
と部屋の中央にベリアルが現れた。
「わわ! もうこんな時間??」
恵茉は慌てて時計を見る。時間は10時1分。
「ごめん、準備万端だったんだけど、つい、テレビに見入ってしまったわ」
と答えて立ち上がった。
「ん? おっ!ちょうど良い。今日はお前に新しい仕事を覚えて貰うんだが、少しこれと関連があるんだ。直接は関係無いがな」
とベリアルはテレビを見てニヤリと笑う。
「えっ? どう言う事?」
恵茉は首をかしげる。
何やら上機嫌のベリアルである。
「午前4時44分44秒。まぁ時間は良いとして……天使が裏鬼門(南西)で願いを叶えるとか笑えるわな。それ以前に、まずあの天使どもが……まぁ良い、これについては直接天使から説明を聞いた方が説得力あるだろう」
と話を区切るベリアルに
「えー! 悪魔側の意見も聞きたいじゃない!」
と口を尖らせる。
「天使が説明した後に、こちら側の意見を述べるさ」
と恵茉の頭を撫で、言葉を続けた。
「ブラックエンジェルなぁ、魔族か妖・幽界のあたりか。反モラルな願い事であればあるほど効果を発揮する。
まぁ、代償が気に入れば、て感じか。逢魔が時に鬼門(北東)でプロテクションのローブ代わりに黒いシーツ。
宣言してフルネーム、生年月日に住所か。簡単な「悪魔召喚術」だな。差し出された代償が気に入れば願いを叶えてやる、てヤツだ」
と話を纏めた。
「で、誰が仕掛けたの?」
恵茉は興味津々の様子だ。
「俺達の誘いに乗った人間だなー」
ベリアルは再びニヤリと笑った。
「その人間は、悪魔と契約して広めてるの?」
恵茉の素朴な問い。
「それは、ケースによりけりだ。今回の件に至っては契約は交わしていない。俺たちに囁かれた人間が、自ら考え出した堕落への道標さ。言うなれば『自滅への序章』て感じか」
と冷酷な微笑を浮かべた。
…ゾクッ…恵茉は背筋が冷たくなるのを感じた。親しげに接しているが、彼が紛れもない大悪魔である事を時々垣間見る瞬間だ。
「さて、仕事場に行くか! 今の話と関連あるしな」
とベリアルは切りかえると、恵茉を抱え上げる。そして空気に溶け込むようにして消えた。
現われた先は、こじんまりとした庭つき一軒家の上空だった。紫色の屋根、淡いパステルグリーンのドアが印象的だ。
「麻布十番の駅から徒歩6分の隠れ家的『占いの館』だ」
とベリアルは説明した。
「え? 占い?? お客さんの背後で『占い師に依存しろ』て囁くの? それとも占い師に『この客を取り込め』て囁くの?」
恵茉はかなり意外な場所だった様子だ。盛んに目をパチクリさせている。
「お! なかなか鋭いじゃないか! そのどちらも仕事でやる時はあるさ。これから出てくると思う。だが、今日はそのどちらでも無い」
そこで言葉を切り、意味ありげな笑みを浮かべる。そんなベリアルに、
「何勿体ぶってるのよ? まさか! 占い師になって占え! とか言うんじゃないでしょうね?」
と詰め寄る恵茉。ベリアルは「おっ!」と言うように軽く眉を上げると
「今日のお前はなかなか鋭いな。その、まさかだ。今回の仕事は占い師だ」
と言ってニヤリと笑った。
「え……だって私、占い全く知らないし、しかも興味無いから占って貰った事もそんなに無いよ?」
そんな事をいきなり言われても、どうして良いか分からない恵茉であった。
そんな訳で、ベリアルが迎えに来る10時が待ち遠しかった。時刻は午前9時過ぎ。取りあえず、テレビでもつける事にした。
『今、女子中高生に流行っている御呪いがあるんです!それは…』
渋谷の某広場で、女性リポーターが道行く女子中高生にマイクを向ける。マイクを向けられたのは女子中学生3人組のようだ。
『せーの、お願い!ホワイトエンジェル。叶えてブラックエンジェル』
と声を揃えて答える。
『それは何ですか?』
とリポーターが問う。何でも、ホワイトエンジェルは優しい天使様で、午前4時44分44秒に自室を中心に見て南西の場所で真っ白なシーツで全身を覆い、例えば、
『ホワイトエンジェル様、〇〇君と付き合いたいです。お願いします!フルネーム、生年月日、住所』
と唱えると白い天使が願いを叶えてくれるらしい。因みに、ブラックエンジェルは怒らせると怖い天使様だが、ホワイトエンジェルより強力な魔力を持つ。不倫や略奪、呪い、ライバルの失脚を願う等の反モラルな願い事であればあるほど効果を発揮するらしい。
午後4時44分44秒に自室を中心に見て北東の場所で真っ黒なシーツで全身を覆い
『ブラックエンジェル様、〇〇君を〇〇から奪い取りたいです。叶えて下さい!フルネーム、生年月日、住所』
と唱えると黒い天使が願いを叶えてくれるらしい。ホワイトエンジェルは無償でお願いを叶えてくれるが、ブラックエンジェルは叶えて貰う代わりに何か差し出さないと願いが叶って66日後はその願いはまた元に戻ってしまうらしい。
『その、代わりに何かを差し出す、の何かとは?』
リポーターが突っ込む。
『自分が大事にしているものなら何でも良くって、その代わりに差し出すものが気に入れば願いを叶えてくれるらしいです。少し気に入れば一部だけ叶えてくれたり』
……へぇ、コレってまさに、悪魔との契約じゃない? まぁ殆どヤラセなんだろうけどさ……
と恵茉が思った瞬間、
「どうした? 時間だが」
と部屋の中央にベリアルが現れた。
「わわ! もうこんな時間??」
恵茉は慌てて時計を見る。時間は10時1分。
「ごめん、準備万端だったんだけど、つい、テレビに見入ってしまったわ」
と答えて立ち上がった。
「ん? おっ!ちょうど良い。今日はお前に新しい仕事を覚えて貰うんだが、少しこれと関連があるんだ。直接は関係無いがな」
とベリアルはテレビを見てニヤリと笑う。
「えっ? どう言う事?」
恵茉は首をかしげる。
何やら上機嫌のベリアルである。
「午前4時44分44秒。まぁ時間は良いとして……天使が裏鬼門(南西)で願いを叶えるとか笑えるわな。それ以前に、まずあの天使どもが……まぁ良い、これについては直接天使から説明を聞いた方が説得力あるだろう」
と話を区切るベリアルに
「えー! 悪魔側の意見も聞きたいじゃない!」
と口を尖らせる。
「天使が説明した後に、こちら側の意見を述べるさ」
と恵茉の頭を撫で、言葉を続けた。
「ブラックエンジェルなぁ、魔族か妖・幽界のあたりか。反モラルな願い事であればあるほど効果を発揮する。
まぁ、代償が気に入れば、て感じか。逢魔が時に鬼門(北東)でプロテクションのローブ代わりに黒いシーツ。
宣言してフルネーム、生年月日に住所か。簡単な「悪魔召喚術」だな。差し出された代償が気に入れば願いを叶えてやる、てヤツだ」
と話を纏めた。
「で、誰が仕掛けたの?」
恵茉は興味津々の様子だ。
「俺達の誘いに乗った人間だなー」
ベリアルは再びニヤリと笑った。
「その人間は、悪魔と契約して広めてるの?」
恵茉の素朴な問い。
「それは、ケースによりけりだ。今回の件に至っては契約は交わしていない。俺たちに囁かれた人間が、自ら考え出した堕落への道標さ。言うなれば『自滅への序章』て感じか」
と冷酷な微笑を浮かべた。
…ゾクッ…恵茉は背筋が冷たくなるのを感じた。親しげに接しているが、彼が紛れもない大悪魔である事を時々垣間見る瞬間だ。
「さて、仕事場に行くか! 今の話と関連あるしな」
とベリアルは切りかえると、恵茉を抱え上げる。そして空気に溶け込むようにして消えた。
現われた先は、こじんまりとした庭つき一軒家の上空だった。紫色の屋根、淡いパステルグリーンのドアが印象的だ。
「麻布十番の駅から徒歩6分の隠れ家的『占いの館』だ」
とベリアルは説明した。
「え? 占い?? お客さんの背後で『占い師に依存しろ』て囁くの? それとも占い師に『この客を取り込め』て囁くの?」
恵茉はかなり意外な場所だった様子だ。盛んに目をパチクリさせている。
「お! なかなか鋭いじゃないか! そのどちらも仕事でやる時はあるさ。これから出てくると思う。だが、今日はそのどちらでも無い」
そこで言葉を切り、意味ありげな笑みを浮かべる。そんなベリアルに、
「何勿体ぶってるのよ? まさか! 占い師になって占え! とか言うんじゃないでしょうね?」
と詰め寄る恵茉。ベリアルは「おっ!」と言うように軽く眉を上げると
「今日のお前はなかなか鋭いな。その、まさかだ。今回の仕事は占い師だ」
と言ってニヤリと笑った。
「え……だって私、占い全く知らないし、しかも興味無いから占って貰った事もそんなに無いよ?」
そんな事をいきなり言われても、どうして良いか分からない恵茉であった。
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