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第二話
縁結びの当て馬令嬢③
しおりを挟む 恋愛ファンタジー小説『恋獄の花園、愛の光』(R18)の世界は魔法が当たり前のように存在し、精霊や聖獣、魔物呪術、魔術師や精霊使いなどが共存してる異世界である。魔法の力でガスレンジのように火を起こしたり、浴槽に水を貯めたり、室内の温度を調節したりする『生活魔法』は初級魔法の類に入り、一般家庭にも浸透している。もし魔法が使えなくても、『魔法石』を砕いて使えば生活魔法に使用出来るので『魔法石』は必需品となっている。貴族や皇族の公務の一つに、この『魔法石』の作成と流通の役割が課せられている。
この世界は六つの国で成立していた。
①太陽と光や明り、炎、楽しみ、希望や情熱、繁栄や栄光などを司る彩光界、アスピラシオン帝国。この物語の舞台である。
※もちろん光だけの国ではない。夜も普通に訪れる。ただ他国より朝昼の時間が少し長い。
②夜と闇、安らぎや眠る際に見る夢、ヒーリングなどを司る夢夜界、アマーネセル王国。
※勿論夜だけの国ではない。朝昼も普通に来る。ただ少し他国より夕暮れから夜明けまでが長い。
③あらゆる風、空気、変化変容、広がり、交流、均衡などを司る風空界、レイラ王国。
※勿論風だけの世界ではない。ただ少し他国より風は多く吹く。
④あらゆる花や花木、樹木、植物、優雅、薫り、美しさ、繁殖などを司る花緑界、グリューン王国。
※勿論花や植物だけの世界ではない。ただ、他国よりはかなり花と緑が多い。
⑤大地と鉱物、宝石、土台、安定、知性などを司る宝土界、グランツ王国。
※勿論大地と鉱物だけの世界ではない。ただ少し他国より土と鉱物は多めである。
⑥あらゆる水、川、海、泉、湖、滝、インスピレーション、浄化、慈しみ、情、命の誕生などを司る水命界、マナンティアール王国。
※勿論水だけの国ではない。ただ少し他国より川や海、湖、泉などは多めである。
以上の六つの国で出来ているという。更に、アスピラシオン帝国を中心に五つの国が成り立っており、五つの内どの国が秀でてるとか上下が無いよう、各国で不可侵条約と和平条約とやらを交わして平和のバランスを保っているようだ。その均衡を保ち監視する役目を絶大な力と豊かさを誇る帝国、即ちカレンデュラ皇族が担ってきたという。
特筆すべきはこの六つの国を全体で見ると……。蒼穹が広がる中、純白の雲海の中に帝国を中心に六つの国がまとまっている。その国全てを包み込むようにして淡い虹色の膜に丸く包み込まれているのだ。いわば、イメージとしてはシャボン玉の中にまとまった六つの国、そんな感じらしい。
カレンデュラ一族……その特徴は髪の色は様々であるが、代々金色の瞳を受け継ぐという性質があった。更に付け加えれば、人心掌握に長け文武両道で容姿端麗、強力な魔力を持つ事も共通していた。
前述の通り第一皇太子もその例に漏れず、砂金を思わせる黄金色の髪と金色の瞳を持っていた。その繊細なまでに端正な容姿は、数多くの世の女性たちの心を鷲掴みにしている。表向きに見せる顔はとても優し気で甘さを秘めているから、殆どの人々はそれに絆されてしまうだろう。名はクラウス・リー。年の頃は十九歳、次期皇帝として国民から期待され慕われていた。
双子姉妹もそうだ、御年十四歳にして慈悲深く聡明で才色兼備……国民たちに絶大な人気を誇っていた。
それは現皇帝アレクセイ・ハワード、皇后ルクレツィア・エステルも同じだった。現皇帝皇后の類まれなる手腕で国治されているから、帝国は豊に繁栄し安定して平和でいられるのだ、と。
実際にもそうなのだろう、と作中現在12歳のアリアは思う。裏でどのように残忍で冷酷な事をしようが、表にさえバレなければ良いのだから。
皇后ルクレツィアはグランツ王国の第一王女だった。琥珀色の艶やかな髪とペリドットのような美しい瞳、真珠のような肌を持つ大層美しい人で、皇帝アレクセイの一目惚れ、熱烈なアプローチに成功しての輿入れだという。婚外子でもなく、二人の間に何故か水色の髪と何色とも表現し難い不気味な瞳を持つ女子が生まれて来てしまった。生まれた時は、「皇帝の座を狙う不届きモノの呪術に違いない」と機密裏に帝国一を誇る呪術師や魔術師、精霊使いが呼ばれ、呪いを解いてアリアの瞳の色を金色に戻そうと試行錯誤が繰り返された……が、どうあっても効果は無く。その内、アリア自身が『不吉の象徴、忌み子』とされ敬遠され始め、冷遇。血を分けた兄姉妹にはストレスの捌け口として蔑まれサンドバッグ代わりになって行った。
隠し通してもいつかは何かの形で噂になってしまう事を鑑みて、皇帝皇后はアリアを「内気で体が弱く、視力が弱い為に金色の目とならなかった」と公表。プライベートでは完全に居ないものとして扱った。名前の通り空気のように。公の場では家族仲睦まじく、取り分け全員でアリアを守り慈しみ、それこそ溺愛しているように徹底して演じた。それはアリアにも、愛情を享受しているように振る舞う事を強制した。
現に今も……
「さて、いつまでもビクビクしてはいけない、て言ってるよね? 醜いけど堂々と顔を上げて皇女としての気品にあふれた所作じゃないと」
第一皇太子クラウスは、アリアに向かって優雅に微笑んだ。
「も、申し訳ございません」
「ほら、皇族たるもの、簡単に頭を下げない。何度も教えたよね。これは……今日も愛の鞭が必要だね」
アリアは恐怖に震えた。
双子姉妹に階段かた突き落とされ、氷水を浴びせられた後……。公務が早く終わったからとアリアの元に教育という名目のストレスを発散しに来たクラウスは、使用人に後始末を頼み怯えるアリアを抱え上げそのままアリアの自室へと足を運んだ。侍女に命じてアリアを入浴させた後、ドレスアップをさせる。アルカイックスマイルを浮かべながら、散々アリアの醜さをあげつらい、萎縮させた上で自分が相手役を務め、ダンスをやらせるのだ。そんな状態で、当然のように上手く出来る訳がない。それを敢えて狙って、顔やデコルテ、首や腕、ひざ下など、衣装では隠しにくい部分を省いて鞭や木刀で打ち据えてお仕置きをするのだ。
物語の性質上、アリアは冷遇され劣悪な環境で虐げらるほど、後に出会う原作の男主人公を際立たせる為に必要な演出だった。アリアに取って、自分を救い出してくれる白馬の王子様に魅せる為に。アリアが全てを捧げ、彼への愛に殉じる為に。後に男主人公と出会う絶世の美女、原作女主人公を徹底して比較する事でヒロインを引き立てる為に。
それが、当て馬であるアリアの役柄だった。
この世界は六つの国で成立していた。
①太陽と光や明り、炎、楽しみ、希望や情熱、繁栄や栄光などを司る彩光界、アスピラシオン帝国。この物語の舞台である。
※もちろん光だけの国ではない。夜も普通に訪れる。ただ他国より朝昼の時間が少し長い。
②夜と闇、安らぎや眠る際に見る夢、ヒーリングなどを司る夢夜界、アマーネセル王国。
※勿論夜だけの国ではない。朝昼も普通に来る。ただ少し他国より夕暮れから夜明けまでが長い。
③あらゆる風、空気、変化変容、広がり、交流、均衡などを司る風空界、レイラ王国。
※勿論風だけの世界ではない。ただ少し他国より風は多く吹く。
④あらゆる花や花木、樹木、植物、優雅、薫り、美しさ、繁殖などを司る花緑界、グリューン王国。
※勿論花や植物だけの世界ではない。ただ、他国よりはかなり花と緑が多い。
⑤大地と鉱物、宝石、土台、安定、知性などを司る宝土界、グランツ王国。
※勿論大地と鉱物だけの世界ではない。ただ少し他国より土と鉱物は多めである。
⑥あらゆる水、川、海、泉、湖、滝、インスピレーション、浄化、慈しみ、情、命の誕生などを司る水命界、マナンティアール王国。
※勿論水だけの国ではない。ただ少し他国より川や海、湖、泉などは多めである。
以上の六つの国で出来ているという。更に、アスピラシオン帝国を中心に五つの国が成り立っており、五つの内どの国が秀でてるとか上下が無いよう、各国で不可侵条約と和平条約とやらを交わして平和のバランスを保っているようだ。その均衡を保ち監視する役目を絶大な力と豊かさを誇る帝国、即ちカレンデュラ皇族が担ってきたという。
特筆すべきはこの六つの国を全体で見ると……。蒼穹が広がる中、純白の雲海の中に帝国を中心に六つの国がまとまっている。その国全てを包み込むようにして淡い虹色の膜に丸く包み込まれているのだ。いわば、イメージとしてはシャボン玉の中にまとまった六つの国、そんな感じらしい。
カレンデュラ一族……その特徴は髪の色は様々であるが、代々金色の瞳を受け継ぐという性質があった。更に付け加えれば、人心掌握に長け文武両道で容姿端麗、強力な魔力を持つ事も共通していた。
前述の通り第一皇太子もその例に漏れず、砂金を思わせる黄金色の髪と金色の瞳を持っていた。その繊細なまでに端正な容姿は、数多くの世の女性たちの心を鷲掴みにしている。表向きに見せる顔はとても優し気で甘さを秘めているから、殆どの人々はそれに絆されてしまうだろう。名はクラウス・リー。年の頃は十九歳、次期皇帝として国民から期待され慕われていた。
双子姉妹もそうだ、御年十四歳にして慈悲深く聡明で才色兼備……国民たちに絶大な人気を誇っていた。
それは現皇帝アレクセイ・ハワード、皇后ルクレツィア・エステルも同じだった。現皇帝皇后の類まれなる手腕で国治されているから、帝国は豊に繁栄し安定して平和でいられるのだ、と。
実際にもそうなのだろう、と作中現在12歳のアリアは思う。裏でどのように残忍で冷酷な事をしようが、表にさえバレなければ良いのだから。
皇后ルクレツィアはグランツ王国の第一王女だった。琥珀色の艶やかな髪とペリドットのような美しい瞳、真珠のような肌を持つ大層美しい人で、皇帝アレクセイの一目惚れ、熱烈なアプローチに成功しての輿入れだという。婚外子でもなく、二人の間に何故か水色の髪と何色とも表現し難い不気味な瞳を持つ女子が生まれて来てしまった。生まれた時は、「皇帝の座を狙う不届きモノの呪術に違いない」と機密裏に帝国一を誇る呪術師や魔術師、精霊使いが呼ばれ、呪いを解いてアリアの瞳の色を金色に戻そうと試行錯誤が繰り返された……が、どうあっても効果は無く。その内、アリア自身が『不吉の象徴、忌み子』とされ敬遠され始め、冷遇。血を分けた兄姉妹にはストレスの捌け口として蔑まれサンドバッグ代わりになって行った。
隠し通してもいつかは何かの形で噂になってしまう事を鑑みて、皇帝皇后はアリアを「内気で体が弱く、視力が弱い為に金色の目とならなかった」と公表。プライベートでは完全に居ないものとして扱った。名前の通り空気のように。公の場では家族仲睦まじく、取り分け全員でアリアを守り慈しみ、それこそ溺愛しているように徹底して演じた。それはアリアにも、愛情を享受しているように振る舞う事を強制した。
現に今も……
「さて、いつまでもビクビクしてはいけない、て言ってるよね? 醜いけど堂々と顔を上げて皇女としての気品にあふれた所作じゃないと」
第一皇太子クラウスは、アリアに向かって優雅に微笑んだ。
「も、申し訳ございません」
「ほら、皇族たるもの、簡単に頭を下げない。何度も教えたよね。これは……今日も愛の鞭が必要だね」
アリアは恐怖に震えた。
双子姉妹に階段かた突き落とされ、氷水を浴びせられた後……。公務が早く終わったからとアリアの元に教育という名目のストレスを発散しに来たクラウスは、使用人に後始末を頼み怯えるアリアを抱え上げそのままアリアの自室へと足を運んだ。侍女に命じてアリアを入浴させた後、ドレスアップをさせる。アルカイックスマイルを浮かべながら、散々アリアの醜さをあげつらい、萎縮させた上で自分が相手役を務め、ダンスをやらせるのだ。そんな状態で、当然のように上手く出来る訳がない。それを敢えて狙って、顔やデコルテ、首や腕、ひざ下など、衣装では隠しにくい部分を省いて鞭や木刀で打ち据えてお仕置きをするのだ。
物語の性質上、アリアは冷遇され劣悪な環境で虐げらるほど、後に出会う原作の男主人公を際立たせる為に必要な演出だった。アリアに取って、自分を救い出してくれる白馬の王子様に魅せる為に。アリアが全てを捧げ、彼への愛に殉じる為に。後に男主人公と出会う絶世の美女、原作女主人公を徹底して比較する事でヒロインを引き立てる為に。
それが、当て馬であるアリアの役柄だった。
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