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第十二話
まさかまさかの三角関数???・その三
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(……ど、どうしよう。何か会話しないと顔から火が吹き出しそう! あ、あっ! そうだ!)
薔子は勢いよく立ち上がる。椅子がガタッと音を立てた。
「先生、お、お茶如何ですか? ココア、紅茶、緑茶、コーヒー、ありますけど」
志門は突然の行動に驚くも、直ぐに笑顔を向ける。彼女の一生懸命さが微笑ましくまた嬉しく感じた。
「有難う。じゃあ、温かい緑茶を頂こうかな」
(あー……いつ見ても素敵な笑顔……)
「はい、すぐ煎れますね」
すぐ後ろのミニ冷蔵庫から粉緑茶を取り出す。そしてその隣にある食器棚からスプーンを、続いて深緑色の湯飲みを取り出した。
「濃い味と薄め、どちらがお好みですか?」
「濃い方が良いな」
「あ、私も濃い方が好きです」
「苦味が癖になるよね」
「ですね、はい、どうぞ」
「有難う」
そのやり取りで、いつの間にか場の空気が和んでいた。ゆっくりと緑茶を口にする志門。
「美味しいよ。やっぱり濃い緑茶は良いね」
「良かった」
志門はふと思いついたように薔子を見つめる。
「そう言えばさ、その……名前なんだけど、二人だけの時は『先生』、は辞めない?」
「あ……でも、何てお呼びしたら……」
「志門、で良いよ」
「い、いきなり呼び捨てはハードル高いです。来栖さ……ん、とか?」
はにかんで顔を伏せ、自然に上目遣いに彼女を可愛らしいと感じつつ
「ハードルが高いかぁ。でもそれだと堅苦しいな、じゃあ志門さん、でどうかな?」
「し、志門……さん」
「そうそう。その方が距離が近づいたみたいで嬉しいよ」
「慣れるように頑張ります! あ、じゃあ私の事も名前で……て、あ!」
勢いで言ってしまっ手慌てて両手で口を押さえた。
(しまった! 調子に乗りすぎた! ブスの癖に何て出過ぎた主張を……)
「本当? 実は名前で呼んでみたくてさ。有難う、嬉しいよ。じゃあ薔子ちゃん、でどうかな?」
予想に反して、本当に嬉しそうに口元を綻ばせる彼にホッと胸をなで下ろす。
「はい、あの……お好きにどうぞ」
「良かった。じゃあ、志門さんに薔子ちゃんだ」
「ですね」
フフフッと二人は同時に吹き出した。
「そしたらゲームの世界は辞めておきます」
すっかり和んだ薔子は、素直に思いを口にしていた。不思議そうに見つめる志門。
「女の子ばっかりのパーティーで、志門先……志門さんの視線が他に散乱するの、見たくないですもの」
(嫌だあたしったら、モブキャラ喪女の癖に身の程知らずな……)
内心とは裏腹に、言葉は淀みなく流れる。
「薔子ちゃん、それって……」
彼は虚を突かれたように目を見開く。だがすぐに破顔した。益々頬が紅に染まる薔子。志門はそれ以上は何も言わなかった。彼女が自分にやきもちを焼いてくれた。それだけで十分だった。
「有難う」
「え、あ、いいえ、私こそあの……」
「じゃあ、次のデートは何処に行きたい?」
そう言って柔らかく微笑む彼に、自然と心が和んでいく。
「行けるのかどうかは分からないですけど、例えばアーサー王伝説の世界に行ってみる、とか。……て、でもこれタイムスリップですから異世界とは違いますよね。じゃあアーサー王物語の中とか、かな?」
スラスラと言葉が流れていく自分に驚く。
「過去にタイムスリップか。そうだなぁ、まぁ出来ない事もないかな」
彼は考え込みながらこたえた。
薔子は勢いよく立ち上がる。椅子がガタッと音を立てた。
「先生、お、お茶如何ですか? ココア、紅茶、緑茶、コーヒー、ありますけど」
志門は突然の行動に驚くも、直ぐに笑顔を向ける。彼女の一生懸命さが微笑ましくまた嬉しく感じた。
「有難う。じゃあ、温かい緑茶を頂こうかな」
(あー……いつ見ても素敵な笑顔……)
「はい、すぐ煎れますね」
すぐ後ろのミニ冷蔵庫から粉緑茶を取り出す。そしてその隣にある食器棚からスプーンを、続いて深緑色の湯飲みを取り出した。
「濃い味と薄め、どちらがお好みですか?」
「濃い方が良いな」
「あ、私も濃い方が好きです」
「苦味が癖になるよね」
「ですね、はい、どうぞ」
「有難う」
そのやり取りで、いつの間にか場の空気が和んでいた。ゆっくりと緑茶を口にする志門。
「美味しいよ。やっぱり濃い緑茶は良いね」
「良かった」
志門はふと思いついたように薔子を見つめる。
「そう言えばさ、その……名前なんだけど、二人だけの時は『先生』、は辞めない?」
「あ……でも、何てお呼びしたら……」
「志門、で良いよ」
「い、いきなり呼び捨てはハードル高いです。来栖さ……ん、とか?」
はにかんで顔を伏せ、自然に上目遣いに彼女を可愛らしいと感じつつ
「ハードルが高いかぁ。でもそれだと堅苦しいな、じゃあ志門さん、でどうかな?」
「し、志門……さん」
「そうそう。その方が距離が近づいたみたいで嬉しいよ」
「慣れるように頑張ります! あ、じゃあ私の事も名前で……て、あ!」
勢いで言ってしまっ手慌てて両手で口を押さえた。
(しまった! 調子に乗りすぎた! ブスの癖に何て出過ぎた主張を……)
「本当? 実は名前で呼んでみたくてさ。有難う、嬉しいよ。じゃあ薔子ちゃん、でどうかな?」
予想に反して、本当に嬉しそうに口元を綻ばせる彼にホッと胸をなで下ろす。
「はい、あの……お好きにどうぞ」
「良かった。じゃあ、志門さんに薔子ちゃんだ」
「ですね」
フフフッと二人は同時に吹き出した。
「そしたらゲームの世界は辞めておきます」
すっかり和んだ薔子は、素直に思いを口にしていた。不思議そうに見つめる志門。
「女の子ばっかりのパーティーで、志門先……志門さんの視線が他に散乱するの、見たくないですもの」
(嫌だあたしったら、モブキャラ喪女の癖に身の程知らずな……)
内心とは裏腹に、言葉は淀みなく流れる。
「薔子ちゃん、それって……」
彼は虚を突かれたように目を見開く。だがすぐに破顔した。益々頬が紅に染まる薔子。志門はそれ以上は何も言わなかった。彼女が自分にやきもちを焼いてくれた。それだけで十分だった。
「有難う」
「え、あ、いいえ、私こそあの……」
「じゃあ、次のデートは何処に行きたい?」
そう言って柔らかく微笑む彼に、自然と心が和んでいく。
「行けるのかどうかは分からないですけど、例えばアーサー王伝説の世界に行ってみる、とか。……て、でもこれタイムスリップですから異世界とは違いますよね。じゃあアーサー王物語の中とか、かな?」
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「過去にタイムスリップか。そうだなぁ、まぁ出来ない事もないかな」
彼は考え込みながらこたえた。
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