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第十一話
まさかのモテ期突入か?!……ナンテネ・その四
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「モグちゃん、よく食べてよく寝るねぇ」
眠る前に、薔子はケージの中にいる子どものモルモットに話し掛ける。彼は牧草入れの牧草を夢中になって食べていた。
あれから薔子と蕾は帰宅してすぐに、メイドにモルモットを飼うのに必要な全てを買ってくるよう頼んだ。そして夜10時過ぎに全員揃った際、モルモットについて家族会議を行った。
「あらぁ、可愛いじゃない。それにしても、捨てモルモットなんて珍しいわね。これは御縁だと思うのよ」
瞳を輝かせる麗華。
「そう言えば、ウチはペット飼った事無かったわね。皆バラバラの時間帯に朝は出てくし、帰宅するもんだから。結局メイドに任せるか、ペットシッター雇わないといけないから」
思案顔の母親に、蕾がねだる。
「ねぇ、飼って良いでしょ?」
「仕方ないわね」と苦笑する母親に、デレデレと鼻の下を伸ばす父親。
「まぁ、モルモットはペット初心者には飼いやすいというし、良いんじゃないか」
「わぁい、パパ、ママ、有り難う」
蕾は父親に抱きついた。
(あーあ。結局私が面倒見るコース決定じゃん。皆、蕾には甘いんだから……て私もか)
薔子は予想通りの展開に覚悟を決める。
「差し当たり、薔子が一番時間に自由がきく訳だから、お願いして良いかしらね?」
(そら、きた。なんたかんだ面倒ごと私に押しつけるんだから)
「うん、勿論だよ」
当然のように問いかける母親に愛想良くこたえる。
「有り難う、お姉ちゃん。ね、名前どうしようか!」
「そうよ、名前よ」
はしゃぐ蕾と麗華。
「面倒見てくれるのが殆どなんだから、薔子が名前つければ良いんじゃない?」
麗華は思いついたように提案する。
「あ、そだね!」「あなたたちがそれで良いなら」「良いんじゃないか?」
蕾も母も父も直ぐに賛同を示す。薔子は家族のそんなところが好きだった。
「……で、私たちが周りでワイワイ言ってても気にせず、モグモグモグモグ牧草を食べてるのをみて、『モグ』て名付けなんだよね」
とペットに話し掛けた。薔子の部屋の机の隣に緑色のシートを敷き、キャスター付きの金網ケージを置いていた。中には牧草入れの他に固形餌の皿、小動物用ウォーターサーバー、隠れ家が置かれている。ケージは横と高さが60cm、縦が40cm程だろうか。薔子の右手には、『初めて飼うモルモット』という写真付き飼育本を持っている。
モルモットは不意に薔子を見つめ、目の前にやってきた。
「クセモノ、クル」
「え?」
高く可愛らしい声で、モグが何か話した気がした。ケージの扉を開けて、まじまじとモルモットを見る。モグは無邪気に固形の餌を食べ始めた。
「やっぱり気のせいよね。きっと、プイプイって鳴いたんだわ。モルモットは臆病で初めてのお家は慣れるまで隠れ家に籠もったまま、て書いてあったけど、全然物怖じしない人懐こい子ね。……お休み、また明日ね」
薔子はそう語りかけると、ベッドに向かった。
そこは二十畳程の広さに、木目が優しいフローリングの部屋。ミニシアター程の大きさのテレビに、象牙色の壁、大きな窓には、白いレースとワインカラーのカーテンを二重に閉めてある。
部屋の中央には、ゆったりとした長方形の白い大理石のテーブルが。その前に、テレビと向かい合うようにしてボルドー色の皮のソファが置かれてた。それはシングルベッドのような大きさでフカフカとしており、そのまま眠ってしまえそうだ。
「さてと、姫君はお休みの時間か。では、今宵もお迎えに行くとするかな」
ソファの肘掛けに長い足を投げ出すようにして横にはなっていたアドニスは、微笑みと共に呟くとそのまま軽く目を閉じた。
彼が目を閉じると、そこは美しい湖の畔。白馬にまたがり、白いマントをなびかせて軽快に走っていた。古代北欧の王子を思わせる服装に身を包んでいる。
少し走ると、爽やかな緑の森が見える。そこには、何やらふわふわと小さな動物と戯れる少女の姿があった。縦ロールにした黒髪に、淡い黄色のドレス、クリアピンクの細いフレームの眼鏡をした薔子だ。だが、薔子は小動物と遊ぶのに夢中で彼には全く気付かない。よく見ると、小動物はモルモット。薄茶色一匹だけではなく、白や黒、白と薄茶色の二色模様だったりと沢山のモルモットが彼女の膝や肩に乗っている。
アドニスは白馬からおり、近くの木に手綱を預けた。そして笑顔で薔子に近づく。
眠る前に、薔子はケージの中にいる子どものモルモットに話し掛ける。彼は牧草入れの牧草を夢中になって食べていた。
あれから薔子と蕾は帰宅してすぐに、メイドにモルモットを飼うのに必要な全てを買ってくるよう頼んだ。そして夜10時過ぎに全員揃った際、モルモットについて家族会議を行った。
「あらぁ、可愛いじゃない。それにしても、捨てモルモットなんて珍しいわね。これは御縁だと思うのよ」
瞳を輝かせる麗華。
「そう言えば、ウチはペット飼った事無かったわね。皆バラバラの時間帯に朝は出てくし、帰宅するもんだから。結局メイドに任せるか、ペットシッター雇わないといけないから」
思案顔の母親に、蕾がねだる。
「ねぇ、飼って良いでしょ?」
「仕方ないわね」と苦笑する母親に、デレデレと鼻の下を伸ばす父親。
「まぁ、モルモットはペット初心者には飼いやすいというし、良いんじゃないか」
「わぁい、パパ、ママ、有り難う」
蕾は父親に抱きついた。
(あーあ。結局私が面倒見るコース決定じゃん。皆、蕾には甘いんだから……て私もか)
薔子は予想通りの展開に覚悟を決める。
「差し当たり、薔子が一番時間に自由がきく訳だから、お願いして良いかしらね?」
(そら、きた。なんたかんだ面倒ごと私に押しつけるんだから)
「うん、勿論だよ」
当然のように問いかける母親に愛想良くこたえる。
「有り難う、お姉ちゃん。ね、名前どうしようか!」
「そうよ、名前よ」
はしゃぐ蕾と麗華。
「面倒見てくれるのが殆どなんだから、薔子が名前つければ良いんじゃない?」
麗華は思いついたように提案する。
「あ、そだね!」「あなたたちがそれで良いなら」「良いんじゃないか?」
蕾も母も父も直ぐに賛同を示す。薔子は家族のそんなところが好きだった。
「……で、私たちが周りでワイワイ言ってても気にせず、モグモグモグモグ牧草を食べてるのをみて、『モグ』て名付けなんだよね」
とペットに話し掛けた。薔子の部屋の机の隣に緑色のシートを敷き、キャスター付きの金網ケージを置いていた。中には牧草入れの他に固形餌の皿、小動物用ウォーターサーバー、隠れ家が置かれている。ケージは横と高さが60cm、縦が40cm程だろうか。薔子の右手には、『初めて飼うモルモット』という写真付き飼育本を持っている。
モルモットは不意に薔子を見つめ、目の前にやってきた。
「クセモノ、クル」
「え?」
高く可愛らしい声で、モグが何か話した気がした。ケージの扉を開けて、まじまじとモルモットを見る。モグは無邪気に固形の餌を食べ始めた。
「やっぱり気のせいよね。きっと、プイプイって鳴いたんだわ。モルモットは臆病で初めてのお家は慣れるまで隠れ家に籠もったまま、て書いてあったけど、全然物怖じしない人懐こい子ね。……お休み、また明日ね」
薔子はそう語りかけると、ベッドに向かった。
そこは二十畳程の広さに、木目が優しいフローリングの部屋。ミニシアター程の大きさのテレビに、象牙色の壁、大きな窓には、白いレースとワインカラーのカーテンを二重に閉めてある。
部屋の中央には、ゆったりとした長方形の白い大理石のテーブルが。その前に、テレビと向かい合うようにしてボルドー色の皮のソファが置かれてた。それはシングルベッドのような大きさでフカフカとしており、そのまま眠ってしまえそうだ。
「さてと、姫君はお休みの時間か。では、今宵もお迎えに行くとするかな」
ソファの肘掛けに長い足を投げ出すようにして横にはなっていたアドニスは、微笑みと共に呟くとそのまま軽く目を閉じた。
彼が目を閉じると、そこは美しい湖の畔。白馬にまたがり、白いマントをなびかせて軽快に走っていた。古代北欧の王子を思わせる服装に身を包んでいる。
少し走ると、爽やかな緑の森が見える。そこには、何やらふわふわと小さな動物と戯れる少女の姿があった。縦ロールにした黒髪に、淡い黄色のドレス、クリアピンクの細いフレームの眼鏡をした薔子だ。だが、薔子は小動物と遊ぶのに夢中で彼には全く気付かない。よく見ると、小動物はモルモット。薄茶色一匹だけではなく、白や黒、白と薄茶色の二色模様だったりと沢山のモルモットが彼女の膝や肩に乗っている。
アドニスは白馬からおり、近くの木に手綱を預けた。そして笑顔で薔子に近づく。
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