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第二十二話
妄想は甘く、現実はシビアで……・その一
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昼休み……。
「真凛、何だか最近楽しそうだね。髪も艶々だし」
沙耶は真凛の髪を見つめながら言った。
「そう言えば、何だかお肌もプルプルになってきてない?」
千賀子はまじまじと真凛を見る。
「え? あ、そう? 最近やっと気をつけるようになったからかな。今までが無頓着過ぎたからね」
真凛は正直に話し、苦笑した。
「あ、ねぇねぇ、もしかして好きな人が出来た、とか?」
「あー、うんうん、有り得る」
二人は身を乗り出し、目を輝かせた。
「あはは、まさか! ないない。ただ部活でね、自分に向き合って受容していく、という稽古の一環があって。それで最初の課題が、自分の容姿を褒める、ていうものなんだよ。自分の容姿は気に入らなくても褒める、てやつ。それで、否が応でも自分の顔見ないといけなくてさ。で、今までろくに手入れをしてなかったのに今更気づいて。それで少し手入れをするようになった、て感じなんだ。手入れ、と言ってもやっと人並みにするようになった、てだけかな」
(というか、自分の顔なんか出来れば見たくないんだよね。だって見たらげんなりするもん。鏡なんか見ない方が、自分を美化出来るし。妄想の余地があるもんね。というか、私が誰かを好きになったらその人が迷惑しちゃうし。第一、私が万が一恋愛しても、だ。端から失恋か片想いで終わるっしょ)
心の中では酷く自虐しながらも、明るくこたえる。
「え? なんだかすごい課題だねぇ」
千賀子は気の毒そうに言う。
「あ、なんかね、色んな役柄をやれるようになるには、まずは自己一致と自己受容が必要なんだって。だから喜怒哀楽も感情の練習とかもしていくみたい」
「えー? 何それ、しんどそう」
「うん、トラウマにぶち当たる時は吐いたり大泣きしたりする場合もあるんだって。けど、高校性の部活動の一環としてはそこまで専門的にやるのは危険だからそんなにハードじゃないみたいだけど」
千賀子と真凛の会話を興味深そうに聞いていた沙耶は何かを思い付いたように眉をあげた。
「あ、そういえば聞いた事ある。前テレビでやってたんだ。笑う練習とか泣く練習とか怒る練習とかするんでしょ?」
「うん、そうみたい、取りあえずは一週間、自分の容姿と向き合ってからやっていくって」
「なんだか大変だね。普通に走ったり筋トレとかストレッチもするんでしょ?」
「うん、運動部みたいにハードじゃないけど、それなりに」
真凛と沙耶の会話を聞きながら千賀子は何かを思い出したようだ。二人の会話が途切れるのを待つ。そして頃合いを見計らって会話に加わった。
「……あ、ねぇねぇ、そういえばさ、演劇部の三年。半年くらいバレエでロシアに留学してた先輩らしんだけど、帰国したらしいね。すっごい美人でバレエの天才少女とか言われてるらしい。演劇部の部長さんの彼女、て噂なんだけどさ、真凛は何か聞いてる?」
(……部長に彼女さん、そうだよね、居て当たり前だよね……)
「へぇ? そうなんだ? まぁ部長に限らず、演劇部の先輩たち美形揃いだし、お相手がいてもおかしくないと思うけどね」
真凛は平静を装いながらもかなりショックを受けた事を自覚した。
「へぇ? ロシアに留学していた天才バレエ少女かぁ。しかも美少女、なんだか少女漫画に出てきそうだねぇ」
沙耶は目を輝かせる。真凛はガーンと頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた事を二人に悟られぬ内に、早く昼休みが終わる事を願った。
「真凛、何だか最近楽しそうだね。髪も艶々だし」
沙耶は真凛の髪を見つめながら言った。
「そう言えば、何だかお肌もプルプルになってきてない?」
千賀子はまじまじと真凛を見る。
「え? あ、そう? 最近やっと気をつけるようになったからかな。今までが無頓着過ぎたからね」
真凛は正直に話し、苦笑した。
「あ、ねぇねぇ、もしかして好きな人が出来た、とか?」
「あー、うんうん、有り得る」
二人は身を乗り出し、目を輝かせた。
「あはは、まさか! ないない。ただ部活でね、自分に向き合って受容していく、という稽古の一環があって。それで最初の課題が、自分の容姿を褒める、ていうものなんだよ。自分の容姿は気に入らなくても褒める、てやつ。それで、否が応でも自分の顔見ないといけなくてさ。で、今までろくに手入れをしてなかったのに今更気づいて。それで少し手入れをするようになった、て感じなんだ。手入れ、と言ってもやっと人並みにするようになった、てだけかな」
(というか、自分の顔なんか出来れば見たくないんだよね。だって見たらげんなりするもん。鏡なんか見ない方が、自分を美化出来るし。妄想の余地があるもんね。というか、私が誰かを好きになったらその人が迷惑しちゃうし。第一、私が万が一恋愛しても、だ。端から失恋か片想いで終わるっしょ)
心の中では酷く自虐しながらも、明るくこたえる。
「え? なんだかすごい課題だねぇ」
千賀子は気の毒そうに言う。
「あ、なんかね、色んな役柄をやれるようになるには、まずは自己一致と自己受容が必要なんだって。だから喜怒哀楽も感情の練習とかもしていくみたい」
「えー? 何それ、しんどそう」
「うん、トラウマにぶち当たる時は吐いたり大泣きしたりする場合もあるんだって。けど、高校性の部活動の一環としてはそこまで専門的にやるのは危険だからそんなにハードじゃないみたいだけど」
千賀子と真凛の会話を興味深そうに聞いていた沙耶は何かを思い付いたように眉をあげた。
「あ、そういえば聞いた事ある。前テレビでやってたんだ。笑う練習とか泣く練習とか怒る練習とかするんでしょ?」
「うん、そうみたい、取りあえずは一週間、自分の容姿と向き合ってからやっていくって」
「なんだか大変だね。普通に走ったり筋トレとかストレッチもするんでしょ?」
「うん、運動部みたいにハードじゃないけど、それなりに」
真凛と沙耶の会話を聞きながら千賀子は何かを思い出したようだ。二人の会話が途切れるのを待つ。そして頃合いを見計らって会話に加わった。
「……あ、ねぇねぇ、そういえばさ、演劇部の三年。半年くらいバレエでロシアに留学してた先輩らしんだけど、帰国したらしいね。すっごい美人でバレエの天才少女とか言われてるらしい。演劇部の部長さんの彼女、て噂なんだけどさ、真凛は何か聞いてる?」
(……部長に彼女さん、そうだよね、居て当たり前だよね……)
「へぇ? そうなんだ? まぁ部長に限らず、演劇部の先輩たち美形揃いだし、お相手がいてもおかしくないと思うけどね」
真凛は平静を装いながらもかなりショックを受けた事を自覚した。
「へぇ? ロシアに留学していた天才バレエ少女かぁ。しかも美少女、なんだか少女漫画に出てきそうだねぇ」
沙耶は目を輝かせる。真凛はガーンと頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた事を二人に悟られぬ内に、早く昼休みが終わる事を願った。
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