八回目のワンスモア

大和撫子

文字の大きさ
上 下
12 / 14
第九話

幻惑魔法と闇の魔法

しおりを挟む
 は城内の図書室の隠し部屋を通り過ぎ、秘密の抜け道を下ってしばらく歩いた場所にあった。洞窟のような狭い道を歩き続けた先に、水晶原石で出来た小山……日本人だった頃の前世で言えば『馬塚』のおうなイメージに近いか……がある。その頂きに埋め込むような形で、魔術で円錐型に加工された透明水晶がそびえ立っていた。高さはおよそ8mほどあり、人工ミニ鉱山という雰囲気を醸し出している。万が一空からこの場所が見えないように、景色に溶け込むような『幻惑魔法』が施されカモフラージュしていた。位置的には、地下のワイン貯蔵庫あたりにある異空間らしい。

 エルフリーデはループ七回ともずっと、第二王子と義妹に言われるままにその場所に闇の魔術を注いできた。

 「に!」

と一心不乱に。そうすれば、ほんの少しで良いから愛してくれるのではないかと期待して。その結果、殺害された挙句。義妹とラインハルに取って障害となるもの、気に食わない者が全て消され贅の限りを尽くし好き放題する国王と王妃の誕生、国が乱れに乱れた挙句反乱、戦の道へと進んでしまうのだ。

 自分自身、そしてリュディガーの死後の未来を知っているのは何故か? それは毎回今際の際に、走馬灯のように未来が視えるからなのだ。

 度々前述した通り、第二王子ラインハルト義妹ソレイユが、誰にも邪魔されずに愛し合い自分たりに都合の良い世界を創る為に、エルフリーデの闇の力を利用した。エルフリーデがラインハルトの愛を求めて盲目的に依存するよう巧みな心理術で操作支配した。

 「お前はソレイユと違って醜いし無能だ。その証拠に、両親から愛されて居ないだろう? でも心配するな。この私がお前を愛して妻にしてやる。お前なんぞ娶ってくれるのは俺ぐらいしか居ないぞ? 分かるな?」

 この台詞はもう聞き飽きた。何度言われてきた事だろう。

……ホント、愚かだった。ループ八回目にしてやっと気づくなんて……

 自嘲の笑みを漏らし、静かに目を開いた。この場所は、今から凡そ8年ほど前、第二王子と義妹が発案し二人で作り上げた場所だった。言い方を変えれば『呪術の間』と表現出来よう。

 リュディガーにはこの件をすぐに打ち明けた。彼はすぐ様、デスク手元の引き出しから黒水晶モリオン球体スフィアを取り出し、エルフリーデに手渡した。直径5cmほどのそれは、黒水晶モリオン製の魔石で出来ており、それを『呪術の間』に翳すだけで全ての邪気を吸収し、無害化するという気強力な浄化作用魔石なのだという。リュディガーお手製のものらしい。

 だから、形上この場所に三日に一度の割合で通い闇の魔法を込め続けてはいるものの、もう第二王子と義妹が望むようなは発揮されない。更に、リュディガーに魔術を教わるようになってから、この場所で闇の魔術を送る際はこう祈りを込めている。

 「……もし今後ここに込めた闇の魔法が解放されるようになった時は、この力を浴びた全ての者たちが心穏やかに癒されますように……」

 と。

 更に、リュディガーによりは、万が一第二王子とソレイユがそこ確認しても問題無いように、。また日々彼等が望む闇の力が蓄積され、増大していくように感じられるを施してあるという。


 この後はいつものように魔塔へと足を運ぶ。今日はリュディガーから『浄化』と『治癒』魔法の中級編を習う予定なのだ。ワクワクする気持ちが顔に出ないよう、フードを目深に被る。城内の使用人や警護を担当する王宮騎士たちに、エルフリーデの変化を悟られる訳にはいかないのだ。彼等の殆どが、勢いと力を持つ第二王子と義妹の味方なのだから、油断は禁物だ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王女の朝の身支度

sleepingangel02
恋愛
政略結婚で愛のない夫婦。夫の国王は,何人もの側室がいて,王女はないがしろ。それどころか,王女担当まで用意する始末。さて,その行方は?

《R18短編》優しい婚約者の素顔

あみにあ
恋愛
私の婚約者は、ずっと昔からお兄様と慕っていた彼。 優しくて、面白くて、頼りになって、甘えさせてくれるお兄様が好き。 それに文武両道、品行方正、眉目秀麗、令嬢たちのあこがれの存在。 そんなお兄様と婚約出来て、不平不満なんてあるはずない。 そうわかっているはずなのに、結婚が近づくにつれて何だか胸がモヤモヤするの。 そんな暗い気持ちの正体を教えてくれたのは―――――。 ※6000字程度で、サクサクと読める短編小説です。 ※無理矢理な描写がございます、苦手な方はご注意下さい。

皇妃は寵愛を求めるのを止めて離宮に引き篭ることにしました。

恋愛
ネルネ皇国の后妃ケイトは、陰謀渦巻く後宮で毒を盛られ生死の境を彷徨った。 そこで思い出した前世の記憶。 進んだ文明の中で自ら働き、 一人暮らししていた前世の自分。 そこには確かに自由があった。 後宮には何人もの側室が暮らし、日々皇帝の寵愛を得ようと水面下で醜い争いを繰り広げていた。 皇帝の寵愛を一身に受けるために。 ケイトはそんな日々にも心を痛めることなく、ただ皇帝陛下を信じて生きてきた。 しかし、前世の記憶を思い出したケイトには耐えられない。命を狙われる生活も、夫が他の女性と閨を共にするのを笑顔で容認する事も。 危険のあるこんな場所で子供を産むのも不安。 療養のため離宮に引き篭るが、皇帝陛下は戻ってきて欲しいようで……? 設定はゆるゆるなので、見逃してください。 ※ヒロインやヒーローのキャラがイライラする方はバックでお願いします。 ※溺愛目指します ※R18は保険です ※本編18話で完結

クーパー伯爵夫人の離縁

桃井すもも
恋愛
クーパー伯爵夫人コレットは離縁を待つ身である。 子を成せず夫からの愛も無い。 夫には既に愛を覚える女性がいる。 離縁された後、独り身になっても生家との縁は切れており戻る場所は無い。 これからどう生きようか。 コレットは思案する。 ❇相変わらずの100%妄想の産物です。 ❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた妄想スイマーによる寝物語です。 疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。 ❇座右の銘は「知らないことは書けない」「嘘をつくなら最後まで」。 ❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく激しい微修正が入ります。 「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。 そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。 婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。 どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。 実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。 それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。 これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。 ☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

【完結】お姉様ばかりずるい!私も!何でもマネする妹のせいで品行方正を強いられる

堀 和三盆
恋愛
「お姉様ばかりずるい! 私も! 楽しそうだから私もダンスを習いたいわ」  ダンスが苦手だった私が二年間ほど習ってようやく楽しめるようになったころ。妹がそんなことを言い出した。そして遅れて習い始めた妹に半年もしないうちにサクッと追い越されてしまう。  ああ、やっぱりこうなるのね、と思う。  妹は何でも私のマネをしたがる。そして優秀な妹は私の数倍の速さで色々な技術を身に付ける。両親はそんな妹に期待をかけて、いつの間にか妹に習わせたいものだけを私にやらせるようになった。  料理も水泳も山登りも、私が望んだものは何一つ習わせてもらえない。  そして常に品行方正を強いられる。  妹のためとはいえ、様々な習い事や勉強で知識を増やしてきた私はそれなりに注目されていたらしく、なんと王太子殿下の婚約者に指名されてしまった。  そして、王太子妃教育が始まり3年立ったころ。  やはり、いつものアレが始まった。 「お姉様ばかりずるい! 私も! 楽しそうだから私も王太子妃教育が受けたい」  ……妹の中では王太子妃教育も習い事に入るみたい。

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。 けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。 謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、 「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」 謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。 それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね―――― 昨日、式を挙げた。 なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。 初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、 「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」 という声が聞こえた。 やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・ 「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。 なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。 愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。 シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。 設定はふわっと。

処理中です...