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第十二話
原作ヒロイン、華麗なる登場!②
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……間違いない、原作ヒロインだ……
アリアは思い出す。作中、ヘレナの髪のは幻のピンク色と表現されていた。まさにあのセーブル焼き独特のピンク色だ。ストレートな髪質で腰のあたりまでサラサラと流れている。後ろ姿で、髪と若草色のワンピースを着ている事しか見えないけれど、それだけでヒロインだと解ってしまう。まとっているオーラがキラキラして自然に人を惹き付ける力に満ちているのだ。
馬車から飛び出して彼女の元へ駆けつけて行った原作ヒーローも同じく。ヒーローとヒロインが並ぶと、彼ら自身が光を発しているかのようい眩く感じる。目が眩みそうなのに目が離せない、これがきっと、脇役と主人公の大きな違いなのだろう。
さて、ジークフリートが馬車を飛び出してヒロインの元に駆け付けたのは、外に出る寸前に彼が言っていた『街中に張り巡らせてある筈の結界を破って、魔獣が出現した』からだ。彼は聖剣の使い手でソードマスターでもあるから、こうした不測の事態には駆け付ける義務がある。では、ヒロインは何をしていたのかと言うと、たまたま偶然その場に居た彼女は、突如結界を破って侵入して来た魔獣を撃退すべく対峙していた……という場面なのだ。ヒロインは高い浄化力と癒しの力、上級精霊使い、更に高い魔力を隠し持つという設定だ。
隠し持っていいるわりに何故街中で堂々と力を解放するのか……そこはお約束の主人公チート&ご都合主義につき、深く突っ込んでは楽しめないもの、らしい。
まさに、原作ヒーローと原作ヒロインが初めて出会い、そして恋に落ちる瞬間の……
……待って! 原作の流れより半年近く早いけど。これ、私はまだジークと婚約すらしていない! このまま円満にサヨナラすればバッドエンド回避になるのでは!!……
アリアは未来に希望の光を見た気がした。
……原作通りなら、二人は恋に落ちる訳で。盗み聞きは申し訳ないけど、ちょっと会話を聞かせて貰おう。本当に二人が一目惚れしたなら、上手い事身を引いて彼らの人生からフェードアウトさせて貰えばいいわ! ふふふ、脇役は脇役らしく、てね……
上機嫌で右手を軽くあげて手のひらを天に向ける。手のひらにキラキラと白い光が集まりだすと、直径8cmほどの透明水晶玉に形を変えた。その中に、ジークフリートとヘレナの姿が映し出される。これは皇族のみに使用する事が許された『監視魔術』なのだ。勿論、見聞きされている事が相手に気付かれないようにもなっている。アリアも一応は皇族の端くれなので使用できるのだ。
『これはこれは、このように華奢で朝露に濡れたピンク色のピオニーのように美しいお嬢さん、もしやあなたは聖女様ですか?』
……ジーク、原作通りの台詞ね。口説くのはもう呼吸をするように自然なのね。それにしてもヘレナ、本当に綺麗なルビーレッドの瞳だこと……
ヘレナは両手を天に翳し、結界の修復を図る事で魔獣の侵入を防いでいた。彼女の両手の平からは黄金色の結界魔術文字が光のシャワーのように放出されている。今回の魔獣は、頭に黒い一本角を生やした巨大なハエの大群だった。
『まぁ、お上手ね。あなたも太陽神アポロの化身みたいに美しい殿方ね』
鈴が転がるような声とはこのような声質を言うのであろう。澄み切った美しい声が軽やかに響いた。
『よく言われますが、アポロは神話上、これといった活躍はなくどちらかというと粗相が目立つので複雑な心境になります』
『あらあら、大した自信家ね』
二人の視線が絡み合い、微笑みあう。宗教画のように神聖で美しい光景だった。二人が恋に落ちた瞬間、原作通りの展開だった。
二人は頷き合うと、ヘレナは引き続き結界を修復し続けジークフリートは聖剣を引き抜き、構えた。
アリアはそれ以上見るのは居たたまれなくなって、透明水晶玉は霧散した。
……良かったじゃない、これで婚約前に別れてしまえば。私は生き残れるし、二人は早くくっついて全員がハッピーエンド……
そう思うのに、何故か胸に痛みを覚え、ヘレナに嫉妬している自分にどう対処して良いのか分からなかった。
アリアは思い出す。作中、ヘレナの髪のは幻のピンク色と表現されていた。まさにあのセーブル焼き独特のピンク色だ。ストレートな髪質で腰のあたりまでサラサラと流れている。後ろ姿で、髪と若草色のワンピースを着ている事しか見えないけれど、それだけでヒロインだと解ってしまう。まとっているオーラがキラキラして自然に人を惹き付ける力に満ちているのだ。
馬車から飛び出して彼女の元へ駆けつけて行った原作ヒーローも同じく。ヒーローとヒロインが並ぶと、彼ら自身が光を発しているかのようい眩く感じる。目が眩みそうなのに目が離せない、これがきっと、脇役と主人公の大きな違いなのだろう。
さて、ジークフリートが馬車を飛び出してヒロインの元に駆け付けたのは、外に出る寸前に彼が言っていた『街中に張り巡らせてある筈の結界を破って、魔獣が出現した』からだ。彼は聖剣の使い手でソードマスターでもあるから、こうした不測の事態には駆け付ける義務がある。では、ヒロインは何をしていたのかと言うと、たまたま偶然その場に居た彼女は、突如結界を破って侵入して来た魔獣を撃退すべく対峙していた……という場面なのだ。ヒロインは高い浄化力と癒しの力、上級精霊使い、更に高い魔力を隠し持つという設定だ。
隠し持っていいるわりに何故街中で堂々と力を解放するのか……そこはお約束の主人公チート&ご都合主義につき、深く突っ込んでは楽しめないもの、らしい。
まさに、原作ヒーローと原作ヒロインが初めて出会い、そして恋に落ちる瞬間の……
……待って! 原作の流れより半年近く早いけど。これ、私はまだジークと婚約すらしていない! このまま円満にサヨナラすればバッドエンド回避になるのでは!!……
アリアは未来に希望の光を見た気がした。
……原作通りなら、二人は恋に落ちる訳で。盗み聞きは申し訳ないけど、ちょっと会話を聞かせて貰おう。本当に二人が一目惚れしたなら、上手い事身を引いて彼らの人生からフェードアウトさせて貰えばいいわ! ふふふ、脇役は脇役らしく、てね……
上機嫌で右手を軽くあげて手のひらを天に向ける。手のひらにキラキラと白い光が集まりだすと、直径8cmほどの透明水晶玉に形を変えた。その中に、ジークフリートとヘレナの姿が映し出される。これは皇族のみに使用する事が許された『監視魔術』なのだ。勿論、見聞きされている事が相手に気付かれないようにもなっている。アリアも一応は皇族の端くれなので使用できるのだ。
『これはこれは、このように華奢で朝露に濡れたピンク色のピオニーのように美しいお嬢さん、もしやあなたは聖女様ですか?』
……ジーク、原作通りの台詞ね。口説くのはもう呼吸をするように自然なのね。それにしてもヘレナ、本当に綺麗なルビーレッドの瞳だこと……
ヘレナは両手を天に翳し、結界の修復を図る事で魔獣の侵入を防いでいた。彼女の両手の平からは黄金色の結界魔術文字が光のシャワーのように放出されている。今回の魔獣は、頭に黒い一本角を生やした巨大なハエの大群だった。
『まぁ、お上手ね。あなたも太陽神アポロの化身みたいに美しい殿方ね』
鈴が転がるような声とはこのような声質を言うのであろう。澄み切った美しい声が軽やかに響いた。
『よく言われますが、アポロは神話上、これといった活躍はなくどちらかというと粗相が目立つので複雑な心境になります』
『あらあら、大した自信家ね』
二人の視線が絡み合い、微笑みあう。宗教画のように神聖で美しい光景だった。二人が恋に落ちた瞬間、原作通りの展開だった。
二人は頷き合うと、ヘレナは引き続き結界を修復し続けジークフリートは聖剣を引き抜き、構えた。
アリアはそれ以上見るのは居たたまれなくなって、透明水晶玉は霧散した。
……良かったじゃない、これで婚約前に別れてしまえば。私は生き残れるし、二人は早くくっついて全員がハッピーエンド……
そう思うのに、何故か胸に痛みを覚え、ヘレナに嫉妬している自分にどう対処して良いのか分からなかった。
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