14 / 37
第十二話
夏疾風
しおりを挟む
「空き時間が出来たから、来たんだ。そしたら、菜々子さんが居たから。何の本、読んでるか聞いても大丈夫?」
と彼はニッコリ笑った。別段断る理由も無い。素直に本を差し出す。
「そのしんどさ、もしかしてアダルトチルドレンかも?」
そっと受け取り、タイトルを読み上げる。
「へぇ? かなり前に流行ったよね。アダルトチルドレンて言葉それにしても、大切にしてるんだね。ビニール袋に入れて読むなんて」
彼は丁寧に両手で返しながら、感心したように言った。
「先輩からお借りした物なんです。万が一、汚したら悪いですから」
正直に答えた。
「なるほど。真面目なんだね、やっぱり。あ、そうそう、あのさ。敬語いらないよ。同い年じゃん」
彼は笑った。あたしもつられて笑う。けれども、正直言ってあまり長時間、当麻以外の男子と会話した事がない。だから、どう話して良いのか分からなかった。
…ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
波がリズムを刻む。
…ワンワン、ワンワン…
どこからか犬がはしゃぐ声が聞こえてくる。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
波が奏でるリズムと相まって…まるで、
「海辺の音楽会って感じだね。波の音と、嬉しそうな犬の声とで」
彼はそう言いつつ、ゆっくりとあたしの左隣に立った。
……同じ事を感じていたのか……
なんだか嬉しくなった。
「あたしも、感じた。波が地球の鼓動、メトロノームで。ワンちゃんが歌ってる、て。海辺の音楽会だ、て」
自然に自分の感情を言葉にしていた。
「波が地球の鼓動でメトロノームか!いいね!それは思い浮かばなかったよ」
と彼は嬉しそうに笑った。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
不意にピューッと強い風が吹いてきた。思わず目を閉じる。風に舞った砂が、容赦なく吹き付ける。
ピューピューッ…ピュー
やがて、風は徐々に治まっていった。ゆっくり目を開ける。そして咄嗟に左にいる彼を見つめた。彼も同じようにあたしを見ていた。
「ププ…」
「ウフフ…」
同時に吹き出す二人。
「夏疾風だね。夏らしく、力強く吹き抜ける風」
彼は同意を求めてくる。
「だね!」
あたしは大きく頷いた。
ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
ワンワン、ワンワン
あたしたちはそのまま、海辺の音楽に耳を傾けた。
ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
ワンワン、ワン…
犬の声は遠ざかっていき、やがて聞こえなくなった。
ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
波が地球の鼓動を刻む。規則正しく。見ているあたし達のぎこちなさも、自然に地球の鼓動に呼吸を合わせる。
ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
「アダルトチルドレンさ、毒親ともリンクするけど。意外と無自覚なまま大人になってる人、多いと思うよ」
しばらくして、海斗は穏やかに口を開いた。
「無自覚?」
気付けば、あたしはスッカリ打ち解けている。
「うん。だけど別に、本人が『生き辛さ』を感じなけりゃ、問題無いんだ。だけど、例えば自分がどう感じてどうしたいのか感じられず、人に合わせてしまったり……」
…ドクン…
「……いつも自信が無くて、人に見捨てられる不安感がつきまとったり。自分が、では無くて。両親が望むだろう自分を演じていたり……」
…ドクン、ドクン…
「……そう言うの、異性との交際で出てきやすいんだ。その『思考の癖』が……」
…ドクン、ドクンドクン…
海斗の言葉を聞いているうちに、鼓動が激しくなっていく。どうしてかワカラナイ。ワカラナイけど……
「大丈夫、大丈夫。落ち着いて」
彼は左手であたしを胸に引き寄せ、右手で軽く背中を叩き始めた。
「大丈夫だよ。大きく息を吐いて。そう、ゆっくり吸って……」
…ドクン…ドクン…
…ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
さっきまで耳に入らなかった波の音が、自然に耳に入ってくる。すぐに普通の呼吸を取り戻した。
「あっ!」
「あ、ごめん!」
あたし達は瞬時に我に返り、互いにサッと離れた。
「あの、有り難う」
お礼を述べる。
「いや、大した事してないよ。菜々ちゃんはさ、もっと自分の気持ちを素直に伝えて大丈夫だよ。彼にも、ご両親にも。急には難しいだろうけど、徐々にさ」
と彼は笑った。
…ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
「さて、講義に行かなきゃ、また会おうね!」
と彼は軽く右手をあげ、去って行った。
…ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
潮騒のメロディを聞きながら、しっかりと自分に向き合ってみる必要を感じた。
…ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
でも、この時のあたしはまだ知らなかった。海斗と居た一部始終を、見ていた人が居たなんて……。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
彼を見送り、再び座って海を見ていた。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
徐々に、さっき彼に抱き寄せられた事が蘇る。
……あたしったら、なんであんな事……
今更ながら、罪悪感が芽生えてきた。罪悪感? 後悔?それらが入り交じった、複雑な感情。普段のあたしなら、あんな無防備に抱き寄せられる前に拒否する筈なのに。何故だろう?全く抵抗する気持ちが湧かなかった。
それは、彼の瞳。初めて会った時にも感じた、どこかで見たことのあるような、優しい茶色の眼差しのせいだろうか。
いずれにしても、軽々しい行動は慎もう。自意識過剰なのかもしれないけれど、当麻がもし、他の女の子を抱き寄せたら嫌だ。それが例え、恋愛感情からのものでは無いにせよ。それに、海斗くんの彼女だって、良い気はしないだろう。それが例え、恋愛感情からのものではなかったにしても…
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
どうかしてる、あたし。こんなの、端から見たら。『勘違い自惚れ女』とか『悲劇のヒロイン気取りの痛いビッチ』じゃないか!
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
地球の鼓動にあたしの醜い心を預け、浄化させてしまおう!
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
全身丸ごと、海に浸かるイメージをする。宇宙のリズムと一体化して、そのまま……そのまま溶けてしまえたら……。不意に、母なる海と一体化したくなった。
ピピッピピピッピピッピピピッ
携帯のアラームで我に返る。もう学校へ行く時間だ。荷物をまとめ始めた。
と彼はニッコリ笑った。別段断る理由も無い。素直に本を差し出す。
「そのしんどさ、もしかしてアダルトチルドレンかも?」
そっと受け取り、タイトルを読み上げる。
「へぇ? かなり前に流行ったよね。アダルトチルドレンて言葉それにしても、大切にしてるんだね。ビニール袋に入れて読むなんて」
彼は丁寧に両手で返しながら、感心したように言った。
「先輩からお借りした物なんです。万が一、汚したら悪いですから」
正直に答えた。
「なるほど。真面目なんだね、やっぱり。あ、そうそう、あのさ。敬語いらないよ。同い年じゃん」
彼は笑った。あたしもつられて笑う。けれども、正直言ってあまり長時間、当麻以外の男子と会話した事がない。だから、どう話して良いのか分からなかった。
…ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
波がリズムを刻む。
…ワンワン、ワンワン…
どこからか犬がはしゃぐ声が聞こえてくる。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
波が奏でるリズムと相まって…まるで、
「海辺の音楽会って感じだね。波の音と、嬉しそうな犬の声とで」
彼はそう言いつつ、ゆっくりとあたしの左隣に立った。
……同じ事を感じていたのか……
なんだか嬉しくなった。
「あたしも、感じた。波が地球の鼓動、メトロノームで。ワンちゃんが歌ってる、て。海辺の音楽会だ、て」
自然に自分の感情を言葉にしていた。
「波が地球の鼓動でメトロノームか!いいね!それは思い浮かばなかったよ」
と彼は嬉しそうに笑った。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
不意にピューッと強い風が吹いてきた。思わず目を閉じる。風に舞った砂が、容赦なく吹き付ける。
ピューピューッ…ピュー
やがて、風は徐々に治まっていった。ゆっくり目を開ける。そして咄嗟に左にいる彼を見つめた。彼も同じようにあたしを見ていた。
「ププ…」
「ウフフ…」
同時に吹き出す二人。
「夏疾風だね。夏らしく、力強く吹き抜ける風」
彼は同意を求めてくる。
「だね!」
あたしは大きく頷いた。
ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
ワンワン、ワンワン
あたしたちはそのまま、海辺の音楽に耳を傾けた。
ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
ワンワン、ワン…
犬の声は遠ざかっていき、やがて聞こえなくなった。
ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
波が地球の鼓動を刻む。規則正しく。見ているあたし達のぎこちなさも、自然に地球の鼓動に呼吸を合わせる。
ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
「アダルトチルドレンさ、毒親ともリンクするけど。意外と無自覚なまま大人になってる人、多いと思うよ」
しばらくして、海斗は穏やかに口を開いた。
「無自覚?」
気付けば、あたしはスッカリ打ち解けている。
「うん。だけど別に、本人が『生き辛さ』を感じなけりゃ、問題無いんだ。だけど、例えば自分がどう感じてどうしたいのか感じられず、人に合わせてしまったり……」
…ドクン…
「……いつも自信が無くて、人に見捨てられる不安感がつきまとったり。自分が、では無くて。両親が望むだろう自分を演じていたり……」
…ドクン、ドクン…
「……そう言うの、異性との交際で出てきやすいんだ。その『思考の癖』が……」
…ドクン、ドクンドクン…
海斗の言葉を聞いているうちに、鼓動が激しくなっていく。どうしてかワカラナイ。ワカラナイけど……
「大丈夫、大丈夫。落ち着いて」
彼は左手であたしを胸に引き寄せ、右手で軽く背中を叩き始めた。
「大丈夫だよ。大きく息を吐いて。そう、ゆっくり吸って……」
…ドクン…ドクン…
…ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
さっきまで耳に入らなかった波の音が、自然に耳に入ってくる。すぐに普通の呼吸を取り戻した。
「あっ!」
「あ、ごめん!」
あたし達は瞬時に我に返り、互いにサッと離れた。
「あの、有り難う」
お礼を述べる。
「いや、大した事してないよ。菜々ちゃんはさ、もっと自分の気持ちを素直に伝えて大丈夫だよ。彼にも、ご両親にも。急には難しいだろうけど、徐々にさ」
と彼は笑った。
…ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
「さて、講義に行かなきゃ、また会おうね!」
と彼は軽く右手をあげ、去って行った。
…ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
潮騒のメロディを聞きながら、しっかりと自分に向き合ってみる必要を感じた。
…ザザー…ザブン…ザザ…ザブン…
でも、この時のあたしはまだ知らなかった。海斗と居た一部始終を、見ていた人が居たなんて……。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
彼を見送り、再び座って海を見ていた。
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
徐々に、さっき彼に抱き寄せられた事が蘇る。
……あたしったら、なんであんな事……
今更ながら、罪悪感が芽生えてきた。罪悪感? 後悔?それらが入り交じった、複雑な感情。普段のあたしなら、あんな無防備に抱き寄せられる前に拒否する筈なのに。何故だろう?全く抵抗する気持ちが湧かなかった。
それは、彼の瞳。初めて会った時にも感じた、どこかで見たことのあるような、優しい茶色の眼差しのせいだろうか。
いずれにしても、軽々しい行動は慎もう。自意識過剰なのかもしれないけれど、当麻がもし、他の女の子を抱き寄せたら嫌だ。それが例え、恋愛感情からのものでは無いにせよ。それに、海斗くんの彼女だって、良い気はしないだろう。それが例え、恋愛感情からのものではなかったにしても…
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
どうかしてる、あたし。こんなの、端から見たら。『勘違い自惚れ女』とか『悲劇のヒロイン気取りの痛いビッチ』じゃないか!
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
地球の鼓動にあたしの醜い心を預け、浄化させてしまおう!
…ザザー…ザブン…ザザー…ザブン…
全身丸ごと、海に浸かるイメージをする。宇宙のリズムと一体化して、そのまま……そのまま溶けてしまえたら……。不意に、母なる海と一体化したくなった。
ピピッピピピッピピッピピピッ
携帯のアラームで我に返る。もう学校へ行く時間だ。荷物をまとめ始めた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
放課後はネットで待ち合わせ
星名柚花
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】
高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。
何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。
翌日、萌はルビーと出会う。
女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。
彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。
初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】キスの練習相手は幼馴染で好きな人【連載版】
猫都299
青春
沼田海里(17)は幼馴染でクラスメイトの一井柚佳に恋心を抱いていた。しかしある時、彼女は同じクラスの桜場篤の事が好きなのだと知る。桜場篤は学年一モテる文武両道で性格もいいイケメンだ。告白する予定だと言う柚佳に焦り、失言を重ねる海里。納得できないながらも彼女を応援しようと決めた。しかし自信のなさそうな柚佳に色々と間違ったアドバイスをしてしまう。己の経験のなさも棚に上げて。
「キス、練習すりゃいいだろ? 篤をイチコロにするやつ」
秘密や嘘で隠されたそれぞれの思惑。ずっと好きだった幼馴染に翻弄されながらも、その本心に近付いていく。
※現在完結しています。ほかの小説が落ち着いた時等に何か書き足す事もあるかもしれません。(2024.12.2追記)
※「キスの練習相手は〜」「幼馴染に裏切られたので〜」「ダブルラヴァーズ〜」「やり直しの人生では〜」等は同じ地方都市が舞台です。(2024.12.2追記)
※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ノベルアップ+、Nolaノベルに投稿しています。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる