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第三話
夏休みの計画①
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皆、黙々と己の制作物に集中している。放課後、生徒たちが部活動に勤しむ時間帯だ。私の所属する『魔道具制作部』は、基本的に個人主義なところも気に入っている。とは言っても、共同制作が必要となる場合は話は別だ。それは部活全体で一つ、或いはグループ事分けてにテーマを決めて作成するパターンがある。大きく分けて三つ。一つめは三か月に一回、バザーに出品する際。二つ目は、一年に一度開催される学園祭に出品する時。三つ目は、二年に一度開催される『全世界学生魔道具コンテスト』に部活全体の作品として参加する場合だ。
いつか、自分で魔道具のショップを開くのが夢だ。魔力を使えない人でも、魔法石があれば日常生活を営む上で困る事はないが、そこに魔道具を加えればより強力になるし安定する。魔道具の種類にも寄るが、凡そ半年に一度メンテナンスに出せば半永久的に持つので、長い目で見たら消耗品の魔法石よりも経済的だ。今は未だ、専門の魔術関係者や裕福な家庭にしか売れない傾向にあるが、ごく一般的な家庭でも一つは魔道具がある。そんな世の中になったら素敵だと思う。行く行くは、母と一緒にショップに立てたら嬉しい。
杖にルーン文字を刻む作業に入る。持ち主の身を守るように、そして道標となるようなルーン文字の組み合わせを考え、下書きをする。見た目にも美しく見えるようにデザイン風に。決まったら杖に薄く下書きをし、彫刻刀で削って行くのだ。今作っている物は凡そ1.5mほどあり、絵本に出て来る魔女が持つようなものにしようと思っているのだ。埋め込む魔法石もアンティーク風に加工したい。
夢中になって作成していると、あっと言う間に帰る時間になる。各自道具を片付けて、先輩も後輩も関係なく皆で軽く掃除をする。終わったところで皆集まり、部長からの挨拶や伝達事項を聞いてから解散となるのだ。
登下校には魔道自転車を使う者、徒歩、或いは保護者や侍従に迎えに来て貰うものと三パターンに分かれる。勿論、私は徒歩だ。学園から自宅まで徒歩20分、ゆっくり歩けば徒歩30分ほどで着く。自然豊かな景観の中歩くのが好きだった。一度は人類が滅ぼしかけた植物たちを、科学と化学を魔術と自然信仰を融合させ、地球に緑を見事に復活させた千年ほど前に存在した魔導士は本当に偉大だと思う。その研究が元となって、今では復活し限られた自然を損なう事なく『魔術』という力で利用する事が可能になったのだから。
そんな事をつらつらと考えている内に、ラインゲルト辺境伯の領地内のあぜ道に差し掛かっていた。後10分ほどで家に着く。ほんの少しだけ気が重かった。
と言うのも、母方の祖父母からの返事が届く頃だからだ。別にそれ自体は何の問題は無い。ただ、その返事の内容が気になった。夏休み、帝国に旅行に行く。目的は前述した通り、母を捨てた不倫男と略奪女の今を確かめに行く為に。全く事の真相が見えて来ない謎の部分を調べに。目的は誰にも言わないつもりだから、別の視点から見たらある意味「ミステリーツアー」と言えそうだ。その間、寝泊まりする場所に祖父母に頼れたら資金の面で非常に助かるな、と思うのだ。ただ、さほど仲が良い訳ではないので、図々しいと思われてご機嫌を損ねる場合もある。だから、母親に「せっかく帝国に一人旅をするんだからお祖父様お祖父の家に泊まりに行ってみたいなぁ」などと柄にもなく甘えてみた。滅多におねだりしない私の頼み事がとても嬉しかったようで、母親は「それは良い考えだわ。私に任せて」と快諾してくれた。
さて、結果はどうだろう?
いつか、自分で魔道具のショップを開くのが夢だ。魔力を使えない人でも、魔法石があれば日常生活を営む上で困る事はないが、そこに魔道具を加えればより強力になるし安定する。魔道具の種類にも寄るが、凡そ半年に一度メンテナンスに出せば半永久的に持つので、長い目で見たら消耗品の魔法石よりも経済的だ。今は未だ、専門の魔術関係者や裕福な家庭にしか売れない傾向にあるが、ごく一般的な家庭でも一つは魔道具がある。そんな世の中になったら素敵だと思う。行く行くは、母と一緒にショップに立てたら嬉しい。
杖にルーン文字を刻む作業に入る。持ち主の身を守るように、そして道標となるようなルーン文字の組み合わせを考え、下書きをする。見た目にも美しく見えるようにデザイン風に。決まったら杖に薄く下書きをし、彫刻刀で削って行くのだ。今作っている物は凡そ1.5mほどあり、絵本に出て来る魔女が持つようなものにしようと思っているのだ。埋め込む魔法石もアンティーク風に加工したい。
夢中になって作成していると、あっと言う間に帰る時間になる。各自道具を片付けて、先輩も後輩も関係なく皆で軽く掃除をする。終わったところで皆集まり、部長からの挨拶や伝達事項を聞いてから解散となるのだ。
登下校には魔道自転車を使う者、徒歩、或いは保護者や侍従に迎えに来て貰うものと三パターンに分かれる。勿論、私は徒歩だ。学園から自宅まで徒歩20分、ゆっくり歩けば徒歩30分ほどで着く。自然豊かな景観の中歩くのが好きだった。一度は人類が滅ぼしかけた植物たちを、科学と化学を魔術と自然信仰を融合させ、地球に緑を見事に復活させた千年ほど前に存在した魔導士は本当に偉大だと思う。その研究が元となって、今では復活し限られた自然を損なう事なく『魔術』という力で利用する事が可能になったのだから。
そんな事をつらつらと考えている内に、ラインゲルト辺境伯の領地内のあぜ道に差し掛かっていた。後10分ほどで家に着く。ほんの少しだけ気が重かった。
と言うのも、母方の祖父母からの返事が届く頃だからだ。別にそれ自体は何の問題は無い。ただ、その返事の内容が気になった。夏休み、帝国に旅行に行く。目的は前述した通り、母を捨てた不倫男と略奪女の今を確かめに行く為に。全く事の真相が見えて来ない謎の部分を調べに。目的は誰にも言わないつもりだから、別の視点から見たらある意味「ミステリーツアー」と言えそうだ。その間、寝泊まりする場所に祖父母に頼れたら資金の面で非常に助かるな、と思うのだ。ただ、さほど仲が良い訳ではないので、図々しいと思われてご機嫌を損ねる場合もある。だから、母親に「せっかく帝国に一人旅をするんだからお祖父様お祖父の家に泊まりに行ってみたいなぁ」などと柄にもなく甘えてみた。滅多におねだりしない私の頼み事がとても嬉しかったようで、母親は「それは良い考えだわ。私に任せて」と快諾してくれた。
さて、結果はどうだろう?
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