174 / 186
第百十六話
国王御愛用のアクセサリー・後編
しおりを挟む
セディは相変わらず、顎あたりまで伸ばされたふわふわした黄土色の髪、色白でパッチリした枯草色の目をしている。やっぱり、可愛い。パステルオレンジのアラブ風王子を思わせる衣装に身を包んでいる。そして彼の後ろから、藤色の波打つ藤色の長い髪を後ろで一つにまとめた、浅黒い肌、黄緑色の眼を持つ美丈夫が後を追って来る。衣装は象を操っている者たちと同じで色違い、淡い水色だ。この彼の名は確か『勇者』と言う意味があるFergusだったな。
きっと、セディが国王の来訪を知って堪らなくなって走って来たのだろう。あの国王とセディがどのような接し方をするのか、ちょっとワクワクする。
そう、彼らは瞳の色が見えるくらいに近づいていたのだ。この中の壁……と呼んで良いのかは分からないが、外の景色は非常によく見える。実際は、ブリリアンカットのアクセサリーの内部だと考えると、外の景色は逆さに屈折して見えるのだろうけど。これは魔術でしっかりと見えるようにしているのだろうと思う。だからこそ、この中では魔術は使えない……まぁ、俺の魔術なんぞタカが知れているけれども……ラディウス王子やリアン達からの魔術も届かないのだろうな。
あっ! えっ、えーーーー? びっくりしたーーーー! いきなりセディの全身が壁いっぱいに大写しになったと思ったら、暗闇に包み込まれたのだ。突如真っ暗になるのはビックリする。
落ち着け、まずは座ろう。これは恐らく、従者が止める間もなくセディが飛び上がって国王に抱きつこうとして。うん、ここまでは見えたぞ。で、暗闇になったという事は、だ。多分、国王が抱き止めたんだろう。国王の紫紺の直裾でアクセサリーが包みこまれたらそりゃ真っ暗になるよな。いや、服の色は関係無く、アクセサリーを
包み込まれたらそりゃ暗闇になるわな、と。
ほら、そう思っている傍から明るくなった。これはちょっと眩しい。少しだけ俯いて目が慣れるのを待とう。
再び立ち上がり、壁にはり付いて外を凝視する。取り敢えず、城に向かってはいるようだ。そして、視界の右端に見えるパステルオレンジの生地はセディのものだろう。セディを国王の前に座らせて象に乗っているのだと思われる。
凄いな、あの国王に……。さすが異界の扉を何なく開け、魔物たちを恐れもせずに上機嫌だっただけの事はある。セディ、間違いなく今から大物の予感しかしない。
「えっ?」
としか声が出なかった。だって、セディの顔が壁いっぱいに映し出されたから。枯草色の瞳を、キラキラと輝かせ、満面の笑みで。
「にぃたん、あそぼ」
呆然とする俺の目の前に、無邪気に微笑むセディが抱き上げるのをねだるように両手を広げていた。
「え? セディ?」
慌てて外を見る。セディが消えてこの中に来た訳では無いようだ。分身の術? 魂だけ抜け出た? どういう事だ?
きっと、セディが国王の来訪を知って堪らなくなって走って来たのだろう。あの国王とセディがどのような接し方をするのか、ちょっとワクワクする。
そう、彼らは瞳の色が見えるくらいに近づいていたのだ。この中の壁……と呼んで良いのかは分からないが、外の景色は非常によく見える。実際は、ブリリアンカットのアクセサリーの内部だと考えると、外の景色は逆さに屈折して見えるのだろうけど。これは魔術でしっかりと見えるようにしているのだろうと思う。だからこそ、この中では魔術は使えない……まぁ、俺の魔術なんぞタカが知れているけれども……ラディウス王子やリアン達からの魔術も届かないのだろうな。
あっ! えっ、えーーーー? びっくりしたーーーー! いきなりセディの全身が壁いっぱいに大写しになったと思ったら、暗闇に包み込まれたのだ。突如真っ暗になるのはビックリする。
落ち着け、まずは座ろう。これは恐らく、従者が止める間もなくセディが飛び上がって国王に抱きつこうとして。うん、ここまでは見えたぞ。で、暗闇になったという事は、だ。多分、国王が抱き止めたんだろう。国王の紫紺の直裾でアクセサリーが包みこまれたらそりゃ真っ暗になるよな。いや、服の色は関係無く、アクセサリーを
包み込まれたらそりゃ暗闇になるわな、と。
ほら、そう思っている傍から明るくなった。これはちょっと眩しい。少しだけ俯いて目が慣れるのを待とう。
再び立ち上がり、壁にはり付いて外を凝視する。取り敢えず、城に向かってはいるようだ。そして、視界の右端に見えるパステルオレンジの生地はセディのものだろう。セディを国王の前に座らせて象に乗っているのだと思われる。
凄いな、あの国王に……。さすが異界の扉を何なく開け、魔物たちを恐れもせずに上機嫌だっただけの事はある。セディ、間違いなく今から大物の予感しかしない。
「えっ?」
としか声が出なかった。だって、セディの顔が壁いっぱいに映し出されたから。枯草色の瞳を、キラキラと輝かせ、満面の笑みで。
「にぃたん、あそぼ」
呆然とする俺の目の前に、無邪気に微笑むセディが抱き上げるのをねだるように両手を広げていた。
「え? セディ?」
慌てて外を見る。セディが消えてこの中に来た訳では無いようだ。分身の術? 魂だけ抜け出た? どういう事だ?
11
お気に入りに追加
608
あなたにおすすめの小説
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。

ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.

秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる