その男、有能につき……

大和撫子

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第百十六話

国王御愛用のアクセサリー・後編

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 セディは相変わらず、顎あたりまで伸ばされたふわふわした黄土色の髪、色白でパッチリした枯草色の目をしている。やっぱり、可愛い。パステルオレンジのアラブ風王子を思わせる衣装に身を包んでいる。そして彼の後ろから、藤色の波打つ藤色の長い髪を後ろで一つにまとめた、浅黒い肌、黄緑色の眼を持つ美丈夫が後を追って来る。衣装は象を操っている者たちと同じで色違い、淡い水色だ。この彼の名は確か『勇者』と言う意味があるFergusファーガスだったな。

 きっと、セディが国王の来訪を知って堪らなくなって走って来たのだろう。あの国王とセディがどのような接し方をするのか、ちょっとワクワクする。

 そう、彼らは瞳の色が見えるくらいに近づいていたのだ。この中の壁……と呼んで良いのかは分からないが、外の景色は非常によく見える。実際は、ブリリアンカットのアクセサリーの内部だと考えると、外の景色は逆さに屈折して見えるのだろうけど。これは魔術でしっかりと見えるようにしているのだろうと思う。だからこそ、この中では魔術は使えない……まぁ、俺の魔術なんぞタカが知れているけれども……ラディウス王子やリアン達からの魔術も届かないのだろうな。

 あっ! えっ、えーーーー? びっくりしたーーーー! いきなりセディの全身が壁いっぱいに大写しになったと思ったら、暗闇に包み込まれたのだ。突如真っ暗になるのはビックリする。

 落ち着け、まずは座ろう。これは恐らく、従者が止める間もなくセディが飛び上がって国王に抱きつこうとして。うん、ここまでは見えたぞ。で、暗闇になったという事は、だ。多分、国王が抱き止めたんだろう。国王の紫紺の直裾でアクセサリーが包みこまれたらそりゃ真っ暗になるよな。いや、服の色は関係無く、アクセサリーを
包み込まれたらそりゃ暗闇になるわな、と。

 ほら、そう思っている傍から明るくなった。これはちょっと眩しい。少しだけ俯いて目が慣れるのを待とう。

 再び立ち上がり、壁にはり付いて外を凝視する。取り敢えず、城に向かってはいるようだ。そして、視界の右端に見えるパステルオレンジの生地はセディのものだろう。セディを国王の前に座らせて象に乗っているのだと思われる。

 凄いな、あの国王に……。さすが異界の扉を何なく開け、魔物たちを恐れもせずに上機嫌だっただけの事はある。セディ、間違いなく今から大物の予感しかしない。

「えっ?」

 としか声が出なかった。だって、セディの顔が壁いっぱいに映し出されたから。枯草色の瞳を、キラキラと輝かせ、満面の笑みで。

「にぃたん、あそぼ」

 呆然とする俺の目の前に、無邪気に微笑むセディが抱き上げるのをねだるように両手を広げていた。

「え? セディ?」

 慌てて外を見る。セディが消えてこの中に来た訳では無いようだ。分身の術? 魂だけ抜け出た? どういう事だ?

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