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第八十七話
王太子殿下の庭園・前編
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「……これは、見事な……」
それは、平安時代にタイムスリップしたかのような庭園だった。広大な庭に遣り水。サラサラと流れる小さな川にかかる赤い橋。橋の周りに楓や銀杏が立ち並び、赤やオレンジ、黄色と見事な秋の色彩を放っている。川に映し出される色彩は、青空と相まってさながら一枚の写真のようだ。
庭園の周辺には梅や桜、椿などの花木がバランス良く植えられている。地には純白の小石が敷き詰められ、紫陽花や百合、ススキやヨモギなど四季折々の植物や花がセンスよく植えられていた。
「……西洋風にしようか東洋風にしようか迷ったのだが。少しは気に入って貰えただろうか?」
俺の反応を窺うようにして問いかける王太子殿下の双眸を、ドギマギしながら見上げた。
「勿論です。あちらの世界での平安時代の貴族の庭……資料で見た通りに再現されていて。本当に素晴らしいです」
と素直に答えながらも、心臓は緊張を素直に反映してバクバクいっていた。それもその筈、だって今……王太子殿下に抱き上げられて庭を散策しているから。
庭を見に行こう、と誘われるままに肯定の意を示したら、王太子殿下は「では、参ろう」と言って俺を抱えた上げたんだ。
『あ、いえ、そんな! じ、自分で歩きます、恐れ多い……』
『病み上がりなのだ。無理はいけない』
あわてふためく俺に少々厳しい面持ちで言う王太子殿下。だが、次の瞬間には穏やかに微笑んだ。
『それに、私がそうしたいのだ』
あまりにも優しい眼差しで見つめるので、断り辛くなってしまったのだ。同時に、ついさっきまで脳裏をかすめた王子の姿まで霧散していく。
「……どちらかと言えば、我が宮殿はそなたの世界でいうところの『西洋風』であるようだからな。それに、私はこのような『和』の雰囲気が好みでな」
ゆっくりと歩きながら語る。その完璧なまでに整った顔は、下から見上げても目を見張る程に美しい。
川縁に剣のように凛と立つ草の群れは、恐らく花菖蒲に違いない。初夏には、見事な瑠璃色、紫、白の花が咲き誇り、水面にその凜然と立つ姿が映し出されるだろう。隣に王太子殿下が佇む姿は、それだけで一枚の芸術だ……。
「……だが私は、夜の庭園が好きでな」
「夜……ですか?」
月を思わせる王太子殿下は、夜がよく似合う。
「あぁ。夏は庭いっぱいに、蛍が飛び交う様も風情だ」
「蛍……素敵です」
夜の庭に蛍。神秘的に浮かび上がる紫陽花に王太子殿下。なんてお似合いなんだろう!
「篝火で夜の庭を照らすのもまた雅だ」
「はい……」
優しく柔らかく、桜を照らす篝火。そして王太子殿下……これもまた神秘的だ。
「そなたと二人だけで、夜の庭園も堪能したい」
突然、王太子殿下は情熱的に語り、燃えるような眼差しを俺に向けた。
それは、平安時代にタイムスリップしたかのような庭園だった。広大な庭に遣り水。サラサラと流れる小さな川にかかる赤い橋。橋の周りに楓や銀杏が立ち並び、赤やオレンジ、黄色と見事な秋の色彩を放っている。川に映し出される色彩は、青空と相まってさながら一枚の写真のようだ。
庭園の周辺には梅や桜、椿などの花木がバランス良く植えられている。地には純白の小石が敷き詰められ、紫陽花や百合、ススキやヨモギなど四季折々の植物や花がセンスよく植えられていた。
「……西洋風にしようか東洋風にしようか迷ったのだが。少しは気に入って貰えただろうか?」
俺の反応を窺うようにして問いかける王太子殿下の双眸を、ドギマギしながら見上げた。
「勿論です。あちらの世界での平安時代の貴族の庭……資料で見た通りに再現されていて。本当に素晴らしいです」
と素直に答えながらも、心臓は緊張を素直に反映してバクバクいっていた。それもその筈、だって今……王太子殿下に抱き上げられて庭を散策しているから。
庭を見に行こう、と誘われるままに肯定の意を示したら、王太子殿下は「では、参ろう」と言って俺を抱えた上げたんだ。
『あ、いえ、そんな! じ、自分で歩きます、恐れ多い……』
『病み上がりなのだ。無理はいけない』
あわてふためく俺に少々厳しい面持ちで言う王太子殿下。だが、次の瞬間には穏やかに微笑んだ。
『それに、私がそうしたいのだ』
あまりにも優しい眼差しで見つめるので、断り辛くなってしまったのだ。同時に、ついさっきまで脳裏をかすめた王子の姿まで霧散していく。
「……どちらかと言えば、我が宮殿はそなたの世界でいうところの『西洋風』であるようだからな。それに、私はこのような『和』の雰囲気が好みでな」
ゆっくりと歩きながら語る。その完璧なまでに整った顔は、下から見上げても目を見張る程に美しい。
川縁に剣のように凛と立つ草の群れは、恐らく花菖蒲に違いない。初夏には、見事な瑠璃色、紫、白の花が咲き誇り、水面にその凜然と立つ姿が映し出されるだろう。隣に王太子殿下が佇む姿は、それだけで一枚の芸術だ……。
「……だが私は、夜の庭園が好きでな」
「夜……ですか?」
月を思わせる王太子殿下は、夜がよく似合う。
「あぁ。夏は庭いっぱいに、蛍が飛び交う様も風情だ」
「蛍……素敵です」
夜の庭に蛍。神秘的に浮かび上がる紫陽花に王太子殿下。なんてお似合いなんだろう!
「篝火で夜の庭を照らすのもまた雅だ」
「はい……」
優しく柔らかく、桜を照らす篝火。そして王太子殿下……これもまた神秘的だ。
「そなたと二人だけで、夜の庭園も堪能したい」
突然、王太子殿下は情熱的に語り、燃えるような眼差しを俺に向けた。
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