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第八十六話
『ラウェルナの指輪』の結末、そして王太子殿下との語らい
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「ほほぅ、『しかるべき手続きを取って神に返還する』が良いとな? その理由を聞かせて貰おうか」
王太子殿下は興味深そうに瞳を煌めかせた。
「はい、封印の魔術は今後月日が経つにつれ、もしかしたら封印を破ってしまう者が出て来ないとも言い切れません。また、取り扱い注意のアイテムとして秘宝の一つに加えるのは……勿論皆様がそのような悪運の女神に頼る事はない……とは思いますが、人は、時として……禁じられれば禁じられる程逆に興味を惹いてしまう。そんな性質があると思うからです。ですから、元の持ち主にお返しするのが一番良いのでは、と思いました」
率直に思った事を述べた。
「確かにな。駄目だ、と禁じられると言われると約束通りを破りたくなる話は、古来よりあったな。イザナギとイザナミの話や、アダムとイブの話など。そういう傾向は大いにあるだろうな……」
王太子殿下は、そう言ってしばらく遠くを見つめるようにして思考を巡らせているようだった。やがてゆっくりと口を開く。
「……私も、そなたの意見に同意する。『ラウェルナの指輪』それでは、然るべき手続きを取って、神に返すとしよう」
と口元を綻ばせた。何となく、月光のベ-ルに包まれているみたいに神秘的に見えた。
「……さて、愚か者どもの処罰について冥府の役人とそなたとの話し合いについて日程を調整したい、と言ってきてるのだが……」
ガラリと口調を変え、おどけたように切り出す。どちらかと言うと『無表情な氷の美貌』と思っていたのだが、こうして接してみると意外なほど表情が豊かである事に驚いた。
「出来るだけ早い内が良いです」
正直に答える。冥府のお役人だなんてかなり緊張するけど、興味津々だ。
「そうか。見たところ、だいぶ体の具合も回復し、安定してきているようだな。明後日の午後あたりはどうだ?」
「はい、問題ありません。宜しくお願いします」
「分かった。詳細は決まり次第連絡するとしよう」
「恐れ入ります。有難うございます」
王太子殿下は微かに笑みを浮かべる事で、肯定の意を示した。そして不意に、銀灰色の瞳が柔らかな光を湛えた。
「……そなたは自然が好きだと聞いた。そなたの為に庭を作らせてみたのだが、これから行ってみないか?」
え? 俺の為? 聞き間違いかな。まぁ、お誘いは受けるべき、だろうなぁ。
「光栄に存じます。はい、是非」
と笑顔で答えながらも、王子と俺の二人だけの『秘密の花園』が胸をよぎった。
王太子殿下は興味深そうに瞳を煌めかせた。
「はい、封印の魔術は今後月日が経つにつれ、もしかしたら封印を破ってしまう者が出て来ないとも言い切れません。また、取り扱い注意のアイテムとして秘宝の一つに加えるのは……勿論皆様がそのような悪運の女神に頼る事はない……とは思いますが、人は、時として……禁じられれば禁じられる程逆に興味を惹いてしまう。そんな性質があると思うからです。ですから、元の持ち主にお返しするのが一番良いのでは、と思いました」
率直に思った事を述べた。
「確かにな。駄目だ、と禁じられると言われると約束通りを破りたくなる話は、古来よりあったな。イザナギとイザナミの話や、アダムとイブの話など。そういう傾向は大いにあるだろうな……」
王太子殿下は、そう言ってしばらく遠くを見つめるようにして思考を巡らせているようだった。やがてゆっくりと口を開く。
「……私も、そなたの意見に同意する。『ラウェルナの指輪』それでは、然るべき手続きを取って、神に返すとしよう」
と口元を綻ばせた。何となく、月光のベ-ルに包まれているみたいに神秘的に見えた。
「……さて、愚か者どもの処罰について冥府の役人とそなたとの話し合いについて日程を調整したい、と言ってきてるのだが……」
ガラリと口調を変え、おどけたように切り出す。どちらかと言うと『無表情な氷の美貌』と思っていたのだが、こうして接してみると意外なほど表情が豊かである事に驚いた。
「出来るだけ早い内が良いです」
正直に答える。冥府のお役人だなんてかなり緊張するけど、興味津々だ。
「そうか。見たところ、だいぶ体の具合も回復し、安定してきているようだな。明後日の午後あたりはどうだ?」
「はい、問題ありません。宜しくお願いします」
「分かった。詳細は決まり次第連絡するとしよう」
「恐れ入ります。有難うございます」
王太子殿下は微かに笑みを浮かべる事で、肯定の意を示した。そして不意に、銀灰色の瞳が柔らかな光を湛えた。
「……そなたは自然が好きだと聞いた。そなたの為に庭を作らせてみたのだが、これから行ってみないか?」
え? 俺の為? 聞き間違いかな。まぁ、お誘いは受けるべき、だろうなぁ。
「光栄に存じます。はい、是非」
と笑顔で答えながらも、王子と俺の二人だけの『秘密の花園』が胸をよぎった。
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