その男、有能につき……

大和撫子

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第八十四話

冥府の裁き・前編

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 次に目を覚ました時は、随分と体が楽になっていた。天蓋付きのベッドに、白蔓薔薇のカ-テンが目に映る。微かに、蔓が揺れた。

「目覚めたか?」

 あぁ、コントラバスみたいな深く艶のある声。王太子殿下……

「はい」

 見事なストレートを誇る長い銀髪がサラサラとなびき、続いて深い紫色の直裾に身を包んだ王太子殿下が、蔓薔薇を掻き分けて目の前にやって来た。

「あぁ、随分と顔色が良くなった。具合はどうだ?」
「はい、もう随分と楽になりました。有難うございます」

 やっぱり、王太子殿下と話すのは緊張する。

「あの愚か者どもの裁きが決まったのだが……。見てみるか?」
 
 美しい銀色の眉を少しひそめ、様子を窺いながら問いかける。きっと、魔術か何かで映像を見せるのだろう。あの三人があの後どうなったかは物凄く気になる。

 ……王子はあれからどう過ごされているのだろう……?

 正直言うと、一番それが気になる。そして、リアンは? 央雅は? レオとノアは? けれども、それを口に出すのは憚られた。

「はい、宜しくお願いします」

 ここはそう答えるべきだろう。

「分かった。そのまま、寝ていて大丈夫だからな。先ずはあの後すぐの愚か者どもを見せよう」

 王太子殿下は右手で軽くトントン、と俺の左肩を叩く。その後右手を軽く上にあげると、目の前の蔓薔薇のカ-テンがスルスルと左右に開いた。

 何だかベルサイユ宮殿の客間という感じの、広くて豪華な部屋だ。シャンデリアなんか天井に三つもついてるし。

 王太子殿下は右手中指と親指を擦り合わせてパチンと慣らした。すると、3D映画のように立体的に浮かび上がる腑抜け王。その後ろに、コバルトブルーの軍服姿に身を包んだ背の高い男が、腑抜け王の両手首を鉄の椅子に縛り付けている姿が映し出される。藍色の長い髪を後ろで束ね、面長で色白、涼やかな目元はオリ-ブ色だ。何となく、瑠璃色の花菖蒲を思わせる美形だ。

「四天王の内、北を司るハロルドだ」

 王太子殿下は説明する。

『おのれ! 国王陛下である儂に無礼であろう!』

 腑抜け王は鉄の椅子に座らせられ、両手首を後ろで椅子の支柱に縛りつけられると、烈火の如く怒り出す。

『全てはクリスティアン様の御心のままに』

 ハロルドは冷たくそう答えると、見張るように腑抜け王の後ろに控えた。六畳一間の灰色の鉄格子の部屋のまん中に置かれた椅子の上。腑抜け王からしてみたら、生まれて初めて裁きを受けるという体験をするのだろう。


『も、もう……許し……て』

 続いて映し出されたのは、腑抜け王と同じように、椅子の支柱に両手首を縛り付けられている変態女の姿だった。背後に、両手を翳した藍色の軍服姿の男が立っている。ミルク色の肌に、波打つブロンズ色の髪、キュ-トな小豆色の目を持つ美形だ。

 特に傷がついている訳でも無いようだが、変態女は苦悶の表情に歪み、グッタリしている。

「西を司るエリックだ。彼の繰り出す幻術で、惟光が受けた拷問をそのままクレメンスに体感させているのだ。もちろん、メンタル的に現実で感じる痛みと苦しみを味わわせている状態だ」

 王太子殿下は説明した。なるほど。いい気味だ、なんて少しくらい思っても良いよな?

 続いて脹れ面のアルフォンスが映し出された。
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