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第七十九話
四面楚歌、剣ヶ峰……手立て無し! されど起死回生なるか?!・前編
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ヒュー……ゼイゼィ……息苦しさに意識が浮上していく。呼吸がままならず、気管支の悲鳴を聞きながら意識を取り戻したと同時に感じるのは絶望……。意識など戻らぬままの方が幸せに思うのに。この後、また激しい咳の発作の挙句に大量に喀血させられて。苦しみ抜いた果てに意識を失い、また意識を取り戻して……もう、何度繰り返されたろう……もう無理だ。いっそ、殺してくれ。
「……ええ、少しは睡眠を取られせて、何か栄養を補給させないと、『生ける屍』になってしまいますから。さすがに、このままの状態で生かしておけば、気が狂ってしまいます」
アルフォンスの声だ。何食わぬ顔で、王子の毒味役をし続けるのか? 隣の部屋か。声が筒抜けなのは、わざと、だな。怒りと虚しさ、絶望感を味わわせたい、て事か……
「もう血が渇いて黒ずんで口の周りとか体にこびり付いて来て醜いの。沐浴は私がさせたいわ! お着換えも。ね、アル。サポートして!」
クレメンス……王子の母親の事、悪く言いたかねーが変態女じゃねーか。完全に俺の事玩具にしやがって……あぁクソッ……酸欠で頭痛が酷い。けれど意識はどんどんはっきりして来る。拷問以外何ものでもねーや。
「サポートはいいですけれど。でもいやいや、あの状態で湯に浸けたら死んでしまいますって。抵抗力も無いから、肺が一発でお陀仏ですよ」
「あらぁ! それもいいわねぇ。肺結核で喘息で肺閉塞とか素敵! これって、あのお人形さんの世界特有の病気だから移る事もないし」
な、何言ってるんだ……なら自分で体験しやがれ……
「それだと、生かしたままにするのはごく短期間しか楽しめませんよ」
「そう、それは困るわ。あんな逸材、もう二度と手に入らないかもしれないもの」
このまま生かさず殺さず……弄び続けるつもり……か?
「意識を取り戻したようです。まずはお湯で体を拭いて着替えさせましょう」
「そうね。着替えを持って行くから、先にお湯とか準備していて」
「御意」
来る……もう、勘弁してくれ。右手にお湯の入ったタライ、左手に白いバスタオルを二枚持って面従腹背Boyが入って来た。
「おーやおや、反抗的な眼差し。悔しいだろうねぇ。でも、僕たちには『悪事の女神』様がついているから。救援は期待出来ないよ。諦めて玩具になりな。クレメンス様のお気に入りのお人形になれたんだ。光栄じゃないか」
悪事の女神? 『ラウェルナの指輪』か……? 恐らく、変態女が持っていると推測される。悪い事をしていると自覚があるあたり、余計タチが悪いな……。あ、そういえば、アグラの盾とオーロラの涙のペンダントは……あった、良かった……
「……そのペンダント、余程気になるようだね。取ろうとしたけど、それだけは触れようとしただけで弾かれちまうんだ。相当、強力な結界が張られてるみたいだね。僕の分析力を持ってしても解析解除不可能だ。ま、それがあったからって形成逆転になんぞならんけどな」
アルフォンスは、タライに張ったお湯にタオルの一枚を浸しながら勝ち誇ったように言った。そうか、このペンダント、あの時はオーロラの涙だけだったけど、王太子殿下に手籠めにされそうになった時も無事だったっけ……。そうか! これは、もしかして……
「何だよ、その反抗的な目は!?」
俺とした事が、危うく諦めるところだったぜ。……アル、最大のヒント、有難うな。まだ、希望はあるぞ。俺が諦めない限り!
「何だよ? 胸に激痛と呼吸困難、意識を失う事も出来ずに壮絶に苦しい筈だろう? 何、余裕かましてんだよ?」
何やら焦ったように怒り始める。絞りかけていたタオルを放り投げ、右手で俺の前髪を鷲掴みにしやがった。
「何だよ? 呼吸出来ない筈だろ?」
……あぁ、確かにな。けど、生憎打たれ強いのが取り柄でね。何度か苦痛も味わわされ続けると、耐性が出来るらしいんだ。雑魚キャラだけに、踏まれれば踏まれる程強くなる雑草みたいにな……いや、実際のところ……死の危機を目前にして過剰なアドレナリンが分泌され、激痛も呼吸困難も感じなくなってきただけだろう。つまり、俺にとったら今が文字通り今がラストチャンス、て訳だ。
「何とか言えよ!」
……ゼイゼイヒューヒュー、ままならぬ呼吸を何とかしようと虚しく抵抗する音。さすがに、声は出せない……だが、不敵な笑みとやらを浮かべてやる。
「コイツ!」
ふふ、怒れ! 殴ってみろ! 俺の推測が正しければ……果たして、変態女は、何て言うかな? 奴め、拳を振りあげて……
「アルフォンス!! 私の大切な生き人形さんに何をしているの?」
変態女の冷たい声。その手に白い衣装を数枚持ち、冷たい顔でアルフォンスを見下ろす。ほーらな。
「も、申し訳ございません。こやつが、反抗的な態度を取るもんで、クレメンス様に御不快な思いをさせぬ為にお灸を据えようと……」
腹黒め、口から出まかせをポンポンと……
「あら、少しくらい反抗してくれないと、生かしている意味ないじゃない。私の許可なく、その子に手を出すのは許さないわよ」
ゾッとするほどの冷酷な眼差し。さすが、国王陛下を骨抜きにするだけの事はある……傾国、てヤツか?
「大変、申し訳ございません。出過ぎた真似をしました。何卒、お許しください、クレメンス様」
弾かれたように俺を離し、土下座をするアルフォンス。やっぱりな、骨抜きにされているのはお前もか……
「二度めは、無いわよ」
「はい!」
「……ま、いいわ。ね、アル。着替えはまた白い着物か、白のバスローブ、どっちが喀血に映えるかしらね?」
瞬時に切り替え、無邪気な笑みを浮かべる女。コイツ、タダものじゃねーな……。フォルス、頼むぞ! そしてヘルメス、俺はここだ! 左手首と、アグラの盾のペンダントに意識を向け、語りかける。こんな変態どもの餌食になって廃人になるのは御免だ! 大人しく死ぬつもりもない。逆境続きのモブキャラ人生、舐めんなよ!
「……ええ、少しは睡眠を取られせて、何か栄養を補給させないと、『生ける屍』になってしまいますから。さすがに、このままの状態で生かしておけば、気が狂ってしまいます」
アルフォンスの声だ。何食わぬ顔で、王子の毒味役をし続けるのか? 隣の部屋か。声が筒抜けなのは、わざと、だな。怒りと虚しさ、絶望感を味わわせたい、て事か……
「もう血が渇いて黒ずんで口の周りとか体にこびり付いて来て醜いの。沐浴は私がさせたいわ! お着換えも。ね、アル。サポートして!」
クレメンス……王子の母親の事、悪く言いたかねーが変態女じゃねーか。完全に俺の事玩具にしやがって……あぁクソッ……酸欠で頭痛が酷い。けれど意識はどんどんはっきりして来る。拷問以外何ものでもねーや。
「サポートはいいですけれど。でもいやいや、あの状態で湯に浸けたら死んでしまいますって。抵抗力も無いから、肺が一発でお陀仏ですよ」
「あらぁ! それもいいわねぇ。肺結核で喘息で肺閉塞とか素敵! これって、あのお人形さんの世界特有の病気だから移る事もないし」
な、何言ってるんだ……なら自分で体験しやがれ……
「それだと、生かしたままにするのはごく短期間しか楽しめませんよ」
「そう、それは困るわ。あんな逸材、もう二度と手に入らないかもしれないもの」
このまま生かさず殺さず……弄び続けるつもり……か?
「意識を取り戻したようです。まずはお湯で体を拭いて着替えさせましょう」
「そうね。着替えを持って行くから、先にお湯とか準備していて」
「御意」
来る……もう、勘弁してくれ。右手にお湯の入ったタライ、左手に白いバスタオルを二枚持って面従腹背Boyが入って来た。
「おーやおや、反抗的な眼差し。悔しいだろうねぇ。でも、僕たちには『悪事の女神』様がついているから。救援は期待出来ないよ。諦めて玩具になりな。クレメンス様のお気に入りのお人形になれたんだ。光栄じゃないか」
悪事の女神? 『ラウェルナの指輪』か……? 恐らく、変態女が持っていると推測される。悪い事をしていると自覚があるあたり、余計タチが悪いな……。あ、そういえば、アグラの盾とオーロラの涙のペンダントは……あった、良かった……
「……そのペンダント、余程気になるようだね。取ろうとしたけど、それだけは触れようとしただけで弾かれちまうんだ。相当、強力な結界が張られてるみたいだね。僕の分析力を持ってしても解析解除不可能だ。ま、それがあったからって形成逆転になんぞならんけどな」
アルフォンスは、タライに張ったお湯にタオルの一枚を浸しながら勝ち誇ったように言った。そうか、このペンダント、あの時はオーロラの涙だけだったけど、王太子殿下に手籠めにされそうになった時も無事だったっけ……。そうか! これは、もしかして……
「何だよ、その反抗的な目は!?」
俺とした事が、危うく諦めるところだったぜ。……アル、最大のヒント、有難うな。まだ、希望はあるぞ。俺が諦めない限り!
「何だよ? 胸に激痛と呼吸困難、意識を失う事も出来ずに壮絶に苦しい筈だろう? 何、余裕かましてんだよ?」
何やら焦ったように怒り始める。絞りかけていたタオルを放り投げ、右手で俺の前髪を鷲掴みにしやがった。
「何だよ? 呼吸出来ない筈だろ?」
……あぁ、確かにな。けど、生憎打たれ強いのが取り柄でね。何度か苦痛も味わわされ続けると、耐性が出来るらしいんだ。雑魚キャラだけに、踏まれれば踏まれる程強くなる雑草みたいにな……いや、実際のところ……死の危機を目前にして過剰なアドレナリンが分泌され、激痛も呼吸困難も感じなくなってきただけだろう。つまり、俺にとったら今が文字通り今がラストチャンス、て訳だ。
「何とか言えよ!」
……ゼイゼイヒューヒュー、ままならぬ呼吸を何とかしようと虚しく抵抗する音。さすがに、声は出せない……だが、不敵な笑みとやらを浮かべてやる。
「コイツ!」
ふふ、怒れ! 殴ってみろ! 俺の推測が正しければ……果たして、変態女は、何て言うかな? 奴め、拳を振りあげて……
「アルフォンス!! 私の大切な生き人形さんに何をしているの?」
変態女の冷たい声。その手に白い衣装を数枚持ち、冷たい顔でアルフォンスを見下ろす。ほーらな。
「も、申し訳ございません。こやつが、反抗的な態度を取るもんで、クレメンス様に御不快な思いをさせぬ為にお灸を据えようと……」
腹黒め、口から出まかせをポンポンと……
「あら、少しくらい反抗してくれないと、生かしている意味ないじゃない。私の許可なく、その子に手を出すのは許さないわよ」
ゾッとするほどの冷酷な眼差し。さすが、国王陛下を骨抜きにするだけの事はある……傾国、てヤツか?
「大変、申し訳ございません。出過ぎた真似をしました。何卒、お許しください、クレメンス様」
弾かれたように俺を離し、土下座をするアルフォンス。やっぱりな、骨抜きにされているのはお前もか……
「二度めは、無いわよ」
「はい!」
「……ま、いいわ。ね、アル。着替えはまた白い着物か、白のバスローブ、どっちが喀血に映えるかしらね?」
瞬時に切り替え、無邪気な笑みを浮かべる女。コイツ、タダものじゃねーな……。フォルス、頼むぞ! そしてヘルメス、俺はここだ! 左手首と、アグラの盾のペンダントに意識を向け、語りかける。こんな変態どもの餌食になって廃人になるのは御免だ! 大人しく死ぬつもりもない。逆境続きのモブキャラ人生、舐めんなよ!
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