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第七十四話
彩光界建国記念日リハーサル・後編
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よし、ここで立ち上がってお辞儀。そして……座る。後は式典が終わるまでこのまま曖昧な笑みを浮かべて人形みたいに微動だにせず、な状態でいれば良い。
あれから三時間ほど爆睡した。スッキリと目覚めた頃はもう体も軽やかで力が漲ってくる感じがした。これは有り難いぞ!
そして今朝、とうとうリハーサルの日を迎えた。脳内で何度もシュミレーションをしたせいかそれほどあたふたせずにいられた。まぁ、観客は誰もいないし、歩く時は王子の後ろを、座る時は王子の隣で……という順で並んでいるからかもしれない。本番、沢山の環境を目にしたらたちまち緊張でガチガチになるに違いない。その緊張に呑み込まれないようにしないと、右手と右足を同時に出してロボットみたいな歩行になりそうだ。これは拙い。しかも、だ。歩く時は俺の後ろ、座る際は右隣にいる奴は、あの面従腹背Boyだったんだ。
……なんでお前ごときが俺の真ん前なんだよ!?……
と、何やら憎しみに満ちた眼差しを感じたら、ソイツだった。……と言っても、相変わらず表面上は穏やかな笑みを浮かべていたけれど。ただ、萌黄色のデカい瞳は口元の笑顔を裏切って、どす黒い怒りを語っていた。多分、俺のように対人関係で揉まれて来た者じゃないと感じ取れないものだけれど。ふわふわしたオレンジの髪は首の後ろで一つにまとめ、枯草色のスーツ姿だった。緑のバンダナはさすがに外してあるようだ。奴の後ろに央雅が、面従腹背Boyと同じスーツ姿で。リアンは紺のスーツ姿だ。進行役で列には加わず舞台の袖にいる。王子は、白を基調にした十九世紀あたりの英国王子の正装のような衣装に身を包んでいた。うーん、気高くそしてお美しい……
俺の羽織袴は周りに合わせたのだろう、若竹色の着物と袴、深緑の帯の袴、という色合いとなった。
国王陛下は本番のみの参加で不在。ここだけの話、どんな好色オヤジなのか見てみたいと思ってたんだよな。明日が楽しみだ。明日の式典が終了するまでは、私語厳禁! と決められているから、王子とお話出来ないのは寂しいけれど。でも、時折柔らかい視線を向けてくれたりして、てへへっ。
王太子殿下と近侍達の列、ラディウス王子と近侍達の列と分けられて会場に入っていく。列と言っても王太子殿下の後ろには、見るからに頭の切れそうな紺色の短髪男が、黒のスーツ姿で控えている。恐らく秘書的な役割をするのだろう。その後ろにあの蛍光色縦ロール頭兄弟がチャコールグレーのスーツ姿でいるだけで、こちらの列と同じ人数だった。
蛍光色縦ロール頭兄弟、王太子殿下に引き抜かれたと聞いたが、本当だったんだな。相も変わらずのナルシスト、て感じで、自分に酔っている感じがある意味羨ましい。
会場は、一言で言うなら巨大な劇場、という感じか。雨風が凌げるよう重要なイベントごとは室内で行われるらしい。つまり俺達は、舞台の上に用意された椅子に座ったり立ったりして式典を行う訳だ。進行役はリアンの他にもう一人、小柄で可愛い感じの男子がいて。舞台裏にはかなりのスタッフが控えている様子だ。
そして俺は、精霊たち全員と四大天使に守られながらいる。勿論、彼らの姿形は周りには見えない。長時間精霊たちを呼び出したままにしておくのは俺の体は持たない、と何とも情けない理由でやらないようにリアンに念を押されているけれど。大天使ラファエルに最初から力を借りていれば、35秒以内で窮地を乗り越えて身の安全を確保、なんて焦らなくてもいけるんじゃないか、て思ってさ。何せ、癒しと浄化を司る天使だから。……つい明け方、思い付いたんだけど。
それで、今朝方頑張ってまずラファエルを呼び出したんだ。事情を説明して、ラファエルの力で俺の体力の無さをカバーして欲しい旨を話したら快諾してくれて。(さすが人間に好意的な優しい天使様だよな)その後、光・闇・植物・火・水・風・土の精霊たちと、ガブリエル、ラファエル、ウリエルを呼び出してみたんだけど。何やら精霊たちのザワつき加減が半端なくて。どうしたのかと思ったら、
『四大天使トモアロウ御方が揃ッテイルナラ、我々ハ必要ナカロウ?』
と光の精霊が食ってかかってきたんだ。彼は四大天使の手前、前回は光の天使をかたどっていたけれど、今回は光の牡鹿をかたどっていた。俺、凄く無神経な事をしたんだ、てその時初めて痛感したんだ。自分の事で一杯いっぱいで配慮が足りなかったんだな、と猛省した。天使たちも、表情は分からないけれどあまり良い顔はしていないようだ。それぞれ誇りを持って俺の為に仕えてくれているのに、天使と精霊、互いの領域を侵すような事するのは無神経だよな。互いに譲れないプライドもあるだろうしさ。それで……
「ごめん、俺が浅はかだった。自分の事で手一杯で、種族の領域の事なんてちっとも考えが及ばなかったよ。だけど俺、どうしても窮地を乗り越えてたいんだ。この通り、俺弱っちくて未熟もんだからさ。皆の力を貸して貰えないだろうか? 頼む、この通りだ!」
と、正直に話して頭を下げた。
『……先ズハ今日、ヤッテミマショウ。ソレデ改善点ヤ意見ガアレバ今宵話シ合イマショウ』
と、ラファエルが場を宥めるようにして提案してくれたんだ。それで、今に至る。まぁ、言ってしまえば……天使と精霊たちの善意とお情けで手に入れたチート能力……て感じか。
あれから三時間ほど爆睡した。スッキリと目覚めた頃はもう体も軽やかで力が漲ってくる感じがした。これは有り難いぞ!
そして今朝、とうとうリハーサルの日を迎えた。脳内で何度もシュミレーションをしたせいかそれほどあたふたせずにいられた。まぁ、観客は誰もいないし、歩く時は王子の後ろを、座る時は王子の隣で……という順で並んでいるからかもしれない。本番、沢山の環境を目にしたらたちまち緊張でガチガチになるに違いない。その緊張に呑み込まれないようにしないと、右手と右足を同時に出してロボットみたいな歩行になりそうだ。これは拙い。しかも、だ。歩く時は俺の後ろ、座る際は右隣にいる奴は、あの面従腹背Boyだったんだ。
……なんでお前ごときが俺の真ん前なんだよ!?……
と、何やら憎しみに満ちた眼差しを感じたら、ソイツだった。……と言っても、相変わらず表面上は穏やかな笑みを浮かべていたけれど。ただ、萌黄色のデカい瞳は口元の笑顔を裏切って、どす黒い怒りを語っていた。多分、俺のように対人関係で揉まれて来た者じゃないと感じ取れないものだけれど。ふわふわしたオレンジの髪は首の後ろで一つにまとめ、枯草色のスーツ姿だった。緑のバンダナはさすがに外してあるようだ。奴の後ろに央雅が、面従腹背Boyと同じスーツ姿で。リアンは紺のスーツ姿だ。進行役で列には加わず舞台の袖にいる。王子は、白を基調にした十九世紀あたりの英国王子の正装のような衣装に身を包んでいた。うーん、気高くそしてお美しい……
俺の羽織袴は周りに合わせたのだろう、若竹色の着物と袴、深緑の帯の袴、という色合いとなった。
国王陛下は本番のみの参加で不在。ここだけの話、どんな好色オヤジなのか見てみたいと思ってたんだよな。明日が楽しみだ。明日の式典が終了するまでは、私語厳禁! と決められているから、王子とお話出来ないのは寂しいけれど。でも、時折柔らかい視線を向けてくれたりして、てへへっ。
王太子殿下と近侍達の列、ラディウス王子と近侍達の列と分けられて会場に入っていく。列と言っても王太子殿下の後ろには、見るからに頭の切れそうな紺色の短髪男が、黒のスーツ姿で控えている。恐らく秘書的な役割をするのだろう。その後ろにあの蛍光色縦ロール頭兄弟がチャコールグレーのスーツ姿でいるだけで、こちらの列と同じ人数だった。
蛍光色縦ロール頭兄弟、王太子殿下に引き抜かれたと聞いたが、本当だったんだな。相も変わらずのナルシスト、て感じで、自分に酔っている感じがある意味羨ましい。
会場は、一言で言うなら巨大な劇場、という感じか。雨風が凌げるよう重要なイベントごとは室内で行われるらしい。つまり俺達は、舞台の上に用意された椅子に座ったり立ったりして式典を行う訳だ。進行役はリアンの他にもう一人、小柄で可愛い感じの男子がいて。舞台裏にはかなりのスタッフが控えている様子だ。
そして俺は、精霊たち全員と四大天使に守られながらいる。勿論、彼らの姿形は周りには見えない。長時間精霊たちを呼び出したままにしておくのは俺の体は持たない、と何とも情けない理由でやらないようにリアンに念を押されているけれど。大天使ラファエルに最初から力を借りていれば、35秒以内で窮地を乗り越えて身の安全を確保、なんて焦らなくてもいけるんじゃないか、て思ってさ。何せ、癒しと浄化を司る天使だから。……つい明け方、思い付いたんだけど。
それで、今朝方頑張ってまずラファエルを呼び出したんだ。事情を説明して、ラファエルの力で俺の体力の無さをカバーして欲しい旨を話したら快諾してくれて。(さすが人間に好意的な優しい天使様だよな)その後、光・闇・植物・火・水・風・土の精霊たちと、ガブリエル、ラファエル、ウリエルを呼び出してみたんだけど。何やら精霊たちのザワつき加減が半端なくて。どうしたのかと思ったら、
『四大天使トモアロウ御方が揃ッテイルナラ、我々ハ必要ナカロウ?』
と光の精霊が食ってかかってきたんだ。彼は四大天使の手前、前回は光の天使をかたどっていたけれど、今回は光の牡鹿をかたどっていた。俺、凄く無神経な事をしたんだ、てその時初めて痛感したんだ。自分の事で一杯いっぱいで配慮が足りなかったんだな、と猛省した。天使たちも、表情は分からないけれどあまり良い顔はしていないようだ。それぞれ誇りを持って俺の為に仕えてくれているのに、天使と精霊、互いの領域を侵すような事するのは無神経だよな。互いに譲れないプライドもあるだろうしさ。それで……
「ごめん、俺が浅はかだった。自分の事で手一杯で、種族の領域の事なんてちっとも考えが及ばなかったよ。だけど俺、どうしても窮地を乗り越えてたいんだ。この通り、俺弱っちくて未熟もんだからさ。皆の力を貸して貰えないだろうか? 頼む、この通りだ!」
と、正直に話して頭を下げた。
『……先ズハ今日、ヤッテミマショウ。ソレデ改善点ヤ意見ガアレバ今宵話シ合イマショウ』
と、ラファエルが場を宥めるようにして提案してくれたんだ。それで、今に至る。まぁ、言ってしまえば……天使と精霊たちの善意とお情けで手に入れたチート能力……て感じか。
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