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第七十三話
彩光界建国記念日・その一
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今から一万年ほど前、彩光界が世界の頂点に立った日を彩光界の建国記念日として定められた。即ち、『王位継承の秘宝』を全て手に入れた暁でもあった。
これまで『王位継承の秘宝』の五つは……
我が国彩光界は、『女神エイレーネーの鏡』をエターナル王家が代々受け継いで来た。そして花緑界には『天使アウリエルの水晶球』が。宝土界には『アグラの盾』、水命界に『クラウ・ソラスの聖剣』、夢夜界に『テミスの天秤』が。各国の王が代々所有して来た。更には、バランス感覚とあらゆる世界の垣根を飛び越え、気ままで自由な風空界が秘宝を所有しない事によって各国の均衡を保ってきた。そうする事で、敢えて国による優劣をつけずに平和を保っていた。
けれども、五つの秘宝を同時に持つ者が全てを束ねる力を持つ、という言い伝えを信じ、世界を我が手にしようと争い事が始まり、戦乱の世へと傾きつつあった。
その状況を誰よりも憂いだ当時のエターナル王が、五つの秘宝を全て手中に治める事により、争い事は少なくなり、平和な世の中へと変貌を遂げた。以来、毎年12月12日を彩光界建国記念日としている。
*******
「へぇ?! そんな歴史があったのかぁ」
何やら感慨深気に呟きながら、読んでいた本をテーブルの上に置いた。厚さも大きさも広辞苑ほどの、彩光界の歴史書だ。建国記念日の式典に参加するにあたり、彩光界の事をまるで知らないままでいる訳にはいかない。だから、リアンに頼んで一番分かりやすい歴史書を貸して貰ったんだ。
恐らく、どの世界に行っても存在するであろうその国の歴史書。落ち着いたら各国の歴史書を読んでみようと思っている。各国での幼児の情操教育(?)を仕事にするなら、その国の歴史は知っておくのが礼儀だし当たり前もんな。
一息つこうと、レオとノアが用意してくれたホットココアにを飲もうと右手を伸ばす。その時、左斜め後方にゾワッと来る感覚を覚えた。王子に頂いた『アグラの盾のペンダント』に意識を向ける。
ゴン、と左側頭部近くで金属に硬い物が当たったような音がした。ポンッと床に落ちたそれを見やる。銀色の矢じりだ。
「お見事です!」
という声と共に、矢じりを拾うリアンがスッと出現した。突如、右のこめかみあたりにゾクリとした感覚を味わう。再び『アグラの盾のペンダント』に意識を向けた。同時に右のこめかみあたりに向かって何かがピュンと飛んで来た。それは右のこめかみの10cmほど先で、まるで目には見えない壁にでもぶち当たったかのように、それはゴンと音を立てて床に転がり落ちた。それは黒い矢じりだった。
「さすがです!」
と言う魅惑のバリトンボイスと共に、落ちた矢じりを拾う央雅が姿を表した。両者とも、殺気を隠して俺に不意打ち攻撃を喰らわす為、魔術で姿を消して攻撃を仕掛けて来たのだ。『アグラの盾のペンダント』に意識を向けるだけで、瞬時に目には視えない強力な盾として機能するように練習中だ。
「銀の矢じりは魔術、黒の方は毒矢か……」
と感じたままを言ってみる。
「ご名答です」
微笑むリアンと、笑みを浮かべて頷く央雅。しかし……
「……ゼィゼイ、ハァハァ……ソーダライトの……ゴホッ、サークレットのお陰で。目に視えない……ハァハァ……危険の察知とインスピレーションが、即席で……コンコンゴホッ……授けれた感じだな。ハァハァ……落ち着いていられるのは……ガーネットの……アンクレットの力も、大きい……」
と答える。まさにそうだと思う。そしてすかさず央雅が背後に回り、背中をさすってくれている事に感謝しながらも、たったこれだけの事で息が上がってしまう己に苦笑してしまう。
「しかし、いくら短時間で効率良く鍛えたいとおっしゃいましても……空気を薄くして稽古だなんて。危険過ぎではありませんか?」
リアンは右手を天に翳し、空気の上体を少しずつ元に戻しながら言った。眉を微かに潜め、酷く心配そうだ。
「いや、短期間で直観力と瞬発力、魔術の向上を図るには命の危険性を感じながらの方が伸び易いだろうし。何よりも心肺機能を短期間で鍛えるには空気を薄くして稽古をする、てのが一石二鳥だと思うんだ」
空気が元の状態に戻るにつれ、呼吸が整ってきたのを感じながらこたえた。
そうなんだ。建国記念日に備えて、心身と魔術全てを短期間で向上させるには、空気を薄くして本気で襲いかかって来て貰う実戦形式が最善だろう、て考えたんだ。それで、リアンに相談した結果こうなった。まぁ、本気で襲いかかると言っても、本当に危険な場合は寸度めするつもりだろうし、本当の意味では実践ではないけれど。模擬試験みたいな感じにはなるかな、て。
ま、背水の陣ってやつだ。せっかく手に入れたチート能力、せめて一通りは使いこなせるようにはしないとな。
……建国記念日まで、後六日……
絶対に生き延びてみせる!
今から一万年ほど前、彩光界が世界の頂点に立った日を彩光界の建国記念日として定められた。即ち、『王位継承の秘宝』を全て手に入れた暁でもあった。
これまで『王位継承の秘宝』の五つは……
我が国彩光界は、『女神エイレーネーの鏡』をエターナル王家が代々受け継いで来た。そして花緑界には『天使アウリエルの水晶球』が。宝土界には『アグラの盾』、水命界に『クラウ・ソラスの聖剣』、夢夜界に『テミスの天秤』が。各国の王が代々所有して来た。更には、バランス感覚とあらゆる世界の垣根を飛び越え、気ままで自由な風空界が秘宝を所有しない事によって各国の均衡を保ってきた。そうする事で、敢えて国による優劣をつけずに平和を保っていた。
けれども、五つの秘宝を同時に持つ者が全てを束ねる力を持つ、という言い伝えを信じ、世界を我が手にしようと争い事が始まり、戦乱の世へと傾きつつあった。
その状況を誰よりも憂いだ当時のエターナル王が、五つの秘宝を全て手中に治める事により、争い事は少なくなり、平和な世の中へと変貌を遂げた。以来、毎年12月12日を彩光界建国記念日としている。
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「へぇ?! そんな歴史があったのかぁ」
何やら感慨深気に呟きながら、読んでいた本をテーブルの上に置いた。厚さも大きさも広辞苑ほどの、彩光界の歴史書だ。建国記念日の式典に参加するにあたり、彩光界の事をまるで知らないままでいる訳にはいかない。だから、リアンに頼んで一番分かりやすい歴史書を貸して貰ったんだ。
恐らく、どの世界に行っても存在するであろうその国の歴史書。落ち着いたら各国の歴史書を読んでみようと思っている。各国での幼児の情操教育(?)を仕事にするなら、その国の歴史は知っておくのが礼儀だし当たり前もんな。
一息つこうと、レオとノアが用意してくれたホットココアにを飲もうと右手を伸ばす。その時、左斜め後方にゾワッと来る感覚を覚えた。王子に頂いた『アグラの盾のペンダント』に意識を向ける。
ゴン、と左側頭部近くで金属に硬い物が当たったような音がした。ポンッと床に落ちたそれを見やる。銀色の矢じりだ。
「お見事です!」
という声と共に、矢じりを拾うリアンがスッと出現した。突如、右のこめかみあたりにゾクリとした感覚を味わう。再び『アグラの盾のペンダント』に意識を向けた。同時に右のこめかみあたりに向かって何かがピュンと飛んで来た。それは右のこめかみの10cmほど先で、まるで目には見えない壁にでもぶち当たったかのように、それはゴンと音を立てて床に転がり落ちた。それは黒い矢じりだった。
「さすがです!」
と言う魅惑のバリトンボイスと共に、落ちた矢じりを拾う央雅が姿を表した。両者とも、殺気を隠して俺に不意打ち攻撃を喰らわす為、魔術で姿を消して攻撃を仕掛けて来たのだ。『アグラの盾のペンダント』に意識を向けるだけで、瞬時に目には視えない強力な盾として機能するように練習中だ。
「銀の矢じりは魔術、黒の方は毒矢か……」
と感じたままを言ってみる。
「ご名答です」
微笑むリアンと、笑みを浮かべて頷く央雅。しかし……
「……ゼィゼイ、ハァハァ……ソーダライトの……ゴホッ、サークレットのお陰で。目に視えない……ハァハァ……危険の察知とインスピレーションが、即席で……コンコンゴホッ……授けれた感じだな。ハァハァ……落ち着いていられるのは……ガーネットの……アンクレットの力も、大きい……」
と答える。まさにそうだと思う。そしてすかさず央雅が背後に回り、背中をさすってくれている事に感謝しながらも、たったこれだけの事で息が上がってしまう己に苦笑してしまう。
「しかし、いくら短時間で効率良く鍛えたいとおっしゃいましても……空気を薄くして稽古だなんて。危険過ぎではありませんか?」
リアンは右手を天に翳し、空気の上体を少しずつ元に戻しながら言った。眉を微かに潜め、酷く心配そうだ。
「いや、短期間で直観力と瞬発力、魔術の向上を図るには命の危険性を感じながらの方が伸び易いだろうし。何よりも心肺機能を短期間で鍛えるには空気を薄くして稽古をする、てのが一石二鳥だと思うんだ」
空気が元の状態に戻るにつれ、呼吸が整ってきたのを感じながらこたえた。
そうなんだ。建国記念日に備えて、心身と魔術全てを短期間で向上させるには、空気を薄くして本気で襲いかかって来て貰う実戦形式が最善だろう、て考えたんだ。それで、リアンに相談した結果こうなった。まぁ、本気で襲いかかると言っても、本当に危険な場合は寸度めするつもりだろうし、本当の意味では実践ではないけれど。模擬試験みたいな感じにはなるかな、て。
ま、背水の陣ってやつだ。せっかく手に入れたチート能力、せめて一通りは使いこなせるようにはしないとな。
……建国記念日まで、後六日……
絶対に生き延びてみせる!
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