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第五十四話
彩光界散策&メフィストフェレスとの再会??・中編
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今まで光り包まれていた筈なのに、いきなり暗闇の中に一人佇んでいた。いやいやいやいや、また異界とか駄目だって。央雅なんて俺が消えたの目の当たりにしてるんだし、今回もそれだったら切腹でもしかねないぞ! レオやノアだってそうだ。さて、どうするか? ブレスレットにお願いしてみるか?
「やはり、あなたは自分の事より周りを優先させるのですねぇ。それも全く見返りを求めていない。本当に珍しい人間だ」
という声と共に、目の前に襟巻トカゲみたいな大きなオレンジ色の襟、ピエロが着そうな黄色いダボダボの衣装を身に纏ったピエロがふわりと出現。心臓が口から飛び出る程驚いた。相も変わらず、もじゃもじゃの赤毛に派手なオレンジのトンガリ帽子、真っ白な化粧、真っ赤に避けた唇、ピンポンボール大の赤い丸玉が鼻の頭についている。目の周りには赤い隈取りがされていて、素顔は不明だ。彼は空に浮いたような状態で左足を引き、右手を胸の前に持って来て丁寧にお辞儀をした。
「ご安心ください、一時的に意識だけを切り離した空間におります。お付きの方々には誰一人としてバレませんよ。時間にしてほんの十数秒お借りするだけですから」
メイクが濃すぎて表情が全く見えねー。真っ白な化粧に真っ赤な鼻先と唇、これをホラーと言わずに何と言おう? 変な汗が背中を流れた。けど、こういう時こそ自分をしっかり持たないと、本気で魂持ってかれちまうぞ!
足の裏と下腹に力を込め、背筋を伸ばして腹式呼吸を意識する。キッと奴を見据えた。気持ちだけは、負けるもんか!
「いきなり何の用だ?」
「まぁまぁ、悪い話じゃないですよ」
宥めすかすようにしてこたえるメフィストフェレス。でも悪魔やら妖魔絡みでめでたしめでたしで終わる話の方が稀じゃねーのか?
「いえね、せっかくブレスレットを差し上げたのに、殆どお願い事をしていないみたいですから」
「別に、しなくても良いだろう? 無意識に頼ってる事もあるんだろうし」
そうだそうだ、王子も言ってたけど、やたらに願い事なんかしたら恐ろしい事になりそうだもんな。魂抜かれるならまだしも、一生奴隷契約とかとんでもねーや。……実際はよく知らんけど。
「いえいえ……」
首を横に振るメフィストフェレス。
「それですと、こちらとあなたのバランスが取れずに少々困った事になるんですよ」
「どういう事だ?」
「つまりね、分かり易く言い替えますと、こちらがあなたに借りを作ってしまっている状態なのです」
「別に構わんだろう? 本人が良いと言ってるんだし」
「そういう訳には参りません。私たちの世界では、契約事項はきっちりと守る事が重要なのです。ですからこのままお願い事をされないままですと、あなたに何かの形でお返ししなければいけなくなります。これは、人間、神、妖魔、幽霊、悪魔、精霊などにとってのバランスを保つ為にも厳守しなければならない重要事項なんですよ。このバランスが崩れると、あなた方の言う地球の破滅に結びつくんです、それでなくても最近環境が破壊されつくしていて均衡が崩れて来ていますのに……」
うーん? なーんか胡散臭いなぁ……。だが確かに、地球破滅とかはヤベーわな。
「……理屈はまぁ分かった」
(鵜呑み妄信はせんがな)
「だけどどれくらいの頻度でどの程度の願い事をしたらバランスが保てるのか、俺にはさっぱり分からんからな。下手したらあっと言う間に俺の方が借りを作る事になりそうだ。お前の話もどこまで本当か分からんし、そりゃ迂闊にハイハイとは言えない事だな」
「悪魔に身をおいているというだけで、そんな不審に満ちた目で見ないでくださいな。それは偏見ですぞ」
メフィストフェレスは俯き、深い溜息をついた。
「偏見? 元々そっちの得意分野じゃねーのか?」
「……やはりそうですか、慎重なあなたの事だ。易々とこちらの誘いには乗らないとか予測していましたが……。仕方がありませんね。これ以上借りを作る訳には行きませんし。それでは一旦ここで借りを返させて頂くチャンスをくださいませんか?」
一旦言葉を止め、目を閉じる。再び目を開いた。
「……これから少し先、あなたに最大のピンチが訪れるようです。その時、我々の力をもってしてお助けをさせて頂くのか、それとも直接アイテムとコンタクトを取れるように計らう事でご自身で切り抜けるか。本日の散策が終わる頃までにお返事を頂けますか? 当方としましては、前者を選んで頂く事をお勧めします。何故ならアイテムと直接コンタクトを取れるようになっても、コミュニケーションが取れるまでに時間を要しますから。では」
と一方的に説明し終わると、頭を下げてスーッと消えてしまった。また、暗闇が目前に広がった。
「お、おい! ちょっと待て! ピンチ? いつ? どんな?? 一方的過ぎ……」
「……様、惟光様?」
我に返ると、心配そうに見つめている央雅、レオ、ノアの姿。燦燦と降り注ぐ明るい光。そうか、戻って来たのか。心配させる訳にはいかない。悟られないようにしないと。取り合えず、考えるのは後回しだ。
「あ、すまん。思いの外早く着いたんだな。時間にすると十数秒、てとこか?」
と微笑んでみせた。
「そのくらいでしょうね。では、参りましょう」
央雅の笑みに、安堵した。メフィストフェレスの奴、十数秒と言っていたがそれに関しては嘘ではなかったようだ。
「やはり、あなたは自分の事より周りを優先させるのですねぇ。それも全く見返りを求めていない。本当に珍しい人間だ」
という声と共に、目の前に襟巻トカゲみたいな大きなオレンジ色の襟、ピエロが着そうな黄色いダボダボの衣装を身に纏ったピエロがふわりと出現。心臓が口から飛び出る程驚いた。相も変わらず、もじゃもじゃの赤毛に派手なオレンジのトンガリ帽子、真っ白な化粧、真っ赤に避けた唇、ピンポンボール大の赤い丸玉が鼻の頭についている。目の周りには赤い隈取りがされていて、素顔は不明だ。彼は空に浮いたような状態で左足を引き、右手を胸の前に持って来て丁寧にお辞儀をした。
「ご安心ください、一時的に意識だけを切り離した空間におります。お付きの方々には誰一人としてバレませんよ。時間にしてほんの十数秒お借りするだけですから」
メイクが濃すぎて表情が全く見えねー。真っ白な化粧に真っ赤な鼻先と唇、これをホラーと言わずに何と言おう? 変な汗が背中を流れた。けど、こういう時こそ自分をしっかり持たないと、本気で魂持ってかれちまうぞ!
足の裏と下腹に力を込め、背筋を伸ばして腹式呼吸を意識する。キッと奴を見据えた。気持ちだけは、負けるもんか!
「いきなり何の用だ?」
「まぁまぁ、悪い話じゃないですよ」
宥めすかすようにしてこたえるメフィストフェレス。でも悪魔やら妖魔絡みでめでたしめでたしで終わる話の方が稀じゃねーのか?
「いえね、せっかくブレスレットを差し上げたのに、殆どお願い事をしていないみたいですから」
「別に、しなくても良いだろう? 無意識に頼ってる事もあるんだろうし」
そうだそうだ、王子も言ってたけど、やたらに願い事なんかしたら恐ろしい事になりそうだもんな。魂抜かれるならまだしも、一生奴隷契約とかとんでもねーや。……実際はよく知らんけど。
「いえいえ……」
首を横に振るメフィストフェレス。
「それですと、こちらとあなたのバランスが取れずに少々困った事になるんですよ」
「どういう事だ?」
「つまりね、分かり易く言い替えますと、こちらがあなたに借りを作ってしまっている状態なのです」
「別に構わんだろう? 本人が良いと言ってるんだし」
「そういう訳には参りません。私たちの世界では、契約事項はきっちりと守る事が重要なのです。ですからこのままお願い事をされないままですと、あなたに何かの形でお返ししなければいけなくなります。これは、人間、神、妖魔、幽霊、悪魔、精霊などにとってのバランスを保つ為にも厳守しなければならない重要事項なんですよ。このバランスが崩れると、あなた方の言う地球の破滅に結びつくんです、それでなくても最近環境が破壊されつくしていて均衡が崩れて来ていますのに……」
うーん? なーんか胡散臭いなぁ……。だが確かに、地球破滅とかはヤベーわな。
「……理屈はまぁ分かった」
(鵜呑み妄信はせんがな)
「だけどどれくらいの頻度でどの程度の願い事をしたらバランスが保てるのか、俺にはさっぱり分からんからな。下手したらあっと言う間に俺の方が借りを作る事になりそうだ。お前の話もどこまで本当か分からんし、そりゃ迂闊にハイハイとは言えない事だな」
「悪魔に身をおいているというだけで、そんな不審に満ちた目で見ないでくださいな。それは偏見ですぞ」
メフィストフェレスは俯き、深い溜息をついた。
「偏見? 元々そっちの得意分野じゃねーのか?」
「……やはりそうですか、慎重なあなたの事だ。易々とこちらの誘いには乗らないとか予測していましたが……。仕方がありませんね。これ以上借りを作る訳には行きませんし。それでは一旦ここで借りを返させて頂くチャンスをくださいませんか?」
一旦言葉を止め、目を閉じる。再び目を開いた。
「……これから少し先、あなたに最大のピンチが訪れるようです。その時、我々の力をもってしてお助けをさせて頂くのか、それとも直接アイテムとコンタクトを取れるように計らう事でご自身で切り抜けるか。本日の散策が終わる頃までにお返事を頂けますか? 当方としましては、前者を選んで頂く事をお勧めします。何故ならアイテムと直接コンタクトを取れるようになっても、コミュニケーションが取れるまでに時間を要しますから。では」
と一方的に説明し終わると、頭を下げてスーッと消えてしまった。また、暗闇が目前に広がった。
「お、おい! ちょっと待て! ピンチ? いつ? どんな?? 一方的過ぎ……」
「……様、惟光様?」
我に返ると、心配そうに見つめている央雅、レオ、ノアの姿。燦燦と降り注ぐ明るい光。そうか、戻って来たのか。心配させる訳にはいかない。悟られないようにしないと。取り合えず、考えるのは後回しだ。
「あ、すまん。思いの外早く着いたんだな。時間にすると十数秒、てとこか?」
と微笑んでみせた。
「そのくらいでしょうね。では、参りましょう」
央雅の笑みに、安堵した。メフィストフェレスの奴、十数秒と言っていたがそれに関しては嘘ではなかったようだ。
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