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第五十一話
Secret garden・後編
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王子はゆっくりと俺から離れると、屈み込んだまま囁くように言った。瞳が、ロイヤルブルーからパープルへとゆっくりと変化していく。
「惟光、僕はね、王子とかそういう肩書き関係なく、一人の男として惟光に接したいんだ。そりゃ、従者や国民の前ではそんな事許されないけど、二人っきりの時は本音で語り合いたい」
そしてふわりと花の笑みを浮かべる。瞳はルビーレッドへと変貌を遂げる。一人の男として……胸にジーンと響く。
「ね? いいでしょ? 大好きで心から大切な人の役に立ちたいんだ」
甘えるように言った。小首を傾げ上目遣いに俺を見る眼差し。うるうると潤んだ瞳は、ルビーレッドの瞳のせいか何となく愛らしい子兎を連想させキューンと来る。それに、面と向かって大好きで心から大切な人、なんて言われて。真っ赤になりながら首を縦に振る以外、どんな答えがあるだろう?
「じゃ、行こうか」
「はい」
王子は再び後ろに回ると、ゆっくりと車椅子を押し始めた。蔓薔薇のアーチを潜り抜ける。実際に入って行くと、予想以上に広大な庭園で驚いた。やはり、典型的な英国式庭園の作りのようだ。ほぼ中央には、大き目の白亜のコンサバトリー(※①)が建てられている。
庭に足を踏み入れると、薔薇とは異なる優しくて柔らかな甘さを含んだ香りが漂った。アーチと並列するように左右に三メートル弱くらいの花木出迎えた。黄緑色の葉、薄紫色の花房、この花木から香っているのだ。この花の名前は……
「ライラックだよ、リラともいうよね」
「はい、好きな花の一つです」
「本当? 僕もだ」
王子は身を乗り出すように、俺は左を向いて言葉を交わす。好きな人と好みが一致する。それだけでなんて幸せなんだろう。
「実際の今の季節は秋の終わり、て感じだけど。僕のが大地と風の魔術を仕込んで、それを土台にノアに魔術を駆使して春の庭園にするように頼んだんだ」
凄いなぁ、ノア。後でしっかりお礼言おう。
「春、ですか?」
「うん。何となくだけどさ、惟光のいた世界の日本の春のイメージって。新しい出会いとかスタートのイメージがあるからなんだ。それでね、惟光の体調が安定したら、夏、秋、冬……いずれは実際と同じ季節の庭にして貰おうと思ってるんだけどね」
「なるほど。何となくですがあちらの世界での春って希望に満ちた季節、て感じがしました」
「だよね。少し庭を見て回ろうよ」
「はい! 是非」
時計回りにゆっくりと進み始める。地面は柔らかな芝生が広がり、庭は満開の桜や陽だまりの花房みたいな黄色いミモザがバランスよく配置されていた。更に、白や紫のクロッカスの群れ、菜の花、色とりどりのヒヤシンスやチューリップなどが広大な庭に見事に咲き乱れている。モンシロチョウが花から花へと舞い踊り、まさに春爛漫、という感じだ。もっと奥には水瓶を右肩に抱えた白い乙女像が立つ噴水まである。宮殿の庭園、て感じじゃん。凄いなぁ、ホント。
「素敵な庭です、有難うございます」
「気に入って貰えて良かったよ」
しばらく庭を散策、十分に堪能したので声をかけた。王子とこのままずっとこうしていたい気もするけど、王子は明日からまたご公務で。今からお疲れになってしまったら困るしさ。
「じゃぁ、コンサバトリーに行こう。あそこの中は温室も兼ねているから、カトレアや蘭、月下美人やチューベローズなんかも咲いているよ」
「楽しみです」
「まさに二人だけのSecret gardenだよ」
「……嬉しいです」
甘いトキメキに胸がくすぶられる。
そんな会話を交わしつつ、庭のほぼ中央に位置するコンサバトリーに着いた。王子が右手人差し指と中指をこすり合わせてパチンと鳴らす。すると木製の白いドアがカチャッと鳴った。魔術で鍵を開けたのだろう。王子は静かにドアを開け、車椅子を押して中へと入った。しっかりと内鍵を掛けている。
室内は甘くて艶めかしい香りが充満しており、ポカポカと春の陽気のように暖かい。およそ十六畳程の部屋に王子と二人きり……。鼓動が弾む。室内は丸い白テーブルと椅子が二脚分あった。サンルームみたいに、壁はほぼ窓ガラスだ。入口の近くに白い棚があり、ガラスのティーポットといくつかのガラスカップ、ハーブのティーパックや手作りと思われるクッキーなどが置かれている。王子は車椅子をテーブル近くに止めた。高さ的にも丸テーブルにちょうど良い。考えられて作られているのだろう。
蘭やカトレア、クジャクサボテンやチューベローズなど、プランターに豪華に植えられて窓辺を色彩豊かに彩っている。
「ハーブティーでも飲もうか?」
気さくに言ってのける王子の台詞に途端に焦った。いいやいや、さすがに王子にお茶を淹れさせるなんてとんでもない!
「い、いいえ殿下、自分が淹れますので」
と立とうとした。
「ほら、最初に言ったでしょ? 今は二人っきり。一人の男として接したい。大好きで大切な人の為に何かしたい、て」
「あ、はい……で、ですが……」
「だから気にしないで。僕がそうしたいんだ。それとも、僕が淹れるのは嫌?」
「め、滅相もございませんっ! ただ畏れ多くてというだけで……」
「なら、やらせてよ。ね?」
「はい、有難うございます、宜しくお願いします」
あー緊張しちゃうなぁ。でも有り難いや。
「それとね、王子と言ってもさ、リアンはしつけが厳しかったからね。現在進行形だけど。自分の事は自分で、一通り出来るんだよ」
あぁ、リアンのしつけ、厳しいのは何となく目に浮かぶぞ。ふふっと自然に笑みが零れた。
「やっと楽しそうに笑ってくれた!」
王子は嬉しそうに言う。え? 今までも笑っていたよな?
「え?」
「だってどこか緊張と遠慮が見えたもん」
「あ……確かに」
そうか。そうかも。
「自然にリラックスして楽しんで欲しいな。今は身分や立ち場関係無く、僕に向き合ってね」
「はい! 恐れ入ります」
「さて、ミントかカモミール、ハイビスカス、ダージリン、日本茶、どれが良い?」
「じゃぁ、ミントでお願いします」
「分かった、ミントね。僕は日本茶にしよう」
へぇ? 日本茶も飲まれるのかぁ。お湯はどうするのだろう? 水道は? と思ったら、王子がガラスポットを右手に持つなりポットの底からじわじわお湯が溢れ出した。そうか、魔術か。ガラスカップにTパックを入れ、お湯を注ぎながら王子は言う。
「ここに来たのはね、大事な話があるんだ」
ドキッとした。何だろう? 王子はお湯を注ぎ終わったカップを二つ、テーブルの上に置く。「有難うございます」と軽く頭を下げた。笑顔で応じ、ゆっくりと向かい側に椅子に腰をおろした。
「そんな畏まらないで。悪い話じゃないからね」
と王子はクスリと笑う。でも、緊張する。何の話だろう?
(※①…ガラスで囲まれたガーデンルーム)
「惟光、僕はね、王子とかそういう肩書き関係なく、一人の男として惟光に接したいんだ。そりゃ、従者や国民の前ではそんな事許されないけど、二人っきりの時は本音で語り合いたい」
そしてふわりと花の笑みを浮かべる。瞳はルビーレッドへと変貌を遂げる。一人の男として……胸にジーンと響く。
「ね? いいでしょ? 大好きで心から大切な人の役に立ちたいんだ」
甘えるように言った。小首を傾げ上目遣いに俺を見る眼差し。うるうると潤んだ瞳は、ルビーレッドの瞳のせいか何となく愛らしい子兎を連想させキューンと来る。それに、面と向かって大好きで心から大切な人、なんて言われて。真っ赤になりながら首を縦に振る以外、どんな答えがあるだろう?
「じゃ、行こうか」
「はい」
王子は再び後ろに回ると、ゆっくりと車椅子を押し始めた。蔓薔薇のアーチを潜り抜ける。実際に入って行くと、予想以上に広大な庭園で驚いた。やはり、典型的な英国式庭園の作りのようだ。ほぼ中央には、大き目の白亜のコンサバトリー(※①)が建てられている。
庭に足を踏み入れると、薔薇とは異なる優しくて柔らかな甘さを含んだ香りが漂った。アーチと並列するように左右に三メートル弱くらいの花木出迎えた。黄緑色の葉、薄紫色の花房、この花木から香っているのだ。この花の名前は……
「ライラックだよ、リラともいうよね」
「はい、好きな花の一つです」
「本当? 僕もだ」
王子は身を乗り出すように、俺は左を向いて言葉を交わす。好きな人と好みが一致する。それだけでなんて幸せなんだろう。
「実際の今の季節は秋の終わり、て感じだけど。僕のが大地と風の魔術を仕込んで、それを土台にノアに魔術を駆使して春の庭園にするように頼んだんだ」
凄いなぁ、ノア。後でしっかりお礼言おう。
「春、ですか?」
「うん。何となくだけどさ、惟光のいた世界の日本の春のイメージって。新しい出会いとかスタートのイメージがあるからなんだ。それでね、惟光の体調が安定したら、夏、秋、冬……いずれは実際と同じ季節の庭にして貰おうと思ってるんだけどね」
「なるほど。何となくですがあちらの世界での春って希望に満ちた季節、て感じがしました」
「だよね。少し庭を見て回ろうよ」
「はい! 是非」
時計回りにゆっくりと進み始める。地面は柔らかな芝生が広がり、庭は満開の桜や陽だまりの花房みたいな黄色いミモザがバランスよく配置されていた。更に、白や紫のクロッカスの群れ、菜の花、色とりどりのヒヤシンスやチューリップなどが広大な庭に見事に咲き乱れている。モンシロチョウが花から花へと舞い踊り、まさに春爛漫、という感じだ。もっと奥には水瓶を右肩に抱えた白い乙女像が立つ噴水まである。宮殿の庭園、て感じじゃん。凄いなぁ、ホント。
「素敵な庭です、有難うございます」
「気に入って貰えて良かったよ」
しばらく庭を散策、十分に堪能したので声をかけた。王子とこのままずっとこうしていたい気もするけど、王子は明日からまたご公務で。今からお疲れになってしまったら困るしさ。
「じゃぁ、コンサバトリーに行こう。あそこの中は温室も兼ねているから、カトレアや蘭、月下美人やチューベローズなんかも咲いているよ」
「楽しみです」
「まさに二人だけのSecret gardenだよ」
「……嬉しいです」
甘いトキメキに胸がくすぶられる。
そんな会話を交わしつつ、庭のほぼ中央に位置するコンサバトリーに着いた。王子が右手人差し指と中指をこすり合わせてパチンと鳴らす。すると木製の白いドアがカチャッと鳴った。魔術で鍵を開けたのだろう。王子は静かにドアを開け、車椅子を押して中へと入った。しっかりと内鍵を掛けている。
室内は甘くて艶めかしい香りが充満しており、ポカポカと春の陽気のように暖かい。およそ十六畳程の部屋に王子と二人きり……。鼓動が弾む。室内は丸い白テーブルと椅子が二脚分あった。サンルームみたいに、壁はほぼ窓ガラスだ。入口の近くに白い棚があり、ガラスのティーポットといくつかのガラスカップ、ハーブのティーパックや手作りと思われるクッキーなどが置かれている。王子は車椅子をテーブル近くに止めた。高さ的にも丸テーブルにちょうど良い。考えられて作られているのだろう。
蘭やカトレア、クジャクサボテンやチューベローズなど、プランターに豪華に植えられて窓辺を色彩豊かに彩っている。
「ハーブティーでも飲もうか?」
気さくに言ってのける王子の台詞に途端に焦った。いいやいや、さすがに王子にお茶を淹れさせるなんてとんでもない!
「い、いいえ殿下、自分が淹れますので」
と立とうとした。
「ほら、最初に言ったでしょ? 今は二人っきり。一人の男として接したい。大好きで大切な人の為に何かしたい、て」
「あ、はい……で、ですが……」
「だから気にしないで。僕がそうしたいんだ。それとも、僕が淹れるのは嫌?」
「め、滅相もございませんっ! ただ畏れ多くてというだけで……」
「なら、やらせてよ。ね?」
「はい、有難うございます、宜しくお願いします」
あー緊張しちゃうなぁ。でも有り難いや。
「それとね、王子と言ってもさ、リアンはしつけが厳しかったからね。現在進行形だけど。自分の事は自分で、一通り出来るんだよ」
あぁ、リアンのしつけ、厳しいのは何となく目に浮かぶぞ。ふふっと自然に笑みが零れた。
「やっと楽しそうに笑ってくれた!」
王子は嬉しそうに言う。え? 今までも笑っていたよな?
「え?」
「だってどこか緊張と遠慮が見えたもん」
「あ……確かに」
そうか。そうかも。
「自然にリラックスして楽しんで欲しいな。今は身分や立ち場関係無く、僕に向き合ってね」
「はい! 恐れ入ります」
「さて、ミントかカモミール、ハイビスカス、ダージリン、日本茶、どれが良い?」
「じゃぁ、ミントでお願いします」
「分かった、ミントね。僕は日本茶にしよう」
へぇ? 日本茶も飲まれるのかぁ。お湯はどうするのだろう? 水道は? と思ったら、王子がガラスポットを右手に持つなりポットの底からじわじわお湯が溢れ出した。そうか、魔術か。ガラスカップにTパックを入れ、お湯を注ぎながら王子は言う。
「ここに来たのはね、大事な話があるんだ」
ドキッとした。何だろう? 王子はお湯を注ぎ終わったカップを二つ、テーブルの上に置く。「有難うございます」と軽く頭を下げた。笑顔で応じ、ゆっくりと向かい側に椅子に腰をおろした。
「そんな畏まらないで。悪い話じゃないからね」
と王子はクスリと笑う。でも、緊張する。何の話だろう?
(※①…ガラスで囲まれたガーデンルーム)
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