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第四十五話
異世界転移者同士~あいつ、やっぱり俺の事嫌いだってさ、さて、どう対応すべきか……後編~
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恐らく図星とみた。今がチャンスだ、更に追い打ちをかけろ!
「それにな、どんなに優秀であろうと、人間は大なり小なり必ずミスはおかす生き物だ。その直感が間違う可能性だって十分にある。別に、お前が第一印象で人との距離の置き方を決めるっていうならそれはそれで構わないさ。個人の自由だからな。だけどせっかく三日間もお前と二人で過ごす時間を与えられたんだ。仕事として割り切って、向き合ってみても良いんじゃないか?」
奴はヤレヤレと言うように肩をすくめた。盛大に溜息をつく。これで何度めの溜息だよ。
「仕事の一環なら、仕方ないだろうな……」
憮然としてそう言った。内緒の話……仕事の一環って言ったのさ、実は咄嗟の『屁理屈』でそうこじつけたんだけどな。効果あったみたいで良かったよ。
「第一印象がお互いに最悪でも、時間をかけてじっくりと歩み寄って育んで行くとう御縁もまた存在するもんさ。それを結論づけるのには、まずは互いが歩み寄りの姿勢を見せないと始まらん。ま、俺とお前がどういう御縁の間柄なのかは、神のみぞ知るってところだろうけどな」
それを聞くと、やつは微かに笑みを浮かべた。明らかに苦笑だろう。フン、気が重いのはお前だけじゃねーってんだよ。……なんて言わないけどな。さて、もう少し続けてみるか。まずは少しずつ自己開示をして……
「で、どの辺りが媚を売っているように見えるんだ?」
央雅はうんざりとした面持ちで俺を見る。
「まだそんな事に拘ってるのか?」
「お前にとってはそんな事でもな、俺には自分を客観視する良い機会なんだよ。なかなかそういう事、指摘して貰える事ってないからな。それに、ここで会話を途切らせたら気拙くて無言になっちまうだろ? 無言のまま二人だけで三日も過ごすのは、想像以上にしんどいぞ。それならまだ、無理矢理でも会話を続けてみる方が良いだろう? もしかしたら、歩み寄りの糸口が掴めるかもしれないしな」
諦めたように笑う央雅。観念したか?
「分かったよ。……媚びていると感じるのは、あくまで俺の感じ方の問題であって。他の人から見たらそうは感じないかもしれん。現に、殿下やリアン様はそういうところを美点の一つとして感じておられるようだし。だから、そこだけはしっかり踏まえて聞いてくれ」
「うん、分かった」
ふーん、なんだかんだと俺を気遣うあたり、やっぱり人格者なんだろうなぁ。そこは弟と違うところかなぁ。
「……何かあるとすぐに、自分よりも相手や周りの事を気遣うし優先させようとするだろう? そういうところ、俺には媚を売っているとういか、偽善に見えるというか。見ていて何だか痛々しいように感じるのだ」
あー、そういう事か。なるほどな。
「そうかぁ。そう見えるか。別に媚を売っているつもりは一切無いんだけどな。そういう風にする事で生き延びて来たから……かなぁ」
「生き延びる?」
「ん? あぁ、別に虐待されているとかそう言う事じゃないんだけどな、なんつーか。簡単に言えば弟が全てにおいてずば抜けて出来過ぎたんだわ。で、両親も親戚も学校の先生も友達も、弟しか関心なかったから。俺自身の事を優先して考えて貰えるような環境で生きて来なかったんだ。駄目屑兄貴、みたいな感じでさ。だから、自分よりも周りを優先させる事が沁みついてるっつーかさ。ヘヘッ、お前みたいな強さがあったら、そう言った環境に理不尽だ! て声をあげて抗議したり出来たのかもしれないけど、生憎俺は何をやっても弟みたいに突き抜けて優秀にはなれなくてさ。何でもそこそこにこなせるだけで……。そうだよなぁ、言われてみたら媚を売って生きてきたのかもしれないよな、だけど俺、これ以外の生き方を知らねーんだ」
本当にそう思った。だけど央雅は驚いたように目を見開き、話の後半の頃には申し訳なさそうな表情に移り変わっていた。
「……そうか。その、何て言ったら良いのか……事情も知らないですまなかった」
ボソリと言う央雅。言いながら精一杯葛藤している様子が垣間見える。あー、やっぱりいい奴なんだ。真っすぐなんだろうな。
「いや、こっちも助かったよ。今回みたいな特殊な例でもなけりゃ『お前何媚売ってるんだよ?』なんて言ってくる奴殆どいないだろうから、そんな風に感じてる奴もいるんだ、て自分を冷静に見る機会があって良かったよ。ありがとな」
と言ったら、何だかまじまじと俺を見つめるじゃないか、何だ? 何か俺、変な事言ったか?
「……今まで疑問だったんだ。どうして殿下はあんなナヨナヨした病身の奴を好まれるのか、と」
ははは、やっぱり病弱キャラかぁ。『異世界転移したら病弱キャラでした』てラノベでも書くかー。苦笑するしかねーなこりゃ。
「でも、何故惹かれたのか少しだけ分かったような気がした」
「え?」
どういう事か問おうとすると、いきなり真顔になるじゃないか。何だ?
「俺は、あっちの世界でずっと苦しい片想いをしてきた……」
央雅は唐突に語り始めた。よし、話しを聞こうじゃないか。片想いとか意外だな、真剣に耳を傾けよう。
「それにな、どんなに優秀であろうと、人間は大なり小なり必ずミスはおかす生き物だ。その直感が間違う可能性だって十分にある。別に、お前が第一印象で人との距離の置き方を決めるっていうならそれはそれで構わないさ。個人の自由だからな。だけどせっかく三日間もお前と二人で過ごす時間を与えられたんだ。仕事として割り切って、向き合ってみても良いんじゃないか?」
奴はヤレヤレと言うように肩をすくめた。盛大に溜息をつく。これで何度めの溜息だよ。
「仕事の一環なら、仕方ないだろうな……」
憮然としてそう言った。内緒の話……仕事の一環って言ったのさ、実は咄嗟の『屁理屈』でそうこじつけたんだけどな。効果あったみたいで良かったよ。
「第一印象がお互いに最悪でも、時間をかけてじっくりと歩み寄って育んで行くとう御縁もまた存在するもんさ。それを結論づけるのには、まずは互いが歩み寄りの姿勢を見せないと始まらん。ま、俺とお前がどういう御縁の間柄なのかは、神のみぞ知るってところだろうけどな」
それを聞くと、やつは微かに笑みを浮かべた。明らかに苦笑だろう。フン、気が重いのはお前だけじゃねーってんだよ。……なんて言わないけどな。さて、もう少し続けてみるか。まずは少しずつ自己開示をして……
「で、どの辺りが媚を売っているように見えるんだ?」
央雅はうんざりとした面持ちで俺を見る。
「まだそんな事に拘ってるのか?」
「お前にとってはそんな事でもな、俺には自分を客観視する良い機会なんだよ。なかなかそういう事、指摘して貰える事ってないからな。それに、ここで会話を途切らせたら気拙くて無言になっちまうだろ? 無言のまま二人だけで三日も過ごすのは、想像以上にしんどいぞ。それならまだ、無理矢理でも会話を続けてみる方が良いだろう? もしかしたら、歩み寄りの糸口が掴めるかもしれないしな」
諦めたように笑う央雅。観念したか?
「分かったよ。……媚びていると感じるのは、あくまで俺の感じ方の問題であって。他の人から見たらそうは感じないかもしれん。現に、殿下やリアン様はそういうところを美点の一つとして感じておられるようだし。だから、そこだけはしっかり踏まえて聞いてくれ」
「うん、分かった」
ふーん、なんだかんだと俺を気遣うあたり、やっぱり人格者なんだろうなぁ。そこは弟と違うところかなぁ。
「……何かあるとすぐに、自分よりも相手や周りの事を気遣うし優先させようとするだろう? そういうところ、俺には媚を売っているとういか、偽善に見えるというか。見ていて何だか痛々しいように感じるのだ」
あー、そういう事か。なるほどな。
「そうかぁ。そう見えるか。別に媚を売っているつもりは一切無いんだけどな。そういう風にする事で生き延びて来たから……かなぁ」
「生き延びる?」
「ん? あぁ、別に虐待されているとかそう言う事じゃないんだけどな、なんつーか。簡単に言えば弟が全てにおいてずば抜けて出来過ぎたんだわ。で、両親も親戚も学校の先生も友達も、弟しか関心なかったから。俺自身の事を優先して考えて貰えるような環境で生きて来なかったんだ。駄目屑兄貴、みたいな感じでさ。だから、自分よりも周りを優先させる事が沁みついてるっつーかさ。ヘヘッ、お前みたいな強さがあったら、そう言った環境に理不尽だ! て声をあげて抗議したり出来たのかもしれないけど、生憎俺は何をやっても弟みたいに突き抜けて優秀にはなれなくてさ。何でもそこそこにこなせるだけで……。そうだよなぁ、言われてみたら媚を売って生きてきたのかもしれないよな、だけど俺、これ以外の生き方を知らねーんだ」
本当にそう思った。だけど央雅は驚いたように目を見開き、話の後半の頃には申し訳なさそうな表情に移り変わっていた。
「……そうか。その、何て言ったら良いのか……事情も知らないですまなかった」
ボソリと言う央雅。言いながら精一杯葛藤している様子が垣間見える。あー、やっぱりいい奴なんだ。真っすぐなんだろうな。
「いや、こっちも助かったよ。今回みたいな特殊な例でもなけりゃ『お前何媚売ってるんだよ?』なんて言ってくる奴殆どいないだろうから、そんな風に感じてる奴もいるんだ、て自分を冷静に見る機会があって良かったよ。ありがとな」
と言ったら、何だかまじまじと俺を見つめるじゃないか、何だ? 何か俺、変な事言ったか?
「……今まで疑問だったんだ。どうして殿下はあんなナヨナヨした病身の奴を好まれるのか、と」
ははは、やっぱり病弱キャラかぁ。『異世界転移したら病弱キャラでした』てラノベでも書くかー。苦笑するしかねーなこりゃ。
「でも、何故惹かれたのか少しだけ分かったような気がした」
「え?」
どういう事か問おうとすると、いきなり真顔になるじゃないか。何だ?
「俺は、あっちの世界でずっと苦しい片想いをしてきた……」
央雅は唐突に語り始めた。よし、話しを聞こうじゃないか。片想いとか意外だな、真剣に耳を傾けよう。
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