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第二十二話
……て、こんな時にこんな場所でいきなり第一王子と対面?! 俺ヤバくね?
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ほら俺、感激してないで早く返事返事!
「で、殿下……勿体な、無いお言葉に、ございます」
あーーーーー舌噛んじまったぁ! かっこ悪いな、俺。こういうところが、駄目なんだよな……。
「……そう思って貰えたなら、僕も嬉しいよ。君の場合は転移者だから、兄上も強制は出来ないし。転移者の場合はね、本人の自由意志が尊重されるんだ。今の近侍たちも、遅かれ早かれ兄上に取り上げられるだろう、て分かってたから彼らには事前に、君を僕専属にしたい、て言っておいたんだし」
王子、今度は赤紫の瞳の色に! 虹彩に藤色の花びら舞っているみたいな微妙な色合いが素敵だ。……なんて事より……そうだったのかぁ、なるほどなぁ。でも、そしたら裏を返したら元からこの世界にいる人は第一王子の命令には逆らえない、て事じゃん。
「そうなのですね。……では、クリスティアン様に召し上げられたという殿下の近侍たちのその後は……?」
一番気になるのはここだよな。だって今までも結構あった、て事だろ? いくらなんでもそんなに近侍ばかりいらないだろうしさ。しかし、第一王子、容姿にも才能にも恵まれているらしいけど。欲しいものはみんな第二王子が持っている……ように見えるってか? 何だか哀れな人だなぁ。しかも毒殺しようとか、歪んでるよなぁ。よく知らんけど、気難しい人らしし。でもまぁ、よく知らないのに思い込みで判断したら駄目だよな。
「あぁ、兄上はとても飽きっぽい性格でね。父上には山ほど側室や愛人がいるから。男女を問わずね」
うわぁ……王は今お幾つなのだろうか。いやぁ、お元気な事で……
「だから子供たちも沢山いる訳で。そうなると、近侍たちはいくらいても行き場所はちゃんとあるんだよ。待遇面は、僕のところにいた時よりも兄上のところに行った方が良いように出来ているし。兄上が飽きて父上関連のどこかに配属になっても、その待遇面は同じままだし。近侍たちもさほど不満はないんじゃないかな。少なくとも、待遇面ではね」
王子は少し寂しそうに言った。近侍たちが王子の元から第一王子のところに行くの、どう感じているかは十人十色だろうけど……。少なくとも面従服背Boyや蛍光縦ロール頭兄弟は、第二王子の近侍であり続けたいと思ってると思うなぁ。じゃなければ、俺になんかに敵意むき出しにする訳ないもん。まだ第一王子の元に行くとは聞いてないにしてもさ。ふと、リアンの事が思い浮かんだ。彼もいつか、第一王子のところに引き上げられるんだろうか?
「ちなみに兄上は僕と全然似て無いんだ。兄の髪は長いストレートの銀色でね、瞳の色は銀灰色ていうのかな」
「へぇ、銀の髪に銀灰色の瞳……」
何だかアニメキャラに出て来そうだな。
「うん。とにかくね、僕は君の事だけは手放したくないから。もし兄上が引き抜きに来られても、しっかりと断るんだよ?」
王子は悪戯っ子みたいに笑いかけた。こういう無邪気な所も素敵だ……じゃなくて返事返事!
「はい! 勿論でございます」
と俺も微笑み返す。まぁ、転移者かつ取り立てて特殊能力もない俺の事なんて、わざわざ引き抜きになんか来ないと思うけどな。……なんて王子には、というか誰にも言えないけどさ。だって聞き方というか受け取り方によっては、そんなカスみたいな俺を気に入ってくださった王子自身の事も、見る目ねーなって言ってるのと同じになっちまうから。俺自身には王子を貶めるつもりなんか微塵もないけど、何にでも物事を深読みする奴、少なくないからさ。
「良かった。少し安心したよ。それじゃあの二人をこの部屋に入れるね。まぁ、さほど待たせてない筈だから不審には思われないと思うけどね」
と自信有り気に微笑む王子。瞳がキラキラ輝いている。俺が王子の傍にいる事を、他でもない王子自身が望んでくれるなら、俺はこの先どんな事があっても頑張れるさ! な? 『オーロラの涙』! ペンダントが俺の気持ちに応えるようにジワッと熱く感じた。
蛍光縦ロール頭兄弟、確かに王子のいう通り今迎えに来たというような感じだった。予想通り、王子の髪を梳いてへアーを整え、王子のスケジュールに合わせて服装と香水選びをするのは蛍光ブルー頭、そのアシスタントが蛍光ピンク頭だった。テキパキと流れるようにこなし、TPOをわきまえたヘアメイクや衣装、香水選び。本当に極上の腕前だと思う。だけど王子は終始寂しそうだった。蛍光縦ロール頭兄弟は仕事のみに集中。かつどこかでそんな自分に酔っているのか、王子の微妙な様子には気付かないみたいだったな。
と言う事で、その後王子は蛍光縦ロール頭兄弟に話があるとかで俺は返されたところだ。明日はいよいよ転移者の大先輩、近衛兵大将とやらに会えるらしい。つー事で今エレベーターで三階に向かっている。やつぱりエレベーター内も高級ホテルみたいなイメージだな。一人で空飛ぶ絨毯で降りる勇気、ないなぁ。
おっ! もうすぐ着くぞ三階、と。これから昼飯が運ばれて。夜もまた運んで貰えて。いいのかなぁ、こんな贅沢。そういや蛍光縦ロール頭兄弟、何かのイメージに似てると思ったら思い出した! 少し前から流行りのラノベや少女漫画に出て来る『悪役令嬢の取り巻き』のイメージだ! 取り巻き、の方な。お! 三階に着いた、と。
エレベーターを降りて部屋に向かって歩き出した途端、背後から突然冷たいまでに澄み切った男の声が響いた。さながら氷の刃のような……
「おや、エレベーターで最上階から降りて来たのか? てっきり絨毯でここまで来るかと思ったよ」
驚いて振り返ると、そこには……
「あ、あなたは……」
輝く銀色の髪は見事なストレートで膝の下まで伸ばされており、涼やかな目元は月光を湛えたような銀灰色。思わず背筋がゾクリとするほどの冷たく整った顔立ちの背の高い男。漢の貴族衣装、桔梗色の直裾のようなものに身を包んだ……も、もしかして、第一王子? まさか? 何で、こんな所に……
「グフッ、ゲホゲホゴホッ………」
驚愕し過ぎたせいなのか、急に胸の奥が苦しくなって咳が込み上げてきた。拙い! 止まれ、止まれ!
「ゴホゴホも、申し……ゴホッゲホッ、わ……訳……ゲホッゴホゴホッ」
駄目だ、声を出そうとしたら、余計に……くそっ! 苦しっ
「ゴボゴホゲホッ……」
冷たく見下ろす男の前で俺は無様にも膝をつき、何とか咳を鎮めようと両手を口にあて、うずくまった。苦しい、鎮まってくれ……じゃないと、不敬罪で打ち首に……されそうだ……ピンチ……
「で、殿下……勿体な、無いお言葉に、ございます」
あーーーーー舌噛んじまったぁ! かっこ悪いな、俺。こういうところが、駄目なんだよな……。
「……そう思って貰えたなら、僕も嬉しいよ。君の場合は転移者だから、兄上も強制は出来ないし。転移者の場合はね、本人の自由意志が尊重されるんだ。今の近侍たちも、遅かれ早かれ兄上に取り上げられるだろう、て分かってたから彼らには事前に、君を僕専属にしたい、て言っておいたんだし」
王子、今度は赤紫の瞳の色に! 虹彩に藤色の花びら舞っているみたいな微妙な色合いが素敵だ。……なんて事より……そうだったのかぁ、なるほどなぁ。でも、そしたら裏を返したら元からこの世界にいる人は第一王子の命令には逆らえない、て事じゃん。
「そうなのですね。……では、クリスティアン様に召し上げられたという殿下の近侍たちのその後は……?」
一番気になるのはここだよな。だって今までも結構あった、て事だろ? いくらなんでもそんなに近侍ばかりいらないだろうしさ。しかし、第一王子、容姿にも才能にも恵まれているらしいけど。欲しいものはみんな第二王子が持っている……ように見えるってか? 何だか哀れな人だなぁ。しかも毒殺しようとか、歪んでるよなぁ。よく知らんけど、気難しい人らしし。でもまぁ、よく知らないのに思い込みで判断したら駄目だよな。
「あぁ、兄上はとても飽きっぽい性格でね。父上には山ほど側室や愛人がいるから。男女を問わずね」
うわぁ……王は今お幾つなのだろうか。いやぁ、お元気な事で……
「だから子供たちも沢山いる訳で。そうなると、近侍たちはいくらいても行き場所はちゃんとあるんだよ。待遇面は、僕のところにいた時よりも兄上のところに行った方が良いように出来ているし。兄上が飽きて父上関連のどこかに配属になっても、その待遇面は同じままだし。近侍たちもさほど不満はないんじゃないかな。少なくとも、待遇面ではね」
王子は少し寂しそうに言った。近侍たちが王子の元から第一王子のところに行くの、どう感じているかは十人十色だろうけど……。少なくとも面従服背Boyや蛍光縦ロール頭兄弟は、第二王子の近侍であり続けたいと思ってると思うなぁ。じゃなければ、俺になんかに敵意むき出しにする訳ないもん。まだ第一王子の元に行くとは聞いてないにしてもさ。ふと、リアンの事が思い浮かんだ。彼もいつか、第一王子のところに引き上げられるんだろうか?
「ちなみに兄上は僕と全然似て無いんだ。兄の髪は長いストレートの銀色でね、瞳の色は銀灰色ていうのかな」
「へぇ、銀の髪に銀灰色の瞳……」
何だかアニメキャラに出て来そうだな。
「うん。とにかくね、僕は君の事だけは手放したくないから。もし兄上が引き抜きに来られても、しっかりと断るんだよ?」
王子は悪戯っ子みたいに笑いかけた。こういう無邪気な所も素敵だ……じゃなくて返事返事!
「はい! 勿論でございます」
と俺も微笑み返す。まぁ、転移者かつ取り立てて特殊能力もない俺の事なんて、わざわざ引き抜きになんか来ないと思うけどな。……なんて王子には、というか誰にも言えないけどさ。だって聞き方というか受け取り方によっては、そんなカスみたいな俺を気に入ってくださった王子自身の事も、見る目ねーなって言ってるのと同じになっちまうから。俺自身には王子を貶めるつもりなんか微塵もないけど、何にでも物事を深読みする奴、少なくないからさ。
「良かった。少し安心したよ。それじゃあの二人をこの部屋に入れるね。まぁ、さほど待たせてない筈だから不審には思われないと思うけどね」
と自信有り気に微笑む王子。瞳がキラキラ輝いている。俺が王子の傍にいる事を、他でもない王子自身が望んでくれるなら、俺はこの先どんな事があっても頑張れるさ! な? 『オーロラの涙』! ペンダントが俺の気持ちに応えるようにジワッと熱く感じた。
蛍光縦ロール頭兄弟、確かに王子のいう通り今迎えに来たというような感じだった。予想通り、王子の髪を梳いてへアーを整え、王子のスケジュールに合わせて服装と香水選びをするのは蛍光ブルー頭、そのアシスタントが蛍光ピンク頭だった。テキパキと流れるようにこなし、TPOをわきまえたヘアメイクや衣装、香水選び。本当に極上の腕前だと思う。だけど王子は終始寂しそうだった。蛍光縦ロール頭兄弟は仕事のみに集中。かつどこかでそんな自分に酔っているのか、王子の微妙な様子には気付かないみたいだったな。
と言う事で、その後王子は蛍光縦ロール頭兄弟に話があるとかで俺は返されたところだ。明日はいよいよ転移者の大先輩、近衛兵大将とやらに会えるらしい。つー事で今エレベーターで三階に向かっている。やつぱりエレベーター内も高級ホテルみたいなイメージだな。一人で空飛ぶ絨毯で降りる勇気、ないなぁ。
おっ! もうすぐ着くぞ三階、と。これから昼飯が運ばれて。夜もまた運んで貰えて。いいのかなぁ、こんな贅沢。そういや蛍光縦ロール頭兄弟、何かのイメージに似てると思ったら思い出した! 少し前から流行りのラノベや少女漫画に出て来る『悪役令嬢の取り巻き』のイメージだ! 取り巻き、の方な。お! 三階に着いた、と。
エレベーターを降りて部屋に向かって歩き出した途端、背後から突然冷たいまでに澄み切った男の声が響いた。さながら氷の刃のような……
「おや、エレベーターで最上階から降りて来たのか? てっきり絨毯でここまで来るかと思ったよ」
驚いて振り返ると、そこには……
「あ、あなたは……」
輝く銀色の髪は見事なストレートで膝の下まで伸ばされており、涼やかな目元は月光を湛えたような銀灰色。思わず背筋がゾクリとするほどの冷たく整った顔立ちの背の高い男。漢の貴族衣装、桔梗色の直裾のようなものに身を包んだ……も、もしかして、第一王子? まさか? 何で、こんな所に……
「グフッ、ゲホゲホゴホッ………」
驚愕し過ぎたせいなのか、急に胸の奥が苦しくなって咳が込み上げてきた。拙い! 止まれ、止まれ!
「ゴホゴホも、申し……ゴホッゲホッ、わ……訳……ゲホッゴホゴホッ」
駄目だ、声を出そうとしたら、余計に……くそっ! 苦しっ
「ゴボゴホゲホッ……」
冷たく見下ろす男の前で俺は無様にも膝をつき、何とか咳を鎮めようと両手を口にあて、うずくまった。苦しい、鎮まってくれ……じゃないと、不敬罪で打ち首に……されそうだ……ピンチ……
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