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第十八話
第二王子と近侍たち
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その後、王子が実際に普段から美容を受けている場所で実際に施術するところを見せるという手筈になっている為、準備が整ったら迎えに来るとの事だった。よって一旦部屋に待機だ。
やっぱり、俺に仕事を教えるように命じられてたんじゃないかな、あの蛍光縦ロール頭兄弟。でもまぁ、任務放棄というよりはあの二人の場合、俺があたふたして逃げ出すのを期待していた、そんな感じだろうな。新人教育なんて面倒くさいのか、それとも何故だか特別扱いされてる(? と解釈しても大丈夫かなぁ……)モブな俺が気に入らないのか、その辺りの理由は分からないけど。
いずれにしても、皆ライバル、て思っておいた方が身の為だよなぁ。そういうの、昔から凄く苦手なんだけどさ。文芸サークルも、一見のんびりと和気あいあいとやっているように見えて。さり気なく互いがどこの小節投稿サイトにいて実績がどうなのか探り合って。秘かにマウントの取り合いをしている奴多かったし。俺は元々底辺だからそういうのは無関係で気が楽だったけど、見ていて居心地悪かったから見ないふりをしていたっけ。
生きていくのにもサバイバルな世の中、そういう一種の競争ごとは避けて通れないんだろうけど。この異世界でもあるある、か。でも、あっちの世界よりは単純(?)そうだとリアンが言っていたし。王子の傍にいたければ避けられない……だろうな。
何となく『オーロラの涙』を触りながら思った。じんわりと温かなそれは、俺を励ましてくれてるように感じる。
「へぇ? 天然アレキサンドライトはダイヤモンドよりも希少。天然のベキリーブルーガーネットは天然アレキサンドライトよりも希少なのか!」
思わず声をあげた。少し時間があるみたいだからさっきの続き、宝石の事を調べていたんだ。ベキリーブルーガーネット、ますます王子の双眸、て感じだなぁ。全身が宝石で出来ているような輝くばかりの容姿の持ち主。何となく「幸福の王子」が連想される。……それならさしづめ俺は、王子の望むままに宝石を人々に運んだ「つばめ」ってとこか? いや、止そう。この童話の結末は酷く物哀しい。縁起でもねぇや。
トントントン、ドアノックの音に飛び上がる程驚いた。「はい!」と直ぐに答え、パソコンをシャットダウンさせる。
「リアンです」 もうお迎えか。「はい、どうぞ」リアンは急き込むようにして入って来ると、
「あなたにお伝えしておいた方が良いと思いましてね。少し早めに参りました」
眼鏡のエッジを右手人差し指で弾く。何だろう? 伝えたい事?
「はい、有難うございます」
俺はすぐに黒革のメモ帳と羽ペンを準備した。そう、面従腹背Boyが魔法で出してくれたものだ。
「あ、いいえ。そのままで。あなたは座ったままで」
デスクの場所から、先日リアンが魔術で出してくれた応接用のテーブルと椅子の場所に誘導しようとした俺を、彼は右手をあげて軽く制した。
「では早速お伝えしましょう。殿下の近侍たちについてです。彼らは先日お伝えしました我が国彩光界を始め、夢夜界、風空界、花緑界、宝土界、水命界出身の者まで幅広くおります。私も含め、近侍は全て男性である事は言わずもながですが」
なるほど。
「第二王子はあの通り魅力的な御方ですから、その上全ての国を束ねるエターナル王家となれば誰も彼もが殿下の近侍に憧れます。地位も待遇も最高なものになりますし、大変な名誉となります。つまり一種の花形の職業な訳です。取り分け他国出身のものが殿下の近侍となればその出身地もさることながら、彼らの身内まで地位や待遇が格段にアップします」
そうか……だから必死なんだ。アルフォンスも蛍光縦ロール頭兄弟も。
「だから彼らも必死で己の立ち場を死守します。参考までに申しておきましょう。アルフォンスは水命界、ナサニエルとジェレミアは風空界、私は彩光界出身です」
あぁ、リアンは確かエターナル王家の縁の者と言ってたもんな。
「先日、例えば水命界は情やインスピレーションなどを司る、などの属性もお話しましたね。性格は個々によりますが、おおよその特性は分かると思います。先程の見事な対応を拝見しましたところ、あなたは相手の性質や本音を見抜く目をお持ちのようだ。ですから相手の出身地をお伝えしておいた方が今後も対処し易いと思いましてね」
ん? もしかして去り気なく褒めてくれた?
「有難うございます……」
「ついでにと言ってはなんですが、この国では有名なお話ですのでお伝えしておきましょう」
何だ? やんわりと遮られた? 時間が無いのかな。
「少しお伝えしましたが、第一王子のクリスティアン様はエターナル王家正統な王位継承者です。王の正妻は彩光界の出の侯爵令嬢です。Christian様……『救世主』という意味がございますが……見目麗しく多才な方です、ですが何分気難しい御性格で。ラディウス様とは全てにおいて正反対の御兄弟です。そのせいか、弟のラディウス様に何かと対抗心をむき出しにされます」
例によって、リアンの言葉はChristian……と脳内に綴りとカナが浮かび上がる。なるほど、兄弟格差か。だから毒味役大活躍、てか? 俺のとこみたいに兄弟格差が歴然としている訳ではなく、いずれ菖蒲か杜若《かきつばた》という状態なら尚更複雑だろうなぁ。
「ラディウス様の御母堂は、王の側室でして花緑界出身の伯爵令嬢です。尤もご寵愛を受けておられます」
あぁ、王子は彩光界と花緑界のハーフなのか。だから、花のように香り高い……
「大体これで、クリスティアン様とラディウス様の確執が察せられましょう?」
俺は黙って頷いた。何だか源氏物語の第一皇子と光源氏みたいじゃないか。そして何となく、俺には第一王子様のお気持ちが分かるような気がした。
やっぱり、俺に仕事を教えるように命じられてたんじゃないかな、あの蛍光縦ロール頭兄弟。でもまぁ、任務放棄というよりはあの二人の場合、俺があたふたして逃げ出すのを期待していた、そんな感じだろうな。新人教育なんて面倒くさいのか、それとも何故だか特別扱いされてる(? と解釈しても大丈夫かなぁ……)モブな俺が気に入らないのか、その辺りの理由は分からないけど。
いずれにしても、皆ライバル、て思っておいた方が身の為だよなぁ。そういうの、昔から凄く苦手なんだけどさ。文芸サークルも、一見のんびりと和気あいあいとやっているように見えて。さり気なく互いがどこの小節投稿サイトにいて実績がどうなのか探り合って。秘かにマウントの取り合いをしている奴多かったし。俺は元々底辺だからそういうのは無関係で気が楽だったけど、見ていて居心地悪かったから見ないふりをしていたっけ。
生きていくのにもサバイバルな世の中、そういう一種の競争ごとは避けて通れないんだろうけど。この異世界でもあるある、か。でも、あっちの世界よりは単純(?)そうだとリアンが言っていたし。王子の傍にいたければ避けられない……だろうな。
何となく『オーロラの涙』を触りながら思った。じんわりと温かなそれは、俺を励ましてくれてるように感じる。
「へぇ? 天然アレキサンドライトはダイヤモンドよりも希少。天然のベキリーブルーガーネットは天然アレキサンドライトよりも希少なのか!」
思わず声をあげた。少し時間があるみたいだからさっきの続き、宝石の事を調べていたんだ。ベキリーブルーガーネット、ますます王子の双眸、て感じだなぁ。全身が宝石で出来ているような輝くばかりの容姿の持ち主。何となく「幸福の王子」が連想される。……それならさしづめ俺は、王子の望むままに宝石を人々に運んだ「つばめ」ってとこか? いや、止そう。この童話の結末は酷く物哀しい。縁起でもねぇや。
トントントン、ドアノックの音に飛び上がる程驚いた。「はい!」と直ぐに答え、パソコンをシャットダウンさせる。
「リアンです」 もうお迎えか。「はい、どうぞ」リアンは急き込むようにして入って来ると、
「あなたにお伝えしておいた方が良いと思いましてね。少し早めに参りました」
眼鏡のエッジを右手人差し指で弾く。何だろう? 伝えたい事?
「はい、有難うございます」
俺はすぐに黒革のメモ帳と羽ペンを準備した。そう、面従腹背Boyが魔法で出してくれたものだ。
「あ、いいえ。そのままで。あなたは座ったままで」
デスクの場所から、先日リアンが魔術で出してくれた応接用のテーブルと椅子の場所に誘導しようとした俺を、彼は右手をあげて軽く制した。
「では早速お伝えしましょう。殿下の近侍たちについてです。彼らは先日お伝えしました我が国彩光界を始め、夢夜界、風空界、花緑界、宝土界、水命界出身の者まで幅広くおります。私も含め、近侍は全て男性である事は言わずもながですが」
なるほど。
「第二王子はあの通り魅力的な御方ですから、その上全ての国を束ねるエターナル王家となれば誰も彼もが殿下の近侍に憧れます。地位も待遇も最高なものになりますし、大変な名誉となります。つまり一種の花形の職業な訳です。取り分け他国出身のものが殿下の近侍となればその出身地もさることながら、彼らの身内まで地位や待遇が格段にアップします」
そうか……だから必死なんだ。アルフォンスも蛍光縦ロール頭兄弟も。
「だから彼らも必死で己の立ち場を死守します。参考までに申しておきましょう。アルフォンスは水命界、ナサニエルとジェレミアは風空界、私は彩光界出身です」
あぁ、リアンは確かエターナル王家の縁の者と言ってたもんな。
「先日、例えば水命界は情やインスピレーションなどを司る、などの属性もお話しましたね。性格は個々によりますが、おおよその特性は分かると思います。先程の見事な対応を拝見しましたところ、あなたは相手の性質や本音を見抜く目をお持ちのようだ。ですから相手の出身地をお伝えしておいた方が今後も対処し易いと思いましてね」
ん? もしかして去り気なく褒めてくれた?
「有難うございます……」
「ついでにと言ってはなんですが、この国では有名なお話ですのでお伝えしておきましょう」
何だ? やんわりと遮られた? 時間が無いのかな。
「少しお伝えしましたが、第一王子のクリスティアン様はエターナル王家正統な王位継承者です。王の正妻は彩光界の出の侯爵令嬢です。Christian様……『救世主』という意味がございますが……見目麗しく多才な方です、ですが何分気難しい御性格で。ラディウス様とは全てにおいて正反対の御兄弟です。そのせいか、弟のラディウス様に何かと対抗心をむき出しにされます」
例によって、リアンの言葉はChristian……と脳内に綴りとカナが浮かび上がる。なるほど、兄弟格差か。だから毒味役大活躍、てか? 俺のとこみたいに兄弟格差が歴然としている訳ではなく、いずれ菖蒲か杜若《かきつばた》という状態なら尚更複雑だろうなぁ。
「ラディウス様の御母堂は、王の側室でして花緑界出身の伯爵令嬢です。尤もご寵愛を受けておられます」
あぁ、王子は彩光界と花緑界のハーフなのか。だから、花のように香り高い……
「大体これで、クリスティアン様とラディウス様の確執が察せられましょう?」
俺は黙って頷いた。何だか源氏物語の第一皇子と光源氏みたいじゃないか。そして何となく、俺には第一王子様のお気持ちが分かるような気がした。
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