20 / 186
第十六話
近侍見習い再開! 次は美容系、ムササビの五能は活かせるか?!
しおりを挟む
(……28、29、ラスト30、と)
フーッ、と大きく息を吐き出した。俺は今、腹筋と背筋、スクワットと腕立て伏せを終えたところだ。時刻は午前五時過ぎ。早めに起きてストレッチをしてから始めた。内緒だけど、運動用の服が用意されてないもんで、素っ裸な。あっ! そうそう、洗濯機は洗面所に備え付けのがあって。勿論乾燥機付きのな、洗濯も自分で出来るから便利だ。使い方もあっちの世界と変わらんし。リアンがさ、例によって眼鏡のエッジに右手をやりながら『洗濯もの、出してください』なんて言われてホイホイ出す訳ないじゃんなぁ? 恥ずかしい。
全身汗びっしょりだし、偉く疲れた。これだけの事で疲労困憊するようじゃ、相当に体力が落ちてるよなぁ。そりゃ元々筋骨逞しい体つきじゃなかったけどさ。筋力が衰えて学生の内からメタボになったり、歳取ってから骨粗鬆症なんかにならないように……てのは表向きの理由で。本当はこれ以上弟に差をつけられないように細やかな努力ってやつなんだけどさ。普段から早足でよく歩く事、ほぼ毎晩のようにストレッチと腹筋背筋腕立てスクワット、やってたもんな。
まずは体力を戻す事から始めないと。さてと、シャワー浴びてこよう。
もう、かすかにしか残っていないけど、王子の痕跡が残る右の首筋。思い出す度にその部分が火照る気がする。そして雫型のペンダントが俺に無限の勇気を与えてくれる。頑張って、王子の傍にいる事を許される転移者になるぞ! 近衛兵大将さんとやらみたいに!!! ムササビの五能を活かしてやるぜ! だってさだってさ、今回は王子のヘアメイク、ネイル、エステ、衣装選びの見習いだっていうからさ。ネイルは少しかじったし。美容室のアシスタントのバイト、三カ月くらいやってた事あるんだ。首や肩を揉んだり髪を洗ったり、乾かしたりは経験した事あるからさ。少しは呑み込み早そうじゃん!
ホーッ、毎度思うけど、浴室は高級ホテルみたいだ。ほら、部屋にお洒落で豪華な個室風呂がある感じの。ボディーソープやシャンプーにトリートメント、これ恐らくハーブや蜂蜜を主成分にした手作りだと思う。小説に書きたくて手作り石鹸やシャンプーなんかの体験教室に何度か足を運んだ事あるんだ。恐らく、そうだ。こういうの作る担当もいいよなぁ。
さて、しっかり清潔にして、近侍見習い再開を迎え討たないとな。昨日は結局、リアンが昼食と夕食を運んで来て。食べてゆっくり寝るように言われただけだったけど。今日からまた近侍見習いが始まる! 一日も早く、ここに慣れて王子の役に立てるようになるぞ!
浴室から出て、髪を乾かす、と。タオルも肌触り最高だよなぁ。洗濯機自体は使い方は変わら無いけど機能はもっと進化しているとみた。まぁ、洗剤とか柔軟剤とかも自然派っぽいし、そっちも進化してるんだろうけど。さて、王子が気に入ってくれた漆黒の艶髪、目指さないとな。てか、髪伸びるの早っ! もう肩より下に伸びてるし。両脇をたゆませて、後ろに緩ーく見えるように縛る、これが王子のお好みだったな。本当に緩く縛ったら取れちゃうから、と。緩く見せるように縛る。あ、縛るのは普通の黒いゴムな。
そして化粧水をたっぷりつけて。乳液と、昼間は日焼け止め、と。眉は夕べ整えたばかりだし、髭は……生えなくなったなぁ。なんだかあっちの世界にいる時よりも身だしなみに気を遣ってるよな、俺。
見習い用の白装束(笑)に着替えて、と。王子から頂いた『オーロラの涙』をかけて懐深くしまい込む。今見た感じ、ブルートパーズみたいにクリアな淡い青色だった。さて、リアンが来るまでまだ一時間ほど時間がある。せっかくだからパソコンを立ち上げてみよう。気になっていた王子の瞳、宝石について調べてみたいしな。パソコン、見た目はあっちの世界と変わらない感じだなぁ。この下に、IDとパスワードをがある、と。あ! あった。普通に白い紙に黒字のボールペン、かな。何々?
ID:838477884838
パスワード:isekaichannel888
ん? パスワードが笑えるやん。お! 来た来た! んー見た感じあっちの世界とパソコン画面も変わらん感じするなぁ。取り合えず、「色が変わる宝石、カラーチェンジジュエリー」で検索してみよう! あ、出てきた出てきた。『オーロラの涙』ヒット、でも王子の瞳の色の変化は……そうそうこれこれ『アレキサンドライト』。白熱灯や蝋燭の灯りでは赤に、陽の光では暗緑に。……緑にも変化するけど、でも赤からロイヤルブルーに変化する、ていう方がしっくりくるんだよなぁ。……あ! これだ! 深紅からロイヤルブルーに、時に光の加減で二色が絶妙に混じり合って見えたり、菫色に見える時もある。「ベキリーブルーガーネット」っていう宝石らしい。これだ! これが一番、王子の瞳を表現するのに相応しい宝石だ!
トントントン、いきなりドアノックの音だ。あれ? もう一時間経った? いや、約束の時間まであと50分あるじゃん、何か緊急事態かな?
「リアンです。急にすみません。どうしても、美容担当の二人が早めにあなたに挨拶したい、というもので」
ドアの向こうでリアンの声。急に鼓動がドキドキ波打ち始めた。何だ? いきなり。でももうその二人、来てるんだろ? そこに。断れる訳ないやんなぁ? これ、断ったら心証悪くなるよな、絶対。急いでパソコンをシャットダウンして、と。
「はい、大丈夫です。どうぞ」
と声をかけながらドアに近付いた。
「失礼します。突然すみませんね」
と申し訳なさそうなリアン。へぇ? こんな表情も出来るんだ。
「初めまして! 突然悪いね。僕は Nathanael。彼は与える、て意味がある。殿下のヘアメイクとネイル、ファッション全般を担当してる」
な、何だ? リアンの後ろからヒョッコリと顔を出したのは、ヒョロッと背が高く、グレーのスーツに身を包んだ……蛍光ブルーのド派手な髪を肩の辺りで縦ロールにして揃えている。ぱっちりとした蛍光オレンジの瞳だ。
「初めまして。僕はJeremiah。神の喜び、という意味がある。殿下のエステと香水選びを担当している」
その後ろから顔を出したのは、ナサニエルとかいう男と瓜二つの顔、背丈、服装の男。違うのは髪の色がド派手な蛍光ピンク、瞳の色が蛍光グリーンである事だけだ。二人ともリアンの前にしゃしゃり出て、腕組みをして俺を見据える。偉そうな奴らだな、なんかムカつくわ。にしてもあの髪、カツラじゃねーのかなぁ。
「何だか体弱そうだね、そんなんで殿下の近侍になれんの?」
とあからさまに上から目線で言い放つジェレミア。は? 何だよいきなり失礼だなこのピンク頭!
「僕たちは双子で、以心伝心で通じ合いながら王子の美容を担当しているんだ。失礼だけど、君には出来そうにないね」
憮然として言い切るナサニエル。はぁ? 何だよ蛍光ブルー、その決めつけ系は!? さて、俺、どう出る???
フーッ、と大きく息を吐き出した。俺は今、腹筋と背筋、スクワットと腕立て伏せを終えたところだ。時刻は午前五時過ぎ。早めに起きてストレッチをしてから始めた。内緒だけど、運動用の服が用意されてないもんで、素っ裸な。あっ! そうそう、洗濯機は洗面所に備え付けのがあって。勿論乾燥機付きのな、洗濯も自分で出来るから便利だ。使い方もあっちの世界と変わらんし。リアンがさ、例によって眼鏡のエッジに右手をやりながら『洗濯もの、出してください』なんて言われてホイホイ出す訳ないじゃんなぁ? 恥ずかしい。
全身汗びっしょりだし、偉く疲れた。これだけの事で疲労困憊するようじゃ、相当に体力が落ちてるよなぁ。そりゃ元々筋骨逞しい体つきじゃなかったけどさ。筋力が衰えて学生の内からメタボになったり、歳取ってから骨粗鬆症なんかにならないように……てのは表向きの理由で。本当はこれ以上弟に差をつけられないように細やかな努力ってやつなんだけどさ。普段から早足でよく歩く事、ほぼ毎晩のようにストレッチと腹筋背筋腕立てスクワット、やってたもんな。
まずは体力を戻す事から始めないと。さてと、シャワー浴びてこよう。
もう、かすかにしか残っていないけど、王子の痕跡が残る右の首筋。思い出す度にその部分が火照る気がする。そして雫型のペンダントが俺に無限の勇気を与えてくれる。頑張って、王子の傍にいる事を許される転移者になるぞ! 近衛兵大将さんとやらみたいに!!! ムササビの五能を活かしてやるぜ! だってさだってさ、今回は王子のヘアメイク、ネイル、エステ、衣装選びの見習いだっていうからさ。ネイルは少しかじったし。美容室のアシスタントのバイト、三カ月くらいやってた事あるんだ。首や肩を揉んだり髪を洗ったり、乾かしたりは経験した事あるからさ。少しは呑み込み早そうじゃん!
ホーッ、毎度思うけど、浴室は高級ホテルみたいだ。ほら、部屋にお洒落で豪華な個室風呂がある感じの。ボディーソープやシャンプーにトリートメント、これ恐らくハーブや蜂蜜を主成分にした手作りだと思う。小説に書きたくて手作り石鹸やシャンプーなんかの体験教室に何度か足を運んだ事あるんだ。恐らく、そうだ。こういうの作る担当もいいよなぁ。
さて、しっかり清潔にして、近侍見習い再開を迎え討たないとな。昨日は結局、リアンが昼食と夕食を運んで来て。食べてゆっくり寝るように言われただけだったけど。今日からまた近侍見習いが始まる! 一日も早く、ここに慣れて王子の役に立てるようになるぞ!
浴室から出て、髪を乾かす、と。タオルも肌触り最高だよなぁ。洗濯機自体は使い方は変わら無いけど機能はもっと進化しているとみた。まぁ、洗剤とか柔軟剤とかも自然派っぽいし、そっちも進化してるんだろうけど。さて、王子が気に入ってくれた漆黒の艶髪、目指さないとな。てか、髪伸びるの早っ! もう肩より下に伸びてるし。両脇をたゆませて、後ろに緩ーく見えるように縛る、これが王子のお好みだったな。本当に緩く縛ったら取れちゃうから、と。緩く見せるように縛る。あ、縛るのは普通の黒いゴムな。
そして化粧水をたっぷりつけて。乳液と、昼間は日焼け止め、と。眉は夕べ整えたばかりだし、髭は……生えなくなったなぁ。なんだかあっちの世界にいる時よりも身だしなみに気を遣ってるよな、俺。
見習い用の白装束(笑)に着替えて、と。王子から頂いた『オーロラの涙』をかけて懐深くしまい込む。今見た感じ、ブルートパーズみたいにクリアな淡い青色だった。さて、リアンが来るまでまだ一時間ほど時間がある。せっかくだからパソコンを立ち上げてみよう。気になっていた王子の瞳、宝石について調べてみたいしな。パソコン、見た目はあっちの世界と変わらない感じだなぁ。この下に、IDとパスワードをがある、と。あ! あった。普通に白い紙に黒字のボールペン、かな。何々?
ID:838477884838
パスワード:isekaichannel888
ん? パスワードが笑えるやん。お! 来た来た! んー見た感じあっちの世界とパソコン画面も変わらん感じするなぁ。取り合えず、「色が変わる宝石、カラーチェンジジュエリー」で検索してみよう! あ、出てきた出てきた。『オーロラの涙』ヒット、でも王子の瞳の色の変化は……そうそうこれこれ『アレキサンドライト』。白熱灯や蝋燭の灯りでは赤に、陽の光では暗緑に。……緑にも変化するけど、でも赤からロイヤルブルーに変化する、ていう方がしっくりくるんだよなぁ。……あ! これだ! 深紅からロイヤルブルーに、時に光の加減で二色が絶妙に混じり合って見えたり、菫色に見える時もある。「ベキリーブルーガーネット」っていう宝石らしい。これだ! これが一番、王子の瞳を表現するのに相応しい宝石だ!
トントントン、いきなりドアノックの音だ。あれ? もう一時間経った? いや、約束の時間まであと50分あるじゃん、何か緊急事態かな?
「リアンです。急にすみません。どうしても、美容担当の二人が早めにあなたに挨拶したい、というもので」
ドアの向こうでリアンの声。急に鼓動がドキドキ波打ち始めた。何だ? いきなり。でももうその二人、来てるんだろ? そこに。断れる訳ないやんなぁ? これ、断ったら心証悪くなるよな、絶対。急いでパソコンをシャットダウンして、と。
「はい、大丈夫です。どうぞ」
と声をかけながらドアに近付いた。
「失礼します。突然すみませんね」
と申し訳なさそうなリアン。へぇ? こんな表情も出来るんだ。
「初めまして! 突然悪いね。僕は Nathanael。彼は与える、て意味がある。殿下のヘアメイクとネイル、ファッション全般を担当してる」
な、何だ? リアンの後ろからヒョッコリと顔を出したのは、ヒョロッと背が高く、グレーのスーツに身を包んだ……蛍光ブルーのド派手な髪を肩の辺りで縦ロールにして揃えている。ぱっちりとした蛍光オレンジの瞳だ。
「初めまして。僕はJeremiah。神の喜び、という意味がある。殿下のエステと香水選びを担当している」
その後ろから顔を出したのは、ナサニエルとかいう男と瓜二つの顔、背丈、服装の男。違うのは髪の色がド派手な蛍光ピンク、瞳の色が蛍光グリーンである事だけだ。二人ともリアンの前にしゃしゃり出て、腕組みをして俺を見据える。偉そうな奴らだな、なんかムカつくわ。にしてもあの髪、カツラじゃねーのかなぁ。
「何だか体弱そうだね、そんなんで殿下の近侍になれんの?」
とあからさまに上から目線で言い放つジェレミア。は? 何だよいきなり失礼だなこのピンク頭!
「僕たちは双子で、以心伝心で通じ合いながら王子の美容を担当しているんだ。失礼だけど、君には出来そうにないね」
憮然として言い切るナサニエル。はぁ? 何だよ蛍光ブルー、その決めつけ系は!? さて、俺、どう出る???
25
お気に入りに追加
605
あなたにおすすめの小説
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。

ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。
イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。
力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。
だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。
イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる?
頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい?
俺、男と結婚するのか?


主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.

物語なんかじゃない
mahiro
BL
あの日、俺は知った。
俺は彼等に良いように使われ、用が済んだら捨てられる存在であると。
それから数百年後。
俺は転生し、ひとり旅に出ていた。
あてもなくただ、村を点々とする毎日であったのだが、とある人物に遭遇しその日々が変わることとなり………?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる