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第87話 逢引は裏庭で
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あの戦争から数週間が経ち、国内の情勢は徐々に安定しつつあった。各地区の嵐による災害からの復興も進み、ジャオも城で過ごす時間が増えてきた。今日も一緒に連絡会に参加している。
母上とフロストと三人きり、フロストがポンコツ化したことで正直不安な日々を過ごしていたが、やっぱり隣にジャオがいてくれるだけで安心する。物静かで威厳があって、強くてカッコ良くて……僕にとっては理想の王であり、これ以上ないほどに素晴らしい、人生の伴侶だ。
「南地区はほぼ修復が完了した。東も概ね目処が立っている」
「北地区も同様です。西は少し遅れが出ており、終わった地区からの増員を要請したい」
「では西に移動できる者を募りましょう。馬車の手配と人数の調整は私が。英雄のお二人は引き続き現場の指揮を執ってください」
堂々と会議を引っ張っているのは言わずと知れたフロストだ。だんだんと精神は回復し、今ではすっかり以前の頼れる指導者に戻ってくれた。
これでようやく僕の平穏な日々が訪れる。あとは婚姻の儀と王位継承の儀に備えるだけだ。僕は英雄親子やフロストのような働きはできないけれど、替えの効かない役割を担うことは自覚している。国民への演説で話すことを日々考えて練習するなど、新しい一歩に胸が躍る毎日だ。
「――――この辺りでしょうかね。では休憩を取ってから、各々の持ち場に戻りましょう」
フロストの号令で皆が一斉に立ち上がる。伸びをしたり、荷物をまとめたりと様々に動いている。僕は会議室の大きな窓から差し込む陽光を浴びにそちらへ寄った。
「リュカさんはこちらへ」
「はい」
フロストがお父さんを呼び、さっさと会議室から出て行く。ジャオはその後ろ姿を一瞥するが、興味なさげにふいと顔を逸らして僕の隣に来た。
「あの二人のこと……気にならないの?」
「好きにやればいい。俺には関係ない」
「うーん……」
でもジャオにとって、リュカさんは血の繋がった父親だ。大切にしている母親が不倫されているかもしれないのに、少しは心を痛めたりしないのだろうか?
「……むしろ好都合かもしれないな」
「えっ?」
「あの男がフロストのほうにいけば、母さんの負担が減る。ようやく解放されるな」
「もう……」
そういうものなのだろうか。だけどそれで、ミヤビさんの心は悲しみに張り裂けたりしないだろうか。悶々としながらも、僕は手早く資料を手元にかき集める。
「ベル、どこかへ行くのか?」
「うん。ジャオは今日は非番だよね?」
「ああ、この後はずっと城にいる」
「なら少しはゆっくりしてよ。僕は少し、図書館に用があるから」
「そうか……」
少し寂しそうなジャオの顔に後ろ髪を引かれないでもなかったが、ジャオとの時間は夜にもたっぷり取れるからな。僕は一人会議室を出て、足早に自室へと急いだ。
自室に資料を置くと僕は図書館に……は向かわず、裏手の森に来ていた。
要するに、そう、ジャオには嘘をついてしまった。だけど許して欲しい。だってこの日課は欠かせない。
「リュカさん……」
「か、カナタくん……」
木の根っこに密着して座り込む二人。甘えるように頬擦りしてくるフロストをお父さんは困惑気味に、だが、しっかりと受け入れている。かたく結ばれた手繋ぎは片方が掴んだだけのものではない、互いに指を絡ませ合っている親密な形だ。
「リュカさんの匂い、好きです」
「そんな……カナタくんこそ、いい、匂いが……」
「僕、幸せ」
「ああ、カナタくん……」
フロストが至近距離で見つめると、耐えきれないといった様子でお父さんがフロストの唇をチュッと攫う。白魚のような美しい手がお父さんの頬を包んで、魔性の甘え声が、二人だけの世界に、響く。
「もっと、キスして?」
「こんなこと、続けていてもいいのだろうか……」
「リュカさんが僕と仲良くなりたいって言ったんだよ?」
「しかし、誰かに見られたら」
「……早くキスしよ? 我慢できない」
フロストが膝の上に乗って唇を突き出す。かくしてキスは始まった。お父さんがフロストの唇を軽く、食んで……二人は舌を伸ばし、夢中で絡め合う。
「んふ……ンッ……リュカさん、もっと……」
「カナタくん……」
お父さんはまだ迷っているようで腰が引けている。それをフロストが引き寄せて激しく舌を吸うと、お父さんも徐々に身を乗り出して……積極的にフロストの唇を貪る動きに変わっていく。
欲望だけで構成された耽美な世界観に、僕は熱い吐息を我慢できず、下半身に手を伸ばした。
「…………ッ」
フロストが、己が持ちうる魅力すべてを放出して全身全霊でお父さんを誘惑する。お父さんはそれを撥ね付けられず、フロストの美貌に溺れるままに、こうして情欲を満たす二人きりの時間を享受していた。
二人がこうなるまでにそう時間はかからなかった。フロストは毎日甲斐甲斐しく早朝散歩でミヤビさんを訪ね、お父さんと朝食を共にして、二人で散歩をした後にここでこうして関係を深めていった。
時間はおおよそ決まっている。窓辺で見張っている僕は、二人が来ると森へと降りて、気付かれないように情事を覗き見しながら、自慰行為に耽る……。
知り合い同士のキスシーンで興奮するなんて恥ずかしいことだって、わかってる。けど、二人の関係、背徳的すぎて……僕の知らないフロストが、愛らしすぎて……やめようと思っても、翌日になればまた必ず覗きに来てしまう。
二人が絡み合う姿を見ながら下着に手を入れて性感帯を刺激する。気持ち良い……今日は真剣な会議の後とあって二人とも興奮しているのかキスが濃厚だ。僕も胸当てとパンツ両方に手を入れて、乳首と女陰の両方を指で弾いている。早くものっぴきならない状態だ。
「キス、気持ち良いよぉ……もっと……」
「カナタくん……ハアッ……」
お父さんがフロストの髪をかき乱して何度も角度を変え貪る。激しい動作にフロストはビクビクと跳ねてなおも擦り寄る。腰を振る。お父さんからも押し付けて、相互で扱き合っているようだ。
こんなのもう、仲良くなるためのスキンシップでもなんでもないのに……二人はずっと、これを続けている。
「リュカさん……僕のこと、どう思ってる……?」
「ン……可愛いと、思っているよ……」
「好き……?」
「ハア……カナタくん……」
質問の答えはなく、また貪るようなキスが始まる。お父さんは明確に言葉にはしないけれど、もうずっと自分よりも若い義弟の唇に執着していることで答えてしまっている。自分も憎からず、フロストを想っているのだと。
「ねえリュカさん……僕の顔、舐めて……」
「うん……」
べろり。目の横に舌を這わされて、フロストが目も口も半開きでゾクゾクと震える。やけに震えが止まらないと思ったら、フロストの肩口に顔を埋めたお父さんはまだ、その白い首筋をジュルジュルと舐めしゃぶっているようだ。
「ハア……カナタくん……どうしてこんなに良い匂いなんだ……ッ」
「はあ、はあ、ああ~っ……リュカさん、もっと身体中、舐めてほしいよぉ……」
その言葉にドキリとお父さんが硬直する。フロストは胸をはだけて……液状になってしまったかのように、全身でお父さんの身体に絡み付いている……。
「セックス、したい……」
「……!」
……二人がこの場でまぐわい始めたらどうしよう。見たい。フロストとお父さんの、誰にも見られちゃいけない、濃厚に愛し合っているところ、見たい……!
ああ、手が止まらないよぅ……。
「カナタくん、ダメだ……これ以上、誘惑しないでくれっ……」
「お願い……僕、リュカさんに抱かれたくて、もう、後ろが疼いてるの……」
フロストが自らの後ろに手を回すと、お父さんはさせまいと腕を拘束してそのまま押し倒した。鼻先がくっついたまま見つめ合う。お父さんの端正な顔立ちが欲望でドロドロに蕩けて、それでも必死に……己を律している。
「キス、たくさんしてあげるから……我慢してくれないか……?」
「リュカさん……」
下からペロッとフロストがお父さんの口を舐める。それに触発されたかのように、今度こそ獣のごとく、お父さんが押し倒したままのフロストの口内を蹂躙した。後頭部を掴み、片手はかたく結んだままで……二人は互いに貪り合う。
アアッ、すごい……言葉がなくても互いに愛し合い、激しく求め合っているのがわかる、キス……羨ましい……僕も、シたい……。
膣内の指を二本に増やしてナカで拡げる。自らを追い詰めて声が出そうになったところで、後ろから口を塞がれた。
「ッ!?!?」
この大きな手、匂い……僕を包む体温……待っていたはずなのに、状況が状況なだけに一気に肝が冷える。ジャオ。振り返ると、少し怒ったような顔でこちらを睨みつけている。完全に僕を後ろから拘束すると、口を塞いだまま、グチュグチュと激しく膣内を指で責め立ててきた。
「ンッンッンーーーー!」
ヤバい、声が。
キスしていた二人が弾かれるようにこちらを見る。だが僕の痴態が目に入ると、お父さんはすぐに気を遣って目を逸らしてくれた。
「イけ、命令だ、ベル」
「ンッンッ」
いやいやと首を振るがジャオの手淫は激しくなる一方だ。耳朶に牙が食い込んでジワジワとプレッシャーを与えてくる。フロストの驚いた顔の前で、僕は結局……盛大に達して、衣服を汚してしまった。
「あぁ……いやぁ……」
「おい、お前達」
ジャオは僕の下着から手を抜いて水滴を振り払う。ビチャッ、と水飛沫が舞って、お父さんがその動作に目を奪われている。また軽く、イきそうになった……。
お父さんがフロストの衣服を直す。そして申し訳なさそうな顔で息子と向き合った。
「ジャオ、違うんだ」
「何が違う」
「私が一方的にカナタくんに手を出した」
「それは、違います」
「そんなことはどうでもいい」
ジャオはへたり込む僕など眼中にないかのように、今度はフロストに強い眼差しを向ける。
「お前は父さんを手に入れたいんだろう」
「え……それは……」
「父さんとセックスがしたいんだよな?」
一瞬迷った顔をするが、フロストは観念したように頷く。ジャオ、その会話も聞いていたのか。一体いつから後ろにいたんだ……。
「母さんの存在が後ろめたいか?」
「それは……そうですよ、そうに決まってる……」
「なら直接頼めばいい」
ジャオ……一体、何を言っているんだ……?
信じがたい発言にその場にいる全員が困惑する。しかしジャオは堂々と言葉を続ける。
「母さんに許可を取ればいいだろう。お前と仲が良いなら、案外許してくれるかもしれないぞ?」
「ジャオ、何を…………」
「……………………そうか」
フロストのポツリと呟いた言葉に、嫌な予感が走った。それはお父さんも同じだったようだ。いつの間にか下から這い出ていたフロストに手を伸ばすが、後一歩のところでひらりとかわされてしまう。
「行ってきます!」
「ああ、行ってこい」
「ちょっと! ジャオ……!」
「待ちなさいカナタくん!!」
フロストが全速力で森を抜ける。お父さんが後を追うが、驚いたことにその差はいっこうに縮まらない。フロストが覚醒している。恋って身体能力の壁をも突き破るのか……。
「ベル、待たせたな」
「ヒッ」
ジャオがおもむろに振り返ってかがみ込んできた。横たわったままの僕を乱暴に起こして、木の幹に追い詰め、唇をキスで塞いでくる。
こんな場所で、こんなこと……昔はよくしていたけれど、父上に怒られてからはちゃんと部屋でしかしていなかったのに……。
ジャオの舌が蛇のようにぬるぬると動く。イったばかりの僕にはすべてが刺激的すぎて、受け止めるだけで精一杯だ。何分経過したかわからない。ジャオと二人きりになった森の中で……長いキスを終えた。向き合ったジャオの瞳は、怒りで澱んでいる。
「父さんとフロストのキスがそんなに見たかったのか?」
「ご、め……」
「まさかここまで変態だとはな……はしたない。躾し直してやる」
「やっ……!」
無理やり抑えつけられてあっという間に服をすべて剥ぎ取られてしまう。完全な女体になってからはこうして地面に横たわるのなんてはじめてで……ひどく、恥ずかしい。誰かに見られたらって思うと、胸を掻きむしりたくなるくらいに……。
「興奮、するか?」
牙を剥き出して責め立ててくるジャオは、笑っているような、怒っているような……ともかくとても恐ろしい形相で、僕は涙目で必死に首を横に振る。
「今すぐお前に種付けしないと気が済まない」
「ジャオ、ごめんなさい、許して……せめて部屋で……」
「こんなにもグチャグチャにしておいてよく言うな?」
「アッ……」
広げさせられた股の間にジャオの身体が割り込んでくる。濡れそぼったそこは愛液を垂れ流して、すぐにジャオの亀頭を濡らしてしまう。
「お仕置きだ……!」
「あうッ!」
ズン、と突き入れられて背中が思いっきり地面に擦れた。ずれた僕の身体を追ってジャオが覆いかぶさってくる。もう身体が動かないように拘束して、ズンズン、ズンズン、力強く突き入れてくるッ…………アアッ…………。
「きもちい~~きもち~よお~~~~」
「今誰に挿れられてるか言ってみろ……!」
「ジャオお、ジャオだよお、ア、イく、イっく、う、」
ズプン! 最奥を貫くような逞しい突きに、強制的に絶頂を迎えさせられた。ドクドクと注がれる子種、支配される快楽に満たされて……僕は脱力し、地面にへたり込んでしまう。
「……いいか。二度と俺以外の男で性的欲求を満たすな」
「は、はいぃ~……もうしませへぇん……」
それで怒っていたのか……ああでも、ヨかった~~……ジャオに乱暴にサレるの、やっぱり、すき……お仕置きされたくてまたシちゃうかも……僕って、バカだなぁ……。
でも、だって、ジャオが僕のために怒ってくれるの、嬉しいんだもん……。
「あ、ジャオ……あれはよくないよ……実家、今頃修羅場だよ……?」
「こんなことでどうにかなるような柔な家じゃない」
「へ……?」
それなら、どうなるというのだ。
僕はジャオの真意が分からず、ただただ首を傾げるばかりだった。
母上とフロストと三人きり、フロストがポンコツ化したことで正直不安な日々を過ごしていたが、やっぱり隣にジャオがいてくれるだけで安心する。物静かで威厳があって、強くてカッコ良くて……僕にとっては理想の王であり、これ以上ないほどに素晴らしい、人生の伴侶だ。
「南地区はほぼ修復が完了した。東も概ね目処が立っている」
「北地区も同様です。西は少し遅れが出ており、終わった地区からの増員を要請したい」
「では西に移動できる者を募りましょう。馬車の手配と人数の調整は私が。英雄のお二人は引き続き現場の指揮を執ってください」
堂々と会議を引っ張っているのは言わずと知れたフロストだ。だんだんと精神は回復し、今ではすっかり以前の頼れる指導者に戻ってくれた。
これでようやく僕の平穏な日々が訪れる。あとは婚姻の儀と王位継承の儀に備えるだけだ。僕は英雄親子やフロストのような働きはできないけれど、替えの効かない役割を担うことは自覚している。国民への演説で話すことを日々考えて練習するなど、新しい一歩に胸が躍る毎日だ。
「――――この辺りでしょうかね。では休憩を取ってから、各々の持ち場に戻りましょう」
フロストの号令で皆が一斉に立ち上がる。伸びをしたり、荷物をまとめたりと様々に動いている。僕は会議室の大きな窓から差し込む陽光を浴びにそちらへ寄った。
「リュカさんはこちらへ」
「はい」
フロストがお父さんを呼び、さっさと会議室から出て行く。ジャオはその後ろ姿を一瞥するが、興味なさげにふいと顔を逸らして僕の隣に来た。
「あの二人のこと……気にならないの?」
「好きにやればいい。俺には関係ない」
「うーん……」
でもジャオにとって、リュカさんは血の繋がった父親だ。大切にしている母親が不倫されているかもしれないのに、少しは心を痛めたりしないのだろうか?
「……むしろ好都合かもしれないな」
「えっ?」
「あの男がフロストのほうにいけば、母さんの負担が減る。ようやく解放されるな」
「もう……」
そういうものなのだろうか。だけどそれで、ミヤビさんの心は悲しみに張り裂けたりしないだろうか。悶々としながらも、僕は手早く資料を手元にかき集める。
「ベル、どこかへ行くのか?」
「うん。ジャオは今日は非番だよね?」
「ああ、この後はずっと城にいる」
「なら少しはゆっくりしてよ。僕は少し、図書館に用があるから」
「そうか……」
少し寂しそうなジャオの顔に後ろ髪を引かれないでもなかったが、ジャオとの時間は夜にもたっぷり取れるからな。僕は一人会議室を出て、足早に自室へと急いだ。
自室に資料を置くと僕は図書館に……は向かわず、裏手の森に来ていた。
要するに、そう、ジャオには嘘をついてしまった。だけど許して欲しい。だってこの日課は欠かせない。
「リュカさん……」
「か、カナタくん……」
木の根っこに密着して座り込む二人。甘えるように頬擦りしてくるフロストをお父さんは困惑気味に、だが、しっかりと受け入れている。かたく結ばれた手繋ぎは片方が掴んだだけのものではない、互いに指を絡ませ合っている親密な形だ。
「リュカさんの匂い、好きです」
「そんな……カナタくんこそ、いい、匂いが……」
「僕、幸せ」
「ああ、カナタくん……」
フロストが至近距離で見つめると、耐えきれないといった様子でお父さんがフロストの唇をチュッと攫う。白魚のような美しい手がお父さんの頬を包んで、魔性の甘え声が、二人だけの世界に、響く。
「もっと、キスして?」
「こんなこと、続けていてもいいのだろうか……」
「リュカさんが僕と仲良くなりたいって言ったんだよ?」
「しかし、誰かに見られたら」
「……早くキスしよ? 我慢できない」
フロストが膝の上に乗って唇を突き出す。かくしてキスは始まった。お父さんがフロストの唇を軽く、食んで……二人は舌を伸ばし、夢中で絡め合う。
「んふ……ンッ……リュカさん、もっと……」
「カナタくん……」
お父さんはまだ迷っているようで腰が引けている。それをフロストが引き寄せて激しく舌を吸うと、お父さんも徐々に身を乗り出して……積極的にフロストの唇を貪る動きに変わっていく。
欲望だけで構成された耽美な世界観に、僕は熱い吐息を我慢できず、下半身に手を伸ばした。
「…………ッ」
フロストが、己が持ちうる魅力すべてを放出して全身全霊でお父さんを誘惑する。お父さんはそれを撥ね付けられず、フロストの美貌に溺れるままに、こうして情欲を満たす二人きりの時間を享受していた。
二人がこうなるまでにそう時間はかからなかった。フロストは毎日甲斐甲斐しく早朝散歩でミヤビさんを訪ね、お父さんと朝食を共にして、二人で散歩をした後にここでこうして関係を深めていった。
時間はおおよそ決まっている。窓辺で見張っている僕は、二人が来ると森へと降りて、気付かれないように情事を覗き見しながら、自慰行為に耽る……。
知り合い同士のキスシーンで興奮するなんて恥ずかしいことだって、わかってる。けど、二人の関係、背徳的すぎて……僕の知らないフロストが、愛らしすぎて……やめようと思っても、翌日になればまた必ず覗きに来てしまう。
二人が絡み合う姿を見ながら下着に手を入れて性感帯を刺激する。気持ち良い……今日は真剣な会議の後とあって二人とも興奮しているのかキスが濃厚だ。僕も胸当てとパンツ両方に手を入れて、乳首と女陰の両方を指で弾いている。早くものっぴきならない状態だ。
「キス、気持ち良いよぉ……もっと……」
「カナタくん……ハアッ……」
お父さんがフロストの髪をかき乱して何度も角度を変え貪る。激しい動作にフロストはビクビクと跳ねてなおも擦り寄る。腰を振る。お父さんからも押し付けて、相互で扱き合っているようだ。
こんなのもう、仲良くなるためのスキンシップでもなんでもないのに……二人はずっと、これを続けている。
「リュカさん……僕のこと、どう思ってる……?」
「ン……可愛いと、思っているよ……」
「好き……?」
「ハア……カナタくん……」
質問の答えはなく、また貪るようなキスが始まる。お父さんは明確に言葉にはしないけれど、もうずっと自分よりも若い義弟の唇に執着していることで答えてしまっている。自分も憎からず、フロストを想っているのだと。
「ねえリュカさん……僕の顔、舐めて……」
「うん……」
べろり。目の横に舌を這わされて、フロストが目も口も半開きでゾクゾクと震える。やけに震えが止まらないと思ったら、フロストの肩口に顔を埋めたお父さんはまだ、その白い首筋をジュルジュルと舐めしゃぶっているようだ。
「ハア……カナタくん……どうしてこんなに良い匂いなんだ……ッ」
「はあ、はあ、ああ~っ……リュカさん、もっと身体中、舐めてほしいよぉ……」
その言葉にドキリとお父さんが硬直する。フロストは胸をはだけて……液状になってしまったかのように、全身でお父さんの身体に絡み付いている……。
「セックス、したい……」
「……!」
……二人がこの場でまぐわい始めたらどうしよう。見たい。フロストとお父さんの、誰にも見られちゃいけない、濃厚に愛し合っているところ、見たい……!
ああ、手が止まらないよぅ……。
「カナタくん、ダメだ……これ以上、誘惑しないでくれっ……」
「お願い……僕、リュカさんに抱かれたくて、もう、後ろが疼いてるの……」
フロストが自らの後ろに手を回すと、お父さんはさせまいと腕を拘束してそのまま押し倒した。鼻先がくっついたまま見つめ合う。お父さんの端正な顔立ちが欲望でドロドロに蕩けて、それでも必死に……己を律している。
「キス、たくさんしてあげるから……我慢してくれないか……?」
「リュカさん……」
下からペロッとフロストがお父さんの口を舐める。それに触発されたかのように、今度こそ獣のごとく、お父さんが押し倒したままのフロストの口内を蹂躙した。後頭部を掴み、片手はかたく結んだままで……二人は互いに貪り合う。
アアッ、すごい……言葉がなくても互いに愛し合い、激しく求め合っているのがわかる、キス……羨ましい……僕も、シたい……。
膣内の指を二本に増やしてナカで拡げる。自らを追い詰めて声が出そうになったところで、後ろから口を塞がれた。
「ッ!?!?」
この大きな手、匂い……僕を包む体温……待っていたはずなのに、状況が状況なだけに一気に肝が冷える。ジャオ。振り返ると、少し怒ったような顔でこちらを睨みつけている。完全に僕を後ろから拘束すると、口を塞いだまま、グチュグチュと激しく膣内を指で責め立ててきた。
「ンッンッンーーーー!」
ヤバい、声が。
キスしていた二人が弾かれるようにこちらを見る。だが僕の痴態が目に入ると、お父さんはすぐに気を遣って目を逸らしてくれた。
「イけ、命令だ、ベル」
「ンッンッ」
いやいやと首を振るがジャオの手淫は激しくなる一方だ。耳朶に牙が食い込んでジワジワとプレッシャーを与えてくる。フロストの驚いた顔の前で、僕は結局……盛大に達して、衣服を汚してしまった。
「あぁ……いやぁ……」
「おい、お前達」
ジャオは僕の下着から手を抜いて水滴を振り払う。ビチャッ、と水飛沫が舞って、お父さんがその動作に目を奪われている。また軽く、イきそうになった……。
お父さんがフロストの衣服を直す。そして申し訳なさそうな顔で息子と向き合った。
「ジャオ、違うんだ」
「何が違う」
「私が一方的にカナタくんに手を出した」
「それは、違います」
「そんなことはどうでもいい」
ジャオはへたり込む僕など眼中にないかのように、今度はフロストに強い眼差しを向ける。
「お前は父さんを手に入れたいんだろう」
「え……それは……」
「父さんとセックスがしたいんだよな?」
一瞬迷った顔をするが、フロストは観念したように頷く。ジャオ、その会話も聞いていたのか。一体いつから後ろにいたんだ……。
「母さんの存在が後ろめたいか?」
「それは……そうですよ、そうに決まってる……」
「なら直接頼めばいい」
ジャオ……一体、何を言っているんだ……?
信じがたい発言にその場にいる全員が困惑する。しかしジャオは堂々と言葉を続ける。
「母さんに許可を取ればいいだろう。お前と仲が良いなら、案外許してくれるかもしれないぞ?」
「ジャオ、何を…………」
「……………………そうか」
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「行ってきます!」
「ああ、行ってこい」
「ちょっと! ジャオ……!」
「待ちなさいカナタくん!!」
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「ヒッ」
ジャオがおもむろに振り返ってかがみ込んできた。横たわったままの僕を乱暴に起こして、木の幹に追い詰め、唇をキスで塞いでくる。
こんな場所で、こんなこと……昔はよくしていたけれど、父上に怒られてからはちゃんと部屋でしかしていなかったのに……。
ジャオの舌が蛇のようにぬるぬると動く。イったばかりの僕にはすべてが刺激的すぎて、受け止めるだけで精一杯だ。何分経過したかわからない。ジャオと二人きりになった森の中で……長いキスを終えた。向き合ったジャオの瞳は、怒りで澱んでいる。
「父さんとフロストのキスがそんなに見たかったのか?」
「ご、め……」
「まさかここまで変態だとはな……はしたない。躾し直してやる」
「やっ……!」
無理やり抑えつけられてあっという間に服をすべて剥ぎ取られてしまう。完全な女体になってからはこうして地面に横たわるのなんてはじめてで……ひどく、恥ずかしい。誰かに見られたらって思うと、胸を掻きむしりたくなるくらいに……。
「興奮、するか?」
牙を剥き出して責め立ててくるジャオは、笑っているような、怒っているような……ともかくとても恐ろしい形相で、僕は涙目で必死に首を横に振る。
「今すぐお前に種付けしないと気が済まない」
「ジャオ、ごめんなさい、許して……せめて部屋で……」
「こんなにもグチャグチャにしておいてよく言うな?」
「アッ……」
広げさせられた股の間にジャオの身体が割り込んでくる。濡れそぼったそこは愛液を垂れ流して、すぐにジャオの亀頭を濡らしてしまう。
「お仕置きだ……!」
「あうッ!」
ズン、と突き入れられて背中が思いっきり地面に擦れた。ずれた僕の身体を追ってジャオが覆いかぶさってくる。もう身体が動かないように拘束して、ズンズン、ズンズン、力強く突き入れてくるッ…………アアッ…………。
「きもちい~~きもち~よお~~~~」
「今誰に挿れられてるか言ってみろ……!」
「ジャオお、ジャオだよお、ア、イく、イっく、う、」
ズプン! 最奥を貫くような逞しい突きに、強制的に絶頂を迎えさせられた。ドクドクと注がれる子種、支配される快楽に満たされて……僕は脱力し、地面にへたり込んでしまう。
「……いいか。二度と俺以外の男で性的欲求を満たすな」
「は、はいぃ~……もうしませへぇん……」
それで怒っていたのか……ああでも、ヨかった~~……ジャオに乱暴にサレるの、やっぱり、すき……お仕置きされたくてまたシちゃうかも……僕って、バカだなぁ……。
でも、だって、ジャオが僕のために怒ってくれるの、嬉しいんだもん……。
「あ、ジャオ……あれはよくないよ……実家、今頃修羅場だよ……?」
「こんなことでどうにかなるような柔な家じゃない」
「へ……?」
それなら、どうなるというのだ。
僕はジャオの真意が分からず、ただただ首を傾げるばかりだった。
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