王子の僕が女体化して英雄の嫁にならないと国が滅ぶ!?

蒼宮ここの

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第48話 独占欲

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今日の体育はサッカーだ。球技の中で一番好きなスポーツだから、俄然張り切っていたのだが‪……‬。

「パス! パス!」

ボールを持っている奴に声をかけてまわしてもらう。バッチリ受け取った。ゴール前だしあとはシュートするだけだ!

「いっけえ!」

渾身の力で蹴ったし、キーパーは明後日の方向に飛んだしで僕は勝ちを確信した。きっと僕のチームメイトもだろう。だが。

コロコロコロ‪……‬

は?

僕に蹴られたボールは力なく地面を転がり、所定の位置に戻ったキーパーにやすやすと取られてしまう。
ウソだ。なんで? いつもと同じように蹴ったぞ‪……‬? ああでも久しぶりだから鈍っていたのかな? いや、そんなレベルではない‪……‬。

「交代~!」

味方どころか敵チームまでもが気まずそうに、失意の僕に視線を集める。先生が気遣って僕を下げてくれた。

「まあ、ベルよ‪……‬性別差というのは仕方のないことだ‪……‬女人はいくら鍛えても男以上の力はつかん」

僕をコートの外に座らせ、ポンと肩を叩いて他の生徒の指導に戻っていく。
そうか。僕、女人になったからパワーが落ちてるんだ。金的蹴りが決まっていい気になっていたけれど、アソコはほんの些細な打撃でもかなりのダメージを与えられるというだけの話で。以前からやっていたスポーツでも、女人になったことによって確実に実力は落ちているんだ‪……‬。

「ベールっ」

ユーリ。なんか短パンが短い。可愛いな‪……‬。
浴衣を着た日からますます艶っぽくなっているユーリに釘付けになりつつ、僕は隣に座るよう促した。ユーリは僕にピッタリと密着して座る。

「気にする事ないよ。ベルが女人なのは皆わかってるし」
「そうだけど‪……‬ハアア‪……‬もうサッカーもまともにできないのか僕は‪……‬」
「ならできることをやればいいじゃない。ミヤビさんにお料理習いに行こうよ」
「は?」

唐突な誘いだ。なぜいきなりそんな話が出てきたのだろう?

「前々から誘おうと思ってたんだ‪。‬アリッサがね、ベルもミヤビさんにお料理教えてもらってたしユーリも来ればって言ってくれて」
「ユーリも料理できるようになりたいのか?」
「うんっ。ルシウスのためにいいお嫁さんになりたいからね!」

健気だ‪……‬なんていい子なのだろう。ルシウスが心底憎くなるが、僕にそんな権利はない。ユーリの視線を追って、話しながらなんとなくルシウスのプレイを見守ることにする。

「ユーリはほんとうにルシウスが好きだな」
「猛アタックしてやっとゲットしたんだもん‪。ここまで来たら逃す気はないよ!」

祭りの夜は「女人じゃないから子どもを産んであげられない」「別れたほうがいいかも」なんて弱気なことを言っていたが、少しは前向きになったようで、安心した。

「‪……‬ねえ。ベルってエッチ上手だよね」

ドキーン! 突然のぶっ込み。口から心臓が出そうになる。
先日森で一緒に致した時の話か。忘れたい過去だが‪……‬ユーリの至極真面目な声色に、一蹴するのは憚られる。
ジャオとは何度も身体を重ねた。だがそれ以上に、僕には素質があるのだと最近ハッキリ自覚した。なんせ前世は娼婦だったのだ。エッチに向いているなんてもんじゃない。ジャオという特定の相手がいなければ、いろんな男と遊び回っていたかもと思うくらうには、自分の好色さも理解している。

「じょ、上手とか、そんな」
「なんていうのかなー。うぶだけど誘い上手、みたいな? 声も可愛いし、潮も吹けるし」
「それならユーリのほうが‪……‬! ルシウスの上に乗って腰振ってるやつ、あれ、凄かった‪……‬!」
「あれでオトしたんだ~。グリグリも意外と気持ちイイらしいよ。僕からしてもルシウスの感じてる情けない顔見れてニヤニヤできる良い体位」

オススメ、と囁かれて騒がしい心臓がいっそう暴れ出した。僕らは授業中になんという話をしているんだ。だけど、クッ、楽しい‪……‬! こんなのユーリとしか話せないし、それに、普通に勉強になる!!

「や、ってみたんだ、アレ‪……‬でもなんかもう恥ずかしくて無理だった‪……‬うまく動けないし‪……‬」
「うーん、イメージとしてはね。ナカでねっとーりと扱いてあげる感じ。穴の位置が僕とベルとでは違うから、そういうふうにしか教えられないけど」
「いや! かなりイメージできた‪‬! なるほどな‪……‬!?」
「‪……‬お尻では一度もしてないの?」

ユーリのこれまた過激な質問に、初体験の時の記憶が蘇る。ジャオに「前か後ろかどっちに挿れてほしい」と聞かれて僕は「女の子のほう」と答えたんだっけ‪……‬後ろなんて発想、その時までなかったし。

「してない、き、気持ち良いのかっ?」
「すっっっっごいよ、もう‪……‬一度は体験したほうがいい。あ、でもする前は洗わなきゃダメなんだよ。お尻のナカ」
「あ、洗う!? どうやって!?」
「えっとねー」

きゃいきゃいと楽しく盛り上がる僕ら。これで内容がもっと可愛らしければ女子同士で戯れている気分にもなれたのだろうが、なんせ男特有の性欲が抑えきれない。自覚しながらも僕は、友達と性行為について語るというはじめての体験に己を律することができなかった。
そうして話に夢中になっていると、不意に遠くからどよめきが飛んでくる。

「ユーリ! ベル! 危ないっ‪……‬」

そう叫ぶルシウスを向いた時には、非常に硬いでお馴染みのサッカーボールが僕らの間近まで迫っていた。あ、これ僕だ。僕の顔面に直撃する。覚悟を決めたその時、

ギュインッ!

‪……僕の鼻先スレスレで‬ボールが急に方向転換して、明後日の方向に飛んでいく。
助かった、のか‪……‬? 誰もが今目の当たりにした超常現象を信じられずざわめく。
これもトルテだろうか? いや‪……‬。なんだか違う気がする。

トルテはいつも僕を助けてくれるけれど、それは僕が本当に命の危機や貞操の危機に瀕した、切羽詰まっている時だけだ。顔にボールが当たったってせいぜい鼻血が出るとか脳震盪起こすとかそれくらい‪……‬およそ今までのとは危険度が違う。言うなれば今回は、過保護すぎるのだ。

「ユーリ。お前もしかして守護神とか守護妖精とかそういうの、いる?」
「へ? いないけど‪……‬」

だよな。首を捻っているとルシウスが慌てて駆け寄ってくる。僕らに怪我がないことを確認して胸を撫で下ろしていた。
ともあれよかった。授業中にあんな話をしていた天罰かもしれないな。なんて、本気で心配してくれたクラスメイト達にはとても言えないが。






休み時間になると僕は一番に教室を出てトイレに向かう。
当然ながらこの学校には男子トイレしかない。立って用を足すことはできないが個室に入れば問題はないのだ。なるべく早く事を済ませて、できれば誰かが入ってくる前に教室へと戻るのを心掛けている。
正直、不便だ。用を足し終えて流していると、誰かが入ってきた気配がした。男子トイレで他の奴と二人きりになるのは危ないとジャオには言われているけど、やはり完全に回避するのは不可能だ。しかしその人物の放尿音が響いている今がチャンス。たとえ下心のある輩だろうと、放尿中に襲うことはできまい。

バタン! と扉を開けると、今まさに放尿中の生徒が驚いてこちらを振り向く。バッチリと目が合ってしまった。‪……‬あ、ルシウスだ。気心の知れた奴だと分かると、僕の視線は自然と下に向けられる。
露わになったルシウスの逸物‪……‬デッカ‪……‬勃起していなくてアレか‪……‬ジャオのは勃起してるところしか見たことないけど、ウーン、いい勝負かもしれないな‪……‬?

「‪……‬おいベル。見んなよ」
「は? 見てないし」
「ジャオのとどっちがデカいー?」
「ジャオ」
「即答すんなよな~‪……‬」

内心動揺したが、男友達ノリのルシウスに救われた。奴がブツをしまおうと水気を切っていると、ふと入り口から禍々しい殺気が放たれる。僕らは同時に振り向き、ルシウスは小声で「ヤバっ‪……‬」と漏らした。

「ジャオ、あ、あの」
「何をしていた?」
「何って、用を足してただけだぞ? お互い‪……‬」
「ベル」

つかつかと迫るジャオ。ルシウスはブツだけしまうと壁にへばりついて怯えている。それ程までに今のジャオはどす黒いオーラで支配されていた。
でも、だってルシウスだぞ? ジャオ自身とも仲が良いルシウス相手でもこんなに‪……‬?

「来い」
「へっ? あっ‪……‬」

手を引っ掴まれて個室に連れ去られる。そのまま閉じ込められてしまった。壁に押し付けられて密着した状態でギンと睨まれる。

「まず……一人で手洗いに行くなと言っただろう」
「だって、早く行けば大丈夫かなって」
「ルシウスと何をしていた」
「だから何も‪……‬」
「じゃあさっきのアイツの狼狽え様はなんだ」

確かに……女人と二人きり、陰部を露出した状態で「ヤバっ」は疑われても仕方ないのかもしれない。だけど誓ってやましいことは何もない。ドアの外では、ルシウスが固唾を飲んで僕らの会話を聞いている気配がある。

「じゃ、ジャオが怖かったからだよ‪……‬すごい顔してるぞ‪……‬?」
「ごまかすな。確認させてもらうぞ」

頬に手をあてて宥めようとしたが、無駄のようだ。すぐに取り上げられて壁に乱暴に叩き付けられた。キスされながら‪下を脱がされる。こんなところで何するつもりなんだよ。

「あうっ‪……‬!?」

指を、挿れられてしまった。容赦なくナカを探られる。その間にもジャオは至近距離で僕の顔色を窺っている‪……‬もしかして、今エッチしていた痕跡がないか調べているってことか‪……‬? するワケない‪……‬別の奴と、しかもこんなところで‪……‬。

「‪……‬挿入はしていないようだな」
「な、何もしてない、てぇ‪……‬ひぅ‪……‬ア、つよく、しないでぇ」

ルシウスが聞いているのに‪……‬情けない声が漏れてしまう‪……‬。恥じらって自らの手で口を抑えるが、またすぐ壁に貼り付けられてしまう。

「マーキングしてやる。壁を向け」
「まっ‪……‬いやらぁ、こんなとこで‪……‬!」
「ルシウス! さっさと戻れ!!」

ジャオの怒声に「ハイ!」と返事がきて、わかりやすくバタバタと足音が遠ざかっていく。十分に解れたのをぐっしょり濡れた己の指を目視して認めると、ジャオは僕を壁に押し付けて、ためらいなく後ろから、挿入した。

「ア‪……‬!」

やだ、ほんとに‪……‬ズッポリだ‪……‬。
実感する暇もなく揺さぶられる。始業を告げるチャイムの音を遠くに聞きながら、僕はすべてを諦めて壁に額をくっつける。

「ベル‪……‬俺のものだ、お前は‪……‬」
「ジャオ‪……‬しんじてえ‪……‬なんもしてないぃ‪~‪……‬」
「反省してないな‪……‬ナカに出してやろうか‪……‬?」
「ま、まっ」

ナカに出す、の意味は以前にフロストから聞いた。子どもを作るって意味だ。
はたして僕はすでに妊娠できるのか否か。わからないが、気をつけておくに越したことはない。まだ結婚もしていないのにそんなの‪……‬認められない‪……‬!

「やだあっ、ジャオ、きらいぃ‪……‬!」
「‪……‬ッ」

こんななし崩しで子どもができるなんていやだ。必死で抵抗して膝で押し退けたり手で押し出したりしたけれど、一番効果があったのはどうやら「きらい」という言葉だ。
ギュッと抱き寄せられる。ジャオの喉から嚥下の音と振動が、直接頬に伝わってくる。‪……‬ショックを受けてる、のか?

「うそ、だよ‪……‬すき‪……‬」

慌てて抱き返す。ジャオは息を荒げながら僕の髪をやさしく漉いた。その動作は自分を落ち着けるためにやっているかのようでなんだか痛々しい。

「ごめんねジャオ‪……‬ちがうの‪……‬シて、いいよ‪……‬?」
「ベル‪……‬ベルすまない‪……‬どうして俺はこんなにも直情的なんだ‪……‬」

ジャオは改めて僕をそっと壁にもたれさせて腰を入れる。壁に置かれた手も、不自然に折れ曲がる膝の裏もピッタリと重ねるようにして‪……‬緩やかなピストンをくれた。

「はあ‪……‬はあ‪……‬きもち、いい‪……‬ジャオ‪……‬」
「あんなに後悔したのに‪……‬後先考えずにした行為が、お前を殺したのに‪……‬」

ジャオが泣いている。振り返って唇を重ねると、涙が移って僕も泣いているような気持ちになる。大丈夫。僕は生きてるよ。小さく囁くと、ジャオは安心して頬を緩めた。二人で緩やかに昇り詰める。時折舌を絡めて、また、互いの繋がる部分に感じ入る。
授業中のトイレの個室だということも相まって背徳感が凄まじい。個室の外にある窓は開け放されていて、グラウンドで体育をしている生徒らの笑い声が響き渡る。あんなにも健全な学校生活を、僕も、送っていた。けれど何もかも変わってしまった。
それが不幸なことだとは、思いたくない。思いたくない。

「ベル‪……‬愛してる‪……‬愛してるぞ‪……‬」

耳元に囁かれるのは愛の言葉というより、母親に見捨てられないよう縋り付く幼児のうわ言のよう。だから僕は、母親のようにすべてを許すのだ。

「あぁ、ジャオ、もっと‪……‬」
「ン‪……‬愛してる‪……‬ベル‪……‬俺だけ、見てくれ‪……‬」
「ウン‪……‬ジャオしか見てないよ‪……‬ジャオだけ‪……‬ジャオしかいらない‪……‬」

堕落した時間は気怠くて心地良い。僕らはぬるいキスを繰り返して行為に没頭した。
ジャオのこのまっすぐな独占欲が好き。嫉妬心が嬉しい。もっと僕に執着してほしい。他の男と話すのすら許さないで。面倒くさいなんて思わないよ。僕、悦んでるんだ‪……‬。
僕ら、この国にとっては輝かしい未来への希望かもしれない、けれど‪……‬醜い‪……‬生き物だ‪……‬これが、本質なのかもしれない‪……‬己の醜さを共有できる相手を大事に想うのが、始まりだ‪……‬。

「‪……‬ベル、愛してるんだ‪……‬閉じ込めたい‪……‬他の男と一切関わらせずに‪……‬牢の中で俺だけが愛でていたい‪」
「ジャオがしたいなら、いいよ‪……‬」
「ああベルッ‪……‬!」

ナカに出されちゃうかもしれない。昂ったジャオの腰つきに身構えたのも束の間、しっかりと抜き出して便器に射精してくれた。僕はその場にへたり込む。すぐにジャオが追いかけてきて、浴びるほどのキスをくれた。

「ハア、ハア、ベル‪……‬すまない‪……‬俺またっ‪……‬」
「いいの、ジャオ‪……‬僕うれしい‪……‬」
「お前の周りには‪……‬お前にとって魅力的な男ばかりだ‪……‬心配なんだ‪……‬俺なんか、どうでもよくなるんじゃないかと‪……‬」
「僕、ほんとに閉じ込められてもいいって思ってるんだ‪……‬ジャオが安心できるなら、いいよ‪……‬? 地下牢でいっぱいエッチしよ‪……‬?」
「っ‪……‬!」

僕の言葉に反応したジャオが、今度は便器にもたれさせて対面で挿入してくる。
地下牢で二人きりで、なんて……そんなダメな人生、僕らの立場では無理に決まってる、だけど‪……‬夢想してしまう‪……‬ジャオとの肉欲だけに溺れていられたなら‪……‬前世の僕だって絶対に、了承していた‪……‬。

「ベル、好きだっ‪……‬可愛い‪……‬ベル‪……‬」
「ジャオお‪……‬アッアッ‪……‬イっちゃうぅ」

そう発すると明らかに僕をイかせる動きに変わった。入口の浅い部分を丁寧に擦り上げて。指でもビラビラを擦り上げてくる‪……。
‬あう、熱い‪……‬! 潮、吹く、これ‪……‬!

「アアアッ‪……‬!」

プシャアアアッ。幸いにも大部分が開いたままの便器に入ったが、床は点々と濡れてしまった。へたり込む僕にジャオはまだしつこくキスしてくる。「床‪……‬」と指摘すると、甲斐甲斐しく掃除し始めた。
すごいこと、しちゃった‪……‬男子トイレで潮吹いちゃう、なんて‪……‬ルシウスには悪いことしちゃったけど‪……‬…………興奮、した‪……‬。
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