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第35話 急転直下の初体験

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僕は一週間コツコツと聖水を飲み続けた。
日が経つにつれて発光は弱まり、紋章もどんどん薄く目立たなくなってきている。

だけど‪……‬淫紋は、綺麗さっぱりとは消えてくれなかった‪……‬‪……‬。



どうしよう。ジャオに合わせる顔がない。
一応母上に頼んで聖水は追加してもらったけど、いつまで飲み続ければいいのかはわからない。完全に消える保証はできないとも言われてしまった。もう、ジャオと口をきくこともできないのかもしれない‪……‬。
そう考えると途端に息が苦しくなって、死んだほうが楽かもとすら思えてきた。

僕にはやっぱり、ジャオがいないとダメだ。アイツなしで以前までどんな生活を送っていたかなんてもう思い出せないくらいに、僕にとってジャオの存在は大きくなっていたんだ。

ほんとうにもう、諦めるしかないのかな……。
父上に子作りマシーンとして使われこの虚しい一生を終えるか‪……‬それとも、一人でこの国を出るか‪……‬どちらにしろ、お先真っ暗だ。
現在進行形でいたぶられていたり、罵られていたりするわけではないのに動悸が止まらない。ずっと考えがループしている。自分の精神状態が普通ではないとわかっているのに、僕は、何もできない‪……‬。
自分で何も解決できない僕なんて、ジャオに相応しくない。そうだよな‪……‬このままどこかに逃げようか‪……‬それとも、父上の駒になって、この国の礎となるべきなのか‪……‬。


「ベルくん!」


ドキ一! 突然背後から肩を叩かれて跳ね上がった。人には言えないネガティブに浸っていたものだからとても気まずい。なんとか笑顔を作って振り向き、僕の心は二度跳ね上がることとなる。

「アルヤ‪……‬先輩!?」
「やあ。あの日以来だね」

あの日とは‪……‬‪……‬?

彼はユーステンなのか、はたまた本物のアルヤ先輩なのか。
警戒して後ずさる。先輩は慌てて僕に触れていた手を引っ込めた。

「ごめんごめん。驚かせたね」
「いえ‪……‬」
「‪……‬隈がひどいよ。寝れてないの?」

やめてくれ。今やさしい言葉をかけないで。もたれてしまいそうになる‪……‬。
やっとの思いで「大丈夫です」と小さく返した。寄り掛かってしまわないよう、ぎゅっと足の指に力を入れて大地を握りしめるように、僕は立つ。
一人で立てる。まだ、生きてる。

「あの‪……‬この間の生徒会では‪……‬」
「そうだ。突然欠席をしてすまなかったね」

欠席‪……‬。
コピー室で僕にキスをして淫紋を刻みつけたのは間違いなくユーステンだ。
そして今目の前にいるアルヤ先輩はあの日に欠席していたという。その隙にユーステンが変化して潜り込んだのか。ということは、この人は本物……?

「作業を終わらせてくれて助かったよ。ありがとう」
「いえ、あの‪……‬先輩は最近、何か変わったこととかありませんでしたか‪……‬?」
「最近? うーん、そういえば歩いているとよく鳩が後をついてくるんだ。可愛いよね」

正体が暴かれた直後、ユーステンの懐から飛び去った鳩を思い出す。「アルヤの尾行」がどうとかも言っていた。アルヤ先輩の動向を探って学校で成り切っていたんだな。
僕のせいで先輩にまで危害を加えられるところだった。先輩が無事で、よかった‪……‬。

「……ねえベルくん。僕、反省したんだ。あえてジャオくんの前で君に告白したけど、やっぱり良くないことをしたなって」
「へ!?」
「なんだか変な噂が立っているよね‪……‬僕と君の間には何もないのに、変な憶測を生んでしまった。本当に申し訳なかった」

綺麗な角度で頭を下げられて、焦ってしまう。そんなこと、ユーステンの蛮行に比べたら些末なことだ。あんな危険な奴に利用されてしまっただなんて、僕のほうが申し訳なく思う。

「とんでもないです。これからも僕の尊敬する先輩でいてください」
「‪……‬ありがとう」

“僕がずっと慕ってきたアルヤ先輩”だ。
そう確信できる優しい微笑みを浮かべて、彼は去っていった。



さあ。僕も校内に入ろう。
門を向くと、見慣れた姿がこちらを向いていてどきりとした。

ジャオ。距離は遠いけど確かに目が合っている。
僕は泣きそうなのを堪えて駆け寄った。しかしそれを待たずにジャオは背を向けて歩き出してしまう。駆け足が衰える。僕は……追いつけない。

ジャオ‪……‬もしかして僕が先輩と会話しているのを見て‪……‬呆れた、のかな‪……‬いや、怒らせてしまったのかも‪……‬せっかくジャオと話せるチャンスだったのに‪……‬どうして、僕は‪……‬。

「ジャオ‪……‬」

掠れたその声に、答えてくれる彼はいない。





その日、僕は授業をサボった。心が限界だった。
ジャオが僕を瞳に映したのに、僕の元に来てくれなかったという事実がつらすぎて‪……‬ほんとうに僕たち、終わってしまったのかもって‪……‬‪……‬。

屋上のフェンスに手をかける。ここから飛び降りようだなんてバカなことは考えていない。だけど夢想はする。ジャオと一緒にいることが叶わないなら‪……‬いっそ幸せな夢を見ながら、終えてしまいたい‪……‬。
屋上の扉が開く。ジャオが、驚いた顔で僕を見ていた。
コイツもサボりなのか。声をかけようとした瞬間、ジャオがまた背を向ける。

「ジャオ!!」

大声で呼び止めた。学校中に響いたかもしれない。けれどかまうもんか。
淫紋が綺麗に消えない以上、これが最後のチャンスだと思った。もう二人きりで話せる機会はないだろう。ジャオは振り返ってはくれるが、また扉に手をかける。

「はなじぎいでぐれないならじぬ!!!」

無我夢中でフェンスを登り始めた。ポーズではなくほんとうに死ぬ気だった。こんなことをしてたくさんの人たちを傷つけるって、わかっているのに、衝動を止められなかった。
すぐさま後ろから捕まえられてフェンスから引き剥がされる。床に身体を叩きつけられて、痛くて、つらくなって、子どものように泣きじゃくった。縮こまる僕の手を顔から引き剥がし、ジャオが頬を打ってくる。本気で怒っている表情だった。
何度かぶたれて頬の感触がなくなった頃、ようやくやめてくれた。僕は魂が抜けたかのように今度は何も思考ができない。目の前のジャオは、僕よりよほど怖い目に遭ったかのように、ひどく、震えている。

「どうして‪‬こんなことをするんだ‪……‬! 俺はお前のためを思って‪……‬!!」
「ジャオこそどうじであんなにだいぜつにじでぐれだのにいぎなりつきはなすんだよお!! ひどいよお!!」
「‪……‬‪……‬ッ」

何も考えられないのに、声の大きさも気迫も僕のほうが数段上だった。つまり今の僕には理性がない。ストッパーを無くした心は濁流となって次から次へと涙や言葉になる。ほとんど暴力の強さで、ジャオの胸をドカドカと叩いて訴える。

「ベル、ベル、わかった、落ち着いてくれ」
「わがっでない!!! ぼくずっとくずりのんだ、のに、ぎえなぐでぇ、あやまりだいのに、ジャオぎいでぐれない!!」

まるでだだっ子だ。加害者のくせに被害者のような言葉ばかり吐く。
そうだ僕は加害者だ。ジャオの心を最初に傷つけたのは僕。あり得ないことを言ってるって、わかってるのに、言葉が、手足が、止まらない。わめいて叫んで、必死に訴える。

「ずっ‪……‬とっ‪……‬いろんな本で、しらべてっ‪……‬でも、消し方、わがらなぐでぇっ‪……‬もうやだよお‪……‬なんでぇええ」
「ベル、わかった‪……‬もういい‪……‬わかったから‪……‬」
「やだあああぁ‪……‬」

もういいなんて言わないで。
諦めないでよ。
僕のこと大好きだった、あの頃のジャオに戻ってよ。

ジャオの体温が遠い。腕の中に抱き締められているのに、なんだかとても遠い。
ジャオが僕から離れていこうとしているのがわかる。
繋ぎ止めなきゃ。何をしてでも。


「ジャオ、好き‪……‬抱いて」

「‪……‬ッ」

僕からも抱き締める。ジャオの身体が一瞬で強張る。女の身体で擦り寄って精一杯誘惑する。きっとたぶん今僕普通じゃない。だからこそ、今しか言えないこと、言わなきゃ。

「好きだよ、ジャオ、好き、好き‪……‬」
「ベル……」
「アルヤ先輩にはキスされただけなの‪‪……‬ジャオにしか抱かれたくないよ‪……‬抱いて、今、ここで‪」
「べ、ベル」
「おっきくなってる‪……‬」

手探りで、ジャオの股の隆起した物体を擦る。ビクンと跳ねる身体を押さえつけるように唇を重ねた。角度をつけて何度も啄み、できるだけいやらしく舌を絡める。
ジャオ、ジャオ。やっと触れられた。もうこのままお前のものになってしまいたい。戻ってきて。ジャオ、ジャオ。

「抱いてよ、ねえ‪……‬ハア‪……‬」
「ベル‪……‬が、学校‪……‬」
「いい、関係ない‪……‬今すぐシたいの‪……‬お願い、お願い‪……‬」

膝立ちになって身体を擦り付けながら下を脱ぐ。淫紋の残りを見られたくなかったからパンツは下ろさずに横にずらした。もう穴ができてる。ジャオのを受け入れられる。早く繋がりたい。早く。

「好きなの、ジャオお‪……‬好き、好き‪……‬」

ジャオの勃起も取り出して、上に跨った。このまま奪ってしまおう。擦り付けながら涎を垂らして浸っていると、突然上半身を引き寄せられる。

「バカ、ベル‪……‬そのままじゃ痛いぞ‪……‬?」
「あ、らって‪え‪……‬したいのぉ~……‬」
「ふっ‪……‬ああ、ベル‪……‬わかったから‪……‬落ち着け‪……‬」

どう見てもジャオのほうが取り乱してる。下敷きになった状態で僕を抱きしめて拘束して、首筋を嗅いで息を荒げている。突然、歯を立てられてギュウっ‪……‬と噛まれた。気持ち良くてあられもない声が出る。
ジャオ、僕のお尻に擦り付けて‪……‬ハアハアしてる‪……‬嬉しい、嬉しいよお‪……‬。

「ベル、気持ちいい‪……‬俺はこれだけで、もう‪……‬」
「ダメ、抱いて‪……‬? ナカ挿れてよお‪、イジワルしないで‪……‬?」
「うぐっ‪……‬」

僕が腰を浮かすと、ジャオが先端を引っ掛けてくる‪……‬挿入寸前の仕草に腰がゾクゾクと震える。つぷっ‪……あ、‬少しだけ、挿入っ‪……‬ちゃった‪……‬?

「ヒ、い、いたいぃ」
「ハアッ‪……‬す、すまない‪……‬ベル、頭と足、逆にしてくれるか‪……‬?」

ジャオの腕が僕を抱き、ぐるりと身体の向きを反対にする。僕は仰向けのジャオに互い違いに乗せられた状態で、陰茎を目の前にして‪……‬喉が引き攣れ、変な音を立てた。

デカい、デカすぎる‪……
‬化け物じゃないのか? これ‪……‬。

ツンツンすると、小刻みに震えてすぐに先端から汁が溢れ出る。衝動的に咥え込んで舐め取った。

「ンッンッ‪……‬」
「ベル‪……‬ウッ‪……‬俺も‪……‬」
「ンあっ‪……‬!?」

股間に強烈な刺激がきて大きく下半身が跳ねる。ジャオがそっと僕の内股に手を添えて、穴を‪……‬な、舐めてる‪……‬舌でピチャピチャって卑猥な水音を立てながら、舐めてる‪……‬アアッ‪……‬。

「ひぃいン、やあッ‪……‬」
「ン、ッ」
「ああああっ」

唇で激しくしゃぶりつかれてびくびく腰が跳ねるのに、お尻ごと強く下に押さえつけられて‪……‬ジャオの顔に、押し付ける形になって‪……‬熱い吐息やジャオの頬の感触をあらぬ場所で感じて、なんてことしてるんだって忘れていた羞恥が襲いかかる。
チュパチュパって弾いたり、舌で舐め回したり‪……‬まるでキスしてるみたいだ‪……‬僕の、下の穴と‪……‬。

「あ‪……‬」

目の前で先ほどよりそそり立っている逸物に気付いて、無我夢中で頬擦りをした。ジャオが驚いたように腰を跳ねる。負けてられない。僕ばっかり気持ち良くなるんじゃなくて。ジャオのことも気持ち良くしないと。
ジャオの先端に舌を這わせる。しっかりと苦い汁を吸い取って咥え込んだ。上下しながら根元もしっかり手で擦ってやる。

ジャオの匂い。ジャオの欲望。しっかりと愛してやりたい。
こんな場所でさえ愛おしいなんて……僕もうやっぱり‪、‬ジャオなしじゃ生きていけないよ‪……‬。

「んふ‪……‬ああん‪……‬ンッンッ‪……‬」
「フッ‪……‬フーッ‪……‬!」

我慢しきれないらしいジャオの乱れた呼吸が穴をくすぐる。ジャオが感じてるのがわかる。嬉しくてもっと激しく扱くと、ついにジャオは僕の穴に舌を差し入れてきた。
つぷぷぷぷ‪……‬あまりの衝撃に口から竿がすっぽ抜けた。

「アァンっ‪……‬ジャオ、ダメエッ‪……‬」
「シてもいいんだろう‪……‬!?」
「あああ~っ‪……‬!?」

ジャオの両手だけで腰を、持ち上げられて、固定した状態で激しくジャオの顔が上下される。舌でピストンされているのだ。
うう、き、気持ちいいよぉ‪……‬! これを竿でやられるんだって想像したら‪……‬! ああっ、僕、壊されちゃう‪……‬ジャオに、壊してもらえちゃう‪……‬!?

「イく‪……‬イっちゃうぅうううう」

僕は腰を浮かせて無様に達した。ジャオの顔の上で‪……‬つぶさにその反りや震えを見られたかと思うと、恥ずかしくて‪……‬身体が、燃え上がる。

「アッアッ‪……‬いやぁん‪……‬み、ないでぇ‪……‬」
「ベル、こっちも‪……‬」
「ええっ‪……‬!?」

ジャオはそこを舌でつついたかと思うと、間髪入れずにまた舌を差し込んできた。今度は前の穴じゃなく、後ろの穴‪……‬いわゆる肛門だ。そっちはダメ。汚すぎる。思うのに、ぬるぬるとジャオの舌に内壁を擦られて、少しだけ、感じてしまう。

「ジャオ、そっち、らめぇええ」
「全部見せろ‪……‬ベルの全部を、俺にくれ‪」

ジュルルルルル!! 中に挿れられた唾液を吸い出されてビクビクと腰が跳ねる。
今まで自分でも弄ったことがないから快感としては鈍いけど、誰にも見られたらダメな部分を、よりにもよって好きな男に舐められているという事実が背徳感となって僕を狂わせる。
前も後ろも、ジャオのものだよ。受け入れる意志を伝えたくて、ふたたび竿を咥え込む。僕のほうも涎を撒き散らして激しく口でピストンした。
ジャオの肉棒、おいしい。お尻のナカ、舐められてる。絶対に人に見られてはいけない行為を、真っ昼間から、屋上で繰り広げている。時折素肌にあたる風すら快感のスパイスだ。

唐突に、ジャオが口を外して腰を浮かす。

「出るっ‪……‬!」

ピシャアッ。‪……‬‪……‬‪……‬。
目が、開かない。とっさに閉じたから中には入ってないと思うけど‪……‬これ、顔射ってやつだよな‪……‬? 思いっきり顔に全部張り付いた‪……‬おまけに粘度が強いから、目も、口も開かない。一体どれだけ出されたんだ‪……‬。

「ハア、ベルっ‪……‬すまない‪……‬」

申し訳なさそうに拭われたから、次に目が開いた時はにっこり笑ってみせた。さっきまで死にたいと思っていたのに‪……‬ジャオとこうしていると、僕は本来の僕になれる‪……‬やっぱりもう、ジャオがいないと、僕は‪……‬。

「続き、シよ?」
「……‬だが‪……‬」
「もっかい口でするから‪」

もう僕の抱かれたい欲が収まらない。ジャオは一度出して冷静になったようだけど、すぐに復活するの僕は知ってる。
少し上体を起こさせた状態で、互いの両手を組んで‪、正面から、‬竿をしゃぶるところを見せつけてやった。縦横無尽に顔を傾けて頬の裏側とか喉の奥とか、あらゆる場所でジャオを刺激する。
ジャオはじっと目を離さず見ていてくれる。ちゃっかり僕のむき出しの太ももを擦って、僕自身の性感を上げることも忘れない。

「んぶ、んぶっ、んぶっ」
「ベル‪……‬やめろ、ハアッ……我慢、できなくなる‪……‬」
「しなくていいよ‪……‬んぷ」
「フッ‪……‬!」

先っぽだけ咥えて弄ぶように唇で弾く。
ちらりとジャオの顔を見ると、尖った牙が下唇に食い込んでいた。伏せていた目がふと開いて僕と視線が通じた瞬間に、ダンッ! と……仰向けで押し倒された。

「ハアーッ‪……‬! ハァーッ‪……‬!」
「ジャオ‪……‬」

キス、して。言葉で言うより扇状的にしたくて、薄目で舌を伸ばして誘う。ジャオはそれを一瞬で絡め取り、自分の口の中に収めて吸い尽くした。
気持ち良すぎて泣けてくる。
ずっと欲しかった。恋しかったよ。

「‪……‬ほんとうに、いいのか?」

舌先がくっついたままでジャオが顔を覗き込んでくる。僕は舌先でいやらしくジャオのそれを弾きながら、こくりと頷いた。
ジャオがふたたび僕の股ぐらに顔を埋める。たっぷりと唾液を垂らすと、先程弄り倒した二つの穴に、塗り込み始める。

「アッ‪……‬あ‪……‬あっ‪……‬」
「どっちがいい?」
「へ‪……‬?」
「前か後ろ‪……‬どっちに、挿れてほしいんだ‪……‬?」
「ああっ‪……‬」

同時に両穴に指を挿れられて下半身が強張る。その緊張を解くかのように、ジャオはもう片方の手で内股をさすりながら答えを待ってくれる。
やがて余分な力が抜けると、まるで蕾が花開くようにゆっくりと‪……‬どちらからも、快感が広がった。これなら、どちらでも、受け入れられそうだけど……。

「どっちだ‪……‬? 決まったか‪……‬?」
「お‪……‬女の子の、ほう‪……‬」
「こっちか‪……‬?」
「うん‪……‬」

前のほうなら今まで散々自分でも弄ったし、ジャオにも弄られてきた。こっちでジャオと繋がるんだって、ずっと思ってた。だけど質問の意図を考えると、そうか、男同士は後ろの穴でするんだなと今さらながらに知った。
僕はどちらの選択肢もある上で、女の子のほうを選んでしまったのか‪……‬顔が熱くなって両手で覆う。しかしすぐジャオに取り払われてしまう。

「顔、見えるようにしておいてくれ‪……‬痛くしたらいけないから」
「う、うん‪」

ジャオの指が女の子の穴のほうに差し込まれる。綺麗なジャオの指が僕の中に‪……‬それだけでも興奮するのに、ゆっくりと抜き差しされて、早くも快感が全身に伝播する。甘く喘ぐとすぐに指を二本に増やされてしまった。

「ふふ‪……‬ここも自分でシていたな?」
「あう‪……‬ごめん、なさい‪……‬」
「いや、いい子だ。ちゃんと予習していたんだな」

額にチュッと口づけを落とされる。こんな淫らな僕のことも認めて、褒めてくれるなんて‪……‬嬉しくて、もっと大きく股を広げてしまう。
ジャオの指は次第に激しさを増す。僕の中から洪水のように水が溢れてきて、少し動かすだけでもグチュグチュと音が鳴るようになってしまった。

「いやらぁあ‪……‬アアッ‪……‬」
「いやか?」
「い、いやじゃ、ない、けど‪……‬はずかしい~……‬」

顔を隠すのを必死に我慢する。ジャオに隠すなって、言われたから。
どうして行為の時、僕はこんなにもジャオに従順になってしまうのだろう。まるで支配されるのを悦んでいるみたいに。
でもジャオになら‪……‬何されても、許してしまう‪……‬むしろ、メチャクチャにして欲しい‪……‬かも。

「アアッ‪……‬あぁん‪……‬あん‪……‬」
「増やすぞ‪……‬」
「ああ~っ‪……‬」

指、三本‪……‬重量感が増すけど、思ったより圧迫感はない。
僕の女の子の部分トロトロになってるんだ‪……‬恥ずかしいよぉ‪……‬。

「どうだ‪……‬?」
「ン、どう、て?」
「気持ちいいか?」
「え‪……‬」

どうしてそんな恥ずかしいこと聞くんだよ。怒り出したいけど、気遣ってくれてるからだってのわかってるからどうにもできない。目を閉じてコクコクと頷くと、安心したように唇にキスをくれた。チュクチュクって舌をまわしながら、指も優しく出し入れして感じさせてくれる。
‪……‬女の子って、気持ちいいんだなあ‪……‬好きな人がこんなふうに愛してくれるのなら、悪く、ないのかもなあ‪……‬。

「は、ベル」
「ン‪……‬?」
「いいか‪……‬?」

穴に竿の先端をあてがって、引っ掛けながら擦り付けてくる。これだけで息があがるほどに、感じる。僕は間近にあるジャオの頬を包んで、じっと目を見つめた。


僕のジャオ。僕の、恋人。

僕、お前の女の子に、なりたい……。


「女の子に、して‪……‬?」
「‪……‬ハッ」

ベルの瞳の中に映った僕は、小さくて愛らしい女の子だった。
ずっとこうでありたい。
ジャオにとって、僕という存在がずっとこうでありたいと、はっきり、思ってしまった。

「ゆっくり‪……‬挿れるから」
「うん‪……‬」

息を整えると、ジャオが手で丁寧にあてがって、腰を、進めてくる。
あ、ウソ、挿入ってくる‪……‬こんなにも、簡単に‪……‬うぐ、大きい‪……‬!

僕が一瞬顔をしかめただけで、ジャオは腰を止めて心配そうに顔を覗き込んでくる。顔にたくさんキスを落として、僕が慣れるのを待ってくれている。

「ベル‪……‬愛してるぞ」
「うん‪……‬」
「ハアッ‪……‬」

鋭い息を吐いてしがみついてくるジャオ。なぜか緊張気味。ドクドクとナカで脈打つ鼓動を、目を閉じて感じる。
呼吸を整えていると、今度は首筋に何度も舌を這わせてきた。甘えられているようなその感触に、ふ、と笑みが漏れる。

「キス、したいのか? しよう?」
「う、でも‪……‬興奮して、腰を進めてしまいそうで‪……‬」
「そう、なんだ‪……‬でもキスしたほうが、早く平気になると思う‪……‬僕も、したい‪……‬」

腕を伸ばしてジャオの頭を引き寄せる。僕らはそっと唇を重ねた。
ジャオは息が荒くてキスもままならないようだが、僕は舌が絡まるたびに身体がリラックスしていく。上手に力が抜けて‪……‬自分のナカがジャオに絡みついてる繊細な感触が、わかる‪……‬。

「ン‪……‬」

もっと挿入っていいよ。足を腰に絡めると、ジャオが遠慮がちに腰を揺らした。泳ぐように胎内で蠢めくジャオの逸物は、熱くて、硬くて‪……‬指で届かなかった部分まであっという間に到達してしまう。
すごい‪……‬二人してゆらゆら揺れて‪……‬えっち、してるんだ、僕たち‪……‬。

「ハア‪……‬ジャオの、おっきいね‪……‬」
「ベル‪、ベル‪……‬苦しくないか‪……‬? いやじゃ、ないか‪……‬?」
「大丈夫‪……‬これ、しあわせ‪……‬」

ガプッと噛むような口づけに呼吸を奪われる。さっきよりぬるぬると舌がスムーズに絡まって、ジャオの腰もなめらかな動きになる。どんどん押し広げられていく。僕のナカ、ジャオで満たされて‪……‬ジャオのものになってく‪……‬。

「んふ、ンンッ、ンン‪……‬」
「ハアッ‪……‬ベル、好きだ‪……‬」
「うん、うんっ‪……‬」
「ベルも、言ってくれ‪……‬!」

必死の形相、かわいい。見惚れて少し反応が遅れる。苦しそうな表情で待っているジャオに、幸せいっぱいで微笑みかける。
やっと、伝えられるんだ。

「ジャオ‪、だいすき」
「‪……‬ウッ」

ジャオがまたナカで脈打つ。腰の速度が上がり、僕は激しい揺さぶりに翻弄された。その強引さすら、気持ち良くて、困る。

「ベル、出る、出る‪……‬また、顔に出したい‪……‬ッ」
「いいよ、ジャオ、いいよ、あ、アッ、あ‪……‬」

変態的なことを言われて、それに了承してしまって、胸がカッカと熱暴走する。全身が快楽に悶えて、僕の身体はあの儀式の時のように胎内を激しくかき混ぜられる。一瞬気が遠くなるけど、ジャオが抜きさる感触で腰がビクンと勝手に跳ねた。
間髪入れず、顔に熱い膜が張られる。余韻でビクビクと全身が震えた。見つめてくるジャオの真剣な眼差しに、僕ら、ついに繋がれたんだって……感動で胸が満ちていく。

「ベル‪……‬俺のベル‪……‬」
「そう‪……‬ジャオの、だよ‪……‬もう、手放したりしないで‪……‬?」
「しない、絶対に‪……‬ああ‪……‬やっと、手に入れた‪……‬!」

寝そべったままかたく抱き締められて、泣けてきた。ジャオの腕の強さは、今までジャオが一途に僕を想い続けてくれた熱量そのものだ。
これを僕はいっ時とはいえ裏切ったのか。馬鹿すぎる。
もう絶対に他の男になんて目を向けない。こんなにも素晴らしい男、世界中探したっていない。僕のことを一番に考えてくれる、何があっても守ってくれる‪……‬僕の、僕だけの、英雄。

「‪……‬ごめんね」

ポツリと呟いたのが聞こえただろうか。
ジャオは僕の汚れた顔を拭って、座った状態でもう一度抱き締めてくれた。ジャオも、世界中で僕にだけ聞こえるような小さな声で、言葉をくれた。


「俺こそ、悪かった‪……‬もう後悔したくない‪……‬絶対に、守る‪‬」
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