無気力系華神君はかまちょでツンデレ

七ノ歌

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2 体育という名の全力の遊び

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「体育だ!! 体育!!」

 高校生男子の特徴の一つとして、体育が異常に好きなことが挙げられると思う。しかしはしゃぐ鈴谷すずやとは裏腹に、華神かがみは元々色白い顔をさらに落ちくぼませて全力で体育嫌いオーラを撒き散らしていた。
 俺もどっちかというと体育はそこまで好きではない。汗くさくなるし、怪我するし、なにより運動部の連中がガチになりすぎて怖い。でも勉強するよりは運動していたいとも思う。
 対して華神は、顔面偏差値超高くて勉強もバリバリできるのに、なぜか体育はからっきしだった。足はそれなりに速いし運動神経も悪くない。しかしおかしいことに空間認識能力が異常に低いようで、球技をやらせるとてんで駄目なのだ。
 常にバレーボールは頭でキャッチし、ドッジボール、バスケなんかは顔面で受け、さらにラケットやバットを持たせると空振り三振どころじゃなくなる。
 そしてかわいそうなことに今日はバスケの日なのだ。本人曰く朝からどうやって体育を回避するかをずっと考え込んでいたらしい。結局その努力は報われなかったみたいだが。

「……うっわ、華神君めちゃ顔暗っ」
「この前は顔面くらって鼻血出したんだっけな。せっかくのイケメンなんだから顔大事にしろよ……」

 そう言ったら凄い勢いで睨まれた。が、一瞬で無表情に戻り、俺の肩にがんっ、と頭突きをくらわせる。なんなんだろう、こいつ。

「まあでもバスケ嫌いなの僕もちょっとわかる。バスケって苛烈すぎてエグいんだよね」
「あー…………」

 体当たり当たり前。パス回しは超速いし、しかもなんじゃこりゃという豪速球。確かに憂鬱になるのはわかる。俺もバスケ部の連中とは一緒にやりたくない、

「あ、てか華神君早く!! 休み時間終わるって!!」

 とっとと更衣室を出ないと間に合わない。鈴谷に急かされ、華神はのろのろと体操服に着替え始める。途中間違えて袖に頭を入れようとしたので、俺は袖の部分を引っ張って正しい位置に頭を戻した。

「集合ー!!」

 体育館から体育教師のゴリラの声が聞こえてくる。俺と鈴谷はやべっ、と呟き、丁度着替え終わった華神を引きずって猛ダッシュで走った。
 準備体操も終わり、パス練習に入った。二人一組でやるのだが、一人華神がぽつねんとたたずんでいる。華神の球技の下手さを知っている同級生は最初から近寄らないからだ。そしてなんの因果か、余ってしまった俺が組むこととなった。

「手ぇ前に出して。手のひらこっちに見して。飛んできたらキャッチする。こんだけ、いい?」

 死地におもむく兵士の様な顔つきで、華神は頷いた。やや緩めにボールをトスするも、華神はそれを前に出した手でべっ、と弾く。

「……キャッチしろっつっただろが!」
「今距離感掴めなかっただけだから。次いけるから」

 気を取り直して二球目。投げた球は何故か、死地に赴く兵士の手をすり抜け、顔面へと吸い込まれた。ボールをキャッチする姿勢のまま、ボールがぽて、と落ちる音だけがやけに大きく聞こえた。

「……………………なんか、ごめん」

 華神が赤くなった鼻をさする。練習で、しかも俺が相手だからまだこれでいいが、試合になったらどうするんだ。また鼻血か、鼻血なのか。
 ふと華神が異様に静かなのに気づいた。よくよく見るとほんのちょっぴり涙目になっている。はたから見ればめちゃくちゃに不機嫌そうな顔に見えるが、痛みで眉間にシワが寄ってるだけだ。逆に申し訳なさでこっちが泣きたい。
 ちらっと顔をうかがうと、いつの間にか無表情に戻った華神に肩を掴まれ、くるんと後ろを向かされた。そのまま背中に華神の体重が乗る。こいつの方が頭一つぶん近く背が高いので、ほとんど俺の背中に覆いかぶさるかんじだ。

「……わりぃ。痛かった?」
「…………………………………………ちょっと」

 背中に乗っけたまま、ずるずるとゴリラの方へ移動する。「華神が体調悪いようなのでちょっと休ませてきまーす」とゴリラに言うと、俺にしがみつく華神の手に少し力がこもった。

 ふと気づくと、鈴谷に凄い形相で拝まれてた。
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