刻印

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 ハルのその声と同時、男はまるでお預けを解かれた犬のように、匠のモノを手に取ると、それを口へと運び無心でしゃぶりついた。

「……ンっっぁっ……!!!
 ……っンン……! ……ぁあああっ!!!」
 途端に匠は痛みに体を仰け反らせ、声を上げた。

 唯一動く右腕で必死に男を排除しようと、その体を突き退けるが、大きく重い男はビクともしない。
 そればかりか身を捩り抵抗する匠に更に興奮したのか、男の動きは益々激しくなっていく。

「……や……やめっ……ンッ!!
 ……クッ……! やめっ……ろっ……!!」

 ブラインドの隙間から薄日が射す室内に、喘ぐ匠の声と湿った音とが混ざり始めると、その様子をジットリと淀んだ目で見つめていた老人も、匠の側へと擦り寄って来ていた。
 その息は荒く、周囲に酒の匂いを撒き散らしている。
 皺だらけの手はすでに我慢ができなくなったのか、自分の衣服の中で動いていた。

 そして「……私のモノも……」
 了承を得るように、ハルの顔を覗き込む老人に、
「お好きにどうぞ」
 そう言ってハルは笑った。


「ああ……ありがとうございます……」

 老人は自分で取り出したモノを匠の顔へと近付けた。

「ほれ……またやっておくれよ。
 ……あの時と同じように……」


 秘書の男の、手荒で強引な行為が引き起こす痛みに耐え、匠はただ強く目を閉じ、荒い呼吸を繰り返していた。
 そのわずかに開いた口に、老人は自分のモノを無理矢理に咥え込ませる。

「……ンッ……ッ!」
 必死に呼吸をしようとしていた口内に老人のモノが圧し込まれ、息が出来なくなる。
 呼吸が止まり、匠は顔を振って抵抗した。
 だが老人の手は、その頭を押さえ込み離そうとはしなかった。
 そして益々腰を擦り寄せ、自身を喉奥へと突き入れる。

「ンッッ……ンッッ……ン”ッ……!!」

 喉の奥に当たるヌルリとした生々しいモノ。
 苦しさで目を見開き、藻掻き苦しむ匠のくぐもった声が室内に響いていた。



「やめろ……。
 ……もう……やめてくれ……。
 お願いだから……」
 深月の消え入りそうな声がした。

 呼吸すらままならず、必死に抵抗する匠。
 そして体を捩る度、ゆっくりとだが確実にその体内から血を減らしていく蒼白の肌。
 深月はもう耐えられなかった。

「お願いだから……!
 匠さんの代わりに僕が……僕が何でも言う事を聞く!
 ……だから……だからもう……やめてくれ……!!」
 深月は悔し気にうな垂れ、小さく首を振ってそう叫んでいた。

「……ほう。
 これは面白い事を言う。
 お前がタクミのの代わりに、その体を差し出すというのか?」

 老人も顔を上げ、今度は深月を値踏みするように身を乗り出した。
 ヌルリと老人のモノが零れ出て、ようやく匠の口が解放される。

「……そうだ……。
 僕を……お前達の好きにすれば……」

 言いかけた深月の声を遮り匠の強い声が響いた。

「だめだ……!
 ……流さん!
 俺なら……いい…………。
 何があっても……大丈夫だから……流さんは……」

「……匠さん!!」

「大丈夫か……それなら……」

 ハルは匠のモノを咥える秘書の体を、指で二度ほどトントンと叩き、その口を外させた。


「タクミをうつ伏せにしろ」 

 男はハルの命令のままに起き上がると、匠の体の下にその屈強な腕を差し入れ、いとも簡単に匠の体を返した。

「んっ……!」
 強引な痛みに匠の体が震える。


 男は目の前に現れた匠の刻印に息を呑んだ。
 見るのは初めてではない。
 審議会でそれはすでに見ていた。
 だが、今、目の前にあるのはあの時とは全く違う物のように見える。
 汗と体温、流された血とで彩られ、痛みの中でそれは、水を得た魚のように生き生きと、そして艶かしく匠の背中に棲んでいた。

「美しいだろう……」
 満足そうなハルの声がした。

「……は……はい……。
 ……これを私が……?」
 男は “刻印” の意味にわずかに躊躇した。

「構わん。 好きにしろと言ったはずだ」

 男はゴクリと唾を飲むと、うつ伏せの匠の腰を掴み、グイッと自分の方へ引き上げた。
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