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「おい、流。
 坊ヤの後ろに何か物が置いてあるだろう?
 そこ、目一杯ズームしてくれ」

 深月が指示されるまま、縛られている匠の横をズームで引き伸ばす。

「もっとだ。
 もっと大きくならねぇか……?」
 
 最大限に画像を解析しクリアにしても、雑多に置かれた物の中に、ダンボールか……それとも何かの容器だろうか、うっすらと箱状の四角い物が見えるだけだ。

「これが……何か……?」
 深月が尋ねるが、オヤジは身じろぎもせず、じっと画面を見つめている。

「……もうちょいこっち……。
 ここだ……ここ……」
 
 オヤジが言う画面の先、斜めに、今にも崩れそうに置かれた箱状の物に、何かのマークらしき形があった。

「何ですかね……? これ……」
 
 マークが逆さまなのか、特殊なのか、そもそも画像が悪すぎて上手く読み取れない。

「んんーー。
 ずっと昔……どこかで……似たようなものを…………」
 
 オヤジは自分の顔を同じ角度に傾けて画面を睨み続ける。



「…………お、おおおっっっ!!!!」
 
 ずっと画面を睨み続けていたオヤジが急に立ち上がり、雄叫びを上げた。
 そして、慌てて自室へ走ると、何かを探しているらしかった。
 そんなオヤジの行動に、一同は呆気にとられながら、互いに顔を見合わせる。

 しばらくしてオヤジは、部屋から自前の古いノートパソコンを抱え戻ってくると、大急ぎで立ち上げ、ファイルを次々と開き始めた。
 中には膨大な量の医学関係のファイルがある。

「……こいつはすげぇな。さすが元軍医」
 誰かが驚いたように声を漏らした。

 その声も耳に入らない様子で、オヤジはその中から一つのファイルを取り出すと、素早くページを捲っていく。
 それは数十年も前、医療機関と大学が共同開発したある新薬のレポートと、その付属記事のファイルだった。
 
「どこだ、どこだぁーー!! 出て来い、出て来いーーーー!!
 ……っと! …………こいつだ!」

 オヤジが指差す先、レポートの中程に “新薬開発の医師チーム” と題された集合写真が載っていた。
 その写真の中央で満面の笑みを浮かべる小柄な一人の男。
 白衣の胸には箱とよく似たマークが付いていた。

「すっげぇ! よくこんなの覚えてたな、おやっさん! さすがだぜ!」
 一人が驚きの声をあげた。

「おだてんな! こいつは……」
 歓喜する周囲の中、オヤジは一人、愕然としていた。
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