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 ……ビリッ……!
 シャツを破られ、上半身裸になった匠に、男は楽しそうに顔を近付けた。
 首に掛けていたペンダントがチャリンと小さな音を立て床に落ちる。

「良いな……。しなやかな良い体をしている。
 美しい筋肉も背中も、肩も胸も……本当に私好みだ」
 
 男は冷たい手で匠の体に触れ、確認するように入念に撫でていく。

「タクミはどこが感じるんだ? ……どこを一番に壊して欲しい?」
「……」
 何も答えない匠の顔をじっと見ながら、男の手だけは動き続ける。


「ここ……かな……。……それとも……ここ……」
「っ……! やめろっ……手を離せっ……!」
「手は嫌か?」
 そう言うと男は近くのテーブルに置かれていた物を掴んだ。

「では、これならタクミの泣き声を聞かせてもらえるのかな?」
 男の手には鋭く光る細身のナイフがあった。
 一瞬、背筋に冷たいものが走る。

「怖がらなくてもいい、大丈夫」
 
 ナイフの切っ先を匠の喉元にツッ……とあてると、先端に血の雫が溜まり、そのまま男の手元へと零れた。

「……クッ……」
「どうかな? 気に入ってもらえると嬉しいが……」


 ――ツ、ツツツ――

 ナイフはゆっくりと匠の胸の中心を通り、真っ直ぐに下がっていく。
 皮膚と筋肉を鋭利に切り裂き、まるで色鉛筆で線を描くように赤い筋を引いた。

「……ンっ……!」
「ほう……。苦痛に歪む顔もいいね。
 しかし、まだ声を聞かせてはくれないらしい。強情なのも嫌いではないけど……」

 言い終わらないうちにナイフが翻り、今度は左胸から右脇腹まで、斜めに一気に走った。 

「……!! ……ンッッ!! ……ッッアッ……!」
「そうだよ、その声。
 それが聞きたいんだ。もっと鳴いてごらん。
 ……ほら……ほら……!」
 
 ナイフは何度も翻り縦横無尽に匠の体を傷付けていく。
 胸を、背中を、腕を……。

 どれも致命傷になるほど深く刺さってはいないが、体を切り裂き血を流すには十分だった。
 ナイフが光る度、天井から吊られ、膝で立っている匠の体はギシギシと揺れる。

「ハハハ……アハハハハ……!」
 男の笑い声だけが響き渡っていた。

 ……ハァ……ハァ……
 ……ハァ……ハァ…………

 肩で息をする度、幾筋もの傷から血が伝う。
 鎖が巻かれている手首にも体重がかかり血が滲む。

「……ァアッ……! ……ンッッ……」
「もっと、もっとだ……」

 途中までは、まだ薬で感覚も鈍っていたが、激しい痛みで急速に脳が覚醒しようとしていた。

「ウッ……ァっ……クッ……! ……ぁ……ぁあ、ぁアアアッッ……!」
「ようやく体も目醒めてきたようだね」
「……く……狂ってる……。お前は……ただの狂人だ……。
 お前なんかが浅葱さんを狙っても、無駄だ……! 
 お前如きに……浅葱さんが殺られるものか……!」

 匠の体を撫でていた男の右手がピタリと止まった。
 冷たく見下ろす男の目。
 そこに今までの狂喜はなく、怒りと憎悪だけがあった。

 
 男の手が匠から離れる。

 ――ドスッ!

 それはまさに狂気をはらんだ一撃だった。
 匠のみぞおちに男の拳が突き刺さる。
 的確にヒットしたそれは、胸の傷を開き鮮血を床に飛び散らせた。
 全てがスローモーションのように見えたが、実際は一瞬の出来事だった。

「ぅぐっ……ぐ、……はっっぁぁぁっ……!!」
 衝撃と痛みで意識が遠退いていく。

「私を怒らせるな。浅はかな挑発もするな。
 それは無能な人間がする事だ。
 タクミ、私をがっかりさせないでくれ。今のはお仕置きだ」

 傷口から、心臓の鼓動に合わせトクトクと血が溢れていた。
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