刻印

文字の大きさ
上 下
11 / 232

-10

しおりを挟む
 ――ドォオオオ――ン!

 激しい爆発音と同時に浅葱の体は吹き飛ばされ、壁に激突し落ちていた。

「……っ!」

 匠が「自分が行く」そう言って走り出した瞬間、いや、もっと正確に言えば、背後でピシリ。と音がした瞬間には “爆発する!” ……直感でそう思った。
 
 咄嗟にガードの姿勢をとった。
 ガードしていなければ、すでに自分の心臓は停止していたかもしれない。
 だが利き腕の右手をかばったせいで左腕をられ、指先からポタポタと血が滴り落ちている。

「くそっ!」
 浅葱は血の滴る左腕で崩れ残った壁を思い切り殴っていた。
 その怒りは傷を負わされたからではなく、匠を止められなかった自分への怒りだ。
 
 とにかく匠を探さなければ……!
 手早く装備を確認した。
 幸い銃も通信機器もまだ使えそうだ。



「オヤジ! 俺だ!」
「おっ! 待ってたぜー。首尾はどんな具合だ?」
 任務完了の一報を待っていたオヤジの、待ち侘びた声が聞こえた。

「すまん。ヘマをした。爆発だ。手配頼む」
「お前がヘマ? ……珍しいな。
 わかった、後始末は任せとけ。で、お前達は大丈夫なのか?」
「……俺はいい。匠を探す」
 一瞬の間の後、浅葱が答えた。

「探す?」
 オヤジはその一言で事態の全てを理解していた。

「おい、いいってな……! 
 とりあえず一度戻って来い! お前もどこかられたんだろ!」
「俺より匠の発信機は!」
 今、浅葱が知りたい情報は一つだった。

「……坊ヤの発信機は、数分前まで移動してた」 
「移動? 数分前まで? ……確実に移動はしていたんだな!?」
「あぁ、確かに移動してた。
 発信機が壊れてねぇって事は、それは坊ヤがはしてねぇって事だ。
 自分の意思で動いたかそうでないかは、わからねぇがな……」
「途中で発信が途絶えた、と言うなら後者だ」
「まぁ、そういうことだな……」
 二人の結論は同じ“最悪の状況”だった。

「くそっ! ……で、どっちへ行った!? すぐに追いかける!」
「おい! ちったぁ冷静になれ、お前らしくねぇぞ!」
「仲間が奴等に拉致られたんだぞ! これが冷静で居られるか!
 いいから早く匠の……」
「バカヤローが! 恭介!」
 久しぶりのオヤジの怒鳴り声にハッと我に返った。

「お前が焦るのはわかる。
 だがな、奴等が坊ヤをその場で殺らずに拉致したって事たぁ、目的は一つ……。
 わかるな? お前だ。
 それが判っていて、一人でのこのこと出て行く気か?
 こうなった以上、人員を増やして万全の体制で救出する。
 指揮を執るお前が冷静でなくてどうする」

 判っていた。そんな事は百も承知だった。

「全ては一旦戻ってからだ、いいな?」
「…………了解。……一度……戻る」

 もう一度、壁を思い切り殴った。

 ビルの外に出ると、既に通報で駆けつけた警察、消防車両が集まり始めていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

処理中です...