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「ナギ殿下! 今更何を!
シュリ様を助けてくれるのではなかったのですか!」
「ジル殿。申し訳ない」
ナギは深く頭を下げた。
「残念だが、今の帝国に、このガルシアのやった事を罰する法は無い。
できるとすれば、我が父、帝国皇帝に虚偽の報告をし騙し、その親書でシュリを無理矢理、跡継ぎの座に置こうとした、と言う事だ」
ガルシアがクッと奥歯を噛む。
“虚偽” “騙し”
まさにそれこそが、自分が犯した唯一の罪であると言っていい。
それを口にされたからだ。
「しかし……」
だが、次にそう続いたナギの言葉で、ガルシアはニヤリと片唇を上げる事になる。
「しかしそれも……シュリは俺……いや、私の目の前で、ハッキリと “自らの意思” でこの国の次期王になると宣言した。
私は帝国皇太子であって、考えるべきは帝国の利。
その帝国の害損となる背信者に制裁を与える事はできても、世界中の人道を裁く審判者ではない。
この程度の国の、小さな身内同士の勝手な家督争いなど……」
「そんな……!
帝国の利にならなければ、シュリ様はどうなっても良いと仰るのですか!
小さな事だと、切って捨てるのですか!」
ジルがナギを鬼の形相で睨みつける。
“やはり欲しいのは帝国の利、か……”
俯くナギを目の前に、そう小さく呟いたガルシアは、勝利宣言でもするように、いきなり両手を大きく広げ咆哮した。
「殿下! やっとご自分の立場を理解されたようですな!
殿下の言われる通り、このワシに何一つ非は無い!
神国を攻めようが、シュリをどう扱おうが、ワシの自由!」
ガルシアはここで一際声量をあげた。
「ワシはこの神の子に魔の紋章を刻み、悪魔の力さえも与えてやった!
神と悪魔! これぞ最強の兵力!
それも全て帝国のため!
これほど素晴らしい物を作って頂いて有難いと、礼を言って欲しいぐらいだ!」
これがガルシアの脳内が、全精力を傾けて導き出した勝利への計算式だった。
シュリにあの紋章を刻んだのも全て帝国のため、帝国の最高兵力とするためだった……と。そう言えば、絶対に勝てると。
「ああ……確かにそうだ……。
シュリに悪魔の紋を刻んでも文句は言えない……」
ナギが呟く。
「……殿下……? 今何と…………。
ガルシアは……今……何と言ったのです…………」
ジルが思わず聞き返した。
聞き違いでなければ今 “悪魔の紋章” を身に刻んだと聞こえた……。
シュリはそんなやり取りを、ただ唇を噛んで聞いている事しかできずにいた。
「殿下……? 殿下!? 何か仰ってください!!
悪魔の紋章……って……いったい何のお話なのですか!」
ジルがナギに詰め寄り、取りすがる。
両腕を強く掴み問い続けるが、ナギは黙ったままだ。
そんなジルをそっとヴィルが押さえ、ナギの腕から引き剥がした。
「殿下! どういう事なのですか! 殿下っ!
…………。
……シュリ様……? シュリ様!」
震える声は、黙ったまま何も答えないナギから、未だ捕えられたまま俯くシュリに向けられた。
「シュリ様……! 何があったのですか!
悪魔とは……いったい……!」
「お前はあの時、神国にいたジジイよな」
ヴィルに押さえられたまま取り乱すジルに、ガルシアの声が向いた。
「誰も答えぬようだから、ワシが教えてやろう」
「やめろ……」
シュリが俯いたまま呟いた。
「ん? 何だ? シュリ。
さすがに神国の者に見られるのは嫌か?
だが、すぐだ。すぐにお前は、幾千、幾万の兵の前で、その体を晒す事になるのだからな」
「馬鹿な……! シュリ様は神の化身ぞ!
その神聖なる御身体を人前に晒すなど……!
そのような事が赦されると……!」
「ジジイ、まだそんな事を言っているのか?
お前の大事なシュリ様はもう、神聖なる者などではないわ!
ワシや、あの西の小男に、自分のモノを嫌と言う程しゃぶられ、白く透き通った肌を紅潮させて、後ろを犯され、女のように声を上げ鳴いたのだ。
あの、きつく吸い付き、締め付けてくるシュリの体……!
一度味わうと忘れられんぞ?
そうそう、あの美しい顔でワシのモノの前に跪き、咥え、精も飲んだな。
あの体は、その内腑までも十分に穢れておるわ!」
「お……犯……さ……!
……嘘……だ……。
シュリ様は……御幼少の頃から私が大切にお世話をして……穢れなき美しさと、高貴な……。高貴な…………御身に神を…………。
その御身体にお前が触れたというのか! その汚らわしい手で!」
「信じられぬか? ならば見せてやろう。
殿下も、ワシが作った帝国最強の武器となるシュリの体をしっかり品定めされるがいい」
シュリ様を助けてくれるのではなかったのですか!」
「ジル殿。申し訳ない」
ナギは深く頭を下げた。
「残念だが、今の帝国に、このガルシアのやった事を罰する法は無い。
できるとすれば、我が父、帝国皇帝に虚偽の報告をし騙し、その親書でシュリを無理矢理、跡継ぎの座に置こうとした、と言う事だ」
ガルシアがクッと奥歯を噛む。
“虚偽” “騙し”
まさにそれこそが、自分が犯した唯一の罪であると言っていい。
それを口にされたからだ。
「しかし……」
だが、次にそう続いたナギの言葉で、ガルシアはニヤリと片唇を上げる事になる。
「しかしそれも……シュリは俺……いや、私の目の前で、ハッキリと “自らの意思” でこの国の次期王になると宣言した。
私は帝国皇太子であって、考えるべきは帝国の利。
その帝国の害損となる背信者に制裁を与える事はできても、世界中の人道を裁く審判者ではない。
この程度の国の、小さな身内同士の勝手な家督争いなど……」
「そんな……!
帝国の利にならなければ、シュリ様はどうなっても良いと仰るのですか!
小さな事だと、切って捨てるのですか!」
ジルがナギを鬼の形相で睨みつける。
“やはり欲しいのは帝国の利、か……”
俯くナギを目の前に、そう小さく呟いたガルシアは、勝利宣言でもするように、いきなり両手を大きく広げ咆哮した。
「殿下! やっとご自分の立場を理解されたようですな!
殿下の言われる通り、このワシに何一つ非は無い!
神国を攻めようが、シュリをどう扱おうが、ワシの自由!」
ガルシアはここで一際声量をあげた。
「ワシはこの神の子に魔の紋章を刻み、悪魔の力さえも与えてやった!
神と悪魔! これぞ最強の兵力!
それも全て帝国のため!
これほど素晴らしい物を作って頂いて有難いと、礼を言って欲しいぐらいだ!」
これがガルシアの脳内が、全精力を傾けて導き出した勝利への計算式だった。
シュリにあの紋章を刻んだのも全て帝国のため、帝国の最高兵力とするためだった……と。そう言えば、絶対に勝てると。
「ああ……確かにそうだ……。
シュリに悪魔の紋を刻んでも文句は言えない……」
ナギが呟く。
「……殿下……? 今何と…………。
ガルシアは……今……何と言ったのです…………」
ジルが思わず聞き返した。
聞き違いでなければ今 “悪魔の紋章” を身に刻んだと聞こえた……。
シュリはそんなやり取りを、ただ唇を噛んで聞いている事しかできずにいた。
「殿下……? 殿下!? 何か仰ってください!!
悪魔の紋章……って……いったい何のお話なのですか!」
ジルがナギに詰め寄り、取りすがる。
両腕を強く掴み問い続けるが、ナギは黙ったままだ。
そんなジルをそっとヴィルが押さえ、ナギの腕から引き剥がした。
「殿下! どういう事なのですか! 殿下っ!
…………。
……シュリ様……? シュリ様!」
震える声は、黙ったまま何も答えないナギから、未だ捕えられたまま俯くシュリに向けられた。
「シュリ様……! 何があったのですか!
悪魔とは……いったい……!」
「お前はあの時、神国にいたジジイよな」
ヴィルに押さえられたまま取り乱すジルに、ガルシアの声が向いた。
「誰も答えぬようだから、ワシが教えてやろう」
「やめろ……」
シュリが俯いたまま呟いた。
「ん? 何だ? シュリ。
さすがに神国の者に見られるのは嫌か?
だが、すぐだ。すぐにお前は、幾千、幾万の兵の前で、その体を晒す事になるのだからな」
「馬鹿な……! シュリ様は神の化身ぞ!
その神聖なる御身体を人前に晒すなど……!
そのような事が赦されると……!」
「ジジイ、まだそんな事を言っているのか?
お前の大事なシュリ様はもう、神聖なる者などではないわ!
ワシや、あの西の小男に、自分のモノを嫌と言う程しゃぶられ、白く透き通った肌を紅潮させて、後ろを犯され、女のように声を上げ鳴いたのだ。
あの、きつく吸い付き、締め付けてくるシュリの体……!
一度味わうと忘れられんぞ?
そうそう、あの美しい顔でワシのモノの前に跪き、咥え、精も飲んだな。
あの体は、その内腑までも十分に穢れておるわ!」
「お……犯……さ……!
……嘘……だ……。
シュリ様は……御幼少の頃から私が大切にお世話をして……穢れなき美しさと、高貴な……。高貴な…………御身に神を…………。
その御身体にお前が触れたというのか! その汚らわしい手で!」
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殿下も、ワシが作った帝国最強の武器となるシュリの体をしっかり品定めされるがいい」
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