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……ゴホッ……ゴホッ……
「ラウ……大丈夫か?」
ラウの腕に包まれるようにして、浅い眠りに落ちかけようとしていたシュリが、静かな部屋に響く咳音で目を開けた。
「起こしてしまいましたね……。申し訳ありません」
「そんな事はいい。大丈夫か? このところ、本当に顔色が優れないぞ?
咳も出ているし……冷えるから何か着た方がいい……」
左手で少し冷たいラウの胸にそっと触れる。
その声にシュリの肩を抱くラウの腕が強くなった。
「もう少しこのままで……。
何も身に着けていない方が、シュリの温かさを直に感じられます……」
ラウの手がそっとシュリの髪に触れ頭を撫でると、シュリも安心したように穏やかな笑みを浮かべ、ラウに体を預ける。
そして少し首を伸ばし、ラウの首筋に唇を寄せた。
二度、三度……ゆっくりと触れるシュリに応えるように、ラウの唇がシュリを拾い上げる。
「口を開けて……」
耳元で囁かれる静かな声に抗えず、言われるがままにシュリが小さく口を開けると、そこへラウの舌がスルリと滑り込んだ。
「……んっ……」
優しく口内を撫でる柔らかな唇と舌が、シュリの体の熱を上げさせる。
「ラウ……もう一回……欲しい……」
そう言わされるまでの時間は、ほんの僅かだった。
ラウは小さく頷きながら微笑み、シュリの頭の下にあった腕をスルリと抜き出すと、身体を反転させ、シュリの上へ……覆うように身を置いた。
ハラリと揺れる黒髪を嫌い、掻き上げる仕草を、シュリが下からじっと見つめる。
「……? どう……されました?」
「見惚れていた」
真顔で答えたシュリに、 ラウがクスリと笑う。
そして、そのままシュリの身体に目を移した。
「今度は長いですよ? 傷は大丈夫ですか?」
ラウの長い指がそっと胸の傷に触れると、シュリの左手が咄嗟にそれを隠そうと動いていた。
「隠さないで……」
ラウの右手がシュリの左手を握るとシーツに押さえ込み、指を絡める。
「……でも……」
覆い被さるようにして組み伏され、正面からの、ラウの真っ直ぐな瞳から逃れるように、シュリがわずかに視線を逸らす。
「シュリ……。
ずっと私に触れる事、避けていらしたでしょう?
私を穢してしまう、、、とでも思っていましたか?」
「……気が……ついていたのか……」
逸らした目を伏せながらシュリが応える。
「判らないとでも思いましたか?
でも今日はこうして身を任せてくださる。
さっき抱いた時も目を逸らさなかった。
……ロジャー……ですよね……。
あの小屋で話しをされたのでしょう?
ロジャーも、そんな事を言っていましたし……。
だからもう、大丈夫なのだと……そう思っていました」
「ロジャーが……。私に神の赦しを与えてくれた……。
……でも……」
シュリが傷を隠すようにわずかに体を捩る。
「でも、この体は……やはり醜悪で忌まわしい……。
できる事なら誰にも見られたくない……。お前にも……」
シュリはそれだけ言うと、クッと強く目を閉じた。
ラウは小さく息を吐くと、横を向いてしまったシュリの顎に指をかけ、真っ直ぐに向き直らせる。
「シュリ、この悪魔は……まだここで生きているとお思いですか?
魔とはそれほど強く、絶対に越えられない物ですか?
……違うでしょう?
それは貴方が一番良く知っているはずだ。
これは浄化できる物だと……。
今まで貴方はそうやって、多くの魔を浄化し、人々を救ってきたのですから」
ラウの瞳が諭すように、シュリを静かに見つめていた。
「ラウ……大丈夫か?」
ラウの腕に包まれるようにして、浅い眠りに落ちかけようとしていたシュリが、静かな部屋に響く咳音で目を開けた。
「起こしてしまいましたね……。申し訳ありません」
「そんな事はいい。大丈夫か? このところ、本当に顔色が優れないぞ?
咳も出ているし……冷えるから何か着た方がいい……」
左手で少し冷たいラウの胸にそっと触れる。
その声にシュリの肩を抱くラウの腕が強くなった。
「もう少しこのままで……。
何も身に着けていない方が、シュリの温かさを直に感じられます……」
ラウの手がそっとシュリの髪に触れ頭を撫でると、シュリも安心したように穏やかな笑みを浮かべ、ラウに体を預ける。
そして少し首を伸ばし、ラウの首筋に唇を寄せた。
二度、三度……ゆっくりと触れるシュリに応えるように、ラウの唇がシュリを拾い上げる。
「口を開けて……」
耳元で囁かれる静かな声に抗えず、言われるがままにシュリが小さく口を開けると、そこへラウの舌がスルリと滑り込んだ。
「……んっ……」
優しく口内を撫でる柔らかな唇と舌が、シュリの体の熱を上げさせる。
「ラウ……もう一回……欲しい……」
そう言わされるまでの時間は、ほんの僅かだった。
ラウは小さく頷きながら微笑み、シュリの頭の下にあった腕をスルリと抜き出すと、身体を反転させ、シュリの上へ……覆うように身を置いた。
ハラリと揺れる黒髪を嫌い、掻き上げる仕草を、シュリが下からじっと見つめる。
「……? どう……されました?」
「見惚れていた」
真顔で答えたシュリに、 ラウがクスリと笑う。
そして、そのままシュリの身体に目を移した。
「今度は長いですよ? 傷は大丈夫ですか?」
ラウの長い指がそっと胸の傷に触れると、シュリの左手が咄嗟にそれを隠そうと動いていた。
「隠さないで……」
ラウの右手がシュリの左手を握るとシーツに押さえ込み、指を絡める。
「……でも……」
覆い被さるようにして組み伏され、正面からの、ラウの真っ直ぐな瞳から逃れるように、シュリがわずかに視線を逸らす。
「シュリ……。
ずっと私に触れる事、避けていらしたでしょう?
私を穢してしまう、、、とでも思っていましたか?」
「……気が……ついていたのか……」
逸らした目を伏せながらシュリが応える。
「判らないとでも思いましたか?
でも今日はこうして身を任せてくださる。
さっき抱いた時も目を逸らさなかった。
……ロジャー……ですよね……。
あの小屋で話しをされたのでしょう?
ロジャーも、そんな事を言っていましたし……。
だからもう、大丈夫なのだと……そう思っていました」
「ロジャーが……。私に神の赦しを与えてくれた……。
……でも……」
シュリが傷を隠すようにわずかに体を捩る。
「でも、この体は……やはり醜悪で忌まわしい……。
できる事なら誰にも見られたくない……。お前にも……」
シュリはそれだけ言うと、クッと強く目を閉じた。
ラウは小さく息を吐くと、横を向いてしまったシュリの顎に指をかけ、真っ直ぐに向き直らせる。
「シュリ、この悪魔は……まだここで生きているとお思いですか?
魔とはそれほど強く、絶対に越えられない物ですか?
……違うでしょう?
それは貴方が一番良く知っているはずだ。
これは浄化できる物だと……。
今まで貴方はそうやって、多くの魔を浄化し、人々を救ってきたのですから」
ラウの瞳が諭すように、シュリを静かに見つめていた。
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