華燭の城

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 重厚な造りのテーブルが振動で揺れ動く程、ガルシアはシュリを押さえ付け、自身を捻じ込ませ、執拗に抽挿を繰り返す。
 少しでも体を捩り、逃れようとするシュリの脚は、それを逃がすまいとするガルシアの肩に抱え上げられ、益々大きく開かれる。

 その光景は……そのモノが出入りする場所は、オーバストからもハッキリと見えていた。
 赤く浸潤し、そこから垂れ、溢れ出る粘液と、ソレを抽挿する度、ぐちゅぐちゅと聞こえる湿った音。
 ガルシアの荒い息遣い使いの合間の、シュリの、喉の奥で必死に息をする引き攣った呼吸音。
 
 すでにシュリは激しい責めに抵抗の声も失い、唇を噛んで嫌がるのみだ。

 その薄っすらと開かれた瞳が、壁の双剣を朧気に見つめる。
 神を自身に下ろすための、神器である双剣。
 その神の前で犯される屈辱に、ただ口惜しさがこみ上げる。

 オーバストも絶句していた。
 この王に仕えてもう長い。
 ガルシアという男の性癖は充分に知っている。
 
 新しくやって来た美しい皇子を一目見た時から “そういう関係” にあるのだろうという事も、薄々気がついていた。
 だが、ガルシアを “父王” と呼び、いつも優しく穏やかに微笑むシュリを見たオーバストは、そこにはがあるのだと、勝手に思い込んでいた。
 皇子もそれを喜んで受け入れ、互いにこの禁断の密通を楽しんでいるのだと……。

 それが、まさか……こんな……。
 これではまるで強姦であり、拷問ではないか……。
 いや、あのおびただしい体の傷は、実際に拷問を受けたのだ……。
 神の子を……。
 こんなになるまで……。


「陛下…………もう…………」

 “止めてください……” と、そう言いかけた時、ガルシアが小さく歓喜の声を上げた。
 シュリの脚と腰を鷲掴み、最奥まで突き込んだ自身のモノを、引き攣るシュリの体内で激しく掻き撫で、絶頂に達すると、最後の一滴まで絞り出すように、わずかな動きだけを残し、恍惚の表情で天を仰ぐ。
 シュリは肩で激しく息をしながら、ぐったりと動かない。

 終わった……のか……。
 オーバストはその時、密かに安堵した。
 陛下に “止めろ” などと、恐ろしい言葉を吐く前で良かったと……。


 体内からガルシアのモノがヌルヌルと引き抜かれると、シュリは小さく呻き、テーブルの上で身を丸めようとする。オーバストは、慌ててその手を離していた。

 解放され体が自由になると、シュリは折れた右手を庇うように胸に抱え込み、ハァハァと痛みに耐えながら、乱れた呼吸を繰り返す。
 
 その痛々しい姿にオーバストは、今までシュリを押さえ付けていた拳を強く握り締め、思わず「申し訳ありません……」そう呟いていた。
 
 命令とはいえ、神の子を犯すという醜行に、自分も加担してしまったのだ。
 なんという恐ろしい事をしてしまったのか……。

 その声が聞こえたのだろうか。
 シュリがゆっくりと瞳を開き、顔を上げる。
 その視線をオーバストに向け、そして静かに目を閉じ……小さく首を振った。
 それは罪悪感に圧し潰されそうになっていたオーバストにとって、まさに神の赦しだった。

 シュリ様……。
 オーバストはヨロヨロと崩れるようにその場に膝を付いた。

 小さく蹲るシュリの尻間から、ガルシアの精がトロトロと零れ出るのが見える。
 それがテーブルの上で、ゆっくりと血と混ざり合っていくのを、オーバストは、ただじっと見つめる事しかできなかった。

「どうした、腰が抜けたか」
 そんなオーバストを見てガルシアは面白そうに笑い、下半身を剥き出したまま、ソファーにドッカと腰を下ろす。

「ラウム、さっさとここを片付けて、連れて行け」

 満足がいったのか、上機嫌でそう言うガルシアに、ラウは「はい」と返事をし、そっとシュリを抱き起す。
 その声はいつもと同じ。とても静かだ。
 そして手際よく、汚れたテーブルを片付け始める。
 何事も無かったかのように……。

 そんな、ただ黙って淡々と命令をこなすラウムにも、オーバストは驚きを隠せなかった。
 どうしてそんなに冷静なんだ……。
 こんな場を見せられて……。
 皇子のあんな体を見て……。
 神が犯される様を見て……。
 みんなオカシイ……。
 どうかしている……。

 ガルシアに忠誠を誓い、仕えてから10年以上、一点の曇りもなく、この仕事に誇りを持ちやってきた。
 だがこの時、自分の胸中に突如として湧き上がったもの……。
 
 それがこの王に対する “不信感” や “疑念” という感情であることを、オーバストは初めて自覚していた。
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