華燭の城

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 ぐったりと荒い呼吸を繰り返すシュリの意識から、その囁きがまだ消えぬうちに、男の手はシュリの胸を撫でるように這い回っていた。
 その指が、胸の小さな突起をクッと引っ張り摘み上げる。

「……!」
 体が拒否反応を起こし震えた。

「やめ……っ……!」
 
 言いかけたそこへ、何のためらいもなく、真横からプツリと針が突き刺さる。

「……ンッっ!!」

 痛みに息を詰まらせたシュリが目を見開く。
 だが、乱れる呼吸が喉を塞ぎ、圧し詰まったように声は出なかった。

 刺された針は、そのまま突起の皮膚を内側から突き破って貫通し、ブツ。と反対側にその灼熱の先端を現す。

「……ンッァアア”ッ!!」

 動かない体を仰け反らせて、ようやくシュリが叫んだ。

「なるほど。
 シュリをここまで追い込むとは、期待以上だな」

 満足気なガルシアが声を掛けると、男は満面の笑みで顔を上げた。

「ありがとうございます。針はまだまだあります。
 次は、どちらがよろしいでしょうか」

 冷静を装い言葉こそ丁寧だったが、上げた顔は興奮に赤く上気し、揺れる蝋燭に照らされたそれは、すでに “人” という物を超え、淫猥に歪む異形の者だ。


 甘い香りの充満するその部屋で、男は次々と薬針を灼熱に変えると、何かに憑りつかれたようにシュリの体を刺し続ける。

 拷問にけた男の手技は、肩や腰、関節の間など神経の束を的確に狙い打ち、それは驚く程正確だ。
 極小ながらも気煙を纏うその激しい痛みは、シュリに気を失う事さえ許さず、身を捩り、ただ痛みに耐える唇は切れ、白い肌に小さな血がプツプツと湧く。
 
 男が正気を保っているのかさえ、疑いたくなるようなその責めを、ガルシアもまた酒を燻らしながら、じっと見つめていた。

 そして男の手は、徐々にシュリの下半身へと下りていく。
 ゆっくりと内腿をさすりながら、異形の目がガルシアの方へ向けられる。
 への責めの許可を請うように……。

「そこにもか……? まあ、いいだろう。
 見えない所ならば、お前の好きにしろ。
 だが、使い物にならなくするなよ?」

 薄ら嗤うガルシアの顔もまた、異形だった。

「それはもう、重々承知致しております。
 ここに薬を注入すれば、面白い効果もございますしね……。
 シュリ様もご自身でご覧になると、一層、痛みを感じ愉しめますよ」

 男は片唇だけを上げ笑うと、シュリの頭の下に布の束を差しこみ、首を起こすように持ち上げる。

 二人の会話は、痛みに呻くシュリにもハッキリと聞こえていた。
 持ち上げられた頭の、その視線の先には、激痛を伴いながら両胸を貫通したまま残された針と、そこから小さく湧き出す血。
 もっと先には、男の手で撫でられている自分の下半身があった。

「……な……何を……」

 叫び続け、塞がりかけた喉でそれだけを絞り出すと、全身に力を込めた。

 や……っ……やめっ…………!

「シュリ様、動かれない方がよろしいですよ?
 これから尿道に深く器具を挿し、薬を入れますのでね、手元が狂うと……」

 男の手がシュリのモノを握ると、そこへ注射器に似た物が近付いて来る。

 先につけられた金属棒は今までの針とは違い、それほど鋭利ではなかったが、かなり太く長い。
 その手元に薬を注入するためのシリンジがついているために注射器に見えるのだ。
 それがシュリの先端の穴にまっすぐに突き立てるように向かってくる。

「……!
 やめろ……やめ……っ……!!」

 ようやく声を出しそう叫んだ時には、先の穴を指で割り広げられ、プツ。と器具が突き立てられていた。

「……ンッグッ!
 …………っッぁあああああッッ!!」

 一瞬、腰が跳ね、体が仰け反る。
 だがその侵入は止まらなかった。

「じっとしていなさい。
 暴れると中が切れ、痛むだけですよ」

 そう言いながら、男の持つ器具は、シュリの細く狭い尿道の内壁を擦りあげながら奥へ奥へと入っていく。
 その痛みに、頭を振り、歯を食いしばり耐えるシュリの苦悶の表情に、ガルシアは嗤いながら一気に酒を呷る。

 金属棒の先端が奥深くまで到達した時、
「では、この辺りで」
 愉しそうな男の声で、一気に注射器の薬液が圧入された。
 敏感な体内を逆流してくる灼けるように熱い薬液。
 
 直後、シュリの絶叫が響き渡った。
 
 男は暴れるシュリの体内に挿し込んだ金属棒はそのまま残し、シリンジだけを素早く取り外す。
 残された器具は栓の役目を果たし、その薬を中に圧し込んだまま留まらせ、吐き出す事さえ許さない。



 シュリの体の線に沿って流れ落ちた血は、台の上で一つの血溜まりになった。
 だが、もうその体は自分の意志では動かなかった。

 叫ぶ声も枯れ、意識も朦朧とし、縛られたままの体でハァハァと大きく喘ぐそのシュリの姿に遂に我慢できなくなったのか、男は自らの着衣を脱ぎ捨てる。
 それは、じっと見ていたガルシアも同じだった。

 男がシュリの足のロープだけを外すと、シュリは自由になった足で、反射的に痛みから身を守ろうと体を丸める。
 だが頭側に仁王立ったガルシアがそれを放っておくはずがない。
 見るからに非力そうなこの小男のために、シュリの両足を上からグイと掴み、引き寄せ、膝を割る。

「ンッ……!」

 足を引き上げられ、後ろを露わにさせて押さえ込まれたシュリの顔を、ガルシアは愉しそうに眺め嗤いながら、
「面白いものを見せてくれた礼だ。
 構わん、神の体、存分に味わってみろ」

 その声に男は目がギラリと妖しく輝く。
 小さく首を垂れ、目礼をすると、台の上に這い上がり、自分の猛ったモノをシュリの後ろにあてがった。
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