華燭の城

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「……んっ!
 …………んっっっぁあ……!」

 そこはガルシアに犯された場所。
 初めてではない。
 だがまだ狭く、執拗な責めで傷もついている。
 そこへ新たに押し込まれたモノの痛みで、シュリは唇を噛み声をあげた。

 その声にラウが動きを止める。

「シュリ様……」
 
 自分を気遣う声を、シュリは遮った。

「二人の時は…… “様” は無しだ……。
 ……構わない……ラウ……。 
 続けて……もっと……」

 ラウに反論はなかった。
「はい」とだけ答えると、またシュリの中に自身を送り込み始める。

「んっ! ……んっ!
 ……ぁぁあっ……!」

 絡めた指が痛むほど、シュリは身を捩りラウの手を強く握り締めた。

「シュリ……。
 もっと力を抜いて……楽にして……。
 でなければ余計に痛みます」

「……ぁっ……ぁ……んっっっ……!」

「息を詰めないで、ゆっくり呼吸をして……」

 ラウの静かな声に促され、シュリは必死に深い呼吸を繰り返す。
 その胸の上下に合わせ、ラウのモノが緩やかに、そして確実にシュリの奥へと挿入され、とうとう最深部まで届こうとしていた。

「そう、お上手です……。
 そのまま……楽にしていてください……」

 そう言うとラウは、体を繋いだままシュリのモノを手に取った。
 優しく指先で先端をいたわるように撫でた後、根元から大きく包み込み、動かし始める。

「んぁ……!
 ぁああ……ラウ……だめ……。
 …………ぁ……ぁあ……んっ……!」

 石牢でのどんな責めとも違う、味わった事のない感覚。
 その初めての快感にシュリは声を上げた。

「そんなに声を上げないで。 
 外にまで聞こえてしまいます」

「……ぁああ、そんな……無理っ…………」

「ほら、もっと顔を見せて……」

「……んっ……っ! 
 ……ラウ……だめだ……。
 顔、見ないで……。
 ……恥ずかし…………んっっぁ……!」

「本当に……貴方は可愛い過ぎます……」

「んっ……んぁっ……ラウ……ラウ……」


 愛しい者と身体を繋ぐ……。
 それがこれほどまでに満たされるものなのかと、シュリはこの時、初めて知った。
 ラウも膨潤した自身のモノで、深く、浅く、何度も突き上げ、そして悠々と中の粘膜を掻き乱す。

 やがてシュリの呼吸は甘い喘ぎへと変わり、その体内はまるで生き物のように益々熱く、強く、ラウのモノに吸い付き、絡み付いてきた。
 普段の静かで穏やかなシュリからは想像もできない程だ。

 これがシュリ様の……。
 シュリの……あのガルシアさえも虜にした身体……。

 絡み取られるようなその感覚にラウも驚きながらも喜し、その質量は一層増えていく。

「…………! 
 ……ぁっ……んっぁあっ……んっ……!
 ……ラウ……いい……」

「……シュリ……っ……んっ……んっ……」

「だめ……ラウ……。 
 ……もう、いきそう……っ……。
 お願い…………いか……せて…………」

 その切ない懇願の声に、ラウの動きが早くなった。

「ええ……シュリ……。
 一緒に……っ……っ……んっ……!!」

「……っっぁ……んぁっ……!!」

 シュリの身体が大きく仰け反り、自身の腹上に白い粘液を遠慮がちに溢れさせる。
 と同時に、ラウのモノも、シュリの中でビクンと跳ねた。

 シュリはそのラウの脈動をハッキリと感じながら肩で息をする。
 達したばかりのその身体は、快感の余韻に浸り、思考は熱にうなされたように熱く、半ば茫然としていた。
 それでもシュリは心から嬉しいと思えていた。

「……ラウ……」
「……シュリ」

 シュリが腕を伸ばし、ラウを迎え、ラウの腕がシュリをしっかりと抱き止めた。




 シュリを部屋へ送ると、自室に戻ったラウはひとり、奥の薬品のある部屋に籠った。
 灯りは点けず、薬が並ぶ机で蝋燭一本だけに火を灯し、椅子に腰掛け、額に当てた拳を強く握り締める。

 そうしてしばらく目を閉じたままじっとしていたが、やがて顔を上げると、机の端にあった小さなガラス瓶を取り上げた。
 まだ瓶の封は切られておらず、中には琥珀色の液体が一杯の状態で入っている。
 それを無造作に開け、小さなグラスへ直接、数滴垂らすと、傍らの水差しの水で薄めた。
 そのグラスをゆっくりくゆらせると、琥珀の液体の濃度が濃いのか、度数の高いアルコールを水で割った時のような不思議な雲様の模様がグラスの中に浮かび上がり、うねり、混ぜ合わされていく。

 ラウは、琥珀から透明な液体へと見た目を変えたそれを、蝋燭の灯りでしばらくじっと見つめていたが、グラスに軽く唇を付けると、そのまま一気に天を仰ぎ、喉に流し込んだ。

 量はほんのわずか。
 たった一口にもならない。

 それでもトンとグラスを机に置くと同時、ラウの肩が大きく二度上下し、そのまま強く目を閉じた。
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