華燭の城

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 最初はゆっくりだったラウの手が、徐々に速度を増していくと同時に、そのモノも硬く変化していった。

「んっ……んっっ…………!」

 質量を増したそれが、頭を動かされる度、喉の奥を擦り、突き上げる。
 脚にしがみついたまま、ラウの手で動かされながら、その苦しさにシュリは思わず首を振った。

 ……んっ……苦し…………。
 …………やっ……やめ……ラウ…………!
 
 だがそれは言葉にならない声だった。


「それではダメです。歯が当ります。
 もっと舌を使って……」

 喘ぐシュリの頭を持ったまま、ラウは肩で息をするシュリを動かし続ける。
 体の傷の痛みと、苦しさ。
 シュリの額に大粒の汗が滲み、ただただ早く終われと、それだけを祈っていた。


 その行為がシュリには永遠に続くように思われたその時、
「シュリ様、口に出しますよ」
 頭上でラウの声がした。

「……!」
 
 驚いてラウを上目見た。
 思わず首を振り、口内から抜き出そうとしたが、ラウの手は否応無しにグイとシュリの頭を抑え込み、離さない。

「…………んんっっ!!」
 もう一度強く首を振って拒否の意思を見せた。

 だが既に遅い。
 もう引く事はできなかった。
 口の中で、硬く大きく反り上がったラウのモノがビクンと震え、何かが口内に吐き出される。

 …………ンッ……!!

 しかもそれは一度ではない。
 ビクビクと何度も波打ちながら、次々と喉奥に流れ込む。
 その感覚に思わず吐き気を催した。


 ゴホッゴホッっ…………!!

 ようやくラウの手が緩み、口からそれが抜き出されると、シュリは両手を床に付き、激しく咳き込んだ。
 口端から白濁したモノが溢れ、床に零れ落ちる。

 ハァハァ……ハァハァ……

「……大丈夫ですか?」
 上下するシュリの背中をさすりながら、ラウが手を添える。

 そのまま覗き込むようにして顔を見られそうになり、シュリは反射的に拒否し、首を振った。
 口内にはまだ男の粘液の嫌な感覚があり、話すことなどできはしなかった。

「初めてですからね。
 でも、本当は一滴も零さず飲むのですよ。
 そうしなければ、陛下はお許しになりません」
 静かな冷たい声が、喘ぐシュリの上に降ってくる。

 その声にシュリは唇を噛んだ。
 あの時見た光景、それはまさにその通りだった。
 あの時ラウは、ガルシアの吐き出したモノを全て飲み込んでいたのだから……。

「……わかっている……」

 言いようのない、訳のわからない敗北感に圧し潰されそうになりながら、やっとそれだけを言い返し、俯いたまま顔を逸らした。
 その視界、ベッド横のテーブルに、鞭でボロボロになった自分の衣服が置かれているのが目に入る。
 その上には、鈍く光るあの牢の鍵。

 ガルシアに、ここまでさせられるのか……。
 どうしてこんな……。

 悔しさと惨めさを握り締めた拳で、グッと口元を拭った。


「今日はもう休みましょう。
 お疲れになったでしょう?
 傷にも障ります」

 ラウは自分の衣服を整え、シュリをベッドへと座らせると薬湯を差し出した。
 無言のままカップを受け取ったシュリは、躊躇なくそれを一気に喉の奥へと流し込む。
 何でもよかった。
 何かでこの感覚を流してしまいたかった。

「大丈夫ですか? 傷は……」
「……いい……。少し、放っておいてくれ……」

 カップを返すと、心配するラウの声を無視し、そのまま背を向けて横になった。
 
 八つ当たりだと判っている。
 教えろと言ったのは自分なのだ。
 そんな事は判っている……。
 だが、これほどの屈辱……。
 そしてこんな行為ひとつ満足にできない自分……。
 これではラウ一人救えない。

 酷い無力感に襲われ、自分が情けなかった。
 薬湯の副作用が、その苦しさに拍車を掛ける。 
 震えの止まらない体で必死に耐え、唇を噛んだ。

 そんなシュリの背中を静かに見下ろし、
「では、今夜は外に控えております。
 御用があればお呼びください」
 それだけ告げるとラウは背を向けた。


 ラウ……。
 違う……。
 ラウを拒否した訳ではない……。
 お前が嫌な訳ではない……。
 ラウ……。

 そう心で呟きながら、苦しさの中でシュリは薬の眠りに落ちていった。
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