華燭の城

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ラウの視線の先には、うな垂れたまま肩で激しく息をし、身体中から血を流すシュリがいた。
床はまるで絵画のように、暴れ、飛び散った血が暗い部屋に色を添えている。

「クソッ……! この役立たずめが!」

 ガルシアはラウに腕を押さえられ、自身の体の火照りの行き場を無くしたまま、更に怒りの声をあげた。

「よーし! いいだろう!
 シュリ! 今日は勘弁してやる!
 だが、代わりをラウムにさせる!
 今夜はお前がワシを満足させろ! ラウム!」

 ラウは一瞬ガルシアを見上げたが、クッと唇を噛んで目を伏せた。
 そして片足で跪いたまま、右手を左胸に当てる最礼を示し、
「……わかりました」
 と静かに頭を下げた。

「シュリ! お前が言う事を聞かぬ役立たずだからだ!
 ラウムはお前の身代わりだ! よく見ておけ!」

 その声にシュリが薄っすらと目を開ける。
 ガルシアが、シュリに見せつけるようにラウの頭をグイと鷲掴んでいた。

「……ラウ……何を……。  
 ……やめ……ろ……!」

 
 ぼんやりと霞む視界。
 そこには、ガルシアに押さえ付けられ跪くラウの姿があった。
 
 自分の目の前で、ラウは目を伏せたまま、あの細い指にガルシアのモノをとっている。
 そして口を開け、舌を差し出し……それを舐め始めていた。
 自分の……身代わり……。

「やめろ……。……やめろ!!」

 だがラウは止めなかった。
 ゆっくりと全体に舌を這わせた後、細部まで丁寧に舐めていく。
 ガルシアは半眼でその様子を見下ろしながら、薄く笑い、唇端を上げた。

 ガルシアのモノが更に大きく猛り始めると、ラウはその繊細な指で自らの口奥へと運び入れる。
 柔らかな粘膜で包み込んだまま動かし擦りあげると、ガルシアは呻くように小さく声を出した。

「そうだ、そこだ……。
 もっとだ…………」

 ガルシアの手が、自分を掴んだ時と同じようにラウの頭を掴み、その手でラウの動きを欲しいままに操っていく。

「グンッ……ンッ…………」

 徐々にガルシアの手が激しくラウの頭を動かし、自らも腰を打ち付け始めると、ラウの喉から苦し気な、くぐもった声が漏れ始める。
 解けた黒髪のかかる背中が小さく震えていた。

 今、ラウの喉奥に、ガルシアのモノが突き込まれ、動いているのだ……。
 自分の身代わりで……。
 こんな……。
 やめろ……ラウ……。

 かすれ、すでに満足に出ない声でシュリは叫んだ。


 湿った音が続いていた。
 ラウの引き攣った呻きが何度も聞こえ、ガルシアの荒い息遣いが響く、長い長い時間だった。

 やがてガルシアの動きが一気に大きくなり、掴んだラウの頭に腰を打ち付けたかと思うと、
「んっ……! でる……っ……」
 その声の直後、震えていたラウの背中がピクンと跳ねた。
 それでもまだガルシアの手は、ラウの頭を離そうとはしない。

 その後も何度かゆっくりと抽挿を繰り返したあと、小さくコクンと、ラウの喉が二度三度動く。
 そしてやっとその口から細い糸を引きながら、ガルシアのモノが引き抜かれた。

 ハァ……ハァ……

 ラウは片手を床に付き激しく肩で息をしながらも、ゆっくりとガルシアに頭を下げる。

「やはり上手いな、お前は」
 ガルシアはフゥと息を吐き、満足がいったのか、ラウの黒髪が流れる背中に手を置いた。

「ああ、そうだラウム、お前がシュリを教育しろ。
 ワシが満足できるように仕込むのだ。
 今のままでは使い物にならん、いいな?」

 ラウが驚き顔を上げる。

「陛下……それは……」
「これは命令だ、逆らう事は許さん」

 ガルシアはそのまま、茫然とするシュリの側へ行き、
「今夜はラウムに救われたな……」
 そう言って顎をグイッと掴み上げ、じっとシュリを睨みつけた。

「今日は終いだ。
 シュリを部屋へ連れて行け」
 
 ガルシアはそれだけ言い捨てると、二人を残し部屋を出た。
 いつもの部屋でグラスに酒を注ぎ、一気に呷る。
 その顔は “使用人に弄ばれる神” を想像しているのか、満足気な嘲笑が浮かんでいた。


 ラウは床に転がった杖を掴み、右手でグッと口元を拭うと、ゆっくりと立ち上がった。
 滑車を下げ、その場に倒れ込んだシュリの冷え切った体をそっと抱き起こす。

 手枷を外し、石牢を出た時には、すでにガルシアの姿はそこにはなかった。
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