華燭の城

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 その夜、シュリがあの部屋に入ると、ガルシアは昨夜と同じようにソファーの中央に両腕を広げて座り、酒の入ったグラスをくゆらせていた。
 昨夜と違うのは、昨日以上に上機嫌なことだ。

「おお、来たか、我が息子!
 見たか!? 今日のあの、いつもうるさい役人共の驚いた顔を!
 完璧なまでのお前の見事な返答に何一つ言い返せず、オロオロとしておったわ!
 全く愉快! 明日からもその調子でやるのだぞ!」

 すでにかなり酔っているのか、赤くなった顔を向けた。

「どうした! 突っ立ってないでここへ来い! 座れ!」

 背もたれに広げた手で自分の右隣りをトントンと叩きながら、扉の前から動こうとしないシュリを呼ぶ。
 シュリは小さく唇を噛んだが、一つ小さく息を吐くと意を決し、ゆっくりと歩み寄ると、ガルシアの横へ浅く腰を下ろした。

「ほう、今日は素直だな。
 自分の立場がわかってきたらしい。
 だが、呼ばれたらワシの顔を見ろ」

 ガルシアはそう言うと広げた右腕でシュリの頭を抱くようにして、グイッと自分の方へと向かせ、顔を引き寄せる。

「ンッ……!」
 強烈な酒の匂いに思わず顔を背けた。

 だがガルシアの太い腕から逃げる事はできず、シュリは黙って目を閉じ、その酒臭い息に耐えるしかない。

「フン、強情なヤツだ」
 その首筋に、いきなりガルシアのざらついた舌が這った。

「……!!」
 
 反射的に身を引き、首をすくめた。
 膝の上で握り締めた拳に力が入る。

「ほら、どうした。
 こっちを向けと言っている」

 抱え込まれるように頭を抱かれ、顔を上げさせられると、シュリの固く結んだ唇を割るようにガルシアの指が触れる。

「んっ……」

 わずかに首を振る顎が強引に引かれ唇が開くと、そこへガルシアの舌がヌルリと差し込まれた。

「ンッ……っ……!」
 生温かく酒の味のする舌が蠢き、シュリが顔を歪ませる。

 ガルシアの長い舌がシュリの口内をまさぐり、舌を追いかけ、捉え絡み付く。
 陰湿な音を立てながらむさぼるようになぶられ、話す事も、口を閉じる事もできないまま、呼吸すら苦しくなっていく。

「くる……し……。
 やっ、やめ……っ……」
 両手でガルシアの体を引き剥がそうと押し返し、やっとそれだけの言葉を放った。

 ガルシアは、シュリのそんなささやかな抵抗を楽しむようにニヤリと笑うと、一度唇を離し、左手に持っていたグラスの酒を一気にあおった。
 そして、それを飲み込まぬうちに、再びシュリの口を塞いだ。
 ガルシアの口からぬるい酒が無理矢理に注ぎ込まれる。

「……! ……ンッッ!!」
 驚いたシュリが必死に顔を振った。

 口の中が強い酒で一杯になっていく。
 だが塞がれたままの口で、吐き出す事も、呼吸さえもできなくなり、ググッと無理矢理、喉の奥へ押し込むしかなかった。

 喉の焼ける感覚と同時に、熱い液体が体内へと流れ込む。
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