華燭の城

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「……な……何……、、……今、なんと……」

 一瞬、耳を疑うようなガルシアの言葉にシュリが驚いて振り返る。

「聞こえなかったのか? 脱げと言ったのだ。
 お前を可愛がってやろうというのだ。
 このガルシアの寵愛、ありがたく思え」

「寵……、、
 何を馬鹿げた事を……! 気でも狂ったか!」

 信じられないとでも言う風に小さく首を振りながら、シュリの体は本能的に扉の方へと向かっていた。

「ラウム!」
 そのシュリの後ろでガルシアの声がした。

 ラウは杖をつきながら、真っ直ぐにシュリの正面まで進んで来ると、空いている右手でシュリの手首をグイと掴んだ。

「……!! ……ラウ!? 何をする……!
 ガルシアが何を言っているのか、お前も聞いただろ!
 こんな馬鹿げた話……!
 部屋へ戻る……! 手を離せ!」

「ダメです、シュリ様」

 振り解こうとするが、ラウの強い力がシュリを離しはしなかった。

「……なっ……!? 
 ……離せ! 離せ、ラウ!!」

「シュリ様、お辛いかもしれませんが、ご自分の置かれた立場を忘れないで下さい」

 その言葉に驚いたように、シュリの動きがピタリと止まった。

「ラウ……? お前まで何を……」

 真っ直ぐにラウの黒い瞳を見つめた。
 ここに来る途中、深夜に呼び出されるだろうと言っていたのはこの事だったのだ。
 ラウは、こうなる事を……。

「ラウ……お前は……。
 まさか、こうなる事を知っていたのか……?
 知っていながら、私をここへ連れて来たのか!?」

 唇を噛みラウを睨みつけた。
 だがラウは黙ったまま小さく首を振るだけだった。

「……!! 帰る! 離せ!」

 強く掴まれた手首を振り解こうと暴れるシュリの肩に、後ろからガルシアの手が掛かった。
 振り返らせるようにグイと後ろへ引かれ、シュリがバランスを崩し側にあったソファーへ倒れ込むと、ガルシアは、そのままシュリの上へと馬乗りになる。

「……ンっ! 
 ……離せ! やめろっ……!」

 両手足で力の限りその体を突き放し逃れようとするが、組み敷かれたままガルシアの大きな体はビクともしない。
 ガルシアは薄い唇でニヤリと笑うと、はだけていた胸元からビリビリとシュリのシャツを引き裂き、衣服を剥がし始めていた。

「や……やめ……っ!」

 暴れるシュリの手が、テーブルにあった酒瓶をガラガラとなぎ倒す。

「ラウム! こいつの手を押さえていろ!」

 その声にラウは黙ったままソファーに近付き、ガルシアに馬乗りにされているシュリの両腕を頭の上まで持ち上げ、押さえつけた。

「……嫌だ! 離せ! ラウ! 私に触るな!
 味方だと……私の味方だと言ったのはお前じゃないか!
 あれは嘘だったのか……!」

 押さえつけられたまま、体を捩り抵抗するシュリに、
「申し訳ございません」 
 ラウはたった一言、静かにそう応えただけだった。

「ハハハッ……! それでいい」
 ガルシアの笑い声が部屋に響く。


 蝋燭の灯りに、シュリの一糸纏わぬ美しい裸体が浮かび上がっていた。
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