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第5章 地球と彼の地を結ぶ門
5-37 敵は宗司?
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宗司の全身を包み込んだ赤いモノは、大きく膨らんだ後、時間をかけて内包する身体の形を目指して歪に収縮していった。ギリギリと軋む様な嫌な音がやけに大きく聞こえる。
そして出来上がったのは、赤い人形(ひとがた)だった。宗司の影も形もない。まるで宗司ゴーレムである。冗談にしても全然笑えない。遠征メンバーで最強の戦力が人質に取られたのだから。
宗司ゴーレムは、前傾姿勢で硬直していた。両腕をだらんと下に垂らした格好で。ただ、身体の表面は無機質な結晶で覆われている。それも鮮血のような真っ赤な色の。
「リリはクーシュと離れろ!」
司はクーシュをリリに向かって放り投げる。リリは即座に反応し、クーシュを口に咥えて、母鳥のいる後方へ駆けていった。同時に、司は未だに呆けている舞を真横に突き飛ばす。
「舞、ぼさっとするな! 来るぞ!」
そして、さっきまで舞が立っていた場所に赤い腕が振り下ろされた。
舞を庇った分、初動は遅れたが、司は紙一重でそれを避けることができた。空振りした赤い腕は地面にめり込んで土の破片をまき散らす。突き飛ばされた舞は、無意識で受け身は取ったようだ。
「くそっ、舞ですら判別できないのか! 宗司さん!」
素体が宗司だけあって身体の動きは速く、力も驚異的だった。しかし、ハードウェアは優れているが、操っている方、ソフトウェアがあまりにもお粗末すぎる。動きは直線的で機械のよう。宗司本来の、力強く流れるような洗練された動きは欠片もない。これでは宝の持ち腐れだろう。
距離をとった司を追って、宗司ゴーレムは跳躍して腕を振り下ろす。赤い腕は再度大地を割るが、今度の司は余裕を持って回避する。
跳躍して振り下ろす、跳躍して振り下ろす。バカの一つ覚えのように繰り返すが、1発も司に当たることはなかった。伊達に、宗司の地獄の特訓メニューのお世話になっているだけあって、司の動きも大したものである。
司が時間を稼いでいる間に、呆けて使い物にならなくなった舞をリリが素早く回収する。リリは舞を咥えた状態で10メートル程を一歩で跳躍して、あっという間に司たちから距離をとった。本気を出した時のリリの身体能力は宗司を凌駕するのだ。既に、クーシュは母鳥に預けており、姉妹同様に懐に収納されて安全地帯である。
「舞さん、回収しました!」
「よし! ナイスだ、リリ!」
憂いの無くなった司は改めて宗司ゴーレムを観察する。最初こそ、一番近くにいた舞が狙われたのだが、現在は司がずっとターゲッティングされている。先ほども一時的にとは言え、接近したリリと舞には反応をしていないことから、最も近い対象を攻撃するようだ。
「それなら、俺がひたすら引き付けて、何とかする手立てを考えないとな」
司が宗司ゴーレムを観察している間も、相手の攻撃が止むことはない。1発1発は一撃必殺の威力を持っているが、単調な攻撃で今のところ司に当たることはない。まさに自律稼働しているロボットのような動きである。
「……いっつつつ」
宗司の表面を覆っている赤い結晶体はかなりの硬度があるようだ。司は試しも兼ねて軽く殴ってみたのだが、自分の拳のほうがダメージを受けてしまった。試した印象は、石というよりは冷えた鉄を叩くイメージ。生半可な衝撃では砕くどころか、逆に反射されてしまうようだ。
「司さん、選手交代です。心の整理はできました」
「舞……」
背後からかけられた声からは、もう憂いの感情は消えていた。そこにあったのは静かな闘志だけである。見れば、戦棍(トンファー)で完全武装した姿の舞が、肉親の宗司に向けるとは思えないような冷たい目をしていた。
「舞! 対象は、最寄り狙い、動作は単調、表面硬度は鉄以上、やるなら一撃離脱、次は5分で交代だ!」
「了解です!」
必要な情報を伝えると同時に、司が後方に跳ねながら離脱、入れ替わって舞が宗司ゴーレムに接近する。舞の持つ戦棍は特殊合金製なので、相手の状態とタイミングによっては打撃の効果で破壊もできるかもしれない。少なくとも、あれに刃物で挑むよりは相性が良い。
「馬鹿兄、いっつも迷惑ばかりかけて……」
舞は自分にしか聞き取れない小さな愚痴を溢しながら、接敵してくる宗司ゴーレムに戦棍を叩き込んでいく。普通の岩なら砕けてもおかしくないレベルで遠心力と体重を乗せた攻撃が続く。これぐらいで宗司は死なないだろう、と。
舞は、まるで日頃のうっ憤を晴らす……否、相手の事を尊敬しているからこそ、容赦のない攻撃を放てるのだ。しかし、これはむしろ、宗司死ね、か? 今ここにブラック舞が降臨したのかもしれない。
一方、宗司ゴーレムの攻撃対象が舞に切り替わったのを確認した司は、自分の荷物から必要な道具を取りに走る。本来、危険な役目を舞に任せたくはない状況であるが、現状これがベストだということも認識している。
「宗司さんは何を考えているんだろう……」
司の疑問に答える人物は、今は無言を貫いている。
そして出来上がったのは、赤い人形(ひとがた)だった。宗司の影も形もない。まるで宗司ゴーレムである。冗談にしても全然笑えない。遠征メンバーで最強の戦力が人質に取られたのだから。
宗司ゴーレムは、前傾姿勢で硬直していた。両腕をだらんと下に垂らした格好で。ただ、身体の表面は無機質な結晶で覆われている。それも鮮血のような真っ赤な色の。
「リリはクーシュと離れろ!」
司はクーシュをリリに向かって放り投げる。リリは即座に反応し、クーシュを口に咥えて、母鳥のいる後方へ駆けていった。同時に、司は未だに呆けている舞を真横に突き飛ばす。
「舞、ぼさっとするな! 来るぞ!」
そして、さっきまで舞が立っていた場所に赤い腕が振り下ろされた。
舞を庇った分、初動は遅れたが、司は紙一重でそれを避けることができた。空振りした赤い腕は地面にめり込んで土の破片をまき散らす。突き飛ばされた舞は、無意識で受け身は取ったようだ。
「くそっ、舞ですら判別できないのか! 宗司さん!」
素体が宗司だけあって身体の動きは速く、力も驚異的だった。しかし、ハードウェアは優れているが、操っている方、ソフトウェアがあまりにもお粗末すぎる。動きは直線的で機械のよう。宗司本来の、力強く流れるような洗練された動きは欠片もない。これでは宝の持ち腐れだろう。
距離をとった司を追って、宗司ゴーレムは跳躍して腕を振り下ろす。赤い腕は再度大地を割るが、今度の司は余裕を持って回避する。
跳躍して振り下ろす、跳躍して振り下ろす。バカの一つ覚えのように繰り返すが、1発も司に当たることはなかった。伊達に、宗司の地獄の特訓メニューのお世話になっているだけあって、司の動きも大したものである。
司が時間を稼いでいる間に、呆けて使い物にならなくなった舞をリリが素早く回収する。リリは舞を咥えた状態で10メートル程を一歩で跳躍して、あっという間に司たちから距離をとった。本気を出した時のリリの身体能力は宗司を凌駕するのだ。既に、クーシュは母鳥に預けており、姉妹同様に懐に収納されて安全地帯である。
「舞さん、回収しました!」
「よし! ナイスだ、リリ!」
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司が宗司ゴーレムを観察している間も、相手の攻撃が止むことはない。1発1発は一撃必殺の威力を持っているが、単調な攻撃で今のところ司に当たることはない。まさに自律稼働しているロボットのような動きである。
「……いっつつつ」
宗司の表面を覆っている赤い結晶体はかなりの硬度があるようだ。司は試しも兼ねて軽く殴ってみたのだが、自分の拳のほうがダメージを受けてしまった。試した印象は、石というよりは冷えた鉄を叩くイメージ。生半可な衝撃では砕くどころか、逆に反射されてしまうようだ。
「司さん、選手交代です。心の整理はできました」
「舞……」
背後からかけられた声からは、もう憂いの感情は消えていた。そこにあったのは静かな闘志だけである。見れば、戦棍(トンファー)で完全武装した姿の舞が、肉親の宗司に向けるとは思えないような冷たい目をしていた。
「舞! 対象は、最寄り狙い、動作は単調、表面硬度は鉄以上、やるなら一撃離脱、次は5分で交代だ!」
「了解です!」
必要な情報を伝えると同時に、司が後方に跳ねながら離脱、入れ替わって舞が宗司ゴーレムに接近する。舞の持つ戦棍は特殊合金製なので、相手の状態とタイミングによっては打撃の効果で破壊もできるかもしれない。少なくとも、あれに刃物で挑むよりは相性が良い。
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舞は自分にしか聞き取れない小さな愚痴を溢しながら、接敵してくる宗司ゴーレムに戦棍を叩き込んでいく。普通の岩なら砕けてもおかしくないレベルで遠心力と体重を乗せた攻撃が続く。これぐらいで宗司は死なないだろう、と。
舞は、まるで日頃のうっ憤を晴らす……否、相手の事を尊敬しているからこそ、容赦のない攻撃を放てるのだ。しかし、これはむしろ、宗司死ね、か? 今ここにブラック舞が降臨したのかもしれない。
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