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第5章 地球と彼の地を結ぶ門

5-14 不思議な山を登る旅②

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 順調に山を登っていた3人と1匹は不思議な出来事に遭遇してた。現在は麓から3合目といったところか、当初の計画通り、順調な滑り出しである。

「あの、あれって何でしょうかね? 宗司兄は以前ここに来たことがあるんですよね? 何か知りませんか?」

 舞が宗司にそう聞くのも仕方のないことだろう。珍しく困惑の表情を浮かべていた。

「私だって知らないぞ。前に来たときはあんなのいなかったからな……。第一、この岩しかないような山に何でアレがいるんだ? おかしいじゃないか」

 どうやら宗司も知らないようだ。アレとは一体なんなのか。

「あの……そんなことよりも、助けてあげないでいいんですか? 司さん?」

「「「うーん」」」

 リリが若干不安そうに司たちに相談するが、珍しいことに3人はいまいち乗り気でない。何故ならば、一行の目の前にいるのは明らかに怪しい生物だったからだ。厄介ごとの匂いしかしない。


 蹲っているから精確ではないかもしれないが、30センチくらいの体長だろうか。

 群青のような、黒に近い青色の毛でほぼ全身が覆われていて、お腹と足の辺りだけが白い。手はなく、2つのヒレみたいなものが見える。足は水かきとしか思えない。全体的にずんぐりむっくりした丸っこいフォルムの身体。

「あれ、どう見てもペンギンにしか見えないんですけど……」

 そう、一言で言えば、太ったペンギンである。野生動物の欠片もなさそうな丸々と太ったフォルムは本来のシャープさを一切感じさせない。何より、この岩しかないような山に、水かきを持つペンギンのような鳥類がいるのだ。蹲っているので顔が良く見えないが、たぶん間違いないだろう。明らかに怪しいとしか思えない。

「でも……あの子、泣いてますよ? あのままは可哀想です……」

 リリが指摘したことも3人が不審に思っている一因である。様子を伺っている一行のところまでペンギン? と思われる鳥の鳴き声が聞こえてきているのだ。メソメソシクシクと、やけに人間臭い鳴き方をしているのが余計に助けるのを躊躇させているのである。


 それにしてもこんなところに1羽で居て、今までよく生き延びられていたものである。

「見捨てるのも忍びない。しょうがない、とりあえず事情を調べるか。よし、行け、司よ。とりあえず宥めて落ち着かせるんだ」

 さも当然のように、司に指示を出す宗司。舞もリリも否定の言葉を紡がない。これは既に決定事項のようだ。

「ええ!? 俺がですか? 1人でですか?」

「うむ。大勢で行って怯えさせるわけにはいかんだろう? 私はそもそも動物には好かれないタイプだし、リリちゃんは大きい状態だから外見的にダメだろうし、舞は、私もだが家で動物を飼っているわけでもないし……ほら、消去法でも司が最適となるわけだ」

 ため息を吐きつつ、どうせこうなるだろうな、と思っていた司はゆっくりとペンギン? へと向かって行く。下手に気配を消して近づくと、余計に怯えさせる可能性があるので少し足音もたてて歩く。

 ペンギン? は司の接近に気づいたのか、少しビクッとした後、気配のする方へと顔を向けた。それに伴って、蹲っていて見えなかった身体の正面部分が露わになる。

(ほとんど見た目はペンギンだな)(ですね)(可愛いですー)

 司とペンギン? の邂逅を見守っている外野の2人と1匹は暢気なものである。


 ペンギン? が振り向いて司を視界に捉えた辺りで、満を辞して話しかけた。

「ちょっといいか? こんなところで何をしているんだ? 親はどうしたんだ?」

 いくらなんでもこれは……ちょっと変わっていても相手は鳥である。そんな人間の子供に話しかけるようにしても伝わるのだろうか? それに人間であっても、今のご時世、そんな風に声をかけたらまるっきり不審者。通報事案まっしぐらである。

 しかし、ペンギン? の変化は劇的だった。泣き止んだかと思ったら、司の腹を目掛けて弾丸のように突っ込んだ。文字通り、飛んで来たのである。

「え? …………ぐえっ」

 そんな行動を予想していなかった司は対処もできず、もろに腹にロケット砲を食らって、2メートル程の距離をペンギン? と一緒に吹き飛んだ。背中から地面に激突する司。

「……いつつつ、って大丈夫か?」

 理不尽に吹き飛ばされつつも、ペンギン? を無意識でお腹に庇う様にして抱えて守った司は、根っからの善人と言わざるを得ない。勿論、いい意味でだ。

 起き上がろうとして、司は気づいた。ペンギン? がまるでコアラのようにお腹の部分にしがみ付いて離れない。小刻みにプルプルと震えているが、もう泣いてはいないようだった。それにしてもヒレしかないのにどうやってしがみ付いているのだろうか……謎は深まる。

「どうすんだ……これ」

 司がそう呟いても仕方のないことだろう。それは誰にもわからないのだから。
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