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第4章 旅にアクシデントはお約束?
4-24 いざ! 上陸! 青葉リゾートアイランド②
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船に乗って島に上陸しようとしたけど、尺が足りなかったでござる……。
冗談はさておき、朝から色々問題が発生したが、棲龍館を無事に全員で出発して、数時間後には広大な太平洋を見渡せる船着き場へ到着した。天気も良く、海も穏やかで絶好の航海日和である。
それにしても、高級クルーザーがまるでドミノのようにズラズラと並んでいる。どうやらここは高級船舶専門の停泊所のようだ。よくよく見れば、買えば数千万は下らないものばかり、中には億を超えるものまである。まさかこの中のどれかが青葉家の船なのだろうか?
「お嬢! こっちですぜ!」
白い髭が特徴の、初老に差し掛かったくらいの男性が一行を出迎えた。浅黒く日焼けした肌に恰幅の良い体型、だが脂肪だけでなく筋肉もしっかりとついていて健康的な印象を受ける。澪のことをお嬢と呼んだような気がするが……。
「お嬢、よくおいでなすった。早くお会いしたくて、まだかまだかとソワソワしてお待ちしてましたぜ。がはははは! お元気でしたか?」
「この通り、元気いっぱいですよ~。玄爺(げんじい)は、相変わらずですねぇ~。私より玄爺のほうが健康に気をつけないとですよね~? もう若くないんですから~」
「がははは、まだまだ若いもんには負けんわい! 生涯、現役! これが信条ですからな」
澪は玄爺と呼んだおじいさんとがっちりと抱き合った。その顔は、孫と久しぶりに会う好々爺の表情そのものだ。澪とは古い知り合いなのだろうけど、随分と仲の良さそうな雰囲気である。ほとんど家族に近いんじゃないだろうか?
「みなさん、紹介しますね~。このおじいさんは玄次郎(げんじろう)さんと言いまして、ここから青葉リゾートまで船を運転してくれる方です。私とはもうどれくらいの付き合いでしょうか? 小学校くらいからです? もう家族みたいなものですね~」
「お嬢は、相変わらずいい娘ですなぁ。いやぁ、嬉しいことを言ってくださる。今、紹介あった玄次郎だ。呼ぶときは玄爺でいい。これから皆を青葉リゾートまでご案内しよう。大船に乗った気でいて、景色を楽しんでいればいい。気づいたら着いているからな!」
「おっと、その前に腹ごしらえだ。ここから島までは3時間くらいかかるからな。そっちのワンちゃんも一緒でいいぜ。さぁ、こっちだ」
玄爺の号令で、一行はぞろぞろと連れ立って歩いて向かう。まるでカルガモの親子のようになっている。
「ここに来るのも久しぶりですね~。お婆様もお元気ですか?」
「ははは、あいつが、そう簡単にくたばるわけないですな。まぁ、ちょくちょく爺と婆の顔を見に来てやってくださいよ。お嬢ならいつでも大歓迎です」
着いた先は食堂みたいな小ぢんまりとしたお店だった。古き良き食堂の趣が感じられる。ただ、店の前には不釣り合いなほどの人の行列ができていた。そろそろお昼時だということを除いても明らかに異常な数である。
「相変わらず繁盛してますね~」
「店開けるのが不定期なのに、どこから聞いてくるのかすぐに人が集まりますな。ありがたいことです。正面は……人がいっぱいなので後ろから入りましょう。ここです。おい、婆さん! お嬢が来たぞ! 上に行くからな!」
玄爺に案内されて食堂の裏から入り、厨房のほうへ来客したことを大声で伝え、二階にある20人程度を収容できる広間へ通された。一行が思い思いに座って寛ぎだしたくらいで、階段のほうから足音が聞こえ、
「澪ちゃん! よくいらっしゃった!」
扉をガーン! と開け放って、やけに元気な声のお婆さんが現れた。衝撃的な登場シーンだったのか、リリが口をぽかーんと開けて驚いていた。
「妙子婆様、ご無沙汰しています。今日はよろしくお願いします~」
「なんだい、なんだい、その畏まった挨拶は! 澪ちゃんならいつ来ても、うちは歓迎だよ! 皆さんもよくいらっしゃった。すぐにお昼を用意しますからね。皆さんは魚介類で食べられないものとかありますかね?」
これまたがっしりと抱き合って再会を喜び合っていた。妙子婆の質問には澪が周りを見て確認して、
「特に大丈夫そうです~、ではいつもので~」
「了解だよ! ……おい、そこの爺さん、下へ来て手伝いな。澪ちゃんたちを待たせるんじゃないよ!」
「おいおい、人使いの粗い婆さんだな……」
「何言ってんだい! お客さんが待ってるってのに、ぼさっとしてんじゃないよ!」
澪に妙子婆様と呼ばれていた人は、玄爺を連れて嵐の様に去っていった。
「あははは~、妙子婆様は性格こそ、あんなですが、昔からこのお店を一人で切り盛りしていますし、料理の腕は確かなんですよ~。お昼は期待しておいてくださいね~」
冗談はさておき、朝から色々問題が発生したが、棲龍館を無事に全員で出発して、数時間後には広大な太平洋を見渡せる船着き場へ到着した。天気も良く、海も穏やかで絶好の航海日和である。
それにしても、高級クルーザーがまるでドミノのようにズラズラと並んでいる。どうやらここは高級船舶専門の停泊所のようだ。よくよく見れば、買えば数千万は下らないものばかり、中には億を超えるものまである。まさかこの中のどれかが青葉家の船なのだろうか?
「お嬢! こっちですぜ!」
白い髭が特徴の、初老に差し掛かったくらいの男性が一行を出迎えた。浅黒く日焼けした肌に恰幅の良い体型、だが脂肪だけでなく筋肉もしっかりとついていて健康的な印象を受ける。澪のことをお嬢と呼んだような気がするが……。
「お嬢、よくおいでなすった。早くお会いしたくて、まだかまだかとソワソワしてお待ちしてましたぜ。がはははは! お元気でしたか?」
「この通り、元気いっぱいですよ~。玄爺(げんじい)は、相変わらずですねぇ~。私より玄爺のほうが健康に気をつけないとですよね~? もう若くないんですから~」
「がははは、まだまだ若いもんには負けんわい! 生涯、現役! これが信条ですからな」
澪は玄爺と呼んだおじいさんとがっちりと抱き合った。その顔は、孫と久しぶりに会う好々爺の表情そのものだ。澪とは古い知り合いなのだろうけど、随分と仲の良さそうな雰囲気である。ほとんど家族に近いんじゃないだろうか?
「みなさん、紹介しますね~。このおじいさんは玄次郎(げんじろう)さんと言いまして、ここから青葉リゾートまで船を運転してくれる方です。私とはもうどれくらいの付き合いでしょうか? 小学校くらいからです? もう家族みたいなものですね~」
「お嬢は、相変わらずいい娘ですなぁ。いやぁ、嬉しいことを言ってくださる。今、紹介あった玄次郎だ。呼ぶときは玄爺でいい。これから皆を青葉リゾートまでご案内しよう。大船に乗った気でいて、景色を楽しんでいればいい。気づいたら着いているからな!」
「おっと、その前に腹ごしらえだ。ここから島までは3時間くらいかかるからな。そっちのワンちゃんも一緒でいいぜ。さぁ、こっちだ」
玄爺の号令で、一行はぞろぞろと連れ立って歩いて向かう。まるでカルガモの親子のようになっている。
「ここに来るのも久しぶりですね~。お婆様もお元気ですか?」
「ははは、あいつが、そう簡単にくたばるわけないですな。まぁ、ちょくちょく爺と婆の顔を見に来てやってくださいよ。お嬢ならいつでも大歓迎です」
着いた先は食堂みたいな小ぢんまりとしたお店だった。古き良き食堂の趣が感じられる。ただ、店の前には不釣り合いなほどの人の行列ができていた。そろそろお昼時だということを除いても明らかに異常な数である。
「相変わらず繁盛してますね~」
「店開けるのが不定期なのに、どこから聞いてくるのかすぐに人が集まりますな。ありがたいことです。正面は……人がいっぱいなので後ろから入りましょう。ここです。おい、婆さん! お嬢が来たぞ! 上に行くからな!」
玄爺に案内されて食堂の裏から入り、厨房のほうへ来客したことを大声で伝え、二階にある20人程度を収容できる広間へ通された。一行が思い思いに座って寛ぎだしたくらいで、階段のほうから足音が聞こえ、
「澪ちゃん! よくいらっしゃった!」
扉をガーン! と開け放って、やけに元気な声のお婆さんが現れた。衝撃的な登場シーンだったのか、リリが口をぽかーんと開けて驚いていた。
「妙子婆様、ご無沙汰しています。今日はよろしくお願いします~」
「なんだい、なんだい、その畏まった挨拶は! 澪ちゃんならいつ来ても、うちは歓迎だよ! 皆さんもよくいらっしゃった。すぐにお昼を用意しますからね。皆さんは魚介類で食べられないものとかありますかね?」
これまたがっしりと抱き合って再会を喜び合っていた。妙子婆の質問には澪が周りを見て確認して、
「特に大丈夫そうです~、ではいつもので~」
「了解だよ! ……おい、そこの爺さん、下へ来て手伝いな。澪ちゃんたちを待たせるんじゃないよ!」
「おいおい、人使いの粗い婆さんだな……」
「何言ってんだい! お客さんが待ってるってのに、ぼさっとしてんじゃないよ!」
澪に妙子婆様と呼ばれていた人は、玄爺を連れて嵐の様に去っていった。
「あははは~、妙子婆様は性格こそ、あんなですが、昔からこのお店を一人で切り盛りしていますし、料理の腕は確かなんですよ~。お昼は期待しておいてくださいね~」
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