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第4章 旅にアクシデントはお約束?

4-12 望む望まずに関わらず、トラブル? は独りでにやってくる

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「……で? 急に来て、いったい何の用なんだ? 俺には心当たりがまったくないんだけどな」

 司は干支神家の屋敷で客人を迎えていた。ただ、本来予定にない来客であり、メンツにも不可解な点がある。むしろ、何か問題ごとの匂いしかしない。

「まぁまぁまぁ、そんなことは言いっこなしだって! 司さんと私たちの仲じゃない」

「こーんな美人さん3人を家に迎えることができるなんて、司さんはラッキーですねー。むしろお礼を要求したいくらいですよー?」

「むむむ、このお菓子おいしい。でも、一体どこのお店? 記憶にない。まさか自家製?」

 初めてなのに少しの遠慮もない3人の名前は、赤穂(あかほ)詠美(えいみ)、青葉(あおば)澪(みお)、黄瀬(きせ)優(ゆう)。武神(たけがみ)舞(まい)の高校の学友……のはず。司にとっては許嫁の友達で、しかもまだ1回しか会ったことがないわけで、つまりはほぼ赤の他人である。

「へー、いつどこでどうやって、そうなったんだろうね……さて、こう見えて俺も結構忙しい身なんだ。食べ終わったら、お帰りはあちらですよ?」

「ええっ!? 待って待って! 私たち舞の友達だよ? そっけなさすぎない!?」

「むむー。流石は恋人持ちですねー。色仕掛けの正攻法では無理ですかー」
 
「理不尽な発言に断固抗議。撤回を要求する。…………これ、おかわりある?」

 今現在は、知り合いの家にお菓子とお茶をたかりに来ただけである。一体、何をしに来たというのか。

「わかったわかった。話を聞いてやるから、さっさと話せ。本当に何しに来たんだよ……」

 3人はきっちりと出されたお菓子とお茶を平らげて、うち一人はおかわりまでしていた。日本人の奥ゆかしさや慎みといった要素はどこへ行ってしまったのか。どこまで行ってもマイペースな3人である。

「司さんって暇だよね? 暇にするよね? 無理でも暇にして!」

「私たちはー、もうすぐ夏休みになるんですよねー」

「もぐもぐ、もぐもぐ」

 約一名お菓子に夢中な頭のおかしな人がいる……。
 それはともかくとして、今は7月上旬だから、もう少ししたら高校生は夏休みになる。司には全く関係ないことだが、どうやら休み中の予定を聞きに来たようだ。

「残念ながら、やることが山盛りだな。正直な話、先月もあほみたいに忙しくて、寝る暇もなかったくらいだ。今月はそれほどでもないが、それでも暇になることはないだろうな」

 現実を顧みて、司がとても真面目に回答する。彼のスケジュールは兎神が管理しているのだが、事実かなりの綿密具合で埋まっている。司はそれを見たくなくて、日々現実逃避しているが。

「ぶーぶー、そんなのつまんなーい。そんな回答は求めていませーん。はい! やり直し!」

「あらあら、ダメな男のセリフですねー。そこは予定があっても暇ですよーっておっしゃるのが甲斐性ってものじゃないんですかー? そんなことじゃ舞ちゃんが可愛そうですよー」

「再回答を要求。休暇を申請せよ。我々は司の身柄を求めている……あ、おかわりある?」

 言いたい放題である。そして、優はまだ食べたいのか……。

「あのなぁ、いきなり来て何言ってんだよ……理由もわからず、予定を空けろとか言われても無理だろうよ。普通に考えて。理由を話せよ、理由を」

 延々と続きそうな前振りに、いい加減、面倒くさくなった司。3人に対する反応がだいぶ雑になってきた。忙しい身としては、前置きはいいからさっさと結論を話してもらいたい、そんな感情が見え隠れしている。これはモテない男の典型的なパターンである。

最も、司がこの3人に対して恋愛感情を抱くか? と言われたら……コメントは差し控えさせて頂こう。蓼食う虫も好き好きである。人と人の関係には相性というものが大切なのである。

「あのさ、最近、舞の元気がないのよね……何かに悩んでいるみたいなのよ。で、心配になって理由を聞いてみても、曖昧に笑ってはぐらかすだけで教えてくれないの。いつもなら私たちに隠し事するような子じゃないのに」

「こんなこと初めてなので、舞ちゃんが心配なのですー。私たちに話せない内容で悩んでいるみたいなのでー、いっそのこと気分転換にでもどこか外出しようかなーと思ったわけでー。それなら司さんも誘っちゃえば面白……舞ちゃんも嬉しいかなーと」

「初めての経験。この胸が高鳴るような感覚。体温、心拍数ともに上昇。まさか……これが恋? 美味しい食べ物さえあれば、私は平常運転。司がいれば自ずと美味しいものが食べれるはず。そう、これは戦略的思考の結果によるもの」

 なんか心の本音がダダ漏れなきもするが、この3人は本当に舞のことを思ってのことだろう。口では何だかんだ言っても、根は良い連中なのだ。しかしながら、全てが善意ではなく、ついでに、あわよくば自分が楽しめればという魂胆があるのが残念なところである。

「……わかった。そういうことなら、なんとかしよう。あとでスケジュールだけは教えてくれ。内容は任せるぞ? あと、うちの兎神たちにも言っとかないとい……」

「司様、予定は問題ありません。ぜひ、同行されてください。移動する予定については少し後送りになりますが、多少睡眠時間を切り詰めればいけるでしょう。大丈夫です」

 兎神がどこからともなく現れて、残酷なことを告げる。

「それって、後で俺が死ぬだけじゃ……」

「大丈夫です」

 この世には理不尽が溢れている。
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