上 下
57 / 278
第3章 干支神はファンタジーな一族を家に迎える

3-17 武神の少女は準備する Don’t forget your original intention

しおりを挟む
 私が司さんの安否確認に行くことが決定してから、あの後、少ししたらリリの意識が戻りました。そして、リリからも事情を聴き、準備が整い次第、干支神家のお屋敷に集合することとなりました。尚、移動に関しては兎神さんが車を出してくれるとのこと。

 さて、その前に驚いたことが1つ。これはまさに驚愕の事実と言っていいでしょう。なんといいますか、リリがのです。リリの目が覚めて、開口一番に、

「舞さん、舞さん、司さんが大変なのです!大樹様が、司さんが、お守りが!」

 と話しながら私に飛びついてきた時には、もう目が点でした。ハトが豆鉄砲食らうとはこういうことなのでしょう。真剣に説明しようとするリリには申し訳ありませんでしたが、5秒くらいポカーンとしてしまいました。でも、よくよく考えてみたら、初めて会った時も司さんの指示を完全に理解して行動していましたし、私の話している内容もわかっているようでした。喫茶店で会った時も同じ感じでしたし。正直な話、リリは賢い犬ですね~くらいに思っていたのですが、その想像の遥か斜め上にぶっ飛んでいました。一体なんなんですかね、このファンタジー犬は…。まぁ、司さんにお会いした時にでも聞いてみましょう。

「リリ、少し落ち着きなさい。司さんに何かあったことを私に伝えに来てくれようとしたのですよね?ありがとうございます。話は兎神さんたちから聞いています。これから私は司さんを捜しに行く予定です。安心して待っていてください」

「舞さん!私も、私も行きます!連れて行ってください!」

 ワッツ!?

「リリ、これから私が行くところは、とても危ないのですよ?ケガをするかもしれませんし、最悪死んでしまうかもしれません。お家で帰りを待っていてくれませんか?」

「わかっています。もしかしたら舞さんに迷惑をかけてしまうかもしれません。でも、私も行きたいのです!なぜかはわかりませんけど、行かなくちゃいけない気がするんです!お願いします、私も連れて行ってください!」

 リリにどう答えていいかわからず、兎神さんに視線を投げました。兎神さんは困った顔をしながらも頷いてくれました。どうやら同行する許可が出たようです。しょうがありませんね。まぁ、私がしっかりと守ればいい話ですし。

「わかりました。でも、道中は私の指示をしっかり聞いて守ること。これが約束できなければ連れていけません。いいですか?」

「わかりました!ありがとうございます!」

 リリは元気よく返事をして、私に約束してくれました。こうして、私とリリの司さん捜索パーティーが結成されたわけです。さあ、では早速準備に取り掛かりましょうか。食料等は兎神さんたちが用意してくれるそうなので、私は主に武具と身の回りのものですかね。

 さて、何を持っていきましょうかね~。今回は強行軍になると思いますし、メンテナンスが必要な装備は不向きですね。私が得意な剣と槍は諦めましょう、何より嵩張りますし。使い勝手と携帯性を考慮すると旋棍(トンファー)がベストですかね。うん、そうですね、打撃も防御もできますし、それにこれ特殊合金製でとても頑丈なので便利です。


 家族に行ってくる旨を伝え、学校に休学届を出してもらうようにお願いします。最低でも1か月はかかりそうなお話しでしたしね。その後、兎神さんに司さんのお屋敷まで車で移動してもらいます。送ってもらって気づいたのですが、到着までに車で1時間以上かかりましたよ…私に会うためにリリはどれくらいの時間走ってきたのでしょうか?震えます。そう考えたら、ついついリリの頭を撫でてしまいました。本犬は満面の笑みでハテナマークでしたが、理由はわからないけど撫でてくれるの?ラッキーくらいに思っているのでしょう。

 司さんのお屋敷について思ったこと、なんなんですか、ここは。おおよそ敷地内に入ったところ辺りから監視カメラとトラップの山。今時、安全な日本でこんな要塞みたいな装備しているお家なんて見たことないです。何から身を守るつもりですかね…。

 お屋敷に着いたら、蒼花(そうか)さんという方が出迎えてくれました。この人、タダものじゃありませんね。身のこなしが違いますから、武術とかそういう系統の動きではないようですが、洗練されたものを感じます。蒼花さんに連れられて、まずは採寸から始まりました。くっ、私が服を脱いだ時に、あからさまに残念そうな顔をするのをやめてください。確かに少しボリュームが足りないのは認めますが、私だって好きでこういう体形に生まれているわけではありません。ど、努力もしてるんですよ?

 採寸が終わり、用意された服を着てびっくりしました。なんですかこれ。私が普段着ている道着よりも軽いです。インナーもジャストフィットですし、動くのに全然邪魔になりません。通気性も良し、収納も複数あります。蒼花さんの説明で水や汚れもある程度弾き、さらにこの薄さで刃物などの裂傷に強く、多少の衝撃吸収もするとのこと。どこの戦闘服ですか。蒼花さんには使ってみて、何か問題点や改良点があったら教えてほしいと言われました。これ以上どこへ向かうというのですか…。

 身支度もできたので、食堂へ向かいます。向こうに行った際に何があるかわかりませんから、出発前に栄養を補給しておきましょう、ということになりました。食堂についたら、リリがすでに食事をしていました。リリのメニューはレアに焼いた極厚ステーキと野菜のスープとリンゴのようです。嬉々として食べています。前、喫茶店で会った時もリンゴ食べていましたよね…よほど好きなんですね。私はビタミンとたんぱく質と糖質の補給をメインでお願いしていたので、フルーツ類とお肉と野菜のスープとおにぎりを頂きます。お行儀が悪いので普段はやりませんが、緊急時なので食べながら、橙花さんが用意してくれた荷物を確認します。内容は保存食やサバイバルグッズなど、野外活動におおよそ必要なものがすべて揃っていました。ありがとうございます。

 さぁ、食べ終わったら、少し食休みして出発するとしますか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

朝起きたら、ギルドが崩壊してたんですけど?――捨てられギルドの再建物語

六倍酢
ファンタジー
ある朝、ギルドが崩壊していた。 ギルド戦での敗北から3日、アドラーの所属するギルドは崩壊した。 ごたごたの中で団長に就任したアドラーは、ギルドの再建を団の守り神から頼まれる。 団長になったアドラーは自分の力に気付く。 彼のスキルの本質は『指揮下の者だけ能力を倍増させる』ものだった。 守り神の猫娘、居場所のない混血エルフ、引きこもりの魔女、生まれたての竜姫、加勢するかつての仲間。 変わり者ばかりが集まるギルドは、何時しか大陸最強の戦闘集団になる。

小型オンリーテイマーの辺境開拓スローライフ~小さいからって何もできないわけじゃない!~

渡琉兎
ファンタジー
◆『第4回次世代ファンタジーカップ』にて優秀賞受賞! ◆05/22 18:00 ~ 05/28 09:00 HOTランキングで1位になりました!5日間と15時間の維持、皆様の応援のおかげです!ありがとうございます!! 誰もが神から授かったスキルを活かして生活する世界。 スキルを尊重する、という教えなのだが、年々その教えは損なわれていき、いつしかスキルの強弱でその人を判断する者が多くなってきた。 テイマー一家のリドル・ブリードに転生した元日本人の六井吾郎(むついごろう)は、領主として名を馳せているブリード家の嫡男だった。 リドルもブリード家の例に漏れることなくテイマーのスキルを授かったのだが、その特性に問題があった。 小型オンリーテイム。 大型の魔獣が強い、役に立つと言われる時代となり、小型魔獣しかテイムできないリドルは、家族からも、領民からも、侮られる存在になってしまう。 嫡男でありながら次期当主にはなれないと宣言されたリドルは、それだけではなくブリード家の領地の中でも開拓が進んでいない辺境の地を開拓するよう言い渡されてしまう。 しかしリドルに不安はなかった。 「いこうか。レオ、ルナ」 「ガウ!」 「ミー!」 アイスフェンリルの赤ちゃん、レオ。 フレイムパンサーの赤ちゃん、ルナ。 実は伝説級の存在である二匹の赤ちゃん魔獣と共に、リドルは様々な小型魔獣と、前世で得た知識を駆使して、辺境の地を開拓していく!

ひよっこ神様異世界謳歌記

綾織 茅
ファンタジー
ある日突然、異世界に飛んできてしまったんですが。 しかも、私が神様の子供? いやいや、まさか。そんな馬鹿な。だってほら。 ……あぁ、浮けちゃったね。 ほ、保護者! 保護者の方はどちらにおいででしょうか! 精神安定のために、甘くて美味しいものを所望します! いけめん? びじょ? なにそれ、おいし ――あぁ、いるいる。 優しくて、怒りっぽくて、美味しい食べものをくれて、いつも傍に居てくれる。 そんな大好きな人達が、両手の指じゃ足りないくらい、いーっぱい。 さてさて、保護者達にお菓子ももらえたし、 今日も元気にいってみましょーか。 「ひとーつ、かみしゃまのちからはむやみにつかいません」 「ふたーつ、かってにおでかけしません」 「みーっつ、オヤツはいちにちひとつまで」 「よーっつ、おさけはぜったいにのみません!」 以上、私専用ルールでした。 (なお、基本、幼児は自分の欲に忠実です) 一人じゃ無理だけど、みんなが一緒なら大丈夫。 神様修行、頑張るから、ちゃんとそこで見ていてね。 ※エブリスタ・カクヨム・なろうにも投稿しています(2017.5.1現在)

スキル【海】ってなんですか?

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
スキル【海】ってなんですか?〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜 ※書籍化準備中。 ※情報の海が解禁してからがある意味本番です。  我が家は代々優秀な魔法使いを排出していた侯爵家。僕はそこの長男で、期待されて挑んだ鑑定。  だけど僕が貰ったスキルは、謎のユニークスキル──〈海〉だった。  期待ハズレとして、婚約も破棄され、弟が家を継ぐことになった。  家を継げる子ども以外は平民として放逐という、貴族の取り決めにより、僕は父さまの弟である、元冒険者の叔父さんの家で、平民として暮らすことになった。  ……まあ、そもそも貴族なんて向いてないと思っていたし、僕が好きだったのは、幼なじみで我が家のメイドの娘のミーニャだったから、むしろ有り難いかも。  それに〈海〉があれば、食べるのには困らないよね!僕のところは近くに海がない国だから、魚を売って暮らすのもいいな。  スキルで手に入れたものは、ちゃんと説明もしてくれるから、なんの魚だとか毒があるとか、そういうことも分かるしね!  だけどこのスキル、単純に海につながってたわけじゃなかった。  生命の海は思った通りの効果だったけど。  ──時空の海、って、なんだろう?  階段を降りると、光る扉と灰色の扉。  灰色の扉を開いたら、そこは最近亡くなったばかりの、僕のお祖父さまのアイテムボックスの中だった。  アイテムボックスは持ち主が死ぬと、中に入れたものが取り出せなくなると聞いていたけれど……。ここにつながってたなんて!?  灰色の扉はすべて死んだ人のアイテムボックスにつながっている。階段を降りれば降りるほど、大昔に死んだ人のアイテムボックスにつながる扉に通じる。  そうだ!この力を使って、僕は古物商を始めよう!だけど、えっと……、伝説の武器だとか、ドラゴンの素材って……。  おまけに精霊の宿るアイテムって……。  なんでこんなものまで入ってるの!?  失われし伝説の武器を手にした者が次世代の勇者って……。ムリムリムリ!  そっとしておこう……。  仲間と協力しながら、商人として成り上がってみせる!  そう思っていたんだけど……。  どうやら僕のスキルが、勇者と聖女が現れる鍵を握っているらしくて?  そんな時、スキルが新たに進化する。  ──情報の海って、なんなの!?  元婚約者も追いかけてきて、いったい僕、どうなっちゃうの?

追放された転生モブ顔王子と魔境の森の魔女の村

陸奥 霧風
ファンタジー
とある小学1年生の少年が川に落ちた幼馴染を助ける為になりふり構わず川に飛び込んだ。不運なことに助けるつもりが自分まで溺れてしまった。意識が途切れ目覚めたところ、フロンシニアス王国の第三王子ロッシュウは転生してしまった。文明の違いに困惑しながらも生きようとするが…… そして、魔女との運命的な出会いがロッシュウの運命を変える……

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

冒険者に憧れる深窓の令嬢←実は吸血鬼最強の真祖様

謙虚なサークル
ファンタジー
彼女は本を読むのが好きで、特に胸躍る冒険譚に目がなかった。 そんな彼女の思いは日に日に強くなり、ついには家族の反対を押し切って家を飛び出す。 憧れの冒険者になる為に―― 「悪いことは言わんからやめておけ」「とっととおうちに帰んな」「子供の遊びじゃねえんだよ」……そんな周りの言葉に耳を傾けながらも、しかし彼女は夢の為に一歩ずつ歩みを進めていく。 ただその一歩は彼女が自分が思っているよりも、はるかに大きいものだった。 何せ彼女は吸血鬼の中で最も古く、最も強き一族――真祖レヴェンスタッド家の令嬢なのだから。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が子離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

処理中です...