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第3章 干支神はファンタジーな一族を家に迎える
3-15 紫の乙女の懇願と、武神の少女の男気と a wise decision
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司さんのお屋敷から森を抜け、道を走り、街に出る。
雨が激しく降る中、大地をしっかりと踏みしめて、前に前に駆ける。私の出来るだけの、私の可能な限りの力を振り絞って、少しでも早く舞さんのところへ。
「ぶへ」
隣を走っていた車さんから、不意にたくさんの水が飛んできた。飛んできた水を私は頭からかぶってしまい、急に視界が閉ざされて、足元が見えなくなる。だけど、走る速度は落とせない。早く舞さんのところへ行くのが、今の私のできる精一杯のことだから。
視界が不安定なまま、しばらく走っていた私は道に落ちていた何かを踏んでしまいました。いつもなら何でもないそれも、雨がたくさん降っている状態だと話が変わってくる。何かを踏んだ私の脚は大地を踏みしめることができなくなり、次の瞬間つるっと滑って空を切った。走っている体勢が大きく崩れてしまい、私は頭から地面に突っ込んでしまった。ずしゃっという鈍い音がして、少し遅れて身体に激痛が走る。
「くう、いたた」
涙が出そうなくらい痛いけど、今はそんなことを気にしている暇はないのです。早く起き上がらないと、と思ったところで横から声が聞こえた。この声には聞き覚えがある。これから会おうとしていた人の声。雨が降っていて今までわからなかったけど、知っている匂い。
「リリ?リリなんですか?」
ああ、間違いありません。舞さんです。無事にたどり着くことができてよかった。私は舞さんに会えた安堵感からか、今まで走ってきた疲労からなのか、地面に突っ伏したまま、意識を失ってしまった。
「リリっ!リリ、大丈夫ですか!?まさか車にひかれたんですか!?ケガは!?」
また今日も雨ですか、最近ずっと雨ですね。雨が続くと、気分もなぜか憂鬱になってしまいます。お洗濯物も外に干せませんし、かと言って洗濯しないわけにもいきませんし。家の中も湿気でジメジメジメジメ。私の家も道場も昔からある木造建築なので、湿気は適切に処理しないと大変なことになります。これでもしカビでも生えようものなら、カ〇キラーを大量投入して、カビ菌を滅殺したくなってしまいます。
今、私は司さんのご実家の月1回の掃除をしてきたところです。
司さんのご実家の掃除の帰り道、歩く私のすぐ側を、車がすごいスピードで走り抜けていきました。しかも路側帯にたまった水をザバザバと辺りにまき散らして走って行っています。なんというマナーのない迷惑な車でしょうか。人様に迷惑をかけるなら車なんて乗らないでほしいモノです。
そのはた迷惑な車が来た方向をつい見て、ふと気づきました。ちょっと離れたところの地面に何かが倒れています。まさか、さっきの車にひかれたのでしょうか?なんということを!?私は急いで確認に行きました。段々と近づくにつれて、その『何か』がわかりました。わかってしまいました。あの紫色の独特な毛並み、間違えるはずもありません。司さんと一緒に何度も会っていますから。居ても立っても居られず、私は傘をその場に投げ捨てて、全力で駆け寄ります。それと同時に、私はその出来事のあまりの恐ろしさに身体が震えてきてしまいました。
「リリ!?まさか、リリなんですか!?」
まさか、なんということですか。嘘だと言ってください。こんなことって・・・。こんなことってないです。神様お願いです、リリが、リリが無事ありますように。今日初めてお祈りするような罰当たりな私ですが、どうか、どうか聞き届けてください。
「リリっ!リリ、大丈夫ですか!?まさか車にひかれたんですか!?ケガは!?」
まじかでその姿を確認して、間違いありません、リリです。そんな。
いえ、ダメです、舞、こういう時こそ、努めて冷静になりなさい。冷静に状況を判断して、適切な処理をするのです。それができないようでは、あなたは素人となんら変わりませんよ。私は震える手で両の頬を思いっきり叩きます。思いのほか強く叩きすぎてちょっとヒリヒリしますが、手の震えも止まり、気合も入りました。
まずは外観から。目立った外傷と出血の有無、所見なし。吐血の有無、所見なし。自発呼吸の有無、自発呼吸あり。意識、なし。次、触診。骨折の有無、所見なし。打身の有無、所見なし。体温確認、おそらく良。脈拍確認、・・・おそらく良。
よかった。車にひかれたわけじゃなさそうです。私は安堵感からか、へなへなとその場に座り込んでしまいました。自分が濡れるのもいとわず、ぎゅっとリリを大切に抱きかかえます。無事で本当によかった。なんでリリがこんなところに一人でいるのかわかりませんが、まずは私の家に連れて帰りましょう。
そう考えていたら、黒塗りの立派な車が近くに停車して、中から傘もささずに、人が下りてきました。執事服を着た、初老の男性、この人は見たことがあります。
「申し訳ありませんでした、舞様。リリ様を見つけてくださったのですね。ありがとうございました。そのままの恰好で構いませんので、ひとまず車にお乗りください。家まで送りながらご説明を致します」
車から降りてきたのは、司さんの執事長と名乗っていた兎神(とがみ)さんという方でした。なんでリリがこんなところに居て、こんな目に遭っているのか、怒る気持ちはありますが、どうやら理由があるようですね。ひとまず冷静になって話を聞くとしましょう。まずはこれ以上リリが雨に濡れるのを防がなければいけません。兎神さんが開けてくれた後部座席のドアから車に乗り込みます。車の中にはもう一人、女性の方がいて、私とリリを見てすぐにタオルを渡してくれました。ふう、助かります。リリも私もびしょ濡れですからね。
雨が激しく降る中、大地をしっかりと踏みしめて、前に前に駆ける。私の出来るだけの、私の可能な限りの力を振り絞って、少しでも早く舞さんのところへ。
「ぶへ」
隣を走っていた車さんから、不意にたくさんの水が飛んできた。飛んできた水を私は頭からかぶってしまい、急に視界が閉ざされて、足元が見えなくなる。だけど、走る速度は落とせない。早く舞さんのところへ行くのが、今の私のできる精一杯のことだから。
視界が不安定なまま、しばらく走っていた私は道に落ちていた何かを踏んでしまいました。いつもなら何でもないそれも、雨がたくさん降っている状態だと話が変わってくる。何かを踏んだ私の脚は大地を踏みしめることができなくなり、次の瞬間つるっと滑って空を切った。走っている体勢が大きく崩れてしまい、私は頭から地面に突っ込んでしまった。ずしゃっという鈍い音がして、少し遅れて身体に激痛が走る。
「くう、いたた」
涙が出そうなくらい痛いけど、今はそんなことを気にしている暇はないのです。早く起き上がらないと、と思ったところで横から声が聞こえた。この声には聞き覚えがある。これから会おうとしていた人の声。雨が降っていて今までわからなかったけど、知っている匂い。
「リリ?リリなんですか?」
ああ、間違いありません。舞さんです。無事にたどり着くことができてよかった。私は舞さんに会えた安堵感からか、今まで走ってきた疲労からなのか、地面に突っ伏したまま、意識を失ってしまった。
「リリっ!リリ、大丈夫ですか!?まさか車にひかれたんですか!?ケガは!?」
また今日も雨ですか、最近ずっと雨ですね。雨が続くと、気分もなぜか憂鬱になってしまいます。お洗濯物も外に干せませんし、かと言って洗濯しないわけにもいきませんし。家の中も湿気でジメジメジメジメ。私の家も道場も昔からある木造建築なので、湿気は適切に処理しないと大変なことになります。これでもしカビでも生えようものなら、カ〇キラーを大量投入して、カビ菌を滅殺したくなってしまいます。
今、私は司さんのご実家の月1回の掃除をしてきたところです。
司さんのご実家の掃除の帰り道、歩く私のすぐ側を、車がすごいスピードで走り抜けていきました。しかも路側帯にたまった水をザバザバと辺りにまき散らして走って行っています。なんというマナーのない迷惑な車でしょうか。人様に迷惑をかけるなら車なんて乗らないでほしいモノです。
そのはた迷惑な車が来た方向をつい見て、ふと気づきました。ちょっと離れたところの地面に何かが倒れています。まさか、さっきの車にひかれたのでしょうか?なんということを!?私は急いで確認に行きました。段々と近づくにつれて、その『何か』がわかりました。わかってしまいました。あの紫色の独特な毛並み、間違えるはずもありません。司さんと一緒に何度も会っていますから。居ても立っても居られず、私は傘をその場に投げ捨てて、全力で駆け寄ります。それと同時に、私はその出来事のあまりの恐ろしさに身体が震えてきてしまいました。
「リリ!?まさか、リリなんですか!?」
まさか、なんということですか。嘘だと言ってください。こんなことって・・・。こんなことってないです。神様お願いです、リリが、リリが無事ありますように。今日初めてお祈りするような罰当たりな私ですが、どうか、どうか聞き届けてください。
「リリっ!リリ、大丈夫ですか!?まさか車にひかれたんですか!?ケガは!?」
まじかでその姿を確認して、間違いありません、リリです。そんな。
いえ、ダメです、舞、こういう時こそ、努めて冷静になりなさい。冷静に状況を判断して、適切な処理をするのです。それができないようでは、あなたは素人となんら変わりませんよ。私は震える手で両の頬を思いっきり叩きます。思いのほか強く叩きすぎてちょっとヒリヒリしますが、手の震えも止まり、気合も入りました。
まずは外観から。目立った外傷と出血の有無、所見なし。吐血の有無、所見なし。自発呼吸の有無、自発呼吸あり。意識、なし。次、触診。骨折の有無、所見なし。打身の有無、所見なし。体温確認、おそらく良。脈拍確認、・・・おそらく良。
よかった。車にひかれたわけじゃなさそうです。私は安堵感からか、へなへなとその場に座り込んでしまいました。自分が濡れるのもいとわず、ぎゅっとリリを大切に抱きかかえます。無事で本当によかった。なんでリリがこんなところに一人でいるのかわかりませんが、まずは私の家に連れて帰りましょう。
そう考えていたら、黒塗りの立派な車が近くに停車して、中から傘もささずに、人が下りてきました。執事服を着た、初老の男性、この人は見たことがあります。
「申し訳ありませんでした、舞様。リリ様を見つけてくださったのですね。ありがとうございました。そのままの恰好で構いませんので、ひとまず車にお乗りください。家まで送りながらご説明を致します」
車から降りてきたのは、司さんの執事長と名乗っていた兎神(とがみ)さんという方でした。なんでリリがこんなところに居て、こんな目に遭っているのか、怒る気持ちはありますが、どうやら理由があるようですね。ひとまず冷静になって話を聞くとしましょう。まずはこれ以上リリが雨に濡れるのを防がなければいけません。兎神さんが開けてくれた後部座席のドアから車に乗り込みます。車の中にはもう一人、女性の方がいて、私とリリを見てすぐにタオルを渡してくれました。ふう、助かります。リリも私もびしょ濡れですからね。
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