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第1章 灰色の男はファンタジーな生き物と出会う

1-5 灰色の男と兎神の一族②

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「司様、私、橙花からご説明致します。」

 屋敷の調理全般と備品在庫の管理を担当しているのが、この橙花だ。見た目は20台の女性。長い髪を赤いリボンで縛っているのが特徴的だ。しかし、兎神がわざわざ『そこそこの年齢』だというくらいだから実際はよくわからない。直接本人に尋ねれば教えてくれそうだが、なんかとても危険な気がするからやめておこう。一応、女性だしな、うん。

 もう一人が青いリボンで髪を縛っている蒼花(そうか)だ。こちらはこの屋敷の清掃全般を受け持っている。見た目的には、橙花がアットホームな近所の憧れのお姉さん的美人とすれば、蒼花は知的なクール系美人だ。ビジネススーツを着て眼鏡をかければ、どこぞの社長秘書と言われても納得してしまいそうだ。

 というか、兎神も橙花も蒼花も、俺が5歳でこの屋敷に来た時から13年間が経つが、まったく見た目が変わっていないような気がする。毎日見てるから、全然気が付かなかったが、今までの説明を聞いて、冷静になって考えるとこれは異常だ。ただの若作りなのかと思っていたが・・・。

「・・・司様、今何かとても失礼なことを考えませんでしたか?」

 じろりと女性陣2人から同時にきつい視線が飛んでくる。

「・・・・・そんなことはない。話を続けてくれ。」

 くっ、なんて鋭いんだ。危ない危ない。一瞬で背中に嫌な汗をかいてしまった。女性に年の話は禁句だな。思っても顔に出さないようにしないとな。

「では、改めて。このお屋敷ではプラントエリアで魔素を含む果実の栽培を行っております。当初は果実が実る条件が不明でしたのでなかなか苦労しましたが、現在では定期的に収穫が可能となっております。ただし、品質保証の実験結果から、樹木から果実を切り離した場合、魔素が果実内部から徐々に流出する現象が確認されております。これは、常に樹木や果実からは微量の魔素が大気中に拡散していると推測されており、果実を採取すると樹木からの魔素供給が途絶え、果実内部に保有されている魔素が流出して徐々に通常の果実になっていくと考えています。おおよそ、採取から2週間たつと保有する魔素がほぼ0となることがわかっていますので、今は我々が摂取する1日前に採取することとしています。一度実をつけた場合、樹木から切り離さなければ1年程は品質が保たれることがわかっています。数も十分にあり、1年程は大丈夫でしょう。ただ、樹木を育成するための肥料となる魔核が不足気味のため、半年以内にある程度の数量をかの世界より入手する必要があります。私からの報告は以上です。」

「そうか。では当面の在庫については問題ないのだな?しかし、先ほど、兎神にも聞いたが、どこで栽培しているんだ?そんな果実は庭とかでも見たことないのだが。それにプラントエリア?とか言っていたが、それはどこにあるんだ?」

「はい、現時点で早急に対処する必要があるということはございません。場所についてですが、この樹木はとても特殊な生態でして、外部に持ち出すと生態系を破壊する可能性があり、とても危険ですので、完全に隔離した区画で栽培しております。まぁ、百聞は一見に如かずと申しますし、実際に見に行きましょう。」

 生態系を破壊する可能性がある?とても危険?完全に隔離した区画?なぜかすごく不安になる単語が羅列されていて嫌な予感がひしひしとするんだが・・・・。

「・・・・危険はないのだよな?安全な植物なんだよな?話を聞いている限り、とてもやばそうな予感がするんだが・・・。」

 いざ蓋を開けたら、バイオ〇ザードになりましたとか、しゃれになんねーぞ。

「大丈夫です。私から見ればかわいいペットのようなモノですよ。おなかさえいっぱいならおとなしいものですし、ええ、おなかさえいっぱいなら。ちゃんと管理しておりますので安全安心です。さて、では参りましょうか。」

 ん?樹木なのにおなかがいっぱいならおとなしい?今、そのセリフ2回言ったよね?俺には、このセリフが猛獣の檻の中にでも見学に行くかのように聞こえたのだが、気のせいだろうか?

「行先は、このお屋敷の『地下』でございます。」

 ・・・・・・・大丈夫なんだよね?
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