上 下
7 / 278
第1章 灰色の男はファンタジーな生き物と出会う

1-4 灰色の男と兎神の一族①

しおりを挟む
「さて、司様、源様はどの程度までお話をされておりますか?」

 目の前にいる3人のうち、執事長の兎神がそう尋ねてきた。

「祖父の手紙に書いてあったのは、俺が祖父の仕事を継ぐこと、今後『来訪』してくる者たちを保護してほしいこと、お前たちが『来訪』した者たちだということ、そして『来訪』した者たちは定期的にある物質を摂取しないと死んでしまうこと、お前たち『来訪』してきた者たちが帰還を望むなら手助けをすること。そして、俺にすべての決断を任せる、だ。」

 俺は、祖父の手紙を兎神に手渡した。

「読んでもよろしいですか?」

 兎神の問いに、俺は無言で頷いて許可を出した。許可を出して、1分ほどで兎神が手紙を読み終わる。そして、なるほど、と呟いて「あなたたち2人も源様からの手紙を読んでおきなさい。」と、手紙を隣の女性に渡した。2人とも手紙を読み終わると、兎神が説明を始めた。

「ご質問があれば、その都度、お答えいたしますのでお願いいたします。それではまず、兎神の一族について説明いたします。我らは源様のおっしゃるところの『来訪』してきた者たち、『来訪者』そのものでございます。」

「そのもの、とはどういうことだ?」

「具体的に申し上げると、我らは人間ではございません。正確には遺伝子的には人間と酷似した別の何かでございますが、説明が難しいですね。まぁ、いわゆる地球外生命体みたいなものと思って頂ければ結構です。」

「まてまてまて、人間じゃないだと・・・・。見た目は人間そのものだぞ。」

「見た目はほぼ人間といって差し支えないでしょう。しかし、遺伝子的には人間とチンパンジー以上に別のものです。我々の世界では星兎族と呼ばれていました。かの世界より地球へ我ら3名を送り出す際にかなりの無理をしましたので、おそらく現在生存しているのは我らだけでしょう。そうですね、司様に女性の年齢を問わせるわけにはいきませんので、私の年齢でいきましょうか。司様から見て私はいくつくらいにお見えになりますか?」

 兎神からのそのセリフに、俺は苦笑してしまった。まぁ確かに、今のご時世、面と向かって女性に年を聞くのはヘタするとセクハラで訴えられるからな。気を付けないといけないぞ。

「うーん、そうだな、見た目的には50歳くらいか?祖父の代から執事をしているんだろう?」

「残念、不正解です。私はこう見えて、今年で473歳です。ちなみに、私ほどではございませんが、後ろの2人もそれなりの年齢です。」

 兎神の言葉に、2人の女性が頬を若干赤らめて顔を伏せる。

「・・・・・・・・・・・はあ!?よんひゃく?どういうことだ?」

「真偽のほどは定かではございませんが、我々の故郷では祖先は遥か彼方の星から地球に来たと言われておりました。故に寿命も人間とは異なります。ただ、定期的にある物質を少量ですが摂取することが生存の条件となります。我々、兎神の一族の3人はある『目的』があり、意図的に世界を渡り、この日本へやってまいりました。我々が世界を渡ってきた目的の一つは干支神の血族、つまりは現当主の司様をお守りすることです。そして、先ほど主への誓いをした通り、我々はすべての『目的』を達成するまで司様の傍を離れることはございません。」

「400歳うんぬんに関しては、まぁそういうものだと納得しておく。お前たちの生死に関わるある物質とはなんだ?それに俺の血族を守る?なぜだ?守られる理由がわからん。それに目的の一つと言ったが、ほかには何があるんだ?」

「ある物質とは、かの世界よりもたらされたいろいろなものが保有しているものになります。我々はこれを魔素と呼んでおります。現在、この屋敷では、かの世界から採取してきた魔素を含む樹木を栽培しており、それから取れる果実を定期的に摂取することで我々は存命しております。干支神の血族をお守りする理由についてですが、今はまだ、詳しい内容は言えませんが、司様の血族のみが持つ力がございます。源様が管理をされていた、かの世界へ渡ることができるのも、その力の一つです。故に、我々は干支神の血族を断絶させないために、お傍で御身をお守り致します。また、他の目的については、いずれまたの機会にお話しいたします。」

 なんかいろいろと不明で腑に落ちないが、兎神が意図的に言葉を濁すくらいだ。今話せないということはそういうことなんだろう。まぁ、そのうち話してくれるのを待つか。

「その魔素?を含む果実というのはどれくらいある?お前たちの生死に関わるなら、俺にとっては最優先事項だろう。しかし、そんな変わった果実を屋敷で栽培していたか?屋敷のどこにも見たことないんだが。」

「それについては橙花(とうか)よりご説明いたします。橙花、司様にご説明を。」

 赤いリボンをした女性が、はい、と返事をしてから一礼して一歩前に出てきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

スキル【海】ってなんですか?

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
スキル【海】ってなんですか?〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜 ※書籍化準備中。 ※情報の海が解禁してからがある意味本番です。  我が家は代々優秀な魔法使いを排出していた侯爵家。僕はそこの長男で、期待されて挑んだ鑑定。  だけど僕が貰ったスキルは、謎のユニークスキル──〈海〉だった。  期待ハズレとして、婚約も破棄され、弟が家を継ぐことになった。  家を継げる子ども以外は平民として放逐という、貴族の取り決めにより、僕は父さまの弟である、元冒険者の叔父さんの家で、平民として暮らすことになった。  ……まあ、そもそも貴族なんて向いてないと思っていたし、僕が好きだったのは、幼なじみで我が家のメイドの娘のミーニャだったから、むしろ有り難いかも。  それに〈海〉があれば、食べるのには困らないよね!僕のところは近くに海がない国だから、魚を売って暮らすのもいいな。  スキルで手に入れたものは、ちゃんと説明もしてくれるから、なんの魚だとか毒があるとか、そういうことも分かるしね!  だけどこのスキル、単純に海につながってたわけじゃなかった。  生命の海は思った通りの効果だったけど。  ──時空の海、って、なんだろう?  階段を降りると、光る扉と灰色の扉。  灰色の扉を開いたら、そこは最近亡くなったばかりの、僕のお祖父さまのアイテムボックスの中だった。  アイテムボックスは持ち主が死ぬと、中に入れたものが取り出せなくなると聞いていたけれど……。ここにつながってたなんて!?  灰色の扉はすべて死んだ人のアイテムボックスにつながっている。階段を降りれば降りるほど、大昔に死んだ人のアイテムボックスにつながる扉に通じる。  そうだ!この力を使って、僕は古物商を始めよう!だけど、えっと……、伝説の武器だとか、ドラゴンの素材って……。  おまけに精霊の宿るアイテムって……。  なんでこんなものまで入ってるの!?  失われし伝説の武器を手にした者が次世代の勇者って……。ムリムリムリ!  そっとしておこう……。  仲間と協力しながら、商人として成り上がってみせる!  そう思っていたんだけど……。  どうやら僕のスキルが、勇者と聖女が現れる鍵を握っているらしくて?  そんな時、スキルが新たに進化する。  ──情報の海って、なんなの!?  元婚約者も追いかけてきて、いったい僕、どうなっちゃうの?

小型オンリーテイマーの辺境開拓スローライフ~小さいからって何もできないわけじゃない!~

渡琉兎
ファンタジー
◆『第4回次世代ファンタジーカップ』にて優秀賞受賞! ◆05/22 18:00 ~ 05/28 09:00 HOTランキングで1位になりました!5日間と15時間の維持、皆様の応援のおかげです!ありがとうございます!! 誰もが神から授かったスキルを活かして生活する世界。 スキルを尊重する、という教えなのだが、年々その教えは損なわれていき、いつしかスキルの強弱でその人を判断する者が多くなってきた。 テイマー一家のリドル・ブリードに転生した元日本人の六井吾郎(むついごろう)は、領主として名を馳せているブリード家の嫡男だった。 リドルもブリード家の例に漏れることなくテイマーのスキルを授かったのだが、その特性に問題があった。 小型オンリーテイム。 大型の魔獣が強い、役に立つと言われる時代となり、小型魔獣しかテイムできないリドルは、家族からも、領民からも、侮られる存在になってしまう。 嫡男でありながら次期当主にはなれないと宣言されたリドルは、それだけではなくブリード家の領地の中でも開拓が進んでいない辺境の地を開拓するよう言い渡されてしまう。 しかしリドルに不安はなかった。 「いこうか。レオ、ルナ」 「ガウ!」 「ミー!」 アイスフェンリルの赤ちゃん、レオ。 フレイムパンサーの赤ちゃん、ルナ。 実は伝説級の存在である二匹の赤ちゃん魔獣と共に、リドルは様々な小型魔獣と、前世で得た知識を駆使して、辺境の地を開拓していく!

ひよっこ神様異世界謳歌記

綾織 茅
ファンタジー
ある日突然、異世界に飛んできてしまったんですが。 しかも、私が神様の子供? いやいや、まさか。そんな馬鹿な。だってほら。 ……あぁ、浮けちゃったね。 ほ、保護者! 保護者の方はどちらにおいででしょうか! 精神安定のために、甘くて美味しいものを所望します! いけめん? びじょ? なにそれ、おいし ――あぁ、いるいる。 優しくて、怒りっぽくて、美味しい食べものをくれて、いつも傍に居てくれる。 そんな大好きな人達が、両手の指じゃ足りないくらい、いーっぱい。 さてさて、保護者達にお菓子ももらえたし、 今日も元気にいってみましょーか。 「ひとーつ、かみしゃまのちからはむやみにつかいません」 「ふたーつ、かってにおでかけしません」 「みーっつ、オヤツはいちにちひとつまで」 「よーっつ、おさけはぜったいにのみません!」 以上、私専用ルールでした。 (なお、基本、幼児は自分の欲に忠実です) 一人じゃ無理だけど、みんなが一緒なら大丈夫。 神様修行、頑張るから、ちゃんとそこで見ていてね。 ※エブリスタ・カクヨム・なろうにも投稿しています(2017.5.1現在)

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が子離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

冒険者に憧れる深窓の令嬢←実は吸血鬼最強の真祖様

謙虚なサークル
ファンタジー
彼女は本を読むのが好きで、特に胸躍る冒険譚に目がなかった。 そんな彼女の思いは日に日に強くなり、ついには家族の反対を押し切って家を飛び出す。 憧れの冒険者になる為に―― 「悪いことは言わんからやめておけ」「とっととおうちに帰んな」「子供の遊びじゃねえんだよ」……そんな周りの言葉に耳を傾けながらも、しかし彼女は夢の為に一歩ずつ歩みを進めていく。 ただその一歩は彼女が自分が思っているよりも、はるかに大きいものだった。 何せ彼女は吸血鬼の中で最も古く、最も強き一族――真祖レヴェンスタッド家の令嬢なのだから。

追放された転生モブ顔王子と魔境の森の魔女の村

陸奥 霧風
ファンタジー
とある小学1年生の少年が川に落ちた幼馴染を助ける為になりふり構わず川に飛び込んだ。不運なことに助けるつもりが自分まで溺れてしまった。意識が途切れ目覚めたところ、フロンシニアス王国の第三王子ロッシュウは転生してしまった。文明の違いに困惑しながらも生きようとするが…… そして、魔女との運命的な出会いがロッシュウの運命を変える……

処理中です...