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第7章 話が進んだら変更します

7-20 ウルの森の現状

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 司たちが再び訪れたウルの森は、まったくの別物になり果てていた。

 一言で現すならば、朽ちた森だろうか。
 葉の緑はどこにもなく、荒廃した土色に混じって砂の黄色が目立つ。

 あれほどまでに青々と茂っていた木々は、その全てが力尽きたようだった。
 原型を留めているもののほうが少なく、倒木が砂に埋もれかけているものもある。

「ウルの森が……、あの綺麗だったウルの森が……」

 その悲惨な現状を一目見たリリは失意の念に囚われ、どういう声をかければいいのかわからない様子の司はリリの背中を撫でてやることしかできなかった。

 リリが故郷を失った悲しみは、どれほどだろうか。

 しかも、緑が減ったとか、森が小さくなったとか、そう言う次元ではない。
 それは、ほぼ再生不可能レベルで壊滅していて、前の姿を取り戻すには奇跡でも起こらない限りはとても無理な話で。

 地球の知識を得て、砂漠に森を作ることがどれだけ困難なことかを学習してしまったリリは、その様子を見て絶望することしかできなかった。

「大樹様……大樹様の木は、どうなってしまったんでしょうか?」

 森の惨状を見てフリーズしていたリリだったが、当初の目的を思い出して呟いた。

 以前ですら既に枯死しかけていた大樹の木が、この状況でどうなっているのか。
 尤も、それは干支神家の地下に生育している次世代の木へと意識を移したことが原因なのだが、今のリリにそんなことがわかるはずもない。

 今の位置から遠目に存在しているのは確認できるが、その詳細まではわからない。

「リリ、見に行ってみような? あそこへ行ってもらえるか?」

「もう話し合いは済んだのか? わかった、任せよ」

 リリたちが落ち着くまで、しばらくその場でホバリングしていた母鳥だったが、司の指示で再び大樹へ向けて進み始めた。


 司たちはウルの森だった場所の上空を飛び、もうすぐ大樹へ到達するというところで地上に違和感を覚えた。

「何だ、アレ……」

 土と砂の境目。
 そこが明らかなほど不自然に盛り上がり、緩やかに蠢いているのだ。
 しかも、そのふくらみが通過した地面は、ゆっくりとだが確実に砂に置き換わっていくのが見て取れた。

「司、遠目だから正確にはわからんが……あの規模だとかなりのデカさだぞ? 今は砂に潜っているが、下手をすると全長20メートルってところか?」

「宗司兄、大きさも大きさですけど、その前にこの砂漠化の原因がアレだってことを挙げましょうよ……土を耕して細かくするなんて、まるで巨大なミミズか何かでしょうか?」

 それは1つではなく、上空からざっと確認しただけでも複数。
 どうやら、あの砂の下にいる何者かが土の地面を砂に変えているのは確実だった。

「ふむ、何やら気持ち悪い気配を感じるな。司よ、アレには近づかない方が良さそうじゃ。地上に降りるのは止めて、枯れた大樹に間借りするとしよう。あそこに丁度いい枝がある」

 母鳥が何かよくない印象を感じて、クーシュは顔を露骨に顰めてから視線を逸らした。
 特にクーシュはほぼ感性のみで生きているため、こういった不快な印象を感じ取った場合の彼女の勘はよく当たる。

 フェルス族の勘を参考にして、地上には降りずに大樹の枝へ着陸することで一致した。


 朽ちてはいるものの、比較的太くて丈夫そうな枝を見繕って母鳥が着地すると、リリは我先にと大樹の枝から幹へと駆け寄った。
 そして、おでこを幹にぴたりとつけると目を閉じて何やら交信を始めた。

 リリの謎の行動は心配だが、それは司に任せて宗司と舞は枝の上から地上を観察すると、

「うわぁ、よくよく見てみると動き方が気持ち悪いですね……」

「今は……15時か、どうやら日中は活動しているようだが、夜間はどうなるのか。生物?である以上は1日中ずっと動き続けるはずはないから、どこかで休むと思うのだが」

 ウルの森の方向から、徐々に大樹の足元まで迫ってくる砂の膨らみ。
 地上に張り出している大樹の根までの到達予測は目測で1日あるかないかだろう。

「司よ、ちょっとだけ近くまで見に行ってきてもいいか?」

「え? 宗司さん危なくないですか?」

「私1人でなら、もし襲われても逃げれられる自信があるから問題はないだろう。念のため、こちらに誘導しないように大外から回って後ろから近づくことにする。舞、お前はついて来たらダメだぞ?」

「私は誘われたって行きませんからお構いなく」

 司の言葉を最後まで聞く前に、大樹の枝から地面に向かって飛び降りていく宗司だった。
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